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〜Panasonic ジャンクVTR NV-FS700 を修理する〜


Panasonic S-VHS Hi-Fi Video NV-FS700

往年の名機シリーズも今回で11回目。ここまで回を重ねると、Gメカを採用したSデッキを全機種コンプリートしたい欲求に駆られるというものですが(爆)、FSシリーズ、BSシリーズ共に、NV-FS1、NV-BS5等の「一桁機」が存在しており、さすがにそこまで古い機種をわざわざ入手して直すってのもアレなんで、とりあえず一桁機は除外するとします。

今回入手したこのFS700はFS3桁機としては中堅クラスのデッキです。FSシリーズのラインナップはFS700,800、900がありますが、700と900は同時期の発売、800はその後に出たモデルです。つまり、FS900の直系の下位機種がこのモデルに当たります。

同一モデルが以前バイトしていたところに置いてあったのですが、その機体はかなりタバコのせいで表示管がヤケに暗くなっており、しかも絵が結構ザワついていました。今でも使われているか心配です。捨てられてやしないかと。捨てるなら私が引き取りたいくらいですが。

シーリングパネルは全面です。FS3桁機以降、コストダウンの並が押し寄せるのですが、このモデルではまだ顕著ではありません。まだ一通りの機能が本体で操作可能。操作パネルの形は今までのFSシリーズとは異なり、独自のものとなっています。とはいえ、配列は一緒で、相変わらず使いやすいですね。

しかもなんと、ビデオイコライジングが搭載されています。今のデッキでは到底考えられません。背面には編集用5p端子も装備されており、一応編集も考えられたデッキのようです。ただ、メカは普通のインテリジェントターボメカなので、コントローラを使ってもフレーム単位での編集は出来ませんが。

ところでこのデッキはオークションで2500円でゲットしました。ジャンクなので当然壊れているかと思いきや、とりあえず動くじゃないですか。ラッキー!

とはいえ、古いデッキなので一通りのメンテをしておきます。

とりあえずメンテ開始

トップカバーを取ります。FS2桁機と同様の基板配列ですね。メカも一緒ですし、基板も同じかも。ですが、微妙にマイナーチェンジされているような感じです。

見た目はFS2桁機と似ているのですが、さすがに電源部はコストダウンされていました。2桁機では中堅Sデッキでも音響用に専用のトランス電源を装備していたのですが、このデッキではスイッチング電源で全てまかなっています。シールドケースの手前に空きスペースがありますが、以前のデッキではここにトランス電源の回路部があったものです。その名残として場所だけ空いているという感じ。

このデッキはタバコありの環境で置かれていたらしく、FL表示がこんな感じになっていました。ひでぇ…。普通に使っていてもある程度曇るのは避けられないのですが、タバコを吸うとこれが顕著になります。内部からはヤニの臭いが漂っていました…。家電品の樹脂製パーツって、使用中には結構帯電しますからね。空気中の微粒子を吸い付けてどうしてもススけてくるのです。タバコの煙は格好の微粒子なのでテレビのブラウン管やこういった表示管の汚れを促進します。

ということで、顔を外して内側をクリーニングします。イソプロパノールを浸したティッシュで拭くだけですが、表示が蘇りました。

うーん、綺麗ですねぇ。松下のこのFL表示管は経年変化に強いような気がします。この時代の他社製デッキでは暗くて判読が困難なものが多々ありますが、松下製のもので極端に暗いものは見たことがありません。

まぁ、それでも新品だったころに比べればだいぶムラが出てきていますが。

メカを完全にメンテするためにいつものように顔を取ってカセコンを解放しました。スイッチ類に付いたホコリや、FL表示管のガラス面のついでに掃除しておきます。

劣化ブレーキの交換

このデッキではブレーキが劣化していました。このままでも別にテープが絡んだりするような状態でもありませんが、停止までの時間が若干かかるようなので一応交換しておきます。

このデッキは普通のインテリジェントターボメカですので、BS900などの新快速メカのブレーキと異なります。交換後のブレーキは白いですね。これでテープがほぼ一瞬で止まるようになりました。

品番 VXZ0259
品名 メインブレーキ(S)
価格 200円
品番 VXZ0262
品名 メインブレーキ(T)
価格 200円

いつものように、カセコンのサイドプレート右側のスライドエンコーダーを分解して掃除しておきます。

この作業は我が工房ではもはやデフォルトです。10年デッキでは必ず汚れていますからね


ハイブリッドICのチェック

さて、FSシリーズですから、いつものICをチェックしなければなりません。今正常に動くにしてもいつ壊れるか分かったものじゃないからです。このデッキではなんと、3つも!欠陥コンデンサが使われているHICが存在していました。いちいち交換しなければ安心して使えません。めんどくさいなぁ…。

この赤丸のが、FS65,70で交換したS-VHS機能を担っているHICです。

いつものS-VHSのHIC

ということで、いつものY/C PACK を取り出して調べてみます。

真ん中にいつものHICがあります。

うーん、やっぱり噴いています。このHICは歴代HICの中でもダントツで噴きやすいようですねぇ。

電解液が漏れて、周辺を黒く変色させています。こりゃ基板ごと道連れか…と思ったのですが、とりあえずコンデンサを剥がしてみます。

左から順に、1)頭をもぎ取った奴、2)体をもぎ取った奴、3)足を切った奴、4)板を剥がした奴 となっています。

腐食した部分を、金属ブラシで軽く擦ったら、なんと、綺麗になっちゃいました!

