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〜TOSHIBA VTR A-E50 をニコイチで修理する〜


東芝 S-VHS Hi-Fi Video A-E50

 当サイトでは初めての東芝機であると同時に初めてのいわゆるニコイチを行った例を紹介します。今までも診断目的でニコイチを何度かやってきましたが、今回は駄目な部分はダメと割り切り、壊れた2台から動作する1台を作り、動作しない1台は部品取りとして保管する事にしました。動作しない方はかなりイヤな故障をかかえており、二台とも動作させるようにすることが困難と判断したためです。

今回の獲物は、半年程前に後輩に修理依頼されたもの。バブル期の東芝製ですが、再生時にカラーノイズが盛大に発生し、鑑賞に堪えないとのこと。

全面ヘアライン入り金属製シーリングパネルがあり、高級感はかなりのものです。定価は15万円くらいしたはず。電源ケーブル年代測定法によると、1989年の作品のようです。バブル時代真っ盛りという感じですね。蓋を開けたときの操作パネル系もそれなりに豪華で、前面入力端子や、基本操作系はだいたい網羅しています。しかし、時計合わせは、なぜか本体だけで出来ません。リモコンが必要です。

故障状況

再生画像はこんな感じでした。赤、青、緑の横線のノイズが無数に見られます。非常にチラチラとうるさく、とても見ていられません。

録画時にもノイズが記録されてしまい、再生、録画ともに使い物になりません


メンテナンス開始

ということで、早速調べてみます。まずはメカ系から。バブル期の東芝メカというわけですが、まぁ、ありきたりな鉄板プレスのメカですね。速度も遅めで、耐久性も並。別段特記すべきこともないメカです。

ヘッドですが、デッキは高級機らしく、フライングイレースヘッド搭載でした。

裏側

さて、メンテのためにメカ裏側にアプローチしますが、裏側が全部基板で覆われており、メンテナンス性はあまりよくないです。基板を剥がさないとならないです。結構基板の枚数は多いデッキです。合計4枚。松下デッキあたりだと、基板にサブ基板をぶら下げる構造ですが、このデッキは平面基板を本体上下に張り付けた構造でした。どっちがメンテしやすいかは微妙なところですが…。

メカ裏

基板を剥がしてメカ裏へ到達。まぁ、特になんと言うこともないメカですが、ゴムベルトはここに映っているものの他にローディング用にもう一本、合計3本使われています。ゴムだから必ず劣化するんだよなぁ…。

不具合その1

このデッキは再生画像もアレですが、走行中とつぜん止まることが頻繁に起こるとのこと。メカ系異常もあるのでした。

調べたら、このキャプスタンモーターの樹脂製プーリーにクラックが入っており、取れ掛かっていました。とはいえ、バラバラにはなっていないので、とりあえずエポキシ接着剤でこのように固めてしまいました。これで取れたりしないでしょう。

動作確認ではこれで一応走行OKとなりました。

不具合その2

この時代の三菱機、シャープ機に多い故障ですが、東芝機も例外ではありませんでした。キャプスタンモータードライブ回路の電解コンデンサが噴いていました。半田コテを当てると、なんとも言えないイヤな臭いが漂うので、「あ、噴いてるな」と分かります。今のところ動作に支障はないようですが、手持ちの新品に交換しておきました。


単体修理は不可能?

で、問題のチラチラするカラーノイズですが、映像関連基板の電解コンデンサが原因かと推測し、穴が空くほどコンデンサの一つ一つを観察しました。しかし、いずれのコンデンサにも噴いている様子を認めないのです。目に見えない容量抜けかも知れません。一つ一つコンデンサを交換して行くという手段は考えられなくもないですが、何しろ数が多く、とてもやってられません。

そうこういじっているうちに、何故か電源基板上のヒューズの一つが切れました。最初は軽く考えてヒューズを取り替えてみたのですが、電源をプラグに差し込んだ瞬間また飛びました。ぐはぁ〜。どこか回路系に破綻を来したようです。何かが接触して回路ショートしているのかと思って、観察しましたが分からず。どこの回路に原因があるか不明なので単体での修理は無理と判断、ジャンク品を利用したニコイチ(二個イチ)へと作戦変更せざるを得ませんでした。

待つこと数ヶ月。ようやくメカ異常の同型機をオークションで発見し、ゲット成功しました。お値段2100円+送料云々。ジャンクの値段としてはあまり安くはありませんが、メーカー修理に出すことと比べれば明らかに安いでしょう。

ニコイチ作戦開始!

とりあえず電源ヒューズが飛ぶ故障と、チラチラノイズが乗る故障の2つを抱えているわけで、この2つの病巣を取り除かないとなりません。が、一体どこの部位に病巣があるのかが分からないのです。

ここは試行錯誤でジャンク機と故障機でパーツを入れ替えて検証するしかありません。

ここでイヤなのはヒューズが飛ぶ故障の方です。動作検証でヒューズが飛んだ場合、また新しいヒューズを取り付けないとならないのです。ヒューズにもお金がかかりますし、何しろそんなに手持ちがあるわけではありません。慎重に組み合わせを考えて検証しないとなりませんねぇ。

つーことで、とりあえずジャンク機をバランバランにしました。

メカのスワップ

メカ系ですが、2つの機体の良いところを組み合わせて状態の良いメカを作り上げました。ベースは故障機、ヘッド系はジャンク機の方がまともだったのでそれぞれ寄せ集め。ちなみにジャンク機はメカがまともに動きませんでした。ベルトが滑っているような印象でしたが、まぁ今回は2台とも直すつもりがないので放っておきます。
基板のスワップ

