Panasonic BS 内蔵S-VHS Hi-Fi Video NV-BS30S x2台
往年の名機シリーズ第16回です。松下のGメカを採用したS-VHSデッキはBX25で最後かと思っていたのですが、その一つ後のこのBS30SもGメカが採用されているという情報がありましたので入手してみました。この他にもBS50Sというほぼ同時期に販売された上位モデルもあるのですが、それはBX25のマイナーチェンジ版のようなもので、新設計の機種としてはこれが最終だと思います。某オクにて、電源入らず、リモコン付きにて3500円で落札。
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とりあえずトップカバーと顔を取って内部を観察します。見た目はBX25に近いようですが、基板の設計などは全く異なるもののようです。メンテナンス性は良くないです。特にカセコンの上に渡されている2本のフレキ。これ、最悪です。メカのメンテを上からするためには、このフレキを取る必要があるのですが、そのためにはわざわざ基板のネジを外してフレキを抜き取らないとならないからです。結構めんどくさいです。この設計は松下らしくないです。 |
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シスコン基板ですが、なんともこのデッキはパッチ当てが激しいです。このほかにも、あちこちにパッチが散見されます。 |
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まぁ、入手前から電源が入らないという条件でしたので仕方ないですが、確かに電源入りません。 原因は、スイッチング電源ユニットのケミコンかと思いとりあえず調べてみました。 足の腐りかけたやつもあり、とりあえずやばそうなのを交換してみましたが効果無し。もしかすると電源以外の故障かも? ちなみにBX25の電源とは違う物のようでした。よって診断には使えず。 |
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ということで、診断的ニコイチ目的で同一機種をもう一台ゲットしてみました。というのも、この時点では電源が入らない故障は電源そのものか、シスコンの問題か、判定できないからです。電源基板に出力電圧などがシルク印刷されているのなら良いのですが、サービスマニュアルが無いとどの段階で死んでいるか判りません。かといって、電源基板は高いので、確定診断される前に買ってくるのもややリスキーです。高い電源基板を交換しても直らなかったらショックじゃないですか。 ちなみに2号機はリモコン無しで2500円でした。こいつは電源が入るようでしたので、まずスイッチング電源ユニットを移植してみたところ、どうやら動くようです。よって責任病巣は電源基板上のどこかということになります。 さらに、どの部品が死んでいるのか確認するためにこの2つの電源基板でニコイチ診断することにしました。後で考えればやらなければよかったことなのですが…。 まず、ケミコンの移植。しかしNGのため、IC、トランジスタ、トランスまで移植してみたのですが、一向に電源が入る様子が無し。そこで外した方のパーツを組み上げて、テストしたところ、こちらも電源が入らない…。つまり2つの死亡した電源基板ができあがってしまったのです。ぐはぁ! 余計なことをしたばっかりにどちらも死んでしまいました…。後悔するも後の祭りです。 とりあえずお値段は高いでしょうが、電源基板を買ってくるしか道は無くなってしまいました。まぁ、責任病巣が電源基板であることが確認されただけでもヨシとしますか…。 ちなみに悪あがきとして、残った2つ分の電源基板のパーツをいろいろ組み合わせてみましたが、どうやっても動作する一枚の電源基板を作成することができませんでした。従って、後からもう一枚電源基板を注文する羽目に陥りました。あぁ、バカですねぇ。もう二度と電源基板に安易に手を出すまい、と心に誓うのでした。原因が電源基板であり、さらに原因がそこのケミコンではないと確認された時点で手を引くべきでしょう。 |
注文した電源基板が入荷するまでやや時間がかかりますので、待っている間にその他の部分を整備してしまいます。 BS30Sにもいつものように噴きやすいケミコンを使ったHICがありますのでここを対策することにします。 Y/C PACKのような基板に取り付けられているのでこれを外しますが、パッチが当たっているので場所に印をつけておきます。安易に外すと、元々どこに付いていたのか判らなくなります。 |
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さて、いつものようにシールドケースに入ったHICがあり、表面実装の電解コンデンサが載っているのでここを対策します。 このシールドケースはBS900以降のモデルはだいたい同じようなスタイルですね。 |
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裏側ですが、こんなところにもパッチ基板が…。パッチの多いモデルですねぇ。 |
問題のHICの足にもしっかりパッチされているので要注意です。取り外した後にどこに付いていたのか判らなくならないようにマークしておいた方が良いでしょう。 |
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ということで取り外しました。このHICは足の根本がコーティングされていないために、熱を当てすぎると足が取れてしまいますので要注意です。実は一本取りました。まぁ、取れたところで付け直せば良いだけの話ではありますが。写真は付け直した後です。 |
