合計3台入手したVAIO専用液晶の改造も残り1台となりました。今回の機体はPCVA-141LAPですが、こいつのインターフェイスはLVDS 1ch 6bit で、独自仕様のコネクタで特定のVAIO本体と繋がるようになっています。信号がLVDSだし、コネクタが26pのハーフピッチアンフェノールなので、当然ながらそのままでは普通のPCに接続することは不可能で、VAIO本体が故障したりしてしまうと、利用価値はほとんどゼロです。この時代のVAIOはそろそろガタが来ているものが多いためか、モニターのみがヤフオクで頻繁に出品されており、このモニタも1700円で入手したものです。こういう汎用性のない製品は正常動作品でもジャンク扱いになりやすく、非常に安く手に入るのがメリットです。うまく利用価値を見いだせれば地球に優しいリサイクルともなるでしょう。
以前の記事で記載したように、PCVA-141LAPに入っているLCDパネル(三菱AA141XB02)はA-200K対応なので、A-200Kを使えば非常に汎用性の高い液晶モニタを制作することは可能です。しかしながら、A-200Kはコストが高いという点で不利ですし、基板が大きいので筐体に内蔵させようとすると加工が面倒でもあります。
ちなみにPCVA-141LAPで採用されているLVDSという規格自体は元々ノートPC用に開発されたものらしいです。よってデスクトップPCや一般のビデオボードでこの信号を取り出せる機種はほとんどありませんが、比較的新しめのノートPC(だいたいpentium2/celeron以降)では多く採用されています。ノートPCといえば、PS2PCやアルミケースのジャンクマザーPC2号機はFMV BIBLOの基板を使っており、LVDS信号も出るようになっています。マザーボードから配線を引き出せば、VAIO専用のLVDS液晶を繋げることもできるはずです。これを利用しない手はないでしょう。ということで、PS2PCとVAIO専用LCD「PCVA-141LAP」を接続してみることにしました。
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入力信号 |
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Project #1(終了) | PCVA-14XLAP | DVI-D | PCVA-15XTAP用 | 三菱 14インチ |
Project #2(終了) | PCVA-15XTAP | アナログVGA/S/Comp | CoCoNet A-200K+PCVA-14XLAP用 | 日立 15インチ |
Project #3(今回) | PCVA-141LAP | LVDS(ジャンクマザー専用) | PCVA-141LAP用 | 三菱 14インチ(ライン抜け) |
入手したPCVA-141LAPは残念ながら液晶パネルにライン抜けのあるものですが、まぁとりあえず気にしないで作ってみましょう。
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LVDSはLCD用のデジタル映像信号の規格ですが、コネクタの規格は特に規定されていないようです。Peterさんはいくつかの作例でRJ−45コネクタを使って配線されており、非常に手軽かつ低コストに繋ぐ方法を確立しておられます。ただ、LANと同じコネクタなので誤挿入の危険はつきまといますし、電源やその制御信号を繋ぐ場合は別にケーブルとコネクタも必要です。 今回のネタであるPCVA-141LAPでは、画像のような26pのハーフピッチアンフェノールコネクタが採用されておりましたので、このコネクタをそのまま使うことにしました(それが一番ラクチンだから)。物は26pのハーフピッチアンフェノールなので、ちょっと気の利いたパーツ屋なら手に入ります。 |
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では、制御基板の解析作業に取りかかります。まずは、PCVA-141LAPから取り出した制御基板ですが、だいたいこのような構成になっていました。オーディオアンプと、電源回路、インバータの3つの機能が載ってます。 LCDパネルには+3.3V電源が必要ですが、この基板には3.3Vのスイッチングレギュレータ回路が載っているので、外部からは+12Vだけ供給してやればOKです。実はこれが結構重要なことだったりします。液晶の+3.3V系は意外と大食らいなのか、普通の3端子のシリーズレギュレータを使って+12Vから降圧して作ると、効率が30%以下と非常に悪く、レギュレータの発熱もかなりのものになってしまいます(実証済み)。よって、効率の良いスイッチングレギュレータによる降圧が必要になるわけですが、これを自前で作るのは意外と面倒なものです。スイッチングレギュレータICや低ESRのコンデンサが地方では手に入りにくいためです。 電源の制御についてはバックライトのon/offだけVAIO本体から制御線が出ていました。LCDやオーディオアンプはVAIO本体から供給される+12V電源のon/offと連動するので、外部から+12Vを供給すると常時ONになってしまいます。できれば制御回路の追加をしたほうがベターです。 LVDS信号はこの基板を経由せず、VAIO本体とLCDパネルを直結するようになっています。PS2PCから信号を引き出して26pハーフピッチアンフェノールに引き渡してやればOKでしょう。 |
