Panasonic BS 内蔵S-VHS Hi-Fi Video NV-BX25
修理そのものが目的である当サイトの「往年の名機シリーズ」も今回で第五回です。今回は往年の名機としては「最後の名機」と思われるVTR「NV-BX25」を修理します。このデッキは1992年バブル末期のもので、既にコストダウンの影響が強く現れており、FS90等で見られた重量級のサイドパネル、インシュレーターなどはすでに見せかけだけのものになっています。しかし、メカはインテリジェントターボメカ採用、ヘッドはアモルファスプロヘッド(しかも10ヘッド)で、基本はしっかりしており、名機の貫禄は十分です。また、ビデオライブラリシステムや、オンスクリーンによる各種設定など、松下としては始めてのデジタル色の濃いモデルとなっています。NV-BS900の後継機で、これが出た当時、オンスクリーン機能のないBS900オーナーであった私はなんだか悔しい気持ちになったのを覚えています。
シーリングパネルを空けると、ビデオイコライザー、独立音声レベルメーター、ヘッドフォン端子などまだバブルの時代の名残が見られますが、音声レベルは左右個別の設定はできず、本体で時計合わせや録画予約はできません。このあたりはしっかりコストダウンされています。シーリングパネルも以前のBS900やFS900よりは薄くなっていますし。ちなみに時計あわせに関しては、バックアップ電池を内蔵しているので大きく狂うことはありません。
このデッキは某オークションにて本体のみ4000円でゲットしました。ジャンクなので当然故障していました。今回の故障内容は再生画像が乱れるというもの。チューナーは未確認。再生すると色がベッタリと滲んで暗くなってしまいます。見た目メカの動きは全く問題ありませんでしたが、これではハッキリ言ってまともに使っていられません。
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さて、原因究明のため解剖します。トップカバーと顔を外してみましょう。センターメカなので左右に基板が分離されています。奥に見えるのはおそらくシスコンと思われ、その下に電源があります。消耗品関連はそれほど消耗していませんでした。ピンチローラーもヤスリで軽く削れば復活する程度。ただ、クリーナーアームは案の定真っ黒になっていたので取り外しておきました。このメカは普通のインテリジェントターボメカなので、クリーナーヘッドが付いていると過剰にヘッドがクリーニングされてヘッドの寿命を縮めると思われます。よって今回は取り外したままです。 ちなみにこの基板同士はそれぞれ蝶番のようなコネクタで繋がっており、外すのにちょっとコツがいります。メンテナンス性はあまりよくないと思いますねぇ。 |
各基板を分離する まず、前面のFL管の付いている基板のネジを外して浮かせ、その基板と左のビデオイコライザの基板を繋いでいるコネクタを外します。
次に蝶番コネクタを翻してビデオイコライザの基板を持ち上げます。
ヒートシンク上のカバーを外し、シスコン基板を固定しているネジを外し、シスコンとビデオ関連の基板を繋いでいる蝶番コネクタを翻します。 |
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すると、この基板が現れます。松下機では特徴的な映像関連の基板と思われます。今までの経験上、映像が乱れたりするのはこの手の基板に原因があることが多いため、ここを重点的に調べてみました。ちなみに左側にコンデンサが沢山載っているサブ基板がありまして、なんとなく怪しかったので一応外して調べてみたのですが、どれも噴いていませんでした。
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さて、責任病巣と思われる基板を分離しました。見た目は松下お得意の映像関連を扱う「Y/C PACK」と思われますが、基板の名前は分かりません。いろいろ調べたところ、結果的にこの2つが壊れていました。 |
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クリスタルの載った基板ですが、見るからに、表面実装タイプのコンデンサの足が腐食していました。ありがちなコンデンサが噴いている故障です。よって交換。しかしこれを交換しただけでは直りませんでした、原因は別の所にあると思われます。
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もう一つの方は、シールドケースに入っているので外からは分からないのですが、思い切って外して調べてみたところ、中身はこのようになっていました。表面実装の電解コンデンサが5つも載っており、いちいち足が腐食しています。おそらく絵が乱れる原因はこれでしょう。ちなみに聴くところによれば、これはY/C分離の機能があるそうです。
値段が結構高いんですねぇ…。基板が生きているのでコンデンサだけ張り替えれば安いんでしょうが、シールドケースに入らなくなってしまいまい、ノイズ対策に不安が残ります。まぁ、ノイズを気にしない人は張り替えでもいいでしょうけど。 |
この2つのICを交換したところ、きちんと絵が出るようになりました。回路的には修理完了です。しかし、テープ挿入やテープローディングの時にキーキー中から音がします。こういうときには、キャプスタンを押さえているブレーキがうなっていることが考えられます。実害はなさそうですが、気になるので直しておきましょう。
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これが音の原因。テープ挿入や再生時にキャプスタンに一定の圧力を掛けています。 表面を洗浄して再利用もできますが、新品でも100円なので交換しました。 交換後は五月蠅い音もなくなり、静かにメカが動くようになりました。 |
