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〜お茶の間PC環境の構築〜


アナタのPCにはテレビアウト端子が付いてますか? テレビアウト端子とは即ち、ビデオ入力端子が付いている家庭用テレビにPCの画面を映せる端子です。これが付いていれば、オリジナルビデオ作品のタイトルなどや、エンディング、スタッフロール等作成してビデオに記録することができたり、PCでしか遊べないゲームを家庭用大画面テレビで遊べたりするわけです。

 しかし、テレビの画質はPC用のRGBモニターと違い、解像度の低さがネックとなります。我が10年前のソニーの19インチテレビではSVGA(800x600)でもシステムフォントの判読が困難でした。VGAでの常用がやっとのレベル。しかし、最近のデジタル補正高画質大画面テレビの登場でかなりテレビアウト端子での接続が実用的なレベルに到達したのです。S端子で接続すればSVGAでの常用はさほどストレス無く行うことができます。XGAとなるとちょっときついですが、SVGAでもお茶の間PCとして使うには十分実用的。大画面でやるPCゲームってのもなかなか迫力があってよろしげです。お手持ちのPCにテレビアウト端子が付いている方は一度テレビに接続してみてはいかがでしょう?

尚、最初にお断りしておきますが、アナタがこの記事を参考にPCを改造して失敗したとしても私は一切の責任を負いませんので悪しからずご了承のこと。特に今回の改造対象「SAHARA2000」は元々企業向けPCなので会社などで使われているケースが多いと思います。くれぐれも会社のマシンを改造しようなんて思わないように。壊しても知りませんよ。


今回の生け贄FIC SAHARA2000 コンパクトPC)

今回、あるルートでFICSAHARA2000使用のコンパクトPCを入手することができました。KatmaiまでのSlot1 Pentium!!!に対応、メモリスロットx2、3.5インチHDDx1、薄型FD、ノート用薄型CD−ROM搭載しています。PCIスロットx1、PCI/ISAスロットx1搭載しており、筐体サイズの割にはなかなか拡張性が高いです。ビデオチップはATI Rage LT pro (VRAM 4MB)オンボード、サウンドはCIRRUS LOGIC社のCS4280オンボード。intel の10/100BaseLANもオンボードで載ってます。

しかし、テレビアウト端子は付いてません。せっかくのコンパクト筐体で、お茶の間のAVラックに楽勝で入るサイズなのにテレビアウトが無いためにこのままではお茶の間PCとして機能できません。そこで今回、テレビアウトを増設してやることにしました。


ATI社 Rage LT pro

 テレビアウト端子を付けるためには、「テレビアウト端子付きのビデオボードの増設」、という手も考えられますが、こういうオンボードでビデオチップが載っているPCの場合、PCIスロットにビデオボードを増設しても、増設ボードをプライマリとして認識するという保証はありません。起動時からテレビに映らなければダメなのです。それにせっかくAGPで内部接続されているこのビデオチップを殺してまでわざわざPCIのビデオボードを増設、ってのもスマートではないですね。お金もかかりますし。

 このSAHARA2000オンボードのビデオチップ「ATI社Rage LT pro」にはテレビアウト機能がオンチップで用意されており、これを利用しない手はないでしょう。2つしかない貴重なスロットも消費せず、お金も(ほとんど)かからない実用的な改造です。

R1 422Ω
R2 75Ω
R6 330Ω
C3 82pF
C4 470pF
L1 不明
L2 1.8μH

テレビアウト端子を増設するにはチップのピンアサインがわからないといけません。今回極秘(笑)に入手した資料によると、上記のようにR2SET,A2VDD(電源),Y/Red,G/Green,Comp/Blue,Comp Syncという端子がテレビアウト用にチップに設けられているようです。チップからこれらの端子を引き出して上の回路を付加すればめでたくテレビアウト端子の増設と相成る訳です。

「Y,C」がいわゆるS端子、「Comp」がコンポジットビデオ端子ですが、Y/Red、C/Green,B/Blueとなっているのはどうやら15KHz(?)のRGBモニター用に同じ端子を共有しているようです。どうやって双方を切り替えるのかは謎ですが・・・・。しかし、ヨーロッパと日本ではこの規格が違うらしく日本の15KHのRGBモニターには映せないらしいです。詳細をご存じの方、教えてください。Comp Syncという端子はその15KHzRGB端子を使った場合のSync端子のようです。

