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〜MITSUBISHI ジャンクVTR HV-F72を修理する〜

噂のTWIN SERVO メカを徹底解剖!


MITSUBISHI Hi-Fi Video HV-F72

 当サイトでは2台目の三菱機です。普及型の中堅Hi-Fi機ですが、一度ツインサーボメカをいじってみたかったので入手してみました。近所のリサイクルショップで捕獲。お値段1000円。この値段だったらテキトーにいじって壊してもあまり惜しくないですね。ちなみにこの機体の程度も前回のF63同様極上。背面端子も綺麗ですし、ヘッドの輝きも残っていました。年式の割に外観も非常に綺麗ですし、おそらくライトユーザーの箱入り娘だったのでしょう。

症状は「テープ入らず」、というもの。メカの異常らしいので簡単でしょう。さて、ヘヴィユーザーの評価も高いツインサーボメカとやら、お手並み拝見と行きましょうか。

解剖開始

 早速いつものようにカバー、顔を外してカセコンを解放してみました。やはりアルミダイキャストベースは良いですねぇ。高級感が全然違います。ベースそのものにはほとんど寿命は無く、多少の力がかかってもびくともしない安定した動作が期待できるでしょう。

ちなみにこのツインサーボメカは前回のF63の時の旧メカとは違います。ピンチローラーはトグロ状カムによって上下するタイプで、そのあたりの構造は松下Gメカに近い感じです。ただし、モード切替の為に独立したローディングモーターを使用しており、その点では他社の一般的なメカに近いです。総合的に考えると、松下のGメカの次の世代のメカに似ているような気がします。(松下の次世代メカについてはそのうちSB800W記事で記述予定です)。

ちなみにこのメカでは、中堅機にも関わらずインピーダンスローラーがきちんと装備されていました。なかなかやりますね、三菱も。

メカ裏側です。三菱もご多分に漏れず、ゴムベルトを採用しています。まぁそれはむしろ普通なのですが、松下のコックドベルトの設計と比べてしまうと…。経年すればどうしてもベルトは伸びます。このあたりがボトルネックとなり、5〜6年で使えなくなってしまうメカになるのです。

ちなみにモード切替はローディングモーターを使っていますが、カセコンへの動力はキャプスタンモーターから貰っています。伝達の有無をカムギヤを使って切り替えていました。ローディングモーターとカセコン位相はシンクロしていないので、カセコンのはめ込みは松下Gメカのように位相を気にする必要はありません。

固まったグリス

で、各可動部ですが、このようにグリスが乾いて固まっていました。こんなグリスではメカが重くなって動作不良の原因になってしまいます。そこで、完全にバラしてグリスの塗り直しをすることにしました。


消耗品チェック

 消耗品をチェックしてみたところ、やはり各部それなりにくたびれているようです。このアームのフェルトの位置がずれていました。フェルトそのものはまだ大してすり減っていないようなので、一旦剥がしてボンドG17で張り直しておきます。

ちなみにこのアームは巻き戻し再生の時にバックテンションを掛けるためのものです。

ブレーキもくたびれていましたので、ゴムシートを使ってブレーキパッドを張り直してみました。こちらもボンドG17を使用。

ただし、このメカの場合、あまりブレーキに「粘り気」があるとブレーキ後の解除に引っかかってモード切替がもたつくことがあるようです。出来れば純正パーツの交換の方が良いでしょう。


ツインサーボメカ機共通の弱点

ゴムベルトも各社共通の弱点なのですが、このメカではキャプスタンモーターの樹脂製プーリーが良く割れることで知られています。

写真のように、この機体は交換されていないようです。過去メンテに出したことはないのでしょう。メンテ時には必ず交換されるように消耗品キットに割れ対策の金属製のプーリーが入っているはずですから。

まぁ、今のところ割れていないのでそのまんまにしておきます。

次に、キャプスタンモーターをコントロールしていると思われる基板上のコンデンサがよく劣化することで知られています。

この機体ではまだ噴いていないようです。とりあえずそのまんまにしておきました。


徹底解剖!

