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〜LDプレーヤーにAC-3 RF出力端子を増設する〜


Pioneer LD Player CLD-99S

今回は古いLDプレーヤーにドルビーデジタル(AC-3 RF)の出力端子を取り付けるお話です。詳しい話はまずetolieさんのサイトをご覧になることをオススメします。

さて、最近のLD市場はDVDに押されて風前の灯火ですが、逆にLDソフトが捨て値でリサイクル店に並ぶこともよく見かけられるようになりました。あんまり人気も無いようなので、値頃感も抜群。私のようなジャンカーが思うに、今こそLDが旬だと思います。DVDなんて、私には高くて買ってられないです。映画みたいに数回見れば十分満足するソースに、数千円も払うなんて私にはバカバカしく思えるのです。まぁ、これは価値観の問題ですから、別に買っている人がバカというわけじゃないですよ念のため。

ということで、リサイクル店巡回で一作1000円前後を目安に、見たいLDタイトルがあればチョコチョコと買っていました。こないだ逝ったリサイクル店では、スターヲーズの3部作が一作1280円で売られていたりして、4000円以下でセットで揃ってしまいました。私はこの手のSFスペクタクル物が好きなのですが、のめり込んで鑑賞するには、迫力ある音も大事な要素。しかしながら古いジャンクで手にはいるようなLDプレーヤーには、肝心のドルビーサラウンドの端子が無いのです。最近の物には付いていますが、まだお値段はそれなりにしますからね。ていうか、最近のLDプレーヤーなんて、選択の幅が狭すぎ。ラインナップの貧弱さを考えると、メーカーもお情けで作っているような印象です。

しかしそんなある日、etoileさんのサイトをあるきっかけで訪問したときに、古いLDプレーヤーのAC-3増設改造情報を見かけたのです。これを見て私は無性にこの改造をやりたくなったわけです。BDEという海外の会社(?)での通販で、付加回路と改造情報の購入が出来るとのことですが、資料さえあれば安価な自作の回路でもイケるとのこと。改造系ユーザーとしては自前でこれをやるしかないでしょう!

ちなみに情報によると、このAC−3端子増設改造は、以前、パイオニア自らが一部の高級機のみを対象に期間限定で有料で取り付けていたそうです。まぁ、このCLD-99Sはたぶん対象外だったと思いますが。で、そのサービスとやらが4万円くらいしていたそうです。4万もあったら新しいプレーヤが買えますってば

で、今回の生け贄君ですが、1988年のパイオニアのLDプレーヤー「CLD-99S」です。当時としては最高機種だったようです。まだ両面再生機は登場していなかったようですが、本体にジョグシャトル装備、フロントパネルがグワっと開いてトレイが出てくる機構など、それなりに高級っぽい作りになっています。

また、この機種はフレームメモリを利用したデジタルのお遊びが出来るようになっています。当時流行った贅沢な機能ですが、あんまり実用性はありませんね。静止画像が出るのはチョッピリ嬉しいですがね。その他のストロボだの、デジタルエフェクト(マルチ画面とか)だのはまるで実用性は無いです。

特に意味は無いですが、トップカバーを外してみます。円盤が入ってますが、別に買ったときから入っていたわけじゃないです。メカは左寄せ、電源が右にあります。

裏側ですが、ボトムプレートはハニカム構造+銅メッキでお金が掛かってますね。結構厚みがあって重いです。ネジもいちいち銅メッキされており、高音質設計のようです。どれだけ音質の向上に貢献しているのかは謎ですが。

ボトムプレートを外してメインの基板とご対面。右側にあるお弁当箱はデジタルエフェクトのための回路のようです。その左側にメカ制御の回路が見えます。今回改造するのは、このメイン基板の部分です。


改造の準備

さて、早速改造、と行きたいところですが、RF信号の取り出しポイントは各機種で異なるので、これだけは調査しておかなければなりません。etoileさんのサイトには、CLD909/939/959等の改造記事がありますので、それを参考にすることにしましたが、どうにもそれだけではよく判らない部分が多い。ということで、なじみの家電店にお願いして、サービスマニュアルから回路図だけコピー出来ないか聴いてみました。

回路図ゲットォ!

うまく交渉してくれて、首尾良く回路図をゲット(300円で)できました。フフリ。これさえあればこっちのもんだぜ!

どうやらIC301というのがデモジュレータICのようです。取り出すべきRF信号は、増幅回路を経て、2.3MHzと2.8MHzのフィルターによってLとRに分けられ、デモジュレータICへ入力されるようです。取り出すべきポイントは、LとRの信号が分岐する直前です(赤丸のところ)。

上の図の黄色い囲み部分の拡大図。

回路図で見ると、信号をデモジュレータICの2pと63pから追っていけば目的の取り出しポイントに到達できそうですね。

実機との照らし合わせ

回路図を元に、まず IC301 を探しました。この「PA0026」という石が該当のデモジュレータICのようです。このICは他の機種で使われているかどうかは分かりませんが、CXのロゴが入っているチップは共通してデモジュレータICっぽいですね。なんとなく。

