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〜Panasonic 最高峰バブルラジカセ RX-DT909〜


Panasonic PORTABLE CD STEREO SYSTEM RX-DT909

前々から探していましたがようやく近所のハードオフで保護しました。松下のバブル時代の最高峰CDラジカセ「RX-DT909」です。このラジカセは松下のバブルラジカセの中でも機能面、デザイン面、音質面でのバランスが取れた最も優れたモデルだと私は思っています。音質は一世代前のDT99の方が良いという話はありますが、このモデルでもラジカセとしては非常にクオリティの高い音質を誇っています。

機能面では、ダブルカセットがメタル、ハイポジテープ対応、ドルビーNR対応。X-SBS(重低音増強機能)10段階、テクノサラウンド機能、スペクトラムアナライザー(スペアナ)、グラフィックイコライザー(グライコ)(プリセット4種類の他ユーザー設定可能)、外部入力端子、CD出力端子、音声時計、2way高音質スピーカーってなところでしょうか。ラジカセとしては至れり尽くせりで、どちらかというとミニコンポに近い性能です。いわば、持ち運び可能なミニコンポってなところです。

このラジカセが現役販売だった当時、私は友人に勧めてこのラジカセを買わせた記憶があります。クラシックを好む友人だったので、選択としては正解だったでしょう。その友人が今でも使っているかは不明ですが…。電動可動操作盤「コブラトップ」が動く様が印象的でして、個人的にも思い入れのあるモデルでした。

ちなみに今回の機体は、本体のみジャンク扱い、「動きました」と値札に書いてあって3000円。リモコンは別で500円でした。


コブラトップの天板には、Bi-AMP 4-DRIVEと書かれています。要するに4つのスピーカーにそれぞれのアンプが付いているという意味らしいです。また、AI VOICE / COBRA TOP MOTORIZED CONTROL とも書かれており、音声時計と電動コブラトップがこのモデルのウリであったということが分かります。

とりあえずバラす

さて、早速メンテ作業に入ります。動作試験ではCDプレーヤーで若干の音飛びを発生させていましたし、細かい汚れが目立ちますのでこの点を改善させます。

まずは背面から長いネジを外してスピーカー部分とメイン、を分離します。スピーカーユニットの付けられている部分とメインの部分は直づけコネクタで繋がっており、ケーブルは使われていませんでした。外すときに少し大きな力を必要とします。

製造年

ちなみに内側にはこんな刻印が。このガワ自体は91年の6月に製造が開始され、この機体は92年の6月あたりに製造されたと推測されます。

ちなみにこのラジカセは電源ケーブルがメガネ型コネクタで外付けなので、電源ケーブル年代測定法は使えません。

後ろのカバーはスピーカーのエンクロージャを兼ねており、右側には電源基板が付いていました。電源はトランス電源です。また、エンクロージャには背面方向に長いバスレフポートが通っています。


メインユニット

メインのユニットはこのような形で取り出せます。非常にメンテナンスしやすい設計で、それぞれが簡単に切り離せます。このあたりは松下らしい煮詰まった良い設計だと思います。まずはCDプレーヤーを取り外しますが、これはネジで固定されてないのでフレキケーブルを痛めないように注意が必要です。
CD部分のメンテ

取り出したCDプレーヤーユニット。フレキ1本ともう一本のケーブルでメイン基板と繋がっていました。

てなわけで、お約束のレンズクリーニングです。今回は音飛びが軽度だったので表面の清掃のみにとどめました。

クリーニング液としてはお約束の「イソプロパノール(別名イソプロピルアルコール)」を使用。ちなみにエタノールは樹脂製であるレンズが劣化するらしいので御法度です。イソプロパノールは薬局薬店にて消毒用が安価で買えます。エタノールより安いですので各種洗浄にもオススメ。

カセット部分のメンテナンス

カセット部分のカバーはネジ3本とツメ2カ所で固定されていますのでこれを外します。するとこうなります。

さらにネジ6本を外すとこれが取れます。ケーブルは使用されておらず、コネクタで直付けでした。完全にユニット化されています。lこのユニットはダブルリバースで、右側のみ録音可能です。勿論ハイスピードダビングにも対応していますが、今となってはカセットのダビングなど無用の機能となってしまっていますね。私はもうCD、CD-R主体なため、ほとんどカセット使わないんで。編集も焼き込みもCD−Rで行った方が速いですしね。

今回はとりあえず埃を綺麗にしておきました。

ちなみにこのカセットユニットの弱点ですが、このリーフスイッチの接触不良を生じやすいそうです。誤消去防止ツメ検知、メタルテープ、ハイポジテープの検知用の他に、カセット挿入検知のためのスイッチが並んでいます。これの接触不良が生じると、カセットテープを挿入してもそれを検知できなくなり、録音再生が不能になります。

幸い、この機体は内部の汚れは軽度で、カセットホルダーの中も埃が少なかったことから、あまりカセットは使われていあんかったようです。リーフスイッチの接触も問題ないようです。

ちなみにリールの駆動は平ベルトドライブでした。経年するとすべりを発生させるのは避けられません。この機体ではまだ大丈夫そうでしたが、いずれ交換が必要になるでしょう。


