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〜ソニーのCDプレーヤーを修理する その3〜


 SONY CDP-553ESD

 このプレーヤーを入手したのはかれこれ2年前になります(H14.10現在)。近所の巡回リサイクルショップのジャンク売り場に並べられていましたが一目で高級機であると分かりました。薄型スリムなデザインですが、ヘアライン入りの重厚な前面金属パネル。手にするとズッシリとした重量感。そして高級機の証であるESシリーズのロゴ。値札にはジャンク、再生不可と書いてありましたが、クリーニングで直れば儲け物だと考えて速攻で捕獲してきました。お値段は1500円。調べてみると、発売は1985年。定価は16万円だったようです。もう17年も前なんですね。

参考リンク:ソニーESシリーズCDプレーヤーについてのページ

http://isweb30.infoseek.co.jp/art/cdp101/esseries-main.html

 当時、復活をもくろみ、あれこれ試行錯誤していたのですが、レンズクリーニングに失敗して肝心のピックアップがやられてしまいました。なんとしてでも直したかったので、メーカーに補修部品としてピックアップを注文したのですが、すでに在庫切れとのこと。発売後の年数を考えると仕方ないかも知れません。しかし、このまま捨てるにはあまりにも惜しい機体。しばらく放置されていましたが、今回当サイトの読者の方からの補修部品の提供があり、悲願の復活と相成りましたので報告します。

とりあえず解剖

この機種は異様にネジが多いです。しかもネジがいちいち銅メッキされています。トップカバーを外すとこんな感じ。フレームは銅メッキされています。電源はトランス1つのようですが、金属のケースでシールドされています(左上の黒い箱)。
トッププレート

外したトッププレートをひっくり返した状態ですが、非常に重くて厚い金属でなおかつ両面塗装がされています。内側には防振用のスポンジみたいなのが貼ってありました。どうも塗装の下は銅メッキされているようで、塗装が剥がれた部分が銅色になっていました。

ボトムプレートやサイドプレートも同様の素材で同様の加工がされているようです。外装にも非常に気を遣って作られてますね。

メカ裏

ピックアップユニットはアルミダイキャストのベースに固定されており、移動機構はリニアモーターです。金属パーツが多用されているメカです。

リニアモーターは静かで高速なシークが特徴ですが、振動にはちょっと弱いですね。まぁ、そのためにも防振に気を遣って設計されているのでしょう。

トレイ破損

とりあえずトレイを出し入れしようとしたのですが、うまく動けない様子。この機種ではトレイのお皿の部分が下に下がってディスクを固定するようになっていたのですが、これが割れているために引っかかって下がりきれない状態になっていました。それなりに負荷のかかる部分のようですが、プラスチック製だったのがダメだったようです。この機体はほとんどの可動部分に金属パーツを使っているだけに、惜しい部分です。ちなみにまだシングルCDには対応していなかったようで、シングル用の溝がありません。

ここを接着剤で止めた上でテープで補修しておきました。トレイの上下はとりあえずこれでOK。

ゴムベルト劣化

さすがに古い機種だけあって、ゴムベルトが劣化してトレイの出し入れに難があるようでした。CD固定用の金具の上下でトルクが必要な構造のため、ここで引っかかってしまいます。まぁこんなのは定番故障ですから、定番のベルト交換で対処です。

トレイ出し入れ用にモーターが一つベルトが2本使用されていましたが、どちらも伸びていました。

補修パーツ

家電店に注文して入手。ベルトは他機種との共用部品らしくまだ在庫があるようでした。

品番

品名
4-908-591-01 クドウベルト
3-671-077-00

FFベルト

お値段は失念。ベルトにしてはやや高かったような…。

ベルト交換

ネジが多いため、ベルトの交換はちょっと面倒です。モーターを取り外す必要があります。プーリーをイソプロピルアルコールを浸した綿棒で掃除し、手の脂が付かないように交換しました。

以上でトレイの吸い込みはスムーズになりました。なかなか高速で静かな動きです。スー、カチャッ、という小気味よい出し入れ音で、高級感満点です。

レンズクリーニング

メカは正常に動作するようになりましたが、やはり再生はできないようでした。

本体からはほのかにタバコの脂のニオイがしますので、喫煙環境に置かれていたようです。

てなわけで定番のレンズクリーニングです。

表面だけでなく、内部もお掃除。しかしこれがマズかった…。無理な力が掛かってフォーカス機構を破壊してしまいました。ガーン。

何度も試行錯誤を繰り返したのですが、レンズが上がるところで十分に動けずにフォーカスが合わない状態になってしまいました。重力に負けてちょっとしか動けない様子。この時、外から力を加えてレンズを持ち上げてやるとディスクを認識して再生も可能でしたが、いちいち再生の度にそんなことをやってられませんよねぇ。

