Panasonic NV-FS65
今回からジャンクで入手したVTRの修理記事をいくつか書いてゆく予定です。手始めにまずこのモデルから。バブル時代の物量投入の盛んだった頃のビデオデッキです。この時代のデッキは非常にお金の掛けられた設計で、一度内部をいじるともう今時のデッキなんてオモチャに思えてきて買う気になれなくなります。このNV-FS65も普及機ながら実に良くできたデッキです。アナログメーターが特徴的で、オーディオに拘った設計が内部からも見て取れます。余談ですが、これはオーディオ好きな私の後輩のために某オークションでジャンク3500円で入手したものです。
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1989〜90年頃の設計です。当時はまだセンターメカは一般的ではありませんでした。メカは左寄せで回路は右寄せという一般的な配置です。電源が非常に凝られていて、オーディオ用とその他用はAC以下完全分離されており、オーディオ専用にトランスと左右独立した電源回路が採用されています。もちろん音響用コンデンサも採用。アナログメーターも含めてオーディオに特化した作りとなっています。この辺がオーディオマニアには非常にしびれる所ですね。 で、このデッキは故障していました。症状はS-VHSでの自己録再が出来ないこと。この時代の松下デッキでは良くある故障です。この症状を見たら「Y/C PACK」 という基板上のハイブリッドICを疑います。「Y/C PACK」は赤い丸で囲った所に半田付けされています。この基板を半田吸い取り器(あるいは吸い取り線)で半田を除去して分離します。メイン基板はスルーホールでないので、さほど外すのは難しくないです。十分に半田を吸い取ったらY/C PACK基板を揺すって半田を完全にメイン基板から分離させればOK。軽く揺すってびくともしない場合は半田吸い取りが足りません。無理に揺するとメイン基板のパターンが剥がれて泣きます。 |
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うまく分離するとこの基板が取れます。これがY/C PACKです。S-VHS機能をはじめとする映像に関する基板のようです。丸で囲ったところが「ハイブリッドIC」。この基板を観察してみましょう。 |
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これがハイブリッドIC。良く壊れることで実に有名です。ご覧になれば分かりますが、黒く腐食しているところが目立ちます。これは表面実装タイプの電解コンデンサが経年劣化により内容物を吹いてその電解液により周辺を腐食したものです。この時代のジャンク松下S-VHSデッキではまず壊れていることがほとんど。たまに壊れていないものがありますが、そういう場合はたいてい一度交換した跡があります。前オーナーが交換したものでしょう。 |
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これを半田吸い取り器で上手に外します。Y/C PACK の基板は一部スルーホールとなっているので、パターンを剥がさないように注意する必要があります。スルーホールとはパターンが、穴を通って表裏を交通しているものです。このハイブリッドICでは両端のパターンがスルーホールになっています。スルーホールの穴は、半田吸い取り線ではうまく吸い取ることが出来ません。そういう場合は、まず両端以外のピンを完全に半田フリーにした状態で、両端のピンに片方ずつ半田コテを当てながら少しずつ引き抜くと良いかも知れません。無理をしてパターンを剥がすと再起不能になる恐れがありますので慎重に。 写真の左が新しいハイブリッドIC。近所の家電店にて部品を注文してきました。新しいものは綺麗ですね(当たり前)。この部品は「VCR0389」という型番で3200円です。型番さえあれば家電店で注文可能。まぁ、部品は販売しても儲からないらしいので煙たがる家電店もあるようですが…。私の場合は近所に気持ちよく注文できる店があるのでちょくちょく注文しています。すでに顔なじみになってしまったりして。来店すると「今度は何直すんですか?」とか聴かれたり(笑)。 で、これを元通り半田付けしてY/C PACKをメイン基板に戻せば修理完了です。 |
消耗品のチェック 動作確認したところ、故障していたS-VHS機能が復活していました。回路的にはこれで修理完了。あとは消耗品のチェックです。この時代の松下メカは非常に消耗品の少ない設計で、インテリジェントターボメカ(ITメカ)と言われるものです。一部のマニアの間では「Gメカ」とも言われています。このメカで10年経ったら必ず劣化するものはピンチローラー(松下の場合「プレッシャーローラー」という)のみ。ゴムベルトは使用されていませんのでその他消耗品らしいものとしては、ブレーキ類、モードスイッチが挙げられますが、10年普通に使っただけではまだまだ使えることがほとんどです。この辺が当時の松下デッキのすごいところです。実際、10年我が家で使い続けた同メカ採用のデッキのブレーキを観察しましたが、最高速での早巻き動作中に停止ボタンを押しても、まったく劣化を感じさせない「ガスッ」としたブレーキングを維持しています。ブレーキの弱いメカでは5年程経つとブレーキが劣化して、早巻き時の停止でテープが止まりきれずにデッキ内部にはみ出してテープが絡まるトラブルを起こします。
この機体ではピンチローラーが劣化していました。取り外しは手で行えます。取り外すときは矢印の方向にピンチローラーを止めている白いプラスチックのパーツのツメに力を掛けてこれを引っ張り上げればOK。 ちなみに外した後にピンチローラーの下にある縦長なトグロ状のギヤに触ってはいけません。その下にモードスイッチがあり、さらにこのギヤがピンチローラーの位置を決定しているため、少しでもギヤ位相がずれるとまともに動作しなくなるからです。 |
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これで修理完了しました。入手費用3500円+パーツ台3900円=7400円です。往年のS-VHS名機デッキがこの値段なら安い物でしょう?
総評 さて、直ったところで使ってみました。当時の中堅機だけあってなかなか高性能ですが、残念ながら再生画像の画質はそれほど良くはありませんでした。当時の最高峰NV-FS90と比べるとどうしても見劣りしてしまいます。まぁ、これはヘッドが違いますので仕方ないでしょう(FS−90はアモルファスプロヘッド)その割に、録画性能に関しては非常に高く、かなり綺麗です。タイムシフト録画やダビングの受け側デッキとしては十分に実用的でしょう。音質に関しては言うことありません。
ちなみにリモコンが無かったのでリモコンもジャンクで2000円ほどで入手しました。本体側に一通りのボタンがあるのでリモコンが無くても十分に使えるのですが(チャンネル設定や予約などもOK)、リモコンがあればジョグシャトルが使えるので。最終的な入手費用1万円以下でこのクラスのデッキが手に入るのですから、修理技術さえあれば非常にお得な買い物です。まぁ、ジャンクですから当たりはずれは有りますけども。少なくともこのデッキはハズレではありませんでした。
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