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〜Panasonic ジャンクVTR NV-FS900 を修理する〜


Panasonic S-VHS Hi-Fi Video NV-FS900

当サイトの気まぐれ企画である往年の名機シリーズもいよいよ架橋へ入ってきました。今回は松下バブルデッキの中でも名機中の名機「NV-FS900」を修理します。名機の代名詞でもあるFSシリーズの3桁最高峰デッキです。この重厚感と細部まで作り込まれた設計を見るに付け、バブル当時の輝かしい物量投入の時代が思い起こされます。

このデッキが現行機種だったころ、私はNECのSーVHSデッキ「VC-DS910」を使っていたのですが、カメラ撮影などやっていたために編集用デッキが欲しくてたまらなく、次に買うなら絶対編集対応の松下機だと決めていました。そんな折り、このFS900がディスカウントショップで10万円以下(確か、9万円くらいだったか…)で広告が出ており、速攻で車を飛ばして買いに行きました。しかし、その広告は客寄せのダミー広告だったらしく、「無い」とのことでしぶしぶ帰ってきたとの思いでがあります。それだけに今回入手できたのは非常に感慨深いものがあります。結局その後に出たBS900を入手したわけですが。まぁそれはそれで良かったと思っています。BS900も十分に名機ですからね。

この機体は本体のみのジャンク4000円で入手しました。当然ジャンクなので壊れていました。故障点は追々書いてゆきます。

金属製のシーリングパネルを開けると内部には必要にして十分な操作ボタン、スイッチ類がズラリ。非常に豪華です。当然、当時の松下機の伝統であった「リモコンが無くても一通りの操作が出来る」は守られています。

この表示管の表示がユニークで、電源投入時に「GOOD MORNING」等時間帯に合わせた挨拶が、電源切る時に「GOOD BYE」と表示されます。当時としては非常に新鮮で、このような表示が出来るということをパイオニアのPrivate CDコンポではCMに使われていました。

全体の作りは非常に凝っており、FS90相当の防振仕様の異様に厚いトップカバー、ボトムプレート、インシュレータは健在です。この機種は「作り込みの名機」だと思います。(メカの名機はBS900)。

中でも目を引くのがこの「ビデオイコライジング」です。編集送り出し側で使えば、色合い等を補正してコピーすることが可能。BS900にもこの機能は生きていますが、「黒レベル」のツマミが削除されていました。

背面端子群。映像端子はBS900と似ていますが、音声端子は金メッキで縦二列です。金メッキであるところが、バブルらしくてよろしげです。BS内蔵機ではないので比較的シンプルですね。

底部です。いつもならメカ裏側がメンテできるのですが、この機種は底部にシスコン系の基板が存在していました。

ネジ4本で外れて持ち上げるといつものインテリジェントターボメカが現れます。BS900のような「新快速メカ」ではなく、普通のやつです。よってそれほど高速ではありません。クラッチもキャプスタンモーター側に付いています。試しに滑らせたところ、クラッチはまだまだ生きているようでした。ちなみにテープ挿入時やローディング時にキーキー五月蠅い不具合があったので、BX25記事同様、SSブレーキアームを交換しました。これで解決。

部品番号 VXL2088
品名 SSブレーキアーム
価格 100円

この機種は顔を外すのにいくつか注意点があります。まず、この写真のパーツを取ります。底部にネジが一本とツメで固定されています。

外したら、顔の下左右に出ているフレキを外し(2カ所)、上2本、下3本の赤いネジを外したらいつものようにツメを起こして顔を取ります。

くれぐれもフレキを切らないように注意。切ってしまうと修復できません。FS70同様「パネルSW」丸ごと交換になりますので割高です。ただし、この機種ではボタン類、スイッチ類で2つに分かれていますのでそれぞれは若干安いですが。

さて、顔を外したのでカセコンを解放します。いつものように赤いネジ4カ所を取ります。奥の方を外したらカセットレールに気を付けながら金具を押し込んで手前の2本を外します。

無事外してメカとご対面。消耗品をチェックしましたが、結構新しめでした。一度メンテされているようです。ただし、ピンチローラーは少し摩耗していました。ブレーキ類はまだまだ使えそうです。

取り出したカセコン。この機体では、挿入の検出の具合があまりよくありませんでした。カセットをググっと奥まで押し込まないとカセットローディングが働かないのです。ここを直します。メーカー修理に出すと、「サイドプレート右」を丸ごと交換されるケースが多いようですが、悪いのは接点だけなので今回は責任病巣のみを治すことにします。その方が安上がりですし、地球にも優しいです。