いろいろ検証したところ、どうもヒューズが飛ぶ原因はフロントパネルのFL管が取り付けられた基板にあるようでした。かなりこの検証には疲れました。何度途中で投げ出したくなったことか。何度も基板の取り替えで試行錯誤しました。検証に失敗すると虚しくヒューズが飛ぶのですよ。一瞬で…。

で、とりあえず電源が切れない状態へは持って行けたので、2枚の映像関連基板をスワップしてみましたが、問題のノイズは消えず。どうやら映像基板に病巣は無いようです。

犯人はお前だ!(じっちゃんのナニかけて)

そこで電源を入れ替えてみました。見ての通り、オリジナルの方がかなり綺麗で、ジャンクのはかなり汚い。交換するのは非常にはばかられましたが、残る疑いは電源のみですのでこの際仕方ないです。思い切って交換しました。

ちなみにこのとき電源をプラグに繋いだままドライバーを差し込んでしまい、部屋のブレーカー落としました(^^;;。幸い感電はしませんでしたが、疲れているとこういうミスをしてしまいますので、ある程度休み休み作業することも必要ですね。

で、交換したところ見事にあれだけ五月蠅かったノイズは消えました。鑑賞には全く問題なしです。ようやく2台の故障機から完全に動く一台が抽出されました

とはいえ、おそらく電源基板の電解コンデンサはバブル期特有の劣化しやすいものを使っているのだと思います。今回移植したジャンク機のものはまだ正常に動くようですが、将来的には同様の故障を起こすことが考えられます。できれば予防的にコンデンサの張り替えをしておいたようが良いような気がします。

今回犠牲になったヒューズたち。はかない一瞬の花火を見せてくれました。南無〜。

このヒューズが飛ぶ故障さえ無ければ2台の動作品を作ることもできたと思いますが、残念です


機能の紹介と総評

一台の動作品ができましたので動作確認です。割と絵は綺麗でした。
似非アナログメーター(笑)

この機種の最大の特徴はこの「似非アナログメーター(勝手に命名)」です。モノは完全にデジタルの音声メーターなのですが、敢えてアナログの針を意識した作りになっています。まぁ、それだけなんですけどね。
それなりに豪華なパネル内部

フロントパネルです。当然ヘッドフォン端子や録音レベル調整も付いています。さすがバブルデッキです。このデッキは「レンタルポジション」というスイッチが搭載されています。発売されたのはレンタルビデオ普及期ですからね。松下も「れんたろう」というレンタルビデオを意識したデッキを販売していました。

で、このスイッチですが、ハッキリ言って子供だましです。今時の3D Y/C分離に伴うデジタルNRに比べると屁でもない性能。というか、スイッチを入れてもどう良くなったのか分からないです。

背面端子ですが、それなりに豪華です。まだ、S-VHSデッキがそれほど一般的でなかった時代ですが、ちゃんと出力を2系統出しているのはかなりの高級機である証かと。松下デッキだと、入出力1系統しかなかったはずです。


チューナーはUHFとVHFが分離しており、時代を感じさせます

リモコンはあまり使いやすくないです。この時代はゴッツいリモコンが結構流行ってました。デカくて高性能なリモコンがもてはやされていましたからね。さすがバブル時代と言いたいところですが、このリモコンは片手での操作をあまり考慮されていません。使いにくいです。


ちなみにリモコンに時計機能があり、常に現在時刻を表示しています。従って、本体の時計合わせも転送ボタン一発で可能です。これはラクチンだ。日常的に使う機能じゃないですが…。

ということで、作戦終了。半年間に及ぶ闘いにようやく終止符を打てました。これで依頼主の後輩に引き渡すことができます。不動のジャンク機が一台余りますが、こいつも後輩に押しつけてしまおう(^^;。直しようもない機体ですが、部品取りとして保存しておく価値はあるでしょう。次に壊れたときの動作検証にも利用できますし。

修理費用は2100円+送料云々+コンデンサ50円程度でした。合計4000円弱。かなり手間はかかりましたが、コストパフォーマンスとしては悪くないと思います。


2001.01.20追記

ノイズの発生源は電源であると明らかにはなりましたが、コンデンサが原因とはハッキリしていません。そしてコンデンサが原因だとすると、対策を施していないジャンク入手の電源が将来的に不具合を発生させるのは避けられない問題となってしまいます。

よって、試しに不具合のあった故障機の電源のケミコンを張り替えてノイズが消えるかどうか検証してみました。いわば、死後の剖検みたいなものですね。

4700μF 25V 2個
1000μF 25V 1個
1000μF 16V 1個
100μF 16V 1個
220μF 25V 1個
22μF 16V 5個
ということで新しい上記のコンデンサをパーツ屋で調達。合計500円くらいでしたかね。だいたいそんなもんです。関係ないですが、近所のパソコンショップでなぜかケミコンのジャンク(といっても、袋入りの新品)が売っており、22μの16Vが200個で200円でした。ラッキーと思って一袋ゲット。普通に買ったら一つ15円くらいしますからね。4.7μとか10μとか、47μとかあればさらにラッキーなのですが、残念ながら22μしか無かったです。

外したケミコンですが、見た目で噴いているものはありませんでした。テスターで確認するも、テスター程度ではいずれも異常は認められませんでした。

で、全てのケミコンの張り替え完了し、本体に組み込みました。やはり故障機の電源の方が綺麗でよさげです。

して結果ですが、バッチリノイズは消えました。見た目で噴いていないコンデンサでもダメになっているモノがあるんですねぇ。油断大敵です。

ということで最終的な責任病巣は電源のケミコンであったと確定診断されました。めでたしめでたし。


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