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CN3はLCDパネルへ電源を供給するためのコネクタです。スイッチングレギュレータから出力された+3.3Vが出ていますが、特にon/off制御はされていないので、常にONです。 |
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CN4は、他のVAIO LシリーズのLCDモニタと同じ仕様になってました。繋がる先の基板も今まで扱ったVAIO専用液晶のものと基本的には同じ物でした。型番は異なるようですが、ピンアサインや回路はまったく同一です。 この基板を接続しないとバックライトが光らず、音声も出なくなるので注意。右の画像で示すサブ基板の回路は下記の通りです。 |
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以前の記事にも掲載していますが、一応載せておきます。LCDパネル側のコネクタはLVDSインターフェイスとしては最も一般的な配列です。 |
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メイン基板とLCDパネルのピンアサイン解析結果を基に、LCDモニタから直出しの26pハーフピッチアンフェノールコネクタのピンアサインを書き出してみました。 8p-18pは基板にはどこのコネクタにも接続されておらず、モニタ内部でワイヤーだけ結線されていました。たぶん、VAIO本体が純正モニタの接続を認識するのに使っているのだろうと思います。 |
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まずはテストとして、手持ちのジャンクマザーに繋げてみることにしました。使用したのはPentium3 800MHzのELMOマザーですが、これをPeterさんに倣ってRJ−45コネクタを増設してLVDS信号を引き出せるようにしてあります。 LANケーブルを切断して、26pハーフピッチアンフェノールメスコネクタを、ピン解析の結果に従って配線しました。 テストなので4ペアの差動信号とシールド線のGNDだけ繋いでます。バックライトの電源制御信号は、LCDの制御基板上で+3.3Vにジャンパ(常時ON状態)。 |
その時使ったケーブルがこれ。Peterさんがアーム型LCDの制作の際に使われたそうなので、真似して使ってみました。実はLVDSの信号を引き回すには最適なケーブルだったりします。 一見ただのLANケーブルですが、どんなものでも良いというわけではありません。 |
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普通のLANケーブルは4ペアのツイストペアケーブルが束ねられているだけですが、このケーブルはちょっと変わっていて、4ペアのワイヤーがそれぞれシールドされています。まさにLVDSの配線にはうってつけです。これなら長く引き回しても信号が干渉しにくいし、外来ノイズの影響も受けにくいでしょう。 実はVAIO液晶で使われている直出しのLVDSケーブルも内部はこのように4ペアのシールド線になっています。 |
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電源は制御基板に+12V 2AのACアダプタを接続してます。テスト用ELMOマザー(Pentium3 800MHz版)の電源を投入したところ、このように絵が出力されました。ライン抜けはご愛嬌ということで…。配線の引き回しの関係で、複雑な絵を出すとノイズが乗りますが、PC内部からコネクタまでの配線に上で記載したLANケーブルを使えば大丈夫だと思います。 ちなみに動作確認に使ったOSはWindowsMeですが、上に表示されているようにデュアルモニタにも対応できるみたいです。でもなぜかWindows2000だと設定項目が現れず、デュアル出力できなくなります。Peterさんのサイトにも記載されていますが、謎の現象です。改善方法知っている方がおられましたら教えてください。 |
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とりあえず使えそうだということが分かったので、PS2PCにコネクタを増設する改造にとりかかります。PS2PCは内部構造が複雑なので開けるのも一苦労です。バックパネルを取り外すためにはワイヤーを半田コテで何本も外さないとならなかったりしますし。 目的のLVDS信号の取り出せるコネクタはこのあたりに隠れてます。 |
