CoCoNet液晶工房という秋葉原のショップをご存じでしょうか? 数年前から中古のノート用液晶と、汎用のLCDモニタを作るためのキットを販売しているショップらしいです。ちょうどH15年の年末にセールをやっており、1キット通常価格12800円のところが9800円ということだったので買ってみました(追記:H16年4月頃よりA-100/200Kが9980円に値下げされています)。ラインナップには、SVGAの41p TTL(RGB)液晶用のA-100Kと、XGAの20p LVDS液晶用のA-200Kがありますが、それぞれ一つずつ購入。
ちなみにA-100Kで使えるTTLの液晶パネルは比較的古いノートPCで採用されていることが多いようです。CoCoNetの通販でも売ってますが、結構高価だったり。調べたところ、ヤフオクでは1000円〜3000円程度で取り引きされているようです。
一方、A-200Kで使えるLVDSの液晶は最近のノートPCでも採用されているためか、ヤフオクでの相場が5000円〜1万円と割高です。LVDSのパネルには15インチなどのサイズの大きいものがあるのがメリットですが、冷静に考えるとパネルとキットを買うだけで2万円くらい行ってしまい、普通に中古を買った方が安上がりだったりすることもあり、ちょっと微妙ですね。しかも、不思議なことに同じLVDS仕様のパネルでも使えるものと使えないものがあり、運悪く使えないパネルを買ってしまった時の精神的、金銭的ダメージは大きいです。ただ、普通のPC用だけでなく、S端子やコンポジットビデオ入力が使えるので、ビデオモニタとして考えるのなら安いのかも知れません。
それぞれのキットのメリット、デメリットをまとめてみましょう。
キット 対応パネル メリット デメリット A-100K 台形41pコネクタのSVGA TTLのRGB液晶パネル パネルが安価。
コンパクトに作れる。
大きなパネルが使えない(たぶん12インチ程度まで)。
解像度は800x600と控えめ。
A-200K JAE20pコネクタのXGA LVDS仕様の液晶パネル(の一部) 大きなパネルが使える(たぶん15インチ程度まで)。
新しい視野角の広いパネルも使えるものがある。
1024x768の解像度で使える。
パネルが高価。
相性が厳しく、LVDSでも使えるパネルと使えないパネルがある。
安価に液晶ビデオモニタを作るなら、A-100K+安いLCDパネルの組み合わせは悪くないと思います。今回は2種類購入したキットのうち、A-100Kを使った汎用モニタの制作ネタです。
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まず、CoCoNet液晶工房の通販で購入したキット「A-100K」。私が買ったときには年末特売で9800円でしたが、通常価格が12800円と割高なのが残念。(追記:H16年4月頃よりA-100/200Kが9980円に値下げされています) まぁ、値段が高いのはあんまり買う人がいないからだと思います。この手の製品って少数ロットだと開発費を消化するために単価が高くなるらしいです。ガンガン売れて量産できると安くなるんでしょう。ということで、みんなでキット買いまくってガンガン制作して安くしましょう(無理)。ていうかここ(CoCoNet)の商品、どれ見ても割高に見えるのは私が普段からジャンクばっかり漁っているからでしょうか?? ちなみにキットにはメイン基板の他、バックライト用のインバータ基板と操作パネル基板、各種コネクタ+ケーブルが付属。ACアダプタと液晶パネルを別途入手してコネクタ繋ぐだけでとりあえず映ります。 ちなみにACアダプタは秋月電子の12V2Aのものを買いました(およそ千円)。CoCoNetの純正品買うより安いもんで。とはいえ、純正品も秋月の4Aのやつっぽいです。12インチのノート用パネルを普通に使うなら2Aで十分でしょう。 |
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LCDユニットはIBMの古いノートPCで使われていた中古パーツを入手。ThinkPad560シリーズで使われていた12インチのTFTモジュールらしいです。パネル型番はLGのLP121SB。たぶん121SBは、12.1inch SVGA Rev.B みたいな読み方だと思います。 ThinkPad560シリーズはMMX-Pentium233の時代のブツなので、既に現役を退いている機体も多いことでしょう。従ってパーツも格安で取り引きされてます。ちなみにThinkPad560シリーズにはDSTN液晶のラインナップもあるようなので、間違えないように注意。 で、このパネルはヤフオクで1600円で落札。出品者に質問したところ、CoCoNetのキットで動作確認されているということで、その点は安心でした。届いたパネルはドット抜けなく、バックライト光量も十分で比較的程度の良いものでした。ただし、古い世代のLCDなので視野角は狭いです。 コネクタは台形の41pのもの。ここにA-100Kに添付されているケーブルのコネクタを差し込みます。古いLCDではよくあるタイプのコネクタのようですが、CoCoNetによると、コネクタが同じでも使えるとは限らないとか。ちなみにこのLP121SBは正式にA-100K対応パネルとされていました。A-100Kはあまり相性問題についての話を聴きませんが、やっぱりキットで動作確認されているパネルを買った方が安心です。 |