ケミコンは合計6つ。定格は映っている通り、22μの6Vが5個、47μの6Vが1個。 22μが多いため私はチョッピリ嬉しくなりました。理由は後述。 |
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いつものように破壊して取り外し。見事に噴きまくりです。やはり対策必須です。 |
22μが多くて嬉しい理由はこれ。 なぜか近くのパソコンショップで、こんな袋入りがジャンク扱いで売っていました。22μの16Vが200個で200円。一個たったの1円です。 普通に買うと1個15円だとして3000円くらいする代物です。 |
ということで張り替え。今回もシールドケースに収めるのが目標ですのでレイアウトを工夫しました。 | |
このケミコンは高さがそこそこありますので、斜めに寝かせます。真横に寝かせるとスペースの都合で端子が半田付けできなくなります。 ちなみに半田付けしてから寝かせるのではなく、最初から寝かせて半田付けします。半田付け後に位置を調整しようとするとアッサリとパターンが剥がれるのでこれは禁じ手です。 |
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シールドケースに収めました。ほとんど隙間はありませんが、問題なく収納出来ています。 |
Y/C PACK相当の基板の足の長いハイブリッドICのうちの一つにも裏側にこんなにヤバそうなケミコンが張り付いています。 定格は22μが1個。4.7μが3個、2.2μが2個、3.3μが1個。 手持ちに22と4.7しかなかったのでこれだけ対策することに。 |
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これらを取り外してみましたが、別段噴いている様子はありませんでした。このHICはあまり噴きやすくはないのかも知れません。 ちなみに新しいケミコンを取り付ける際には、このように横に寝かせる必要があります。 |
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そうしないと基板上にあるケミコンと干渉して取り付けられなくなるからです。 |
さて、注文してから1週間ほどで部品到着との報がありましたので買って参りました。
やっぱりお値段は安くないですね、やっぱり。まぁ、お値段としてはデジタルロジカルコムフィルタのHIC(シールドケース入りのやつ)と同じくらいです。 |
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中身はこうなっています。必要なパーツはすべて実装済みです。シールドケースとヒートシンクだけ古い物を再利用するようになっていました。 |
新旧比較。 古い方は部品をはぎ取りすぎ。まぁ、もはやゴミですからねぇ。 尚、基板とシールドケースの半田付けは出力の大きな半田コテでやった方が無難です。熱がシールドケースに逃げるので、30Wだとなかなか溶けません。50〜60Wくらいあると安心ですね。 30Wでも何とか作業可能ですが、かなり暖めるまでに時間が掛かります。その際はイモ半田にならないように注意。 |
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このICは結構発熱するらしいので、シリコングリスを薄く一様に塗っておきます。これは一般のパソコンショップで売っています。CPUとクーラーの間に塗るものと同じで良いと思います。 |
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古いシールドケースとヒートシンクを移植して、スイッチング電源ユニットの完成。蓋をして本体に組み込んで火を入れます。新しい電源基板ですので、古いケミコンも一掃されて一安心です。 |
ふっかぁぁぁぁああつ!
とりあえず電源入りました。あとは動作確認ですが、地上波、BSチューナー、および録画再生そのほか全て正常動作でした。おそらくHICのケミコンの劣化具合から考えて、当初は某(なにがし)かの映像の不具合はあったと思いますが、あらかじめHICのケミコンは張り替えていたので今回は症状出現せず。
ちなみに画像を確認してみましたが、エラく綺麗です。画質はかなり良い方だと思います。FS900より綺麗かも。どうやらこのモデルは映像回路系統に改良が加えられているという話です。
さて、機能が復活したことが確認できましたのでこのデッキの細部紹介へと移ります。 このデッキの一番の特徴といえば、なんといってもこの電動フロントパネルでしょう! FL管を内蔵したパネルがカセットの挿入、取り出しに合わせてモータードライブで上下します。なんともこのような一見無駄な作りがたまりませんなぁ。 |
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取り出しボタンを押すと、ウィ〜ンとなってパネルが下へ降りてきます。また、テープを挿入すると自動的に蓋が戻ります。 松下はどちらかというとデザイン性よりも機能性を重視した設計が多いと思いますが、たまにはこういうデザインを重んじた設計も悪くないですね。無論、機能性を犠牲にしない範囲での話ですが。 ソの付く会社なんかだと、機能性を犠牲にしてまでデザインを重視するので私はイヤです。まぁ、そういう設計思想の入った製品なんか絶対買いませんけど。 |
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フロントパネル裏側。FL管からフレキが伸びてコネクタへ入っています。コネクタはパネルに直付けなので、顔を外す際にコネクタに注意する必要はありません。ドライブ機構は右側に見えます。 |
