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〜Panasonic VTR ジャンクNV-BS900を修理する その2〜


Panasonic NV-BS900(四号機)

BS900はメカの名機だと思います。それまでのインテリジェントターボメカを大幅に高速化したそのメカレスポンスはまさに快適そのもの。「新快速ターボシステム」と本体のラベルに表記されており、松下の自信作なのでしょう。特に再生から巻き戻し再生へ至る時間が非常に短いのです。その時間体感速度およそ0.5秒。特殊再生からの復帰も非常に高速。そして早巻き速度も高速。ブレーキングも高速。まさにサーチや特殊再生を多用する編集のためにあるようなメカニズムです。あまりにデキが良いのでつい4台も入手してしまいました(爆)。

今回のブツは某オークションで送料込み2000円でゲットしました。なぜか激安です。この機体の過去の履歴を見ると、元々2代前のオーナーが廃棄したもので、前オーナーは同オークションでBSチューナー目的でゲットしたらしいのですが、メカ異常のあるこの機体は電源導入後にエラーを検知して電源を切ってしまうため、使い物にならず、再出品されたというものです。2名のオーナーに見捨てられた機体ということで、これは是非とも救済してやらねばなりませんな(笑)。

さて、そんな機体なので当然故障しています。テープが詰まって壊れたというエピソードから、二号機同様にギヤ欠けがありそうでした。調べたらやはりです。メインカムがこのように豪快に欠けていました。

よって二号機同様これらのギヤ、プーリーを交換しました。

品番 VXP1259
品名 センタープーリ(1)
価格 400円

品番 VDG0764
品名 メイン カム
価格 100円

品番 VXP0878
品名 リテーナ ハグルマ
価格 200円

で、ギヤを組み込んでカセコンを入れたのですが、なぜか正常に動作しませんでした。カセットを挿入してもマッハで吐き出されます。

うーん、しばらく悩みました。で、試しに別の機体のカセコンを組み込んでみたところ正常に動作するではありませんか。

犯人がカセコンと断定されたので、正常カセコンと比較してみました。よーく観察するとここが欠けているのを発見。ついでにギヤ位相がずれていました。

 最初のオーナーがテープを詰まらせたときに強引に押し込んだのでしょうか。キャプスタンモーターの動力ごときでこの頑丈そうなギヤが欠けるとは思えません。

ちなみにこのギヤ位相は後に示す写真の正常位相と比べるとズレまくっています。


カセコンを全バラする

ということで、カセコンを完全にバラしました。このような7個のパーツに分けられます。欠けたギヤは「メインシャフト」と呼ばれる部品。右側のギヤから伝わった動力をサイドプレート左側へ伝達しています。ちなみにシャフトとギヤは分離できません。

新旧比較。新しいものは白くてイイですな。

品番 VXP0987
品名 メインシャフト
価格 400円

新しいパーツをゲットしたので組み立てます。元々グリスが付いていたところにグリスを塗りながら、元通りに組み付けます。

注意するのはギヤ位相。カセコンにもしっかりギヤ位相があります。正しく組み立てるとギヤはこのような位相になるはずです。金属プレートに刻まれたギヤよりも白いギヤの方が一つ外側になっています。

正しく組み込むと、イジェクト状態でここの合わせマークが一致するはずです。カセット挿入を検知するスライドエンコーダの矢印が切り欠きと一致しています。

スライド接点も怪しかったので、FS900記事同様に分解清掃しました。


ピンチローラーの研磨

ジャンク機ではもうおなじみのピンチローラの劣化がありましたので研磨して復活(セコい技)させます。ヒビの入ったローラーは無理ですが、表面が劣化しただけのローラーであれば復活可能です。

まずは、荒い100番の紙ヤスリで荒削り。転がしながら斜めに力を掛けて表面を削ります。包丁を研ぐ時と同様に、削るのは1方向のみです。

あらかた削ったら180番で同様に削りなおします。

仕上げに1500番(耐水ペーパー)で研磨。このように消しゴムの削りカスが出るような感じになります。

表面がある程度なめらかになれば完了。

研磨前と研磨後。

表面のゴムらしさが復活しました。これでしばらくは持つでしょう。

SSブレーキアームの復活
ありがちなブレーキアームの劣化でカセット挿入やテープローディング時にキーキー五月蠅かったのでここを直します。今まではブレーキアームを交換して直しましたが、今回はセコ技として、これを洗浄して回避します。