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ケース用の材料ですが、フルアルミケースでフォトスタンド風に仕上げることにしました。パネルの裏側にキットの基板等を配置させるとトータルで奥行きがだいたい3センチ弱必要であることから、フレームにはアルミの15x30mmの不均等アングルを使うことに決定。厚さは2mmあり、強度はかなりのものです。ハンズで1m長を2本購入(1mを1本だと微妙に足りなくなる)。1本560円でした。あと、スタンド用として、幅15mmで2mm厚のアルミの平棒を1m購入(250円)。その他、L字金具や各種ネジなどを適当に調達。 裏板にもアルミ板を使用します。厚さ1mmで300x400mmの板を一枚購入。ホームセンターで980円。1mm厚だとちょっと強度的に心配な面もありますが、後から補強用のアングルを仕込むこともできるので良しとしました。 |
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超テキトーな設計図です。使用するLCDユニットは左側に余計な幅の出っ張りがあるため、ここに合わせるとアングルからLCDパネルの金属枠の部分がどうしても2.5mmはみ出してしまうため、四方で2.5mmの余裕を持たせてこのようなサイズになりました。 外形寸法は284.5mm x 223mmです。表示部サイズは254.5mm x 193mm。 |
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これまた超テキトーな材料の設計図。フォトスタンド風フレームにするので、アングルを45度でカットしないとなりません。90度にカットして組み合わせた方が作業はラクですが、見た目は45度で組み合わせたほうが仕上がりが美しいので。 厚さ2mmなので、この厚みの分も45度に削らないとならないのが意外と大変。 |
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ということで、設計図に従って材料を加工します。まず、アングルに傷防止&基準線書き込み用の紙を両面テープで貼り付けてから作業開始。ここに切断線等を正確に書き込みました。 アングルを金鋸で線に従って切断した後に、エッジが45度になるように棒ヤスリで削りこみました。結構正確さが求められる作業です。完全手作業なので、どうしても組み合わせた時にところどころ隙間ができてしまうのですが、ある程度は妥協も必要でしょう。 |
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フレームの形が出来上がったので、とりあえずテープで仮止めして、内部の基板をどのように配置させるかを検討します。ケーブルの長さ等により基板の配置を決め、ノギスで計測して、パネルと基板が干渉しないようにスペーサーの高さを決めます。 バックライトの冷陰極管のワイヤーが短いので、インバータ基板は左上に配置。LCDの信号ケーブルの長さやその他のケーブル引き回しを考えてメイン基板は左下に設置することにしました。各種信号用コネクタは右下にまとめて背面から出すことにします。そして、コントロール用のスイッチパネルはフレームの上面に張り付けてしまいます。 VGAコネクタだけは、キットに添付されているものが背面取り付けではなく、横から出すことを前提としているので、そのまま取り付けようとするとケースの高さが足りなくなります。よって、パーツ屋で買ってきたコネクタに付け替えることにしました。 |
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コネクタの方向の制約から、スイッチパネルが本来想定されている方向とは左右逆さに配置されてしまうため、一部のボタンを入れ替えました。コネクタのピンを抜いて差し替えるだけなので簡単です。具体的にはSELECT←→MENU , RIGHT←→LEFT としてます。 |
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フレームに穴を開けて6mmのスペーサーで固定しました。LEDはそのままでは高さが足りずにアングルに潜ってしまうので、足を継ぎ足して底上げしてます。また、ボタンはPC WATCHでの制作例に倣って3mmのリベットをはめ込んで外に出してます。 両脇に見えるのは、裏板固定用のL字金具(タップが切ってあるもの)。 |
