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〜Panasonic VTR ジャンクNV-DX1を修理する〜

パート2 「メーカー修理編」


Panasonic S-VHS DA NV-DX1

さてさて、自力修復に失敗し、敗北が確定したこのDX1ですが、メーカーに送り出してから間もなく電話連絡がありました。「かなり(2週間以上)時間が掛かりそうだが構わないか」という問い合わせです。別に急いで使いたいわけでもありませんし、そもそも落札してからここまで2ヶ月の歳月を要しています。この際時間がかかろうとキチンと直るのなら問題なし。ということで勿論OKとして、修理続行して貰うことにしました。

その後3週間くらい経ちましたが、まだ連絡が無かったので、別の機体のパーツを注文がてら、進行状況を修理に出したお店に聴いてみたところ、なんと「大阪送り」になったとのこと。私は北海道在住ですぞ。北海道→大阪ということはよっぽど直しにくい故障と考えて良いのではないでしょうか。

最終的に、修理依頼をしてから約4週間掛かって、修理完了したとの報がありました。修理代金は17700円だそうで。早速引き取って参りました。

帰ってきた機体ですが、どうもサービスセンターで薫製にされたようです。内外からタバコのヤニ臭さが感じ取れました。サービスセンターでは客から預かった機体を喫煙所で保管するのでしょうか。まさかくわえタバコで修理しているわけじゃないでしょうねぇ。私はタバコの臭いに非常に敏感です。一瞬、この野郎!と思いましたが、まぁ今回は大目に見ることにします(偉そう)。

交換パーツ

帰ってきた機体に添付されていた交換パーツ群。

VCR0363. VCR0365は私が注文して交換したパーツですので、新たに交換されたのは、VCR0366と、「MN188166VSDB」なるフラットなICです。

尚、袋に「新」「旧」と書かれていますが、VCR0365は新しいのに交換したときに症状の増悪があったため、メーカー送りにしたときに私が袋に新しい方を入れて「新」と書いておいたものです。

帰ってきた袋には古い方が入っていましたので、どうやら交換された模様です。IC初期不良説は否定されたのかも。

サービスマンが弄った跡を検証します。ブラックコーティングのIC3つの他に、2つのハイブリッドICも疑ったようです。これらの丸のICの足に半田を外されたような跡を認めました。交換はされていないようでしたが。

外された跡はこのようになっています。ケミコンの載っていないICも怪しかったのでしょうか。
ちなみに半固定抵抗には回された跡がありませんでした。私がマーキングした位置からずれていません。特に微調整は必要無かったようです。

今回の不具合の最大的要因だと思われるIC。

「MN188166VSDB」なる長ったらしい名前のICですが、フラットパッケージのカスタムチップっぽいです。

こんなのが壊れていたとは、道理で自力修復できないわけです。こんな故障判るわきゃねーだろ!と言いたい。

それにしても、恐るべしサービスマン。よくぞこんなICの不良を見つけてくれたものです。技術力の無いサービスマンならば、安易な基板交換へ逃げて高額な修理代を請求するところでしょうが、さすが松下テクニカル大阪です。ゼロから物を造った人にはかないませんね。サービスマンの方には素直に感謝したいと思います。ご苦労様でした。(ここ読んでるかな?)

まぁそれはともかく、どうしてこんな石が壊れたりしたんでしょうかねぇ…。

で、問題のICはシールドケース内の基板の裏側に実装されています。この他にもいくつかフラットパッケージのICが張り付いており。結構集積度は高い基板ですね。

張り替えた後のIC。

半田付けの綺麗さは尋常じゃないです。人間の手で半田付けしたとはとても思えません。何か特殊な工具でもあるんでしょうか。

ということで、問題のありそうなHIC3個と、今回の責任病巣であろうこのICが交換された結果となりました。

最終的な修理代金は17700円(メーカー修理)+5700円(HIC2個)=23400円となりました。最初からメーカーに送ればHIC2個の値段は安くなったのでしょうが、まぁ仕方ないですねぇ。


復活!