取り外してフェルトを台所洗剤で洗浄。普通はこれだけで十分効果がありますが、この機体では直りませんでした。キャプスタンモーター側が擦れてテカテカになっていたためです。よって仕方なくキャプスタンモーター側を紙ヤスリで削りました。これで解決。

メインブレーキの交換

この機体では珍しくブレーキが劣化していました。Gメカのブレーキは異様に丈夫で、あまり劣化している機体は見かけないのですが。劣化しているとはいえ、テープがデッキ内部で飛び出したり絡んだりはしませんでした。単にブレーキングで止まる時間が若干長いというだけです。新快速メカでは普通のインテリジェントターボメカと異なるブレーキが使われていますので注文時は要注意です。

品番 VXZ0293
品名 (S)メインブレーキ
価格 200円
品番 VXZ0291
品名 (T)メインブレーキ
価格 200円

古いブレーキを外して、新しいブレーキを元通り組み付けて完了。簡単です。


総評

一通りの動作をさせてみましたが、問題ないようです。再生画像も綺麗です。今回は安価なパーツ交換だけであっさり直りました。入手金額も安く非常にコストパフォーマンスが高かったです。4台目にしてようやくあっさり直る機体に当たりました(三号機は故障がかなり複雑でまだ完全レストアができていないので完了したら記事をアップします。)。ただ、ヘッドの状態はあまりよくなく、ドラム表面は少し削れており、鏡のような輝きは失われていました。よってヘッドはいつまで持つか分かりません。まぁ、今のところ反転ノイズなどの摩耗症状は無いのでしばらくは大丈夫でしょう。

さて、最終費用を算定します。本体2000円+ギヤ類700円+シャフト400円+ブレーキ400円=3500円でした。うぉ!激安!

この機体は知人に売却予定です。さすがに4台も同じ機種持っていても仕方ないので…。


2000.12.02 追記

BS900三号機記事で怪しい表面実装タイプのコンデンサが乗っているシールドケース入りのハイブリッドICについて軽く記述しましたが、この4号機では足の腐食が既に発生しており、死ぬのは時間の問題かと思われました。それにしても悪いのは一個数十円程度のコンデンサなのに、高いIC丸ごと交換というのも無駄ですねぇ。そこで、今回はケチケチ大作戦としてケミコンのみを張り替えるという暴挙に出てしまいました(笑)。

このHICですが、たぶん型番は「VCR0320」とでも言うのでしょう。今までのパーツ価格の傾向を考えると、純正補修パーツ買えば4000円以上しそうな感じ。

シールドケースを外すと中はこうなっています。このICはそれほど外すのは難しくないですが、いつものようにシールドケースと内部の基板が半田付けされているのでケースだけ外したりはできません。

裏はこうなっています。モトローラのIC。高そう…(値段が)。

BX25や、FS900のHICでも似たようなICを使っていたと思います。

表面実装タイプのコンデンサは全8つも乗っています。既にそのうちの一つが噴き始めており、足の腐食が見られます。コンデンサは10μが4個、47μが3個、4.7μが1個です。他のコンデンサが噴くのも時間の問題かと。基板が死ぬ前に交換するのが吉でしょう。ちなみに足の腐食が無いコンデンサに関しても、分解したところ電解質の漏れが認められています。

かなりの暴挙です(笑)。

表面実装のコンデンサはストックが無いので、しかたなく普通のリードタイプ(しかも適当なジャンク基板から外したやつ)で代用です。外し方はFS70記事参照。

8つもありやがるので結構面倒ですが、まぁ、なんとか取り付けられました。垂直に立てると他のパーツと干渉して元の基板に取り付けられなくなるので位置を確認しながら一つ一つ取り付けてゆきます。

最終的にこうなりました。

普通のコンデンサを使ったのでシールドケースには入りません。

リードタイプでも背の低いやつを上手に使えばシールドケースに入るような気はしました。気になる人はきちんと背の低いパーツを買えば良いでしょう。。今回は悪魔でもお金を掛けない修理を心がけたのでまぁこれでヨシとします。

テスト再生してみましたが、こんなのでも特に問題無いようです。


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