さて、一通りのチェックが済んだところで、グリスを塗り直すためにメカをバラすことにします。

このメカではCリングが多用されており、いちいちパーツを外すのが面倒です。本当は専用の工具があるのですが、あまり売っていないのでラジオペンチで代用しました。これでもなんとか外せます。

ある程度浮いたらマイナスドライバーでも行けますが、外れた瞬間、あさっての方向に飛んでしまいがちなので要注意です。

とりあえず、グリスが付いているパーツ全てを外すとだいたいこんな感じの部品が収穫できます(笑)。

外したパーツは、こびりついた古いグリスをふき取り、頑固な汚れは台所洗剤で洗浄しておきました。

手は真っ黒になりましたが…。

ちなみにメカ裏の基板を外すときにはこの消去ヘッドを外さないとなりませんでした。

この位置の半田を外します。

とりあえずここまで分解。アイドラギヤ、リール台近辺は外していませんが、ここはグリス不要のパーツなのでそのままです。

さて、ここからグリスを塗りながら元に組み上げる作業です。当然メカ位相がありますので適当に組んでもダメです。

まずはキャプスタンモーターのブレーキを付けます。これは消耗品キットにも入っている部品ですが、今回のはまだフェルトが生きていたのでそのままです。
モード切り替え用のアームを取り付けておきます。赤線のところ(やや盛り上がったメカベース側)にモリブデングリスを少量塗っておくと良いと思います。

ローディングポストのレールにモリブデングリスを少量塗っておきます。

次にローディングポストのアームを取り付けます。写真ではわかりにくいですが、合わせマークがありますのでそこを合わせておきましょう。

アイドラギヤの上に白い首振りパーツを取り付けたら、この板を付けます。赤丸の突起に注意しましょう。また、これらの突起が接触する所に軽くモリブデングリスを塗っておきます。

バネを付けるのも忘れずに。

大きい方のカムギヤを取り付けます。これはモード切替を行っているメインのカムです。溝にモリブデングリスを適量塗り込んでおきます。ちなみに写真の量だと多すぎです(^^;。溝から多量にはみ出して後からふき取る羽目になりました。

このカムギヤ裏側では2本のモードアームをコントロールしています。それぞれのアームのイニシャル位置は右写真の、赤丸の穴とベースが一致する位置です。その状態でギヤをはめ込みます。右側のアームはバネの力で少し戻ってしまうので、はめ込むときには細い物を使ってアームを押し込みながら入れると良いでしょう。

次に小さい方のカムギヤを付けます。これはカセコンへの動力伝達の切り替えと、ローディングポストを駆動するためのギヤです。これにも溝にグリスを塗って軸にはめ込みます。右写真の赤丸の突起を外側のこの位置にしてはめ込みます。矢印の穴がベースの穴と一致する状態です。

2枚のカムギヤには位相がありますので注意です。このように合わせマークがありますのでそこを合わせればOK。

合わせマークはそれぞれのギヤに数カ所空いていますので混同しないように注意。

また、矢印の穴はベースと一致して貫通しているはずです。

2枚のカムギヤの溝にモリブデングリスを塗ったら、モード切替用のアームを取り付けます。赤丸の溝に突起をはめ込めばOK。

矢印のところにCリングをはめ込んで固定。

ここまで組み立てたら手でメインのカムギヤを回してみて、一回転近く動けるかどうか検証しておきましょう。モード切替時にかなり重くはなりますが、途中で引っかかって動けなくなるのなら何かが間違っているはずです。

基板を元に戻します。ビスでネジ止めし、外した消去ヘッドを半田付けして戻しておきましょう。

左のフレキケーブルの差し込みも忘れずに。

基板を取り付ける際には、この誤消去防止ツメ検出センサーの位置に気を付けます。適当に組み付けてしまうと、センサーのアームが邪魔してテープが入らなくなります。(実はやりました)