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Krisマザー上の特殊コネクタは手に入らないので手配線です。取り出しやすいところから前出のLANケーブルの切れ端で信号を引き出しました。ピンアサインはPeterさんのサイトに載っている通りです。Krisマザーなので解像度設定用のピンもGNDに落としています。 |
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パターンを追いかけて、コネクタの近くに出ているスルーホールに半田付けしています。かなり細かいので、20Wの半田コテでチマチマとやりました。 こういうスルーホールは無加工だと半田付けしにくいので、表面をカッターの刃先で少しだけ削ってピカピカの銅箔を露出させ、軽くペーストを塗って半田の乗りを良くしています。 簡単に外れないように、動作確認した後はホットボンドでガチガチに固めてしまいます。(画像は仮止めの状態) |
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PS2PC内部からコネクタまでのワイヤーの長さはなるべく短い方が良いと考え、10cm程度の長さで26pハーフピッチアンフェノールメスコネクタに配線しました。コネクタは普通にパーツ屋で売ってました。4ペアのLVDS信号の他に、バックライトの電源制御信号も配線しています。LCD用の電源は、このコネクタを介してPC本体から+12Vを流すこともできますが、そうするとPCのACアダプタの容量を越えて電力不足に陥る危険性があるため、LCDは外部から別のACアダプタで電力供給しました。 この時点で一度動作確認してみたところ、複雑な絵を出してもノイズなく、クリアーに表示されていました。この配線なら問題なさそうです。 |
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増設コネクタのバックパネルへの取り付けですが、配線の長さの関係から、音声信号コネクタが並んだところの上に取り付けました。 当初の位置だと、ピンジャックコネクタと干渉してしまうので、これを基板から外して90度回転させて回避してます。 PCVA-141LAPはオーディオアンプ付きなので、この時点で音声出力もピンジャックから横取りして配線しています。 |
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改造完了後のPS2PC。バックパネルの状態はこんな感じです。ただの飾りになっているAVマルチコネクタが悲しいかな…。ここにLCD用コネクタを取り付けたほうがスマートだったかも(ワイヤーの引き回しは長くなるけど)。 |
引き続き、LCDモニタ側の改造に取りかかりますが、とりあえず絵を出すだけなら電源コネクタを増設するだけでも映ります。 ただ、それだけではLEDが光らないし、LCDの電源が入りっぱなしになってしまうので、ソレ用の制御回路を増設してやりました。 |
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LED制御のためにロジックICの74HC04を使いました。入力信号を反転して出力する回路が6つ入ったICです。 バックライトの電源制御信号を横取りしてこのICに入力し、正論理の出力ピンに緑色&赤色LEDを繋ぎ、反転出力にオレンジ色LEDを繋ぎました。これで、動作時は緑+赤、スタンバイ時はオレンジに点灯します。 LCDの電源制御のためにもこのICから信号を取り出し、トランジスタに入力しています。このトランジスタでリレーをスイッチして3.3Vのon-off制御させました。 |
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リレーを接続した部分です。スペースの都合でリレーを基板上に貼り付けられないので、ワイヤーで引き回してケースの空きスペースまで誘導してます。LCDに3.3Vを入力する部分を横取りして、パターンをカット、リレーを経由させてます。 リレーを駆動用の電源には、+12Vを使ってます。当初+3.3V用のリレーを使って実験してみたのですが、LCDパネルによっては、+3.3Vの電源容量が足りなくなることがあり、リレー動作によって画面が出なくなる現象が起こりました。リレーは意外と大食らいなので、容量に余裕がある+12V系を使うべきでしょう。 |
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リレーに接続した電源のパターンの拡大図。パターンカットしてその間をリレーでスイッチしてます。 |
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増設した回路は結局こんな感じになりました。BL onというのはバックライトon信号です。CN1の6pから取ってます。この信号を使って、3つのLEDとLCDの+3.3V電源制御を行ってます。 |