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上から見るとこんな感じ。ここに文字を印字したデカールでも張り付けて、その上からアクリルを貼る予定。 ちなみに裏板固定用のL字金具は、皿ビスを使って固定してます。その他もフレームの横から出るネジはできるだけ皿ビスを使って出っ張らないようにしています。このアングルは2mmの厚みがあるので皿ビスを使えば頭がほぼ完全に埋まってくれます。 |
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てなわけで、フレーム用の4本のアングルの加工が完了。 |
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各々を組み合わせてこうなりました。 |
フレーム同士はL字金具を使って、ビスとナットでネジ止めしてます。タップが切ってあるL字金具を使った方がガッチリ固定されますが、そうすると穴がズレた時の誤差修正が困難なので、タップ無しのものを使ってます。 裏板固定用の金具は組み立てる際に裏側からナットを押さえることができないので、タップが切ってある金具を使ってます。 |
こんな感じにLCDは26mm、基板は15mmのスペーサーで裏板にネジ止めする予定でしたが、LCDパネルのスペーサーとフレームが干渉することが判明したので、最終的にLCDパネルはホットボンドでフレームに接着してます。 |
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計測に従って、1mm厚の板を切り出しました。いつも通り、傷防止&設計図書き込み用の紙を貼り付け、メイン基板固定用のネジ穴、フレームと接合するL字金具のネジ穴、コネクタの穴を書き込んでいます。 |
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こんな風に配置させました。DCジャックは、キットに添付されていたものではなくて、ネジ止めできるタイプのものに付け替えています。 実際の穴開け加工ですが、この表面に張り付けた紙にカッターで穴を開けて目印を作り、その内周にドリルで穴を開けまくり、穴と穴の間をニッパでパチパチ切り取ってから棒ヤスリでゴリゴリ削ってます。 |
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裏板の穴開け加工が完了し、基板とコネクタを張り付けてみました。 |
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2枚の基板は15mmのスペーサーで固定しているので、このくらいの隙間ができています。 |
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結局VGAコネクタとDCジャックをパーツ屋で買った物に交換してます。 VGAコネクタは本数が多めなので配線がちょっと面倒。添付されていたケーブルを切って繋ぎ直しても良いのですが、微妙に長さが足りなかったので、すだれケーブルを用いて直接半田付けしてしまいました。 |
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フレーム上面の操作パネルに飾りのアクリルパネルを張り付けます。丁度良いサイズにカットしたアクリル板をテープで貼り付け、既にアルミに空けてある穴をガイドにドリルで穴を空けました。 |
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皿ビスで固定してこんな感じになりました。カラーリング的にもアクセントになってよさげです。ちなみにLEDの所の穴は寸止め加工(勝手に命名)をしています。 |
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最後にアルミの平棒を利用してスタンドを作ります。まずはフレームの外形寸法に合わせて2カ所を90度に曲げました。2mm厚のアルミなので結構硬いのですが、ベンチバイスに挟んで気合いで曲げます。 |
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スタンドの平棒は左右を揃えて金鋸でカットしてネジ止め用の穴を空け、断端を棒ヤスリで丸く加工しました。 スタンドを固定するネジは、締める強さを調整可能にするため、手で回せるタイプのものを探したらハンズでこんなのを売ってました。M5ネジ2個で100円。フルアルミケースのデザインを損なわない丁度良いネジです。ナットは滑り止めのギザギザ付きのものを購入。 そして、スタンドとフレームの間の滑り止めとして、ゴムワッシャーを1mm厚のゴムシートの切れ端からカッターで切り出しました。ゴムワッシャーとしても売ってますけど、自分で作った方が遙かに安いんです。 |