腐食しているように見えましたが、どうやらすすけていただけのようです。これなら余裕で復活可能ですね。

端子にコテを当てて綺麗にしておきますが、この基板は熱伝導が良いので、かなり暖めないと半田が溶けません。どうしても溶けない場合は少し半田を足してやると溶けやすくなります。

ということで、背の低い普通のコンデンサを張り直しておきました。

だんだんこの手の作業にも慣れてきて、それなりに美しい仕事ができるようになっています(笑)。

背の低いコンデンサを上手に張り付ければ、周辺と干渉することなく元の基板に取り付け可能。

あまり違和感もありませんね。

第二のHIC

さて、このデッキ2つ目のHICです。このサブ基板のシールドケースの中に入っています。

形としては、BS900、BX25などと似ていますね。お値段も高いのでしょう…。

というわけで、開けて調べてみました。が、とりあえず噴いている様子はありません。まぁ良いかと思って本体に戻したところ…。

なんか、本体から異様な臭いが…。

あわてて電源を切り、嗅覚を頼りに異臭を放っている部品を探したら、さっきのHICでした。このコイルが焼けています。ガーン!

理由はシールドケースとコンデンサが接触してしまったこと。左側にチップコンデンサがありますが。ここがシールドケースとの半田付けで接触してしまいました。

焼けたのがコイルだけならまだ救いがあるということで、以前外して余っていたFS900のHIC(故障品)からコイルだけ移植してみました。

が、画面にチラチラノイズが発生。ダメか…。ICを道連れに死んだかも…(泣)。

つーことで、仕方なく買ってきました。4600円もしやがります…。ま、自業自得、仕方ないですねぇ。

品番 VCR0304
品名 IC
価格 4600円

第三のHIC

第二のHICを交換後、動作確認したのですが、全然チラチラとするカラーノイズが直ってない!何故だ!

いろいろ動作検証したところ、電源を切ってしばらく放置した後、おもむろに電源を繋いで再生するとチラチラノイズが乗ることが分かりました。5分くらい再生していると次第に消えてなくなり、綺麗に再生できるようになります。そのまま電源をコンセントに繋げていれば、電源を切っても大丈夫で、また何事もなく再生できるのですが、コンセントを抜いて30分くらい放置するとまた同様のノイズが発生していました。ちなみにチューナー画像は影響なし。再生画像だけにノイズが乗っていました。

最初は電源ノイズかと思って、シールドケースに入った電源基板を観察してみたりしたのですが、噴いていそうなコンデンサも無く、その他いろいろ実験したのですが原因が分かりませんでした。

時間が経つと症状が消えたりすることから考えると映像関連のコンデンサが実に怪しい。そこで改めて疑いが濃くなるのが第三のHICです。底面に存在するサブ基板状にシールドされて存在しています。

このシールドケースに入っています。クリスタルの載った奴です。とりあえず見た目で噴いているようには見えませんが、FS800の例で、見た目の変化が無いコンデンサでも疑わなくてはならない教訓が得られていますし、この際交換してしまいます。ちなみにこれと同じHICがBS900、FS800でも採用されています。

で、いつものようにコンデンサを剥がすのですが、なんと!3カ所もパターン剥がしまくりました(苦笑)。どうもこの基板はパターンとの接着力が弱いらしく、実にアッサリとパターンが剥がれるようです。まぁ剥がしても、テスターと目視で追いかければ取り出しポイントは用意に割り出せますので気にしなくてもOK。

結局右写真のようになりました。耐電圧は50Vと異様に高いやつを選んでいます(今回は非ジャンクコンデンサ)。

元の基板に戻してみました。

全然シールドケースに入るサイズじゃなかったり(爆)。まぁ仕方ないですかね。

でも、背の低いコンデンサを使って、工夫して足を曲げればケースに収まるような気はします。基板の裏側へ引き回せば大丈夫でしょう。今回はレイアウトを考えずに加工してしまったので…。

まぁ、それでもシールドケースを曲げて無理矢理収納しましたけど。

完全なシールドにはならないでしょうが、無いよりはだいぶマシでしょう。


総評

第三のHIC交換後に動作検証してみたところ、問題のカラーノイズが完全ではないにしろ、かなり軽減されています。電源を入れて5分くらいは微妙にチラチラしているのですが、以前のような盛大なノイズは認められませんでした。これならまぁなんとか実用として許せる範囲ですかね。コンセントに繋いでいる限りは大丈夫ですし。ですが、第二のHIC交換後のノイズの原因がこいつだとすると、わざわざ高いHICを買わなくても良かったのか…。あぁ、4600円も勿体ないことした…。最初の動作検証の時には気付いていないだけで、実は最初からこのカラーノイズはあったのかも知れないですね。電源を繋いでしばらくすると症状が消えるというのがタチが悪かったです。検証するたびに30分ほど放置しないとならなかったので。

で、使ってみましたが、かなり絵は綺麗です。FS900に迫る画質。ザラザラ感が少なく、解像度も高めで非常に安定した絵です。メカ応答性は普通のインテリジェントターボメカなのでそれなり。モード切替は非常に高速ですが早巻き速度などがあまり速くないですね。

入手費用は本体2500円+ブレーキ400円+IC4600円+コンデンサ300円程度=約7800円でした。HICを買う羽目に陥ったために目標金額より高くなってしまいました。最近私はコンデンサ張り替えをデフォルトとしているので、失敗が痛かったです。まぁ、このデッキそのものの価値から考えると十分安いのですがね。

沢山直している内に、だんだんと安いと思える基準が下がってきています。できれば一台3千円くらいで直したいところです(笑)。


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