ちなみにモードスイッチは接点式。普通ですね。初期位相はこうなっています。メインのカムギヤの突起と合わせてはめ込めばOK。構造的に、ずれることはありません。

ローディングポストを動かす扇形のギヤプレートをはめ込みます。左の赤丸の下を向いた突起をカムギヤの溝にはめて、右の赤丸の合わせ印をギヤと合わせればOK。取り付けたらCリング2枚で固定します。

扇形ギヤを取り付けたら表側に回って、このバネを取り付けておきます。

裏側へ戻り、カセコンへ動力を伝えている3枚のギヤをはめ込みます。思わせぶりな穴が空いていますが、特に位相を気にする必要はありません。

ベルトとプーリーをアルコールで拭き取って、脂分が付着しないように注意しながら張り直しておきます。

最後に2枚目の大きめのプレートを装着します。今回も赤丸の突起に注意します。特に矢印の付いた突起には気を付けてください。プレートの突起の下側に来るのが正解です。上に付けてしまうとメカが動けなくなります。

また二重丸の付いたところにはCリングが付きます。メカ裏側の組み立ては以上で終わりです。

表側に返して、ピンチローラー近辺のギヤを合わせます。それぞれの合わせマークをこのようにすればOK。また、トグロ状カムのくぼみにはやや多めのグリスを塗っておきます。

ギヤを合わせたらピンチローラーをはめ込んで、固定具を載せ、Cリングで固定すれば終わりです。

以上でツインサーボメカのギヤ位相は正しく組み込まれたはずです。

最後にカセコンを戻すのですが、三菱機の特徴として、これが異様にはめにくいのです。

上の赤丸がギヤの填るスペース。下の赤丸はカセコン固定するための突起です。

このプラスチックが突起とかみ合って固定するのですが、どうせネジ4本で固定するのですから、そこまでしなくても大丈夫。ということでここを敢えて折ってしまいました。

だって、本当にはめにくいんですよ!これって。


総評

さて、メンテナンス後に一通りの動作をさせてみました。特に問題なくメカは動作しています。値札に書かれていた「テープ入らず」は再現できませんでした。やはりメカが重くなったのが動作不良の原因だと思われます。

ただし、この機体はノーメンテで稼働されていたらしく、消耗パーツはそれなりに劣化しています。ゴムベルトも加速度の掛かる運動にて「たわみ」を生じさせていますし、ブレーキもゴムシートに張り替えた暫定的なものです。きちんと使うには一度消耗品キットを使って交換する必要があるでしょうね。きちんと使うつもりが無いのでこのままでしょうが…。ちなみに消耗品はキットとして売られており、ツインサーボメカ搭載機共用のようです。お値段は1400円とリーズナブルで手を出しやすいですね。家電店にて「HV-xxxの消耗品キットの注文お願いします」と言えば簡単に手に入ると思います。

初めていじったツインサーボメカですが、今回のメカはおそらく初期のモノだと思います。この後マイナーチェンジして行ったものと思われ、これ一台で評価することは出来ないのですが、この機種についてのみ言わせて貰えば、メカ応答は可もなく不可もなく、まぁまぁというところですね。ただ、消耗品がそれなりに多くブレーキの質も並です。毎日普通に使った状態でのノーメンテでの活動限界は5〜6年といったところでしょうか。この耐用年数はメカベースが良いだけに、残念です。せめてゴムベルトを排し、代わりにコックドベルトを使って、ブレーキパッドの質を松下機くらい丈夫にすればもっともっと長持ちしただろうに…。惜しいところまで行っているのに、松下Gメカにはやはり及びませんでした。

肝心の再生画像云々ですが、比較的綺麗です。普通に使う分には十分なクオリティでしょう。少なくとも今時のペナペナHi-Fiデッキを買うよりずっと良いと思います。

さて、このデッキ。何に使おうかしら(笑)。……またもや使い道無いゃ(爆)。


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