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スタンドはこんな感じでフレームに固定しました。ナットはホットボンドでガチガチにフレームに接着してます。 スタンドとフレームの間にゴムワッシャーが挟まっているので固定性も良好。ネジを手で回して強さ調整できるのでパネルの角度変更も容易です。 ちなみにこのスタンド、上に持ち上げれば壁掛け用の取っ手としても使えて便利かも。 |
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動作チェックしたときに気づいたのですが、VGAからの干渉ノイズでS映像が乱れるのでS信号とコンポジットビデオ信号をシールド線で配線し直しました。たぶん、コネクタや内部の配線の物理的な距離にも問題があるのだとは思いますが、どうもキット添付のケーブルはノイズ対策が甘すぎる、ていうか皆無のようで(GNDの処理が最小限)。 シールド線で結線後は干渉ノイズも消えて綺麗に表示できています。 |
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最終的に内部はこうなりました。まだスピーカーやアンプ回路を仕込む余地はありますね。ノートPC用のエンクロージャー付きの小型高音質のスピーカーがあれば仕込んでみても良いかも知れません。 |
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如何でしょ? 自分としてはイメージ通りのフォトスタンド風に仕上がったつもりです。 ちなみにA-100Kのチップはある程度の熱を持つようですが、アルミケースの放熱性は悪くないようで、特に廃熱用の穴を空けなくてもなんとかなりそうな感じです。 画像ではあまり分かりませんが、完全手作業なので、細かいところを見るとどうしてもアラはあります。ある程度は仕方ないと諦めてますが。 あと、アルミ素材は柔らかいので加工しやすい反面、どうしても傷は付きやすいですね。加工中は保護用の紙を貼り付けて傷防止に努めてはいますが、素材を購入した段階である程度傷が付いているものがほとんどです。カッティングシートを張り付ける等の対処法はありますが、放熱性が低下するデメリットもあるでしょう。 |
総評 てなわけで、製作開始から約3週間で完成しました。ジャンクマザーPC制作と比べると配線作業も少ないですし(とりあえず映すだけならコネクタ挿すだけ)、ケース加工時に位置決めする場所も少ないので工作自体は比較的簡単な印象でした。
制作費用ですが、キットが1万円、ケース材料が3千円、パネルが1600円+送料、てな具合ですので、およそ16000円くらいかと。VGAモニタとして考えるのならば、中古の12インチモニタをヤフオクで買った方が安いような気がしますが、S端子が使えるメリットは大きい(と思う)のでヨシとしましょう。チューナーは内蔵していませんが、ビデオを繋げばテレビとしても使えますしね。市販品ではフルアルミケースのLCDモニタなんて売ってないと思いますし、なにより工作そのものを楽しむということが大事なわけであります。まぁこのあたりは自己満足の世界なので、分かる人にしか分からんでしょうがね。
肝心の画質のほうですが、古い液晶なので今時のものに比べると視野角、発色の点では不利ですが、一応TFTなのでそれなりに綺麗で、PCを繋いでSVGA(800x600)で表示させればエッジもクッキリしていて、普通のPC用液晶モニタとしても十分に実用のレベル。パネル自体は800x600ですが、A-100KでXGA(1024x768)エミュレーションしてくれるので、無理矢理XGAで表示もできます。細かいところは潰れてしまいますが、文字の判読は可能で、意外と実用的でした。S映像の画像は色が淡い印象を受けますが、ノイズ対策後は思いの外クッキリしており、綺麗です。コンポジットビデオ入力はさすがにボケますが、これは信号の規格上仕方ないことでしょう。ということで、全体としては満足の行くレベルでした。ただ、画質についてはLCDパネルによってかなり異なると思うので、違うパネルを使えばまったく違った印象になるでしょうね。
もう一つのキットのA-200Kは、SONYのVAIOに添付されていた特定機種専用液晶モニタ(のジャンク)を使って15インチLCDのスピーカー内蔵のものを作る予定ですが、この話はまた後日ということで。
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