アイオーデータ機器「SC-UPCI」とABIT社 「BH6」 ABITのBH6マザーボードは格安でCPUのコアボルテージを設定可能なことがウリで、割とヒットした母板です。にがATシリーズでも、マークII、III、IV、VIの実に4台がBH6マザーで組まれています。しかし、このマザーはスロット関係の相性問題が激しいボードでした。本来どこに挿しても良いはずのPCIの拡張ボードが何番目に挿さないとまともに動かなかったとか、そういう話はいくつも聞きます。
今回のネタである、アイオーデータのSCSIボード「SC−UPCI」もそんなBH6マザーとの相性問題が生じた不運のボードの一つでした。ちなみに最初にお断りしておきますが、このSC−UPCIはその後設計変更され、現在販売されているリビジョンでは相性問題はクリアーされていると思います。その点誤解の無いようお願いします。
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1998年、12月購入。当時の値段9650円。ちなみにこのパッケージには「SCSIインターフェイス出荷枚数100万枚突破!!」って書いてあります。100万枚の理由として「抜群の安定性、ハイコストパフォーマンス、確かな接続性、万全のアフターケア」って書いてあります。そりゃすごい。BH6とも「抜群の安定性」をもって使えて、万が一動かなくても「万全のアフターケア」でサポートが期待できるってことですね? 自作系ユーザーもこれで安心して購入できるってもんですな。 |
当時(1998年暮れ)の私はAOpenのAX6BCマザーの組み立てATとFMVのユーザーでした。AX6BCにはAdaptecのAHA-2940AUを挿して、FMVの方にSC−UPCIを挿していました。FMVではとくに問題なくSC−UPCIは動いており、M君からのMarkII制作依頼の時に、クロックアップに向いているという理由でBH6を、SCSIは動作不良時のサポートで安心という理由で、アイオーデータのこのSC−UPCIを購入するように指示しました。それが間違いの始まりだったのです・・・・。
まだマシン組み立て歴の浅かった私はまぁそれなりにトラブルをクリアーして組み上げを完了。全てのデヴァイスが正常に動いていることを可能なことを確認し、できあがったマシンをM君に引き渡したのです。しかし、組み上げて翌日、M君から泣きの報告。「起動時にモニターの電源が落ちる」というのです。でも一度リセットすると動くし、電源を切った直後は普通に起動できるということでした。でも電源を切って10分くらいするとまた同じ症状が起こるとも言っています。私はOSレベルの不具合を疑い、とりあえずM君にOSの再インストールを試みるように指示しました。しかし帰ってきたM君のメールは・・・
「悲! モニター不動」
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症状的には「起動時にモニターの電源が落ちる」ということでした。察するに、モニターへのビデオ信号の出力が途絶えて省電力モードに入り、モニターの電源が落ちているということでしょう。私は症状から考えて、ビデオボードとマザーとの相性あるいは、ビデオボードそのものの不良を疑いました。いろいろ解決策を考えて、ビデオボードの交換も考えました。次のM君のメールは・・・。
「劇悲! モニター不動」
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ということだったので、M君の家に行き、手持ちのビデオカードを2枚持参し、スロット差し替えを試してみることにしました。ビデオカードを他のものに変更して再起動。しかし、相変わらず起動時にモニターの電源は落ちます。これで犯人がビデオカードでないことが分かりました。こういう犯人が分からないものがあったら最小限の環境で起動してみるというのが基本。とりあえず、外せるものは外してみました。システムは最低限、ビデオカード、CPU、メモリ、HDDが付いていれば動きます。これら以外を切り離して起動。今度はバッチリ。そこで、外したものを一つずつ加えていって不具合が起こるかどうかを検証してみました。
犯人はおまえだ!(じっちゃんのナニ掛けて) そう、犯人はSC−UPCIでした。これを付けると不具合が生じ、外すと解消されるのです。間違いありません。犯人はこいつです。じっちゃんのナニかけて。とりあえず、BH6はスロット相性の大きいマザーということは知られていたので、SC−UPCIを挿すスロットをいくつか試しました。一番下のスロットに入れたときにこの不具合が起こらなくなりました。その日はそれで作業を完了。とりあえず、普通に起動できるようにはなりました。翌日のM君からのメールでは・・・
「祝! パソコン正常起動」
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一日経っても症状が再現されないようなので、私はこれでうまくいったと思いました。スロットの相性だと結論して、とりあえずサポート終了だなと。