この基板がカセット挿入センサーと、テイクアップ側のテープエンドセンサーを兼ねています。

ツメで止まっているだけなので簡単に外せます。

外すとこれが取れます。

これもツメで止まっているだけなのでさらに分解できます。

このように3つのパーツに分かれます。

接点を乾拭きした後、CRC556を吹き付けて汚れを徹底的に落としました。すっかり綺麗になってピカピカです。

その後、田宮の「接点グリス」を塗っておきました。実は、これがなかなか売っていないのです。本来ラジコンのスピコンの接点やミニ四駆で使うものですが、模型店でも置いてある店は少ないです。地元のおもちゃ屋は全滅でした。これは秋葉原の「千石電商」で買った物です。

あとは元通りに組み上げてカセコンに取り付けです。

矢印の所だけはめ込むのを忘れないようにすればOK。

組み付けの後は、スムーズにカセットを吸い込むようになりました。

研磨前

研磨後

ピンチローラーが摩耗していましたので復活させました。摩耗したローラーはジッターや、テープに傷が付くの原因になりますので速やかに改善しておく必要があります。今回は紙ヤスリで削っただけですが、摩耗が軽度の場合はこれだけで十分な効果が得られます。具体的なやり方についてはそのうち別の機体の修理記事で記述します。

今回の機体では回路系もやられていました。画面が一切出ず、真っ暗という故障です。まぁよくあるハイブリッドICの故障かと推測が付きますが。

で、調べたところ、2つのハイブリッドICが死亡していました。これがそのうちの一つ。FS65,FS70記事で書いたアレと同じ奴で、S-VHS機能を担っているものです。

品番 VCR0389
品名 IC
価格 3200円
FS65同様、基板を道連れに死んでいましたので、FS70の時のようなコンデンサ張り替え技が使えませんでした。よって、ハイブリッドIC丸ごと交換。やっぱり値段が高いっす…。

もう一つがこれ。シールドケースに入ったハイブリッドICです。シールドケース入りなので外からは壊れているかどうか判定できません。が、画面が出ない故障であれば、まずこれが疑わしいと考えていいと思います。(どうも、FS900では画面が出なくなる故障が多発しているようです。)取り外してみたら、やはりコンデンサが噴いていました。

これがそのサブ基板。このハイブリッドを外すのはちょっと難しいです。シールドケースの足が立体的な構造なためで、なかなか基板から分離できないのです。ICの基板とシールドケースは半田で接合されており、ケースだけ外すことはできません。仕方ないので、ある程度半田を吸い取った後、シールドケースの足を根本からニッパーで切断しました。そうするとシールドケースの足が容易に基板からフリーになります。そしていつものようにICの足を全部フリーにして引っこ抜けばOK。

新旧比較。古いものの型番は「VCR0299」ですが、新しいのは末尾に「A」が付いています。なんらかの改良がされたのかも知れません。コンデンサが噴かないやつになった…だと嬉しいのですが。

内部を観察すると、表面実装タイプのコンデンサが多用されており、噴きまくっていました。映像が出なくなるのも納得です。基板は生存していましたが、コンデンサを張り替えてしまうとシールドケースに入らなくなってしまうため、大人しく丸ごと交換しました。シールドケースに入らないとノイズ対策に不安が残りますし、せっかくの名機なので。

品番 VCR0299A
品名 IC
価格 4600円
うぅ、やっぱり高いです…。コンデンサが悪いだけなのに…。表面実装のコンデンサを買ってきて付け直すという方法も考えられなくはないですが、行きつけのパーツ屋には売ってないですからねぇ。


総評

さて、一通りの修理、メンテが済んだので使ってみました。映像はきちんと復活しており、S-VHS再生もバッチリです。他のFSシリーズと比べても画質がかなり良さげです。非常に気を配られた回路設計と、アモルファスプロヘッドの効果でしょうか。非常に安定した絵です。補正なしのアナログ映像としてはかなり頑張っていると思います。現在でも十分実用的でしょう。録画性能は非常に高く、現在のデッキよりこちらを使った方が安定した録画が出来そうです。音質は言うに及ばず、こちらの方がいいです。

非常に気に入ったので、「VCR2」として使うことにしました。現在メインのAVラックに入れて使っています。ヘッドも綺麗であまり摩耗している様子も無いので、しばらく運用しようと思います。

さて、今回の総費用を算定してみましょう。本体:4000+IC2個:7800円+ブレーキアーム:100円=11900円でした。ICが高く、最終コストはちと割高ですが、性能と作りを考えれば満足です。


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