苦節3ヶ月にしてようやく完全動作品になったので、機能などの紹介に移ります。

外装、内部ともにBS900に似ているDX1ですが、フロントパネル内部もクリソツです。ボタン配列は全く同一。ただ、色は内部もシャンパンゴールドであり、高級感倍増ですね。スイッチ類はBSチューナーが無い分、代わりにACオンライン、ワイドテレビ切り替えスイッチが増設されています。オーディオレベルツマミはセンター位置で引っかかりが無い作りでした。

カセット挿入口の蓋ですが、たぶんアクリル製です。裏側から塗装されており、見た目がクリアーで美しいです。

FL管

FL表示部。見たところ全くヘタりが感じられません。この時代のデッキは電源を入れておくだけで表示がある程度ヘタっているのが普通なのですが、電源すら入っていない時間が長かったということでしょうか。おそろしく程度の良い機体です。

ちなみにこの時代に流行りを見せたワイドテレビ対応ということで、「WIDE」の文字と、インジケーターが付いていますね。ワイド放送を自動認識してソレように記録するというもののようですが、私的には4:3ソースが主体なので割とどうでも良かったりしますが。

DA操作パネル

パネル右側。

BS900と同等のビデオイコライジング機能に加え、デジタルオーディオ関連の操作がここでできるようになっています。

デジタルオーディオ使用可能な時にはDAランプが点灯、入力されたデジタルソースに応じて、32kHz, 48kHzのランプが点灯する仕組みです。尚、44kHzには非対応。これはCD(44kHz)の著作権を守るという配慮だと思います。

ですが、今時のデジタルメディア、特にスカパーやDVDは48kHzが主体なのでむしろこの仕様は歓迎であります。

背面端子群

背面端子群。

フレームがBS900と同等なので、配列もほぼ同じ。映像、Hi-Fi音声用のコネクタは共用パーツのようです。残念ながらHi-Fi音声用のコネクタは金メッキではありません。共用パーツだから仕方ないのかも知れません。

BS900ではBS関連の端子がここに配列していましたが、DX1ではその代わりにデジタル音声関連のコネクタ類が下部に付いています。Hi-Fiトラックとは完全に独立して記録され、入力は前面のスイッチにより、アナログ、デジタルのどちらかが選択可能。また、光と同軸はここで切り替えるようになっていました。

ちなみにこのDAトラックは映像信号と同じヘッドで映像と同時に記録されるようです。詳しくは知らないんですが、記録する周波数帯域を分けているのでしょうか? よって、デジタル音声信号はビデオアンプから一度映像基板に入ってそこからDA関連回路へ取り出されています。映像関連基板が新設計だったのはそのためだと思います。S-VHS DAの仕様としても、映像と一緒にDAトラックを記録しなければならないという制約がありますし。

ちなみにDX1はBS900との共用パーツが多い関係からか、DA関連の端子群は他社製のDA搭載機よりアッサリとしてますね。前面にデジタルオーディオ端子が無いのが残念です。あれば結構使いやすかったのに。

最後にサイドウッドです。今までの松下機とはまったく性格の違うサイドウッド。美しい木目仕上げに加えて表面加工も塗り物のような手触りでなんとも言えずイイ感じです。このデッキ、とにかく手触りからして違うんです。カバーが上下ともに防振加工されてますし、外装の凝り方が尋常じゃありません。完成度はあのFS900以上です。

外装の名機FS900と、メカの名機BS900の良いところを合体させたような作り込みであり、Vシリーズを除けば松下民生VTRとして最強かと思われます。


総評

DA機能をいろいろ使ってみましたが、なかなかイイ感じです。やはりデジタルそのまんまというのは音の解像度が失われないため、デジタルメディアからの録音には最適ですね。スカパーのチューナーに増設した光デジタル音声出力端子を活用してガンガン録画しようと思います。スカパーは48kHzなので相性もバッチリです。とりあえず今まで使っていたBS900とリプレイスしてメインシステムに組み込みました。ヤマハのAVアンプに光デジタルで接続しましたが、問題なくデジタルでの録音再生ができています。

結果として43900円での完動品入手となりました。今回はコスト度外視での入手でしたが、これだけの高級感のある機種で程度もよく、メーカーでの整備が完了しているので金額的には満足です。また、自力修理には失敗しましたが、あのようなICの故障では自力修理なんて到底不可能だったわけで、「負けて悔い無し」という心境ですね。

 とにかくメーカーの技術力には恐れ入りました。なんだかんだ言っても最終的にはプロにはかないませんね。この機体を修理してくださった松下テクニカル大阪の技術者の方には感謝する次第です。


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