にがAV

〜Panasonic ジャンクVTR NV-FS800 を修理する〜


Panasonic S-VHS Hi-Fi Video NV-FS800

いい加減そろそろネタ切れかと思われた往年の名機シリーズですが、Gメカがこの世にある限り続けます!(ウソ)。今回はBS900の弟分の「NV−FS800」を修理します。FS3桁機の中では末期の製品です。メカはBS900相当の「新快速メカ」。BS900からBSチューナーを取って、機能縮小したようなモデルです。

シーリングパネルはBS900より安っぽくて、樹脂製です。とはいえ、今時の安っぽい樹脂と違い、重量と剛性が全然違う樹脂です。たぶん、FS900等のインシュレーターに使われた素材に近い材質だと思います。よって、蓋を開けてボタン操作をしても、蓋がたわんでしまうことがありません。

操作パネルはBS900と同等ですが、蓋を開けると斜め上にポップアップしてボタンを押しやすくする配慮が見られます。BS900でもやって欲しかったような気がします。

スイッチ類は一見BS900より少なく見えますが、右側のパネルにもスイッチが装備されており、実際に無いのはBS関係と、入力レベルと、ブルーバックのスイッチだけです。しかし、ブルーバックが無いのはちょっとオドロキです。それくらい付けてくれたっていいじゃないか…。

この機体はオークションにて1000円でゲットしました。バカ安。まぁ実際には送料だの振り込み手数料だので3倍近くの金額がかかっていますが…。ちなみにオークションでの説明では「映像が乱れる、映像ブロックを交換すれば直ると思われる」、という意味の説明が付いていました。HICの故障かなぁと軽く考えて入札。

FL表示ですが、入力レベルが調整できない仕様だけに、レベルメーターも削除されています。うーん、これは省略しないで欲しかったなぁ…。

現在の音声モードはたった2個の発光ダイオードで表現されています。

ヘッドフォン端子はまだ生きています。

ちなみにパネルの上の蓋を開けると、中には予約操作などのボタンが隠されていました。別に隠さなくても良いような気がしますが…。配列はBS900とまったく同じですね。

真ん中のパネルに無かった分のスイッチはここにありました。

ちなみにBS900ではここにビデオイコライジングつまみがありましたが、この機種では省かれています。

また、BS900ではフロントパネル右下にあった入力端子類がここに移動しています。

故障状態の検証

さて、外装の解説はこれくらいにして、この機体はジャンクでしたから当然壊れていました。再生画像、チューナー共にこんな感じです。

この絵を見て何を連想しますか? そう、WOWOWのスクランブル画像にソックリですねぇ。でもこれはWOWOWじゃないんです。ビデオの再生画像です。BSデコーダーに信号を入れても元には戻りません(爆)。いったいどこがどう壊れるとこんな画像になるのだか…。

再生、チューナー共にああいう画像ですから、映像基板系統の異常であると予想できます。そうです。いつものHICをまず調べる必要がありますね。FS800はBS900と同じ映像基板を使用しており、使っている部品もほぼ同じです。

この「VCR0320」がこの機体で一番怪しいICです。以前BS900でコンデンサの張り替えを行ったICと同一型番です。

ということで、外して調べてみましょう。

ん? 噴いてない!

丹念に足を調べましたが、半田の輝きが失われていません。全く噴いている様子が無いのです。

うーん、このICではないのかなぁ…。一応もう一つの映像サブ基板に、シールドされたHIC(クリスタルの載った物)がもう一つあるのですが、こちらも見た目は無事でした。

原因の分からない時に頼りになるのが、診断的ニコイチ法です。基板はBS900と同一なので、正常なBS900の基板を使って責任病巣を割り出す作戦に出ることにしました。今回ドナーとしてBS900二号機に協力を仰ぎました。