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改造とは直接関係ないですが、PCVA-141LAPに内蔵されているスピーカーは異常にショボいです。安物のヘッドフォンに内蔵されているようなスピーカーで、エンクロージャもありません。出てくる音もショボショボです。オマケ程度に考えておいたほうがよろしいかと。 同じVAIO Lシリーズでも他の機種は良いスピーカー使っているんですけどねぇ…。 ちなみにこのスピーカーってコーンが極薄のフィルムみたいな素材なので、誤って押すと簡単にベコベコにへこんでしまい、そのまま鳴らすと音が割れて聴くに堪えない状況となります。ベコベコになったコーンを修正する場合は口で吸い出せばOKです。 |
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筐体の加工は電源コネクタの増設のみです。 |
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スペースの余裕を考えてこの位置に取り付けました。ここに秋月電子で買った+12V 2AのACアダプタを繋げてます。 |
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改造作業が全て完了しましたので、動作確認してみます。 コネクタはかなり密集してます。全部繋いだらかなりゴチャゴチャしそうですが…。 |
LCDにライン抜けはあるものの、それ以外は普通に表示して普通に起動しました。キーボードとマウスは前にPS2Linuxを買った時に付いてきたやつを繋げてみました。これらは元々PS2用ですが、単なるUSBデバイスなので、PCに挿してもそのまま使えます。これで一見メーカーがSONYに統一されてイイ感じになってきました。中身はインチキですけどね。
総評 てなわけで、製作開始からおよそ3日間で完成しました。細かい配線はありますが、筐体の加工が少ないので、所要時間は短いです。Windows2000の起動ロゴに細工して、こんな感じにしてみました。ソレっぽい雰囲気はでているのではないかと。元々のロゴを白黒反転してSCEIのサイトから拾ってきたPS2ロゴなどを貼り付けただけですけどね。Windows2000の起動ロゴ変更にはちょっと面倒な手続きが必要なのですが、方法はHage88さんのサイトに載ってました(Windows設定覚え書きの項)。
モニタの筐体の色ですが、やっぱり黒く塗装したいですね。できればSONYロゴの付いたVAIOカラーの部分は、PS2スタンドと同じ青のグラデーションをかけたいです。でもエアブラシを持っていないのでグラデーションは辛いなぁ…。まぁ、そのうち塗装する予定なので、塗り終わったら改めてアップします(塗る塗ると言いながら、グラデーション塗装の問題で延び延びになってます)。エアブラシもエアー缶仕様のやつなら4000円程度、コンプレッサー仕様のでも安い奴なら1万円ちょっとなんですが、安物はイマイチという意見もあり、買うべきか、買わざるべきか迷ってます。趣味のガンプラの塗装にも使えるので、あれば便利といえば便利なのですが、筆塗りと違って塗装ブースも必要だし…。
お約束の制作費用ですが、だいたいこんな感じです。
合計 4100円
LCDモニタ(PCVA-141LAP) 1700円
モニタ側増設回路 350円
ACアダプタ 1000円
ケーブル、コネクタ(PC側) 1050円
VAIO専用液晶をPS2PC専用液晶に改造しただけなので、相変わらず汎用性はまったくありませんが、追加回路を最小限に押さえた影響で費用が安く済んでいます。たまにはこういう改造も悪くないでしょう。
LVDSを26pのハーフピッチアンフェノールで繋ぐという方法についてですが、コネクタの入手性や、一緒に音声信号や制御信号を流す上で程良いピン数があることなどを考えるとまんざらでもないと思いました。そこで、今後LVDS用液晶モニタを作る場合はこのコネクタで統一しようと思います。実は、ジャンクPC2号機(アルミケースのやつ)用に専用アーム式液晶を作る計画があり、既にパーツを集めて制作を開始しています。パーツはイチから入手して筐体もアルミアングルを使ったオリジナルフレームですが、せっかくなので、コネクタの規格を合わせて相互に繋ぎ替えて使えるようにしようかと考えてます。他にも、もう一台LVDSの液晶パネル(DO-夢で買ったIBMのやつ)があるので、これも同じ規格で制作し、さらにA-200KとTVチューナーを組み合わせた外付けのインターフェイスユニットを制作し、それぞれをコンポーネント化してみようと目論んでおります。このインターフェイスユニットを使えば、今回改造したPCVA-141LAPに普通のVGAを繋げることもできますし、テレビとしても使えるようになるはずです。たとえ専用規格でも、規格統一したものを沢山作れば、それなりに汎用的に使えるようになるわけです。
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