ちなみに調査したところ、R2SETは信号の出力レベルを決定するための端子のようです。デフォルトでR1=422Ωとなっており、特に手を加える必要はありませんでした。また、A2VDDも電源ラインと繋がっており、手を加える必要はありませんでした。また、Comp Sync端子は15KHz(?)RGB接続するときに使う端子なので今回は無視。

従って、今回のテレビアウト端子増設に行う改造としてはY/C/Cpmp用の回路を付加するだけです。


ビデオチップのピンアサイン

Rage LT pro のパッケージを裏側から見た図はこんな感じです。

足が多く、表面実装タイプなので回路を追うのが非常に困難。

今回の目的のY/C/Comp端子はそれぞれN1,N2,N3にアサインされています。ちなみにComp SyncはP2です。

そこで、N1〜N3端子をマザーボードから取り出して前記の付加回路を付ければ完了です。

N1 Y/Red
N2 C/Green
N3 Comp/Blue
N4 R2SET
P1 A2VDD
P2 Comp Sync

しかし、ピンアサインが分かったとしても、目的の端子(N1〜N3)はチップの裏側に隠れており、マザーのどこから取り出すか解析するのは非常に困難。単純に裏側に信号が出ていれば楽勝なのですがそうはなっていません。

つまり、チップを剥がさないとその下の配線がどうなっているか分からないのです。しかし、今回は首尾良くチップの剥がされたマザーを、ある方の協力で見ることが出来ました(感謝!)。

それによると、信号取り出しポイントはこの図のようになります。これはSAHARA2000のマザボの裏側の写真です。


いよいよ増設テスト!

とりあえず、コンポジット端子のみで動作確認することにしました。

信号取り出しポイントN3から上記回路図の如く付加すれば良いわけですが、コイル、コンデンサはノイズ対策と思われ、動作確認にはとりあえず不要でしょう。面倒なので75Ωだけ付けてテレビに繋げてみました。

しかぁし・・・

ダメでした。繋げたテレビをまったく認識しません。そこで考えてみました。一体どうやってビデオチップはテレビアウト端子にデバイスが繋がっていることを認識するのでしょう? 資料によると75Ωでdouble terminateされていることが条件のようです。一般のビデオ機器は75Ωで終端されており、信号線が75Ω並列=37.5Ωで接地されていることでデバイスの接続を認識するということでしょう。試しにテレビのビデオ端子をテスターで調べましたがきちんと75Ωとなってます。おかしいですねぇ・・・・。

きちんと全部の回路を組んでいないからも知れません。そこで回路をこうしてみました。

N1〜N3をショートしてひとまとめにして75Ωで接地。これをテレビに繋げました。なぜこんな接続にしたかと言えば、単に75オーム抵抗の手持ちが1つしか無かったためだったりしますが・・・。欠点といえば、2つの出力系統を混合してしまうために信号の出力レベルが2倍になってしまうこと。ですが、映るかどうかテストするだけなのでまぁいいでしょう。


やりました!

普通のソニー19インチテレビにPCの画面が映りました! 2系統混合なので輝度がやけに高いですが、きちんと回路を組めば解決されるはず。とりあえずドライバ上で輝度調節できるので応急処置は可能。

WINDOWS98の画面のプロパティの詳細設定画面です。

見事にテレビを認識しています。起動時からのテレビ表示も出来、BIOS設定もテレビ上で可能。どうやらテレビアウトにデバイスを認識させるためにはY,C,Comp全てを75Ωで接地した上で、75Ω終端のデバイスをこれらの端子に接続する必要があるようです。


仕上げ

その後、パーツを調達してきたので仕上げとしてY,C,Com端子を個別に75Ω終端し、82pFを2本ずつと、1.8μHのコイルを取り付けました。回路図は前述の図の通りです。