しかし! このようにBS900とFS800用では微妙に違っていました。どうもFS800では機能が削除されている分、乗っている部品も省略されているようです。

でも、いちいちそんなことを気にしてられるか!  まぁ、多少余計なパーツが付いた基板を差し込んだところで壊れることは無いだろうと勝手に判断(爆)。診断を強行しました。

例のHICが乗ったサブ基板ですが、こちらも微妙に差別化されていました。VRと裏側のICなどが省略され、微調整が利かないようになっています。おそらく、ビデオイコライジングが削除されているためと思われます。

サブ基板単位での移植では、こちらの基板を移植したところで症状が消えました。従って壊れているのはこの基板上の部品です。そこでBS900三号機同様に部品単位での移植を繰り返して検証しました。

前回とは逆に、ディレイライン、セラミックコーティングのパーツを交換してみたのですが、ダメ。最後にダメもとでシールドケースのHICを移植したところ…。

なんでか直っちゃいました!


治療開始!

ということで、このHICが犯人であると診断されました。まだコンデンサのせいかどうかは分かりませんが、とりあえずいつものようにケチケチ大作戦でコンデンサだけ張り替えてみました。

手持ちにはジャンクのコンデンサしかなかったので適当に組み合わせて張り付け。メーカーも色もバラバラですねぇ(^^;。でも良いんです。動けば。

ちなみに、コンデンサが斜めに付いているのにはしっかり理由があります。周辺のパーツと物理的に干渉しないようにです。

半田付けしてから足を曲げるのではなく、半田付けする段階からすでに斜めに取り付けます。

半田付けした後から足に力を掛けるとアッサリとパターンが剥がれることがあるからです。特にこの基板は普通の基板でないので(セラミック製?)、パターンが剥がれやすいように思います。

で、張り替え後に再生したところ、WOWOWスクランブル(笑)はしっかり解除されました。やっぱりコンデンサの不具合だったようです。「噴く」のとはまた違った「容量抜け」ってやつでしょうか。容量抜けは見た目で分からないだけにタチが悪いです。

余談ですが、以前98ノート「PC-9801NS/E」を使っていた時に電源部のコンデンサ容量抜けに遭遇したことがあります。ある日突然電源が入らなくなったのです。ネットで情報を集め回って、原因を突き止め、コンデンサを張り替えたところ直りました。ちなみにその98ノートはクリスタルを張り替えて12→16MHzへクロックアップしてしばらく使った後、人に売ってしまいました。

横道にそれましたが、、張り替え後の再生画像は、なんか緑色が滲んでいます。人物の肌色のところから右に緑色のノイズが発生。結果的にこのVRを回すことで回避できました。コンデンサを張り替えて特性が変わったためかも知れません。

メカの整備

さて、回路的に直ったのでメカを整備しておきましょう。クリーナーアームが汚れていたので台所洗剤で洗いました。

乾いたら本体に戻すのですが、バネの位置があるので一応戻し方を書いておきます。

まずこの写真の位置にバネを引っかけておきます。

本体の軸に差し込むとこうなります。

こんな感じにバネを上から押し込んで鉄板に引っかければ終了。

ちなみにクリーナーを洗浄した後はよく乾かしてから本体に装着しましょう。

掃除のために顔を外してみました。やはり、BS900よりは全然薄いですね。とはいえ、今時のデッキよりはかなり中身が詰まっていてよさげです。

メカ裏側ですが、インテリジェントターボメカの最終型の新快速メカです。個人的評価では民生普及機史上最高のメカだと思います。応答性、動作速度、安定性、強度、耐久性のバランスが非常に取れており、最高ですね。欠点はクラッチ固着しやすいことくらいしか思いつきません。

この機体では過去に走行系のメンテが行われているようで、センタープーリー、メインカムには過去に交換された跡を認めました(色が周辺のパーツと違う)。全体的なメカの程度は極上。キャプスタンモーターのブレーキが接触する部分もほとんどすり減っておらず、走行時間はかなり少ない機体だったと推測されます。値段も安く、実にお得なジャンクでした。