しかし、年を越した1月12日のこと・・・・。
「再燃!モニター不動」
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かなり、参りました。私の手には負えないトラブルのようです。しかし、原因SC-UPCI にあると分かったので、「万全のアフターケア」をもってサポートするとパッケージで宣言しているアイオーデータのサポート係に期待することにしました。
ニフティサーブでは、「SIODATA」というアイオーデータのサポート専用のフォーラムがあります。普通のサポートと違って、ここでは「会議室」という公開掲示板のようなものに不具合情報を書き込み、サポート係がそれに対する返答を書き込むというスタイルです。不特定多数の会員が閲覧できる状態になっていて、過去に起きた不具合情報やその解決法等を調べることが可能です。また、サポート係から返事が貰えないということも皆無です。何しろ他の会員の目がありますからね。さて、そこのSCSI関連の会議室で、この不具合について調べてみました。するとあるわあるわ、さかのぼると4ヶ月前からこの不具合は報告されています。ということは、アイオーデータはこの不具合があると分かっておきながら4ヶ月ものうのうと店頭で売っていたということになります。とりあえず、SIODATAにクレーム書き込みをすることにしました。
「アイオーデータサポート係様」
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結構辛口です(^^;。私がパーツ選定と組み立てをした他人のマシンでの不具合なので、責任が私にあるからです。得られた返答は
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ということでした。「待つか他社製SCSIボードを使うしか無い」とのことです。おいおい、簡単に言ってくれる。貧乏ガクセーであるM君にとって1万円近くするSCSIボードは高いのです。簡単にパーツを買い換えるなんて出来ません。待つと言っても、最初に報告されてから4ヶ月も経っているのです。いつまで待ったら結果が出るのかも分かりません。
ちなみに今現在では、パッケージの表記は改善されてません。つまり現在ではアイオーデータのデヴァイスは組み立てATマシンでも動作するということを保証していると考えていいと思います。
とにかく、買い換えるように勧めている以上、返品くらい応じて貰わないと困るというもの。そこでさらに辛口の書き込みを・・・。
> 調査が長期にわたり、お客様にはご迷惑をおかけ致している次第でご |
私も正論ぶちかまして実にヤな野郎ですね。こんな書き込みに返事をしないとならないサポート係様には申し訳ないですが、ご愁傷様です。しかし今までの会議室の書き込みを見るとみなさんの書き込みが実に甘いのです。自作系の人たちって奥ゆかしい人が多いのか、相性が悪かったらそのパーツを選んだ自分が悪いと思って泣き寝入りする傾向があるようです。でも、消費者としてこれくらいは当然の主張、権利だと思いません? で、得られた返答は・・・・。
この件につきましては、電子メールにてお答え致します。
電子メールをご覧下さいます様、お願い致します。出ました。メールです。公の会議室では書くとまずいことでもあるのでしょうか。まぁ、メールなので内容は公開しないことにしますが、書いてあることとしては「返品に応じる」ということでした。私的には勝訴が確定したわけです。しかし、このサポート係の対応に対して、ニフティの会議室では他の同様の不具合を抱えたユーザーの不満が爆発していました。「なんでメールなんや!」って。当たり前ですね。しかし私としては、M君のSCSIボードさえなんとかなれば良かったので、それ以上会議室に書き込むことはやめましたが。ズルいとは思うけど。
ということで、この一件は解決。とりあえず、M君にサポート係からメールされた返品の方法を伝えてサポート完了としました。
ところが、ほとんどその直後に原因が発覚。アイオーデータから正式に以下のようにアナウンスされました。
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どうやら、原因と対策方法が分かったようです。SC-UPCIそのものではなく、BH6の仕様上の問題ということになっていますが、その他のSCSIボードでは問題が発生しない以上、修理には応じるということです。まだ返品してなかったM君にはどちらでも可能との旨メールしておきました。どうするかはM君次第です。今度こそサポート終了。
相性問題 再び・・・ その後1年以上経過。この一件も私の中からすっかり忘れ去られようとしていたある日、MarkVIでこのSC-UPCIを使わなければならない状況が生じました。それまでSC-UPCIはMark Iで使っていたのですが、RAID化でいろいろスロット相性が生じてきて、まともにSC-UPCIが動かないことが出てきたからです。そこで、Adaptecを付けていたMarkVIとボードを交換することにしたのです。