コネクタ増設

外に出すコネクタですが、コンパクトな筐体のため、穴を空けて端子増設というわけにはいかないようです。幸い、COM/IrDA端子増設用のD-SUB9pのコネクタが取り付けられるようになっていたのでここを利用することにしました。

テレビアウト端子だけだったらY,C,Comp,GNDだけ取り出せればいいはずなので4ピンあれば十分なのですが、今回はわざわざD-SUB 15p(3列)を使用しました。理由は後で分かります。ちなみにD-SUB15p3列コネクタはCRTモニター用と同じコネクタなので間違えないように本体側をオスとしています。


変換ケーブルの製作

D-SUB 15p 3列からS端子とコンポジットビデオ端子を取り出す変換ケーブルです。ケースの右側に見えるのはD-SUB 15pメスコネクタ、すなわちサウンドボードに付いているコネクタと同じやつです。

察しのよい方はお気づきかと思いますが、これは将来のゲームポート増設用なのです。幸い、ゲームポート用端子は12pで事足りるので15ピンの増設コネクタの中にテレビアウトと同居させることが可能です。

ノイズという点ではテレビアウトと同じケーブルの中を通すのはあまりオススメできることではありませんが、増設端子スペースの都合でを一つしか設けられないので仕方ないです。


最新テレビの実力は?

SONY KV-29DR1

最近のデジタル技術の進歩で、地上波でもハイビジョンに近い高画質が得られるテレビが登場しました。DRC(Digital Reality Creation)という技術でデジタル処理で走査線の間を補完し、地上波の4倍相当の高解像度が得られるらしいです。確かにこれはすごい! 家電店で他のモデルと画質を比べてみてください。ハッキリ言って全然画質が違います。プレステ用AVマルチ(15KHzRGB)コネクタも装備されており、言うこと無し。(コネクタはプレステ専用ですが、変換ケーブルを作れば一般の15KHzのRGBデバイスが使えます)

こいつのS端子に繋いだときの画像が右の写真です。画面中央付近にアイコンを置いた写真ですが、システムフォントもかなりクッキリ! SVGA(800x600)モードですが、十分に文字が判読可能。 SVGAでの常用はほとんど問題なさそうです。ただし、平面ブラウン管の弱点とも言えるのですが、周辺に行くとさすがにボケます。なぜか分かりませんが、画面左下のボケが大きいようで、この位置では文字の判読は困難です。まぁ、主に使うのは画面の中央付近なので多少の周辺のボケは目をつむることにします。

ちなみに私は基本的にソニー嫌いです。理由はすぐ独自仕様に走ることと、すぐ壊れること。よく「一年タイマー」と言われ、保証期間が切れる頃に故障するという話は超有名です。しかしモニター、テレビは別格。経験的にモニター、テレビは結構丈夫ですし、他のメーカーに比べて技術力、品質も高いです。とはいえ、一応ソニーなのでショップの5年保証に入ってしまいましたが・・・(笑)。


総評+予告

最新テレビとの組み合わせにより、かなり実用的なお茶の間PCができあがりました。大画面なのでアクション、シューティングゲームも迫力満点! PCもゲーム機感覚で使用することができます。LANも装備しているのでファイルサーバーである旗艦と接続して、Win98SEのネット接続共有をすればインターネットにも使えますし、なかなかイケている環境です。

さて、完全なお茶の間ゲームPCとするためにはゲームポートが欲しいところ。最近はUSBでジョイスティックも気軽に使えるようになりましたが、我が家にあるゲームポート用ジョイスティックを繋げたいところです。「ある物は利用せよ! 無きゃ作れ!」を信条としている私なのでなんとかして増設しようと思っています。

これがサウンドチップ(CIRRUS LOGICCS4280)です。

メーカーサイトに仕様書がPDFで配布されており、ゲームポートの回路図も記載されています。

その通りにやればゲームポートの増設ができるのですが、どうやらこのSAHARA2000では該当ピンがGNDに接続されていたり、プルアップされていたりするようなので一筋縄では行きません。これらをカットする必要があるのですが、パターンはチップの下に隠れており、切断するためにはこの足の間隔が狭いQFPパッケージの足を跳ね上げる必要がありそうです。かなりの気合いを入れないと辛いですね。


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