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〜National ジャンクVTR NV-DS1 を修理〜


National S-VHS Hi-Fi Video NV-DS1

今回は松下デッキの中でも異色のデジタル機能付きS-VHSデッキを修理することにします。バブル時代全盛期には、9画面マルチだの、Pincure in Picture(PinP)だの、ストロボ、モザイク、油絵化(色階調を減らす)といったデジタルで映像のお遊びが出来るVTRが各社1つくらいはラインナップに加わっていました。その中では松下は非常にやる気の無かったメーカーの一つで、そういう機能が付いていたデッキはノーマルVHSでNV-D21、S-VHSではNV-DS1しか無いと思います。しかもこのDS1はあまり数が出なかった機種らしく、いわゆるレア物の類に入るらしいです。

オークションで出品されていたので2600円にて落札。初期価格500円だったのが2600円なのでレア度を反映していると言えるかと。

ちなみにこのデッキは古いです。まだPanasonicになっておらず、Nationalです。

ちょっと古風な操作パネル

操作パネルですが、NV-BS5等に近いスタイルです。さすがNational時代のデッキです。ボタン配列もその後のモデルよりは洗練されていませんが、だいたい機能的には同じです。

ちなみにまだデジタルトラッキングはありませんで、手動でスライド抵抗をいちいち合わせないとなりません。オートトラッキングに慣れてしまうとこれが結構面倒です。特徴的なのは矢印の「デジタルNR」ボタンです。原理は分かりませんが、フレームメモリを利用してノイズを除去することができるのでしょうか。私が持っているNECのデッキVC-DS910にはデジタルノイズワイパーが装備されており、フレームメモリを利用して、画面の前後で演算。差分の大きな物をノイズとして吸収するという方法を採っていました。結構効果的で、受信感度の悪いテレビでもそのデッキを通して鑑賞するとそこそこまともに見えてしまうというメリットもありました。このデッキではどうなのだろう…。

誇らしげなデジタル機能

本体の顔には、まだこんなステッカーが残っていました。Sデッキが珍しかった時代です。旧字体のSVHSロゴが誇らしげです。

また、赤く印字されたDIGITALの文字がなんとなくカッコイイですね。

ちなみにVASSが装備されているのが時代を感じさせます。録画時に任意のインデックス番号を記録でき、頭出しに使えるというものですが、なぜかその後消えた規格です。


メンテナンス開始

ちなみにこのデッキは、「チューナー、録画不可」との説明付きのジャンクでした。しかし、動作試験したところ、S-VHS不可、録画OKでした。チューナーは別に使うつもりが無いので試してませんが…。

S-VHS不可の方はあの有名なHICが原因であると用意に推測できますね。早速調べてみましょう。まずはトップバーを外します。見た感じはFS2桁機と大体同じですが、基板は全然違う物でした。

カセコン

メカのメンテのためにカセコンを解放します。このカセコンはだいたいその後のGメカで使われている物と同じようです。

もはや定番の接点クリーニング

カセコンの構造は同じでしたが、このスライド接点の構造は若干違っていました。

まぁ、いつものように接点を洗浄して接点グリスを塗っておきました。カセコンを解放した時には必須のクリーニングです。

メカ(表)

で、メカとご対面なわけですが、このデッキでは旧Gメカでした。ガッカリ。まぁ、National時代だから無理もないですねぇ。このメカは以前に扱ったNV-G45と同じメカで、鬼のように動作がトロいメカなのです。頑丈さではピカイチなのですが、動作の切り替えが非常に遅く、使っていてイライラします。

消耗品チェックしましたが、一度メンテナンスされているようです。ピンチローラーその他もまだまだ生きていました。

やっぱりあったHIC

S-VHS不能を修理するために例のHICを探します。ありました。ここです。映像関連のサブ基板にちょこんと付いています。後で取り外して修理することにします。

裏側

機体裏側へ回って基板をチェックします。左側には大きなシールドケースのお弁当箱がありました。たぶんデジタル関連の基板が入っているのかと。メカの裏側にも映像関連の基板が取り付けられています。基板の多い機種ですねぇ。

メカ(裏)

基板を剥がすとあの低速Gメカの裏へアプローチできます。やはりモーターはキャプスタンモーターとドラムモーターしかないようです。ある意味これだけモーターを減らせたという設計力は凄いのですが、こんなに動作が遅くては…。

デジタル映像関連基板?