そのパネルのドライブ機構です。 モーター1つと開閉スイッチで制御しています。 ちなみにクラッチは付いていないようです。しかし、開閉が外力で妨げられると、なんらかのメカニズムでそれを察知して、開閉の動作を中断します。なかなか賢いです。 |
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さすが松下! こんなところにもコックドベルトを使っています。並のメーカーであれば容赦なくゴムベルトを使い、経年劣化して蓋が開かなくなる間抜けなトラブルを発生させるところでしょうが、松下はそんなバカな設計はしません。こういう心遣いがたまらないんですね〜。とにかく良心的な設計です。 |
本体前面上部にはこんなラベルが貼ってあります。試しに動作中の蓋に指を挟んでみましたが(爆)、すぐさまモーターが停止し、怪我になるようなことはありませんでした。 |
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本体底部ですが、なんと、ボトムプレートは2重構造でした。あのFS900、FS90、DX1と同じ防振設計です。BS900以降はコストダウンの煽りを受けて、消え去ったと思われた2重構造のボトムプレートですが、意外なところで復活していました。まぁ、この後のモデルではまた消え去っているでしょうが…。 ちなみにサイドパネルやインシュレータまでは復活できなかったようで、BX25同様に飾りのような軽薄な樹脂製のままでした。まぁ、仕方ないですかね。1993年という時代に2重構造のボトムプレートが復活しただけでも立派なもんです。 |
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ボトムプレートを取り外すと、いつものインテリジェントターボメカが現れました。新快速メカではなく、普通のインテリジェントターボメカです。ですので速度は並です。耐久性は最高ですが。 |
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背面端子左側。 チューナー関連の端子が集中しています。なかなか賑やかな端子群です。というのも、ハイビジョンのMUSE-NTSCコンバータに対応しているからです。 BSコンバータ電源は背面でON-OFF可能。こういうのはやっぱり物理スイッチで切り替えられる方が精神衛生上よろしいかと思います。最近のモデルだと、画面上でメニューを開かないと設定できないものがほとんどだと思います。 ちなみにBSのデジタル音声出力もしっかり装備。BS時しか有効ではありませんけど。 |
背面右側の端子群。 センターメカとはいえ、FS900、BS900のようなA/V分離思想ではないため、音声、映像端子は一カ所に固まっています。 それにしても端子数が多いです。ハイビジョンに対応するために、入力系統を一つ増やしたためですね。 一応高級機だけに、編集5p端子も装備。 |
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前面左側に蓋があり、内部に端子群があります。 録音レベルは可変ですが、左右独立ではありません。レベルメーターの分解能も低めであり、このあたりはしっかりコストダウンされていますね。録音レベルはBX25以降、左右独立ではなくなっています。さらにこのモデルではとうとうビデオイコライジングが消えてしまいました。 とはいえ、ヘッドフォン、マイク端子はまだ生きています。マイクはともかく、ヘッドフォン端子は必須だと思いますね。これがないと外へ持ち出しての録画時に満足にモニターできないです。 |
前面右側のコントロールパネル。 蓋の内部にもあまりボタンはありません。 リモコンモードや、標準/3倍はともかく、テープ残量切り替えなんかはメニューによる切り替えでも良いような気がしますが…。それよりも時計合わせとチャンネル設定を付けてくれっての。あと、S-VHSのON/OFFとか。 |
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ということで、まず1号機の整備が完了。費用は本体3500円+電源基板4700円+コンデンサ100円弱ということで、合計8300円ほどでした。使ってみた感想ですが、画質も良く、基本性能はなかなかです。専用リモコンがあれば、「目次ビデオ」の名の如くビデオライブラリにジャンル登録などが出来るようですが、まぁ使うのが面倒そうなので私にとってはどうでも良いことですかね。
コストダウンの煽りはある程度受けてはいるものの、Gメカ採用で、画質的にも改善されてるということで、比較的一般の方にも使いやすいデッキなのではないでしょうか。
ちなみに二号機の方も、電源基板交換+HICの対策を施して復活しています。結局やったことは1号機も2号機も同じでした。こちらはリモコン無しですが、本体2500円+電源基板4700円+コンデンサ100円程度ということで合計7300円ほどという結果でありました。電源が高いのは難点ですが、この時代の電源基板は実装されているケミコンが劣化していることが多いので、不安要素が取り除けて安心して使えるとも言えますね。まぁ、悔しいので交換したことは損ではなかったと思うことにします。
なかなかよさげなデッキなので、Gメカ最終モデルということもあり、一台はコレクションとして手元に置いておくことにしました。もう一台は知人に転売予定。
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