で、2pと63pから信号を逆に辿りますが、写真左側にF301(フィルター/L)とF302(フィルター/R)があり、目的の信号はこのフィルターに入っていると思われます。

他機種で改造するのなら、まずCXロゴ入りのICを探して、近傍のフィルターx2を目安に回路を追えばよさそうです。

パターン面に裏返してパターンを追いかけます。2pと64pから追っかけると、コンデンサ(0.022μF)を介してフィルターに入って、抵抗(1kΩ)を介して2つの信号が合流しているのが分かります。サインペンで黒く線を書いた部分が該当するところ。ここが取り出しポイントです。ちなみにフィルターの真ん中のピンはGNDです。まさに回路図通りですね(当たり前)。

ということでRF出力信号の取り出しポイントは判明しました。後は電源端子を探すだけです。

回路図を元に、取り出しやすそうな電源ピンを探しましたところ、CN17のところが最適のようです。必要な電源ピンは、+5V,-5VとGND。

まぁ、回路図を見なくても、基板にシルク印刷されているので他機種でもそう難しくなく見つかるでしょうね。

これで全配線取り出しポイントは判明。あとは実戦あるのみ!


付加回路の製作

etoileさんのサイトにある情報を元に、回路図を書き直しました。オリジナルはBDEが配布している回路ですが、ミュート信号は皆さん無視されているようなので、私も割愛。トランジスタも入手しやすい2SC1815で代用。ということで、上のようになっています。

SGはシグナルグランド、FGはフレームグランドです。信号系とフレームを分けているようですが、実機で双方をテスターで計ったら抵抗値0でした。ホントに分ける必要あるんかいな…と思ったのですが、まぁ一応分けておくことにしました。

で、作った回路がこれ。その気になればもう少しコンパクトにできますが、まぁこのくらいが丁度良いと思います。

サンハヤトのICB-288。紙エポキシの安物(一枚80円)です。コンデンサはジャンクから外した奴を利用。基板と抵抗とトランジスタだけ新品を買ってきました。

基板パターン面。

材料の合計金額は150円程度だったかな。鬼安いです。同じ物を通販(海外)で買うと6千円するそうです。あと、以前パイオニアで一部の機種対象にやっていた改造サービスなら約4万円。

こんな回路を付加する程度での仕事で万桁とは…。

付加回路が出来上がったら、先ほどの配線取り出しポイントに従って、本体に組み込むだけです。

RF信号取り出しですが、パターンを追いかけて行って、配線が短く済むところを探した結果、ここに繋ぐことにしました。

ノイズ対策として、一応シールドケーブルを採用。ステレオヘッドフォン用のケーブルのL/Rを割いて利用しました。割いて余ったもう片方のケーブルは、RCA端子に接続する方で使いました。

増設コネクタの取り付け

その、RCAコネクタをつける場所ですが、一応信号系とフレームのGNDを分けるようですので、ちょっと悩みました。本体後ろ側は全面が鉄板なんですよね。ドリルで穴を開けるのも疲れるし、削りカスがメカや回路に入り込んで壊れたらイヤなので、何故か蓋が付いている部分を利用しました。写真は蓋を取ったところです。

で、ドリルで穴を開けてこうしました。

一応GNDはフレームと接触していません。

組み込み

あと、電源系統の配線を行って、本体に固定。この部分のネジで共締めしておきました。フレームグランドはアースラグを利用してこの位置にネジで固定。固定性は十分です。これにて改造は完了。あとは動作確認だ!(ワクワク)


ドキドキの動作確認

動作確認の為には、AC−3に対応したLDソフトが必要です。対応してないソフトでやってもAC-3信号を出力しませんので。

今回は、つい先日リサイクルショップで900円だった「インディペンデンス デイ」を使用。そこそこ新しいタイトルなので、間違いなくAC−3に対応しているはず。

さて、我が家のAC-3対応DSPアンプ「DSP-A3090(YAMAHA)」のAC-3 RF端子にコネクタを繋いで再生します。

成功ォォォォォォォオオオ!

うおっしゃぁ! アンプがAC−3信号を認識して音を出しました。バッチリっす。完動っす。

ちなみに増設したコネクタ(RF出力)の電圧を測ったところ、5Vちょっと出ているようでした。


総評

今回は、回路を解析して、付加回路を自作することで非常に安価にドルビーサラウンドの端子の増設に成功しました。しばらくテストランさせましたが、動作問題なく、綺麗な音が出ています。

それにしても面白いです。割と新しめのプレーヤーにしか存在しないAC−3出力ですが、どんなに古いLDプレーヤーでもつけることが出来るんですね。新しいLDプレーヤーよりも、バブル期の気合いの入ったプレーヤーの方が案外出来が良かったりするので、バブル高級機に取り付けると幸せになれると思います。

今回の回路図を参考にすれば、おそらくほとんどのパイオニア製LDプレーヤーで取り出しポイントが分かると思います。デモジュレータICは異なっていても、CXロゴとフィルターを目安に信号を探せばたぶん大丈夫でしょうね。

ということで、またLDプレーヤーをゲットしたらこの改造をやってみたいと思います。有用な情報を公開されているetoileさんには御礼申し上げます。


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