そこで私は上の一件を思い出すことになるのです。そう、Mark VIはBH6マザーです。再び相性問題でモニターの電源が落ちてハングアップするという症状が現れました。しかし原因は分かっています。そして対策方法も分かっています。早速ニフティのSIODATAでサポート係に報告です。速攻で、修理するから製品をメーカーまで発送して欲しいとの返事がありました。1年の保証期間は過ぎていましたが、当然、無料です。
しかし、発送して帰ってくるまでの間SCSIが使えないのが困ることもあります。簡単に修理できるものであれば自分でやってしまった方が速い。一応サポート係に修理法がジャンパなどの簡単な半田付け程度だったら「自己責任」でやるからやり方を教えて欲しい、と書き加えておいたのですが、無視されました。まぁ、サポート係としては賢明でしょう。もし、相手が大して半田コテを握ったことの無い人間だったら、失敗してクレームを付けられるのがオチですからねぇ。
でもまぁ、どっちにせよ無料ですから、この際送ってしまうことにしました。もちろん送料は着払いで。製品は一週間ちょっとで返送されてきました。
その修理伝票 |
使ったパーツはなんと0Ω抵抗一本。ってことはジャンパ線一本で修理可能ってこと。なんだ、簡単ぢゃん。 |
帰ってきた製品
パッと見は何も変わっていないように見えるが・・・。
赤丸のところに問題の0Ω抵抗が付いていました。ここをいじっただけなのでしょう。 帰ってきたSC-UPCI をMarkVIに繋げて起動。うむ、一発で起動する。当たり前だけど。確かにアイオーのサポートは素晴らしいよ。こんな辺境のユーザーのイチャモンに大して往復送料(約3千円)無料で修理してくれるんだから。たとえ製品が素晴らしくなくても。
で、自分のマシンでこうやって解決した旨、M君にメールしました。すると、なんとM君は未だに返品なり修理なりせずに起動時にハングアップするマシンをいちいちリセットして使っているというではありませんか!!! おいおい、あんなにオレが悪者になってサポート係にイチャモン付けたっていうのに。あの苦労はなんだっんだ!?
こうなったらテメーで修理しよう! ということで、ある程度修理方法が分かったような気がするので、M君のSCSIを預かって私が修理することにしました。
まずは、対策品と非対策品の比較です。
M君のSC-UPCI。
パッと見はほとんど一緒。基板も同じで、「SC-UPCI-1 IOD82006」となっています。ちなみに現在販売されているSC-UPCIは別の基板になっています。SC-UWPCIがこれと近い基板を使っていますが、別物です。現在のモデルは当然BH6との相性問題は解決されているでしょう。
自分のSC-UPCI。対策済み品。 M君のSC-UPCI 。私の買ったモデルより微妙に後の製品です。
コンデンサが表面実相タイプになっていたり、クリスタルが小型化されているといった微妙な相違はありますが、基板や回路、チップは同じもの。
問題の修理箇所と思われる場所。
確かに違います。対策前ではここにはチップトランジスタが乗っています。ということは、こいつを外してジャンパ線を飛ばせば治るってことになりますかね。
対策前 対策後 数字は便宜的に私が付けました。@ABのパターンにはチップトランジスタが乗っていますが、こいつを剥がして@とBの間をジャンパすれば完了です。
トランジスタを剥がすときにはまず半田吸い取り線で、@〜Bの三カ所全部を吸い取っておき、ピンセットなどでチップトランジスタを引っ張りながらまず@の足にコテを当てて基板から剥がし、ついでA、Bを同様にすればOKです。くれぐれも無理に引っ張ったりしないように。スルーホール基板のパターンってのは割と脆弱で、無理な外力を加えるとあっさり剥がれます。ちなみに修理は自己責任で。この記事を見て修理して失敗してもわたしゃ知りません。
ジャンパはメーカー対策のように0Ωの抵抗を使ってもいいですが、スズメッキ線とか、抵抗の切れ端とか適当に使えばOKでしょう。半田でブリッジは距離的に難しいと思います。
さて、修理結果は・・・ オッケー。バッチリ一発起動できます。なんだ、簡単ぢゃん。メーカーサポートも最初からこう教えてくれれば無駄な往復送料負担せずに済んだのに。まぁ、自分が払ったわけじゃないから良いけど・・。
かくして、SC−UPCIと、BH6の激烈に悪かった相性は改善されたのです。めでたしめでたし。もうこの問題に悩まされることはたぶん一生無いでしょう。
最後にもう一度断っておきますが、今回修理した製品と、今(2000年3月)現在市場で売られているSC-UPCI は別物です。基板の設計からして全然違うし、おそらくBH6との相性問題は生じないように作っていると思います。その点誤解の無いようにお願いします。
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