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〜なつかしのオモチャ 電子ブロックを復活させる〜


学研 電子ブロック EX-150

 電子ブロックというオモチャを知っていますか? 昭和50年代前期の小学生たちを虜にした学研の高級玩具です。EX-15〜EX-181で6種類のグレード(15/30,/60/120/150/181)が用意されていました。EX-181が最終モデルですが、これはEXシリーズの末期に登場したいわば異端児で、シンセサイザーユニットによる電子音を使った31回路が増えているというものでした。最盛期のフラッグシップモデルとしてはこのEX-150が有名です。詳しいことはこちらのサイトに解説されています。

 当時の小学生達はこの筐体に電子部品の入ったブロックを回路集に合わせて組み込むと、ラジオになったり、お風呂センサーになったり、電子オルガンになったりするのが面白くて、組み立ててはバラし、組み立ててはバラし、何度も楽しんだものです。

 このEX-150の定価は当時の価格で13000円していました。当時の私の一ヶ月の小遣いが300円とかその程度の時代ですよ! 聖徳太子のイチマンエンサツなんてそうそうガキんちょが触れることの出来る紙幣ではありませんでした。当然こんな高級なオモチャはよっぽどのブルジョアでないと買って貰えませんし、小遣いを貯めて買うにも、月々300円の小遣いではたかが知れています。

私のガキの頃は、私より若干小遣いの多い兄がEX-30を5400円(これでも当時の小学生にとっては大金)で購入しており、追加パーツでEX-100相当にアップグレードしたものが家にありました。で、私は兄が飽きた頃にこれで遊んでいたというわけです。

 当時の内にEX-150相当までアップグレードしておけば良かったのですが、結局お金が無いことと、アンプが壊れかけて上手く鳴らなくなったことと、他のオモチャ(当時はNゲージの鉄道模型等にハマっておりました)を買う資金が必要なため、結局それはEX-100相当のままアップグレードすることはありませんでした。おそらく当時のまま現在も実家の物置に眠っているはずです。

 して、今回のブツは当時のもの(未使用)をヤフオクで1万円で落札してみました。よく未使用のブツがあるなぁと思いますが、実は古いオモチャ屋さんのデッドストックなんかが結構出ていたりします。最近は「大人の科学」から復刻版が発売されていますが、かなりの人気のようで、申し込んでも2ヶ月待ちという状態のようです。どうやら当時高価だったために手が届かなかった人たちが昔を懐かしんで購入しているようですね。

ちなみに余談ですが、当時の私の友人であるA.S君は私が電子ブロックで遊んでいるのを知って、いきなり親にEX-181を買って貰ってました。子供心に貧富の差というか教育方針の違いというか、そういうのを実感したものです。でも、労せずして手に入れたものって使い倒さずにホコリを被ることが多いんですよねぇ。彼のEX-181は現在どうなっているのでしょう…。

中身

いや〜、やっぱり150ですよ!150。 下位機種と違ってブロックはギッシリ詰まっています。そして、右側のアクセサリーも全部入ってます。EX-120以下だといろいろ抜けているんです。

本体側にも最初からアンプユニット、アナログメーター、カドミウムセルが組み込み済み。当時はなかなかメーターまで手が届かなかったんだよなぁ。メーターはEX-150までアップグレードしてようやく装備されるパーツですので。

ちなみに復刻版は、箱が小型化されているようで、発砲スチロールのケースではなくなっています。

ラジオの回路

で、早速回路ナンバー41のラジオを組み立ててみました。回路集にはいくつかのラジオの回路が載っていますが、この41番のラジオが一番出来が良いです。

しかし、組み込んでみても全然音が鳴りません。何度回路を確認してもNG。どうやらいきなり壊れているようです。うむ、そうこなくては面白くありあません(謎。未使用とはいえ、製造後20年以上も経過してますからねぇ。いろいろ補修しないとならないみたいで。


アンプユニットの補修

アンプからまともに音が出ない上に、ボリウムがガリガリなので、これを直します。まずは電解コンデンサの交換ですが、古いAV機器の補修では定番ですね。

基板上にはアンプICとしてLM386が1個載っており、他に電解コンデンサが5個、抵抗1本というシンプルな回路構成。スピーカーは6センチの8Ωですので音質は期待できません。

てなわけで、この電解コンデンサを全て交換しました。ちなみにアンプの石は現在でも簡単に入手できるものなので、故障時の交換も容易です。秋月電子なら1個80円(2002.7月現在)。この石はヘッドフォンアンプの製作でも使えるので、ウチでは10個ほどストックしています。
ボリウムのガリを取る