フォーカスコイルの断線をチェックしてみましたが切れてはいない模様。どこかに力を掛けすぎて形を歪めてしまったのかもしれません。軸に軽く556を浸潤させてみたり、フォーカスの強さを調整できないかと適当に半固定抵抗を弄ってみたりしましたが、全く症状の改善は無し。レーザーそのものが無事であるだけに惜しいのですが、パーツ交換するしか無いと結論しました。

で、ヤフオクなどでドナーを捜して222ESや338ESDを入手してみましたが使われているピックアップユニットは別物でした。まぁ、他のジャンク機を入手してしまうとまた直すべきジャンクが増えてしまうという問題もあり、新たにドナーを入手するのは自分としては不本意でした。よって、ちょっと高くてもメーカーから補修部品として取り寄せようと注文してみましたが既に在庫切れとのこと。万策尽きてこの機体はお蔵入りとなってしまいました。

ちなみに聴く所によると、このピックアップはメーカーでは既に1994年以降供給不能になっているそうです。それでも製造後9年ですから、法律で定められた最低保有年数6年を十分経過しています。15年以上経過した現在、入手できないのは仕方ないかも知れません。


交換用パーツ入手

約2年もジャンク部屋に眠っていましたが、なんと当サイトの読者の方から、553ESDで使えそうなピックアップを提供します、という嬉しい申し出がありました。元々333ESDのもののようですが、互換性はありそうとのこと。

お話を聞くと、どうやら、トレイ出し入れのモーターが死亡しており、さらにリニアモーターのコイルが断線してシーク不能という故障らしく、ピックアップ自体は生きている模様。近日中に捨てる予定とのことなので有り難く頂戴することにしました。

ピックアップ交換

届いたパーツですが、左側のコイルが断線していました。ひじょーに細い線で、手作業で直すのは大変です。

553ESDのコイルがそのまま使えるのでピックアップが取り付けられているアルミダイキャストの部分で移植することにしました。リニアモーターのコイルの配線x4本を切断しないように注意深く外し、さらにできるだけピックアップが静電気にさらされないよう、フレキを解放する時間を最小限にするよう心がけました。

移植後は若干の調整で安定してCDが読めるようになりました。CD−Rも問題ありません。

ちなみに553ESDと333ESDでは、制御基板が異なるので、ピックアップ以外の互換性は無いようです。


内部の紹介の続き

さて、完全に復活しましたので、内部の紹介の続きをします。

アナログ回路部分ですが、ESシリーズお約束のLR対称回路になっております。

音響用の高価そうなケミコンがふんだんに使われています。1985年前後の製品なので、バブル期にありがちな吹きやすいコンデンサではないと思いますが…。

DAC
バーブラウンのPCM53JP-Vという石が2つ使われています。

For Audio

ELNAのAudio用コンデンサ。赤いやつも音響用です。パーツ屋で買うと結構高いんですよね。

背面端子群

アナログ出力は2系統。固定と前面のボリウム端子と関連した可変の2つです。

前面のヘッドフォンボリウムツマミはモーターが仕込んであり、リモコンで動かせます。このあたりは338ESDと同じです。

デジタル出力は同軸のみ1系統。スイッチが付いていますが、FOR AUDIO USEとそうでないものの違いって何なのだろう??

操作パネル

操作パネルは必要にして十分な機能。ダイレクト選曲20キーは昔のソニーではESシリーズでなくても中堅機以上に付いていました。素早く目的の曲に飛べてイイ感じです。ちなみにPROGRAM / SINGLE / CONTINUE のキーはそれぞれ赤、オレンジ、緑のLEDが仕込まれており、各モードで点灯します。

現在のCDプレーヤーでは省略されがちなINDEXキーがあるところが何となく時代を感じさせます。確か、ほとんどINDEX信号を使ったCDは出なかったはず。

ダイレクト選曲20キーに対応したマッピング表示がされます。全部で何曲か、今何曲目かが直感的に分かって便利ですね。


総評

テストプレイでは一枚だけ音飛びの激しいCDがありましたが、それは台湾で買った品質の悪い物であったようで、その他のCDは順調に再生されました。問題なさそうなのでラックインさせてデジタル同軸出力をアンプに繋げました。ほとんど毎日使っていますが、非常にイイ感じで鳴ってます。

私はオーディオマニアではないので微妙な音の違いには無頓着なのですが、デジタル同軸ケーブルの品質があまりにもアレ(極細ビデオ用ケーブル)なので今度ケーブルを自作してみようかと思ってます。BBSでの話で出ていましたが、テレビのアンテナ用同軸ケーブルでの自作が安い割にイイ感じだということです。

ということで、最終費用=3000円ちょっとかな? メインのCDプレーヤーとして末永く愛用したいと思います。部品を提供してくださったTさん、ありがとうございました。


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