にがAV

〜Panasonic VTR NV-F600 を修理する〜


Panasonic NV-F600

 このデッキは大学の後輩に修理依頼されたものです。時代的にはFS65、FS70等の「FS2桁機」の一つ後で、FS700や、FS900と同様、バブル時代末期のものです。FS3桁機以降になると若干のコストダウン傾向が認められます。しかし、この機体はHi-Fi普及機ながらメカは上位機種同様インテリジェントターボメカが採用され、非常に強固です。本体側にジョグシャトルを搭載し、アモルファスプロヘッド採用。なかなか凝った作りです。販売当時は「れんたろう」の名前で売られていました。当時はレンタルビデオ普及期で、レンタルビデオを見るという目的でデッキを購入した人も多かったのです。各社レンタルビデオをより綺麗に見せることに力を入れており、ノイズリダクションや、ソフトネス調節に対して、「レンタルポジション」、「レンタルスイッチ」等の名前が盛んに付けられていました。私は違和感を禁じ得ませんでしたが(笑)。

今回は写真を取り忘れたため、事後に所有者からデジカメ画像を送ってもらいました。よって画質がいつもと違いますがご容赦を。

ユニークな操作系

 このデッキの特徴はポップアップ式のジョグシャトルでしょう。シーリングパネルを開くと、斜め上にポップアップして回しやすくする配慮が見られます。操作パネルもFS2桁機同様、本体側で一通りの操作が出来るようになっています。普及機なのでボタンやスイッチの類は減りますが、機能も少ないのでそんなものでしょう。

残念なのは、音声入力レベルメーター、入力レベルツマミが無いこと。Hi-Fi機には必須だと思うのですが…。しかし、ヘッドフォン端子はまだ健在です。昨今の普及期にはまず付いていませんが。


故障状況の検証

さて、今回の機体は修理歴があります。ヘッド摩耗により上シリンダーを交換したとのこと。修理費用は2万円だったそうです。ヘッド単価が12000円なので、技術料を入れればそんなものでしょう。ただ、ヘッド交換は半田吸い取りの技術さえ有れば難しくないので原因がヘッドだとハッキリしているのなら自力交換した方が安上がりです。

今回の故障内容はテープ走行系でした。再生すると間もなく勝手に停止してしまうとのこと。早速中を空けてみました。まず、早送り、巻き戻し、再生などの基本操作行ってみました。早巻きは問題なしです。したがってキャプスタンモーターは回っていることになります。

再生すると確かにテープがリールに巻き取られていきません。こういう場合は、リール台が回らないか、ピンチローラが回らないかのどちらかです。今回の場合再生してもテープが走行しませんが、テープが内部にビロビロ飛び出すこともありません。したがってピンチローラーが働いていないということになります。もし、ピンチローラが生きている場合、引き出されたテープがデッキ内部にビロビロ飛びだしてくるからです。

ピンチローラー

品番 VXL1858
品名 プレッシャーローラー
価格 700円

早速取り出して調べてみました。表面の劣化は大したこと有りません。しかし、軸受けがガタガタです。これでは十分な圧力がキャプスタンにかからず、テープを引き出せません。ということで交換。

クリーナーアーム

品番 VXL2085
品名 クリーナーアーム
価格 200円

これを見てびっくり。一度メンテに出したとは思えない汚さでした。クリーナーアームの欠点は経年変化で汚れると、かえってヘッドを汚す原因となってしまうこと。汚れた場合、台所洗剤で洗えば再利用可能ですが、新品を買っても高々200円なので交換しました。

ついでに走行系クリーニング&グリスアップ。ヘッドが摩耗するほど酷使されただけあって、内部(特にピンチローラー付近)には磁性体のカスがベッタリと積もっていました。前回のメンテでは掃除されなかったのかなぁ…。

ちなみに、このクリーナーですが、どうもこれが装備されている機体はヘッド摩耗が激しいような気がします。そもそも普通のインテリジェントターボメカは元々クリーナーが付く設計ではなかったからです。このメカは動作モードに従ってハーフとフルローディングを頻繁に切り替えますが、クリーナーアームはローディングポストと連携しているため、ローディングが切り替わる度にいちいちヘッドがクリーニングされてしまうのです。ちょっとやりすぎな感じ。丁度ヘッドクリーナーをデッキに内蔵するのが流行した時代なので急ごしらえのシステムだったのでしょうか。どうもこのクリーニング機構には無理を感じてしまいます。使用頻度が高い機体だったら、むしろ外した方が良いかも知れません。テープを走行させていれば、ヘッドが汚れることはあまりないからです。むしろ、使用せず放っておく方が空気中のチリが付着してヘッドは汚れます。テープ走行させれば自然にクリーニングされますので。

ちなみにこのすぐ後に出た「新快速メカ」の場合常時フルローディングなのでテープの挿入と取り出しの時だけクリーナーが動作するようになっています。NV-BS900、FS800等に採用されているメカですが、この場合はそれほどヘッドの摩耗は無いようです。


総評

一度メーカーメンテに出したとのことでしたが、消耗品は全く交換されていなかった模様…。2万円を請求する仕事ならばそこまでやって欲しかったですねぇ。どこの業者に依頼したのかは失念したとのことでしたが、プロで金取って修理している以上、きちんとした仕事をしてもらいたいものです。

さて、直ったところで使ってみました。とりあえず一通り問題なく使えました。最終的な費用は900円です。業者に依頼したら5千円は下らないでしょうか。トップカバーを空ければあとは全部手で出来る仕事なんですがね。このくらいの故障だったら自力でやった方がお得です。ネジさえ回せれば誰だって出来ますよ。ホント。

ちなみに依頼者の後輩には修理代1000円を請求しました。技術料は100円(笑)。


ご意見、ご感想、ご質問はにがBBSまで!

Top pageへ戻る

copyright (C) 2000 Niga.