スピーカーの清掃

さて、スピーカー部分を清掃します。パンチングメタルの内側には結構ホコリが貯まっていますので、スピーカーを外して内部を綺麗にします。

2way構成なので、ウーファーとツイーターがついていますが 、ツイーター側には白い樹脂製のエンクロージャが付いていました。音源の定位性の向上のためでしょうか。ウーファーは2.7Ωと低めのインピーダンスとなっています。マグネットも大きめでイイ感じです。

バスレフポートは前述の背面のものと前面のもの、つまりダブルバスレフとなっています。バスレフの長さや太さは容積などから計算して設計しないと変な音になるらしいです。詳しくはここに解説されています。

ツイーターのエンクロージャを外すと8Ωのスピーカーが現れました。

両方のスピーカーを取り外してみました。ウーファーのエッジは布製。センターキャップはなにやら樹脂製のようです。スピーカーにもホコリが付着していましたが、軽く乾いた雑巾で落として掃除機で吸いました。コーンは紙製なので濡れたもので拭くとケバ立つので。

てなわけで、パンチングメタルの内側を綺麗にして戻しておきました。


カセットとコブラトップを取り外したメインユニット。ここから下はあまり汚れていなかったので分解はここまでとしました。

このラジカセの核となるアンプ回路。アンプ用と思われるIC2個に大きいヒートシンクが付いています。これがご自慢の「Bi-AMP 4-DRIVE」ってやつなんでしょう。


電動コブラトップ

さて、整備が終わりましたので使ってみます。これがこのラジカセ最大の特徴であるコブラトップ。電動で持ち上がる様が、コブラが鎌首をもたげる様子を彷彿とさせることから付いた名前と思われますが、実にいい味を出しています。わざわざモーターを仕込んでリモコンで開閉できるところあたり、そのバブリーで無駄な設計がイイ感じです(爆)。ちなみにこの一つ後の機種では「マジカルコブラトップ」という手を近づけるだけで開閉するという、「さらに無駄な機能」が付いていました。

パネル内部右側にはジョグダイヤルが装備されています。一見ボリウムつまみのようにも見えますが、こいつはトラックの移動や各種設定に使うようになっています。

パネルのアップ。主立った操作はここで行うようになっています。下位機種のDT707ではこのスペアナが省略、グライコの操作ボタンや音声時計関連ボタンが目隠しとなっていました。ちなみにさらに下位機種のDT505ではコブラトップさえ省略されており、全体に小振りのまったく違う設計になっています。ちなみに液晶にはバックライトが装備されており、DT909ではグリーンに点灯します。
前面操作盤

コブラトップに力を入れているために前面のボタン群はシンプルです。カセットとCDの簡単な再生と停止はコブラトップを開けなくても操作できるようになってはいますが、CDのトラック移動ボタンが無いのはイマイチかも。リモコンを使えば楽勝ですが、本体でトラック移動させるためには前述のジョグダイヤルを回して、前面の再生ボタンを押すという離れた所にあるボタンの2アクションの操作が必要だったりします。

どうもこのボタンの構成を見る感じでは、カセットの使用の方に重点が置かれているような印象ですね。まぁ時代が時代なので仕方ないのかも知れませんけど、今となってはCDの方に重点が置かれた方が良かったと思います。

ボリウムは前面の+/-ボタンで行います。ダイヤル式ではありません。個人的にはモータードライブのボリウムツマミなんか付いているとさらにバブリーでよさげだったと思うのですが。

専用リモコン

同じ店のリモコンジャンク売り場に放り込まれていた専用リモコンです。型番はRAK-RX505W。型番からするとDT505用?と思いきや、音声時計やコブラトップ関連のボタンがあるのでDT909専用と分かりました。

全ての操作はこのリモコンでできるようになっているようですが、リモコンが無くても本体だけで時計合わせ等必要な操作ができるあたりはさすが松下です。

下位機種と違ってグライコや音声時計がある分、操作ボタンが多い大きめのリモコンとなっています。

ちなみに音声時計はいくつかのモードがあり、ボタンを押すことで現在の時刻を教えてくれるほか、指定した時間までカウントダウンする機能まで付いています。音声が出るときには、再生されている音が少しレベルダウンします。なかなか凝った作りです。


総評

てなわけで、当時憧れだったバブルラジカセを安価にゲットできて満足です。整備後はCDの音飛びも解消され、完全動作しています。こんな素晴らしいラジカセを動作品のまま手放した前オーナーは、MDに乗り換えちゃったりしたのでしょうかねぇ。MDなんて音質落ちるし、メディア代がCD-Rより高いし、イマイチだと思うのですが。ちなみに私はアンチMD派で、一生MDは買わないつもりです。CD−Rと比べるとクオリティ、価格というデメリットの上に、私には何のメリットも無いので。MDのメリットなんてせいぜいポータブルプレーヤーがコンパクトに作れるという程度でしょう。

コブラトップを閉めた姿ですが、デザインも良いですね。外に出ているのは最低限のボタンのみで、ごちゃごちゃした操作系は蓋の中、というバブル時代にありがちな設計です。時代的にはこの後急速に丸っこいデザインが流行した(かなりヤリスギだと思います)のですが、この909のデザインが角過ぎず、丸すぎず丁度良いと私は思っています。

ラジカセとしての最終目標が手に入ったので、これ一台あればもう他に大型ラジカセは要らないような気がします。この不景気なご時世、こんな気合いの入ったラジカセはもう作れらないんでしょうねぇ…。


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