ちなみに新快速メカは地味にフレーム単位でのプリロールに対応しており、5p端子に接続する編集コントローラを使うと30fps(+/-3フレーム程度)での精度で編集ができます。普通のインテリジェントターボメカはフレーム単位での編集はできません。新快速メカはよっぽど優秀なメカなんですねぇ。


総評

さて、整備が完了しましたので使ってみました。再生画像はややザラザラしていますが、この機種はそういう絵を出す機種だと思います。特に問題はありません。

とにかく、新快速メカであるので、使い勝手は上々。メカに一度メンテも入っており、安心して使用することができるでしょう。BS900と比べると細かい機能が削除されていますが、普通に使う分に困ることはほとんど無いと思われます。

程度も良く、最終入手費用はだいたい3000円程度に押さえられました。大満足です。さて、修理完了したので、以前から調達依頼されていた知人へ売却することにしました。


2000.12.23 追記

BS900同様に、FS800にもクリスタルの載ったHICが存在していたので、予防策としてコンデンサを張り替えておきました。絵が少しザラザラしているのはもしかするとこのICのせいかも知れませんし。

今回は結構パターンを剥がしまくりましたが、テスターと目視でパターンを追って等価としました。というのも、最初大きめのコンデンサで取り付けてみたのですが、VRが回せなくなって困ったので、付け替えたのです、付けたコンデンサを取り外す際にパターンを剥がしてしまいました。まぁ、取り出しポイントさえ誤らなければ修復可能なので慌てることはありませんが。

取り付け後です。きちんとVRも回せます。とはいえ、回してもザラザラ感は完全に取れませんでしたが…。まぁ、BS900もややザラザラした絵を出す機種のようなので、そういうものかも知れませんね。


2001.02.03追記

 なんと、知人に転売後に不具合発覚。録画が出来ないとのご報告があり、いろいろ試してもらったのですが、どうやら故障のようなので持ってきて貰いました。売却先が近場の人で良かったです。症状は録画が出来ないとのこと。スカパーのビデオマウスを使った自動録画用途に使おうとしたらしいのですが、モニター画面がきちんと出るにも関わらず、録画画像が砂嵐となるとのご報告。しかし音声は正常に録音されています。

いろいろ考察したのですが、再生ができて録画が出来ない不具合というのもちょっと考えにくいです。再生が問題ない時点でヘッドは生きていますし(仮に死にかけでも少なくとも砂嵐にはならないでしょう)、モニター画面が出る時点で映像処理回路系統は大丈夫だろうと。

信号の流れを考えるに、映像回路から出力されてヘッドに入るまでのどこかで信号がおかしくなっていると考えられました。

弄られていた半固定抵抗
いろいろ弄ったところ、結果的にビデオアンプの半固定抵抗が原因でした。
REC Yとされています。録画時の輝度に関連するものだと思います。おそらく前オーナーが画面の乱れる原因を探ろうと弄ったのでしょうねぇ。最適ポイントを探るために録画しながら少しずつ回して再生という手順を繰り返しました。本当は何か測定器を使ったりするのでしょうが、見た目で一番綺麗な場所に合わせればまぁ、問題ないでしょう。ちなみにREC Cの方は大丈夫のようでした。

ついでに電源の調査

ついでに、再生画像にカラーノイズが多いような気がしたので、「カラーノイズは電源を疑え」の法則(当サイトのローカル法則)に従って、スイッチング電源を調べてみました。ケミコンを一つずつ外しては噴いてるかどうか確認。

結果的にこれらのケミコンがやばそうだったので交換しておきました。470μと27μは手持ちになかったので、少し容量の大きいものに交換。

一番酷かったのがこれ。27μの50Vでした。おそらくカラーノイズの原因はこれだったのだろうと思います。交換後はざわざわしたカラーノイズから解放されました。めでたしめでたし。これでこの機体の整備はひとまず完了ですね。


ご意見、ご感想、ご質問はにがBBSまで!

Top pageへ戻る

copyright (C) 2000 Niga.