メカ裏を覆っていた基板ですが、お弁当箱からのケーブルが多数入っていたので、たぶんデジタルエフェクトと深く関わっている基板だと思います。詳細不明。

ここにはHICの類は存在していませんでした。

シールドケースの中

お弁当箱の中です。

カスタムチップ?

MATSUSITA MN4700 なるチップが2つ。何の石でしょうか。フレームメモリー? デジタルエフェクトにかなり重要な役割を果たしている石だとは思いますが…。

2001.01.21追記 BABAXさんからの情報

 MN4700は下記資料によりますとお察しの通り、1Mビットのフレームメモリとのことです。にがさんの写真ではQFPタイプなのでMN4700Fのようです。
 まぁ、こんな情報があっても応用できそうもありませんが・・・。
  
  MN4700,QFP-64PIN,アクセスタイム20ns,+5V単一電源,NMOS。どうやら、東芝のTC521000Pと互換のようです。

 参考資料
松下電子工業(株)1991年9月第二版半導体早見表 P47,50

シールドケース裏側

弁当箱裏側です。ていうか、基板で言えば表側ですが。それほど実装密度は高くありません。

ここにもHICの類は存在していませんでした。


定番のHIC補修

さて、一通りのチェックが完了したので問題のHICを修理します。メイン基板に付いていては作業が出来ないのでこのサブ基板をいつものように半田吸い取り器を使って取り外しました。

補修開始

ちなみにこのHICの取り付けられている基板はスルーホールです。しかも全部の足がスルーホールなので取り外しにはそれなりに高度なIC抜き取り技術が必要です。

このHICでは見た目噴いているように見えませんでしたが、症状から考えてまずダメになっているのは間違いないでしょう。

コンデンサを破壊して取り外しましたところ、やはり足の腐食が認められました。間違いなく噴いています。

ということでいつものように背の低いコンデンサに張り替えておきました。もうこの作業にもスッカリ慣れましたよ…やれやれ。嬉しいやら悲しいやら。

元の基板に実装。違和感無し。


ヘッドがぁ…

で、動作確認したのですが、S-VHSの3倍モードで反転ノイズが出まくりでした…。ぐはぁ〜。ヘッドを調べてみましたが、ご覧の通りです。錆びてます…。洗浄しても落ちませんでした。

摩耗+腐食でこのヘッドはダメダメです。まともに使うには交換が必要ですねぇ。ちなみにこのヘッドは7ヘッドのようです。FEヘッドが一つ付いています。


総評

一応S-VHSが復活したのでその他の動作を見てみました。すると、なんと、デジタルNRがご臨終していました。ぐはぁ〜。スイッチを入れると色が滲んで鑑賞に堪えません。おいおい、折角のデジタル機能なのにこれが死んでいたら全く存在価値がないじゃないか…。ちなみにこのデッキでは9画面マルチとか、ストロボとかの機能があるはずなのですが、それを使うにはリモコンが必要です。今回のジャンクにはリモコンが附属していなかったので、NRと静止画像以外のチェックはできません。

ちなみに買った直後のチェックでは、デジタルNRをOnにしても色にじみは出ませんでした。弄っている内に壊したのかも知れません。でもそのときOnにしてもほとんど違いを見いだせなかったのですが…。

ヘッドもご臨終のことですし、わざわざ新しいヘッドを買ってまで直す価値は無いと判断。このデッキは半永久凍結、あるいは部品取り用としてオークションに放出するかも知れません。もし読者の方で欲しい方がいらっしゃいましたらBBSへどうぞ。あるいは部品取り機やリモコンをお譲り頂ける方、BBS、またはメールでご連絡お願いします。

散々弄りましたが、結局、標準モード専用機としての利用しかできない機体にするのがやっとでした。あぁ、敗北だ。


2001.01.20 追記

デジタルNR時のカラーノイズの原因は何だろうと思って電源を調べてみました。FS90で再生時のノイズが電源由来であったことが判明したからです。例えそうでないとしてもこの時代の電源のケミコンであれば大抵噴いていることが多いので一応調べることにしました。

FS90で激しく噴いていたメタリックブルーのケミコンを外しました。やっぱりヌレヌレになっていました。

これがそのケミコン。

噴いた電解液により自らを腐食させています。バカですねぇ。ちなみに噴くときにはマイナス極から噴きます。そういう構造らしいです。

とはいえ、漏れた電解液によってパターンがショートなんてしようものなら、基板のパターンが電熱線と化して、発煙、発火の恐れがありますから交換しておいて正解でしょうな。

ちなみに交換後もノイズは消えませんでした(爆)。


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