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総合評価 今回は合計金額ジャスト1万円とちょっぴり割高になってしまいました。ですが、このデッキは基本がしっかりしていますし、機能も豊富ですし、入出力端子も充実している方ですので今でも十分にメインのデッキとして使えるものだと思います。新品の同じ価格帯のデッキを買うよりは明らかに良いでしょう。
使った感じはまぁまぁです。インテリジェントターボメカなのでメカの応答も良好。ただし、一つ前のモデル「NV-BS900」のように「新快速メカ」でないので早巻き速度などが若干遅いのが残念です。
あと、このデッキはリモコンでチャンネル設定や予約をする必要があるので、常用するにはリモコンが必須です。メーカーから取り寄せれば新品でも入手可能ですが、液晶表示、ジョグシャトル付きのものなので結構割高です。型番はVEQ1352らしいです。なんとかして入手しなければ、と思ったら、非純正リモコンがジャンクで手に入りました。入手したリモコンはVEQ1354。同時期に発売されていた下位機種用と思われます。作りはほとんど一緒なのですが、なんとオンスクリーンメニューに関するボタンが無い! しかし、分解清掃しているときに気づきました。内部の基板にはきちんと接点が存在しており、接点ゴム側にもちゃんと接点が用意されているのです。つまり外装に穴を空けて内部に隠れたボタンを押せるようにすればOK。
バラして裏側からドリルで丸い穴を空けただけです。しかし、そのままだと何のボタンだか分からないのでプリンタでラベル印字して貼っておきました。穴を空けたところのボタンはペン先など、細い物でないと押せないですが、一応これでチャンネル設定や各種初期設定ができるようになりました。多少不便ではありますが、設定なんて最初の一回すればOKなので十分実用可能ではあります。ちなみにこのリモコンにはTVとBSデコーダーのリモコン機能もあるのですが、メーカー設定方法が最初分からず迷いました。答えは、「メーカー設定」ボタンを押して、「入力切り替え」を押すごとにBSデコーダーのメーカー切り替え、「SP/EP」ボタンでテレビのメーカー設定です。ソニーのテレビは3。
このデッキは修理完了したので、安いBS内蔵デッキを欲しがっていた知人のK君に実費で引き取られてゆく事になりました。ドナドナドーナードーナー…。
転売後に、実は赤引きノイズがあることが判明したため、K君が我が工房へ遊びに来る折りに持ってきて貰いました。ついでに以前穴を開けるだけの処置の留まっていたリモコンをきちんと使える形にしようかと。
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松下特有の赤引現象ですが、要するに赤い物体の右側に緑色等の妙な横引きノイズが乗るというものです。IC交換後等にも起こりやすいようで、HICの補修をした場合には調整必須と思われます。前回補修したときには気付いていませんでしたが、実はこの機体でも赤引現象が認められていました。 ということで、前回同様に基板を起こします。BS900の経験に基づくと、「CNR PHASE」という可変抵抗が調整項目です。そのVRを探しました。ここです。 |
これが「CNR PHASE」です。色信号のノイズリダクションの位相?ってことですかね。意味はよく分かりませんが、とりあえずマーキングして回します。 赤い線は私がサインペンでつけたものです。こうしておかないと元の位置が分からなくなりますので。 |
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こんな感じに回したところ綺麗になりました。回しすぎると今度は「緑引き」のノイズが発生しますのでそのどちらも発生しない位置に固定です。 |
ついでに、BBSで質問ああったので追記。BX25のカセコンの上には2枚のフレキケーブルが付いていますが、これを外さないとカセコンを取り外せないためメカのメンテができません。ここにコネクタがあるので、一度基板を外さないとダメです。メンテナンス性は良くないです。
前回から気付いていましたが、実はこんなことになっています。前回よりもさらに酷くなっており、取れてしまうのも時間の問題かと思われました。 丁度このゴムシートが生きている程度の悪いジャンクのリモコンが手に入りましたのでここを交換することにしました。 |
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ついでに、前回穴を開けただけで押しにくかったボタンをきちんと手で押せるように改造することにしました。 まずは該当個所を四角く切り取りますが、私はこの手の作業にはこの写真のような小刀を使っています。普通のカッターだとコシが無いので力のかかる作業は難しいかも知れません。一本あると便利ですよ。 |
2ミリ厚のゴムシートを適当なサイズに切り取って(計6個)、表面を目の粗い紙ヤスリを使って劣化層を取り除いてザラつかせた後、ボンドG17を薄く塗りました。 対する接点のゴムシート側も接着面をヤスリがけしてG17を薄く塗布。5分くらい乾かしてから張り付けます。 |
張り付けるとこうなりました。ちょっと接着剤がはみ出していますがまぁいいでしょう(^^;。 ちなみに2ミリ厚だと背が低いです。3ミリ〜4ミリのゴムの方がよさげだと思います。 |
最終的にこうなりました。 基本操作ボタンはBS900などと同じ青いボタンです。いわばキメラ状態ですかね。 肝心の改造ボタンですが、背が低いなりにもきちんと手で押せますので極端に使い勝手が悪いこともありません。指の腹や爪の先で押せばきちんと反応するのでヨシとしました。 これにて、このBX25は整備完了です。しばらくは大丈夫でしょう。 |
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