ボリウムツマミを回した時にスピーカーからのガリガリノイズが酷いのでここを直します。

この可変抵抗は内部へ簡単にアプローチできますので補修も簡単。まずはマイナスドライバーでツマミを取り外します。

中の黄色い蓋を取ると内部はこうなっています。接点のところにCRC556(あるいは接点復活材)を一滴しみこませれば完了。1滴でも十分すぎるくらいです。くれぐれも流しすぎてオイルまみれにしないように。樹脂製品はCRC556で浸食されるので余計なところに付けると劣化を早めます。
ブロックのケミコンも交換

ブロックにも電解コンデンサが入っているパーツが3つありましたのですべて新しいコンデンサに交換しました。

これで、ラジオが鳴る…と思いきやまだ鳴りません。どうやら一部のブロックの接点が腐食して接触不良を起こしているいるようでした、これらを磨いて組み直したところ、正常に音が出ました!

思ったより感度の良いラジオです。ボリウムのガリも取れましたし、音量も十分です。

ちなみにブロックの接点は銅にスズメッキされているようです。磨きすぎるとメッキが剥がれて銅が露出してしまうのでほどほどに。


付属パーツ

さて、補修が終わったので各部の紹介とします。

付属品ですが、左上から、クリスタルイヤフォン、マイク、クリップ付き60センチコード、アンテナ線、テスター棒です。

クリップ付きのコードはお風呂センサーの時なんかに使います。このマイクですが、復刻版だと作りが違うようですね。復刻版はプラスチック製になって安っぽいです。ちなみにマイクはEX-120以降での装備で、EX-100以下の場合イヤフォンで代用できるようになっていました。

メーターとCds

メーターの横の穴の中はこうなっています。光センサーであるカドミウムセルが仕込んであるわけですが、当時の小学生はこれを見て、暗くなると街灯が勝手に点灯する仕組みを知ったもんでした。私はイタズラで電話ボックスの光センサーのところを手で押さえて暗くして、昼間に明かりを点灯させたりして遊んでました。
解剖図

では、いよいよ当サイトお約束の内部の紹介へと移ります。復刻版ではかなり作りが変わっているようですが、オリジナルはこうなってます。復刻版の分解については裏ニュワというサイトで解説されていますのでご参照のこと。

復刻版では、アンプユニットが直付けになって着脱不能になり、それに伴ってVR、Cds、電源スイッチが一枚の基板に集められているようです。

部品が集まっているところを拡大。このEX-150ならば全部埋まっていますが、EX-30以下だと、アンプも無し、メーターも無し、カドミウムセルも無しと実に寂しい状態になっています。

さらに拡大。こんな構成です。バーアンテナとバリコンはラジオの回路くらいでしか使いませんが、当時としてはラジオが組めるということ自体が大事なことでした。当時は「初歩のラジオ」とか、「ラジオの製作」といった電子工作系雑誌が刊行されていましたが、これらの雑誌名が示すようにラジオを作るというのは電子工作の初歩だったからです。

しかし、その後PC(当時はマイコンと言いましたが)が低価格化と共に家庭に浸透して行き、子供の遊びとしての電子工作は廃れ、コンピュータでゲームをしたり、プログラムを組むことが遊びの中心となってゆくのでした。


総評

いかがでしたか? 昭和50年代の小学生の憧れのオモチャ、電子ブロック。今の子供にもこういうオモチャで遊んで貰いたいと思うのは私だけではないはず。今、復刻版が大人気のようですが、実は自分の子供に買い与えているお父さん方も多いのでは?

 ちと残念だったのは、付属の回路集での部品や回路の解説が乏しかったこと。紙面の限られたスペースでは、各パーツの役割や特徴について小学生に分かるような解説がされていませんでした。よって自分も含めて電子ブロックで遊んだ子供のほとんどが回路のなんたるかを理解できなかったと思います。まぁ、それでも回路集の通りに組んで書いてあるとおりに動作するだけでも面白かったですがね。

 余談ですが、私は、今の子供はテレビゲームをやりすぎだと思います。他人の作ったシナリオをなぞるだけの遊びでは、創造性を養うことは出来ないでしょう。テレビゲームはある程度の趣味、嗜好、人格が形成された後にやるべきであり、小中学生のすべき遊びでは無いと考えます。こういった遊びが横行した弊害として現代の若者は消費することには長けている一方で、自ら何かを作り出す喜びを忘れていると思います。当時はこの電子ブロックの他にも、メカモ(これも憧れの高級オモチャでした)のような組み立て玩具が多く発売されていました。現代においても、こういう組み立てる喜びを味わえるオモチャがもっとあっても良いと思うのは私だけでしょうか。

そういう意味で私はラッキーな子供時代を過ごせたと思います。消費するだけしか能のない人間を量産するのはもうやめませんか? 世のお父さん、お母さん方。


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