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〜Panasonic ジャンクVTR NV-FS900 を修理する その2〜


Panasonic S-VHS Hi-Fi Video NV-FS900(二号機)

 またFS900を入手してしまいました。前に修理した1号機とは別の機体です。知人でかなりのオーディオマニアの人を発掘したため、松下の名機のなんたるかを主張するために(爆)直ったら譲るということにして入手してみました。今回も大量にビデオジャンクを出品している某氏からのオークション落札。最近お値段が少し安くなって以前よりお求めやすくなっております(笑)。ここ最近は2800円で出品されているので、2800円でゲット(前回は4000円)。

まぁ、某氏からの入手ですから当然ノーチェック、ジャンクで壊れていて当たり前、正常動作を期待する方が間違ってるという世界です。ま、そこが面白いんですがね。ということで往年の名機シリーズ第13回です。

写真は入手後手を付ける前のものですが、汚れています。この程度の汚れはまだ綺麗な方かも知れません。元々ゴミだったやつですからねぇ。程度も良いの悪いのいろいろです。バラす過程で部品を一つ一つクリーニングして行けばいいのです。最初がかなり汚くても、よほど深い傷でも無ければ最終的には結構綺麗になります。

故障個所を検証

紹介は一号機の記事でやったので、早速バラして故障状況を確認します。まず、デッキ内部でコロコロ転がっている物体を発見。なんと、ピンチローラーのローラーだけ取れて転がってました。どうやったらこの軸からローラーだけ取れるんだろう…。

ついでに、カセットが入っていないにも関わらず、カセコンが挿入状態まで行っちゃってます。騙しゾーンがあるので普通に使っていれば、こういう状況には絶対にならないはずなんですが…。

カセコンが破損

カセコンが壊れているようなので、取り外しました。なんと、トッププレートとサイドプレートを繋いでいるネジが2本とも欠損しています。どうも素人さんの手がテキトーに入った機体のようで…。捨てる前にちゃんと戻してくれっての。とりあえず修理中の別の機体から移植しておきますが。(fnyoさんにこのネジを頂けることになりました、ありがとうございます)

また、フロントパネルを止めるネジ2本も欠損。これは無くても固定性に問題はないのですがねぇ。あと、フロントパネルの右側のツメ一本が折れてました(怒)。

カセコンのトッププレートに付いている鉄板ですが、かなり曲がっています。カセット挿入時にテープの蓋を開ける役割を持っています。

たぶん、これが曲がっていたために、ピンチローラーが当たってローラーだけ外れたのではないかと推測されます。

ラジオペンチを使って正しい位置に矯正しておきました。これで大丈夫でしょう。

トッププレートも微妙に曲がっていましたが、これも直りました。

ちなみにその鉄板を止めていたネジ。

周辺に妙なキズが…。おっそろしく不器用な人が慣れないドライバーでガチャガチャやったのでしょうねぇ。普通にドライバー使える人ならこんなにキズ付きませんって。

また、サイドプレート右のスライドエンコーダーもいつものように分解清掃しました。

ピンチローラーをニコイチする

今回は究極のケチケチ作戦として、消耗品のニコイチを強行しました。実は今回外れていたピンチローラはゴムはさほど劣化していませんでした。そこで以前ゴムがひび割れを起こしていたピンチローラーを利用して、軸+軸受と今回のローラーを合体させることにしました。これで部品代700円を浮かすことができます。

ローラーを取り外すのはちょっと力が要るのですが、隙間にマイナスドライバーを入れて適度にこじればOKです。取れた樹脂製の固定具は奥まで差し込むだけでOKでした。

ニコイチ後のプレッシャーローラー。

もちろんゴムはヤスリがけリフレッシュ施行済み。ほとんど新品同様です。


メカ動作異常あり

さて、これでメカは完全か? と思いきや、新たなる障害発覚。

挿入、再生、トリックプレイは問題なかったのですが、早送り、巻き戻しを行おうとすると、メカからガチャガチャ数回の音がしてエマージェンシーモードになって電源が落ちてしまいます。電源を入れ直しても復帰不可能。

当初ギヤ位相や、異物の混入(ネジやピンチローラーの紛失した軸受けが未発見だったため)などを考えたのですが、どうも違うようです。

徹底的に検証するためにメカをフレームから分離しました。

ちなみにカセコン以外のメカの状態はかなり良い方でした。ヘッドも綺麗ですし。ピンチローラーの劣化具合から考えて一度はメンテに出されたようです。

動作異常になる際には、モード切替を高速で行うためのモーターの動きがからんでいました。

右側のベルトからの駆動系です。ここがガチャガチャ妙な動きをしていました。そこでよく観察すると、丸の所に第二のモードスイッチがあり、接触不良を起こしているようでした。

第二のモードスイッチ

これがその接点。誤消去防止スイッチと一体となっています。上のプレートが左右に移動するのに伴って、押されたり離れたりします。なぜかこの接点が妙な曲がり方をしており、接触出来ない状態になっていました。

曲がりを矯正し、CRC556を塗っておきました。メカをフレームに戻して動作検証したところ、完全になっていました。早送り、巻き戻しとも問題なしです。

これでメカ故障の整備は完了。


回路系の整備

さて、松下バブルデッキですのでお約束のHICの補修をしなければなりません。メーカー修理とか、とりあえず動けばイイ的な補修なら上の段階で終わっていますが、我が工房の修理は可及的ロングライフ動作を目標としているので、例え壊れていなくとも、壊れやすいと分かっているところを放っておくことはしません

ということで、このFS900の弱点として考えられる2つのハイブリッドICを補修することにします。まず、映像関連基板からサブ基板2枚を取り外します。

いつものやつ

もうウンザリするのも通り越して呆れてしまうほど良く噴くこのHICが使われているので補修しておきます。これが逝かれるとS-VHSの時だけ再生画像が出なくなります。

さしあたって動作はしているようでしたが、絶対壊れることが分かっているので対策しておきます。

いつものようにコンデンサを破壊して取り外し。

ご覧のように、マイナス側(下側)が鬼のように錆びています。死ぬのは時間の問題。

いつものように張り替え。一個15円くらいなので60円程度です。補修用HIC買うと3400円。

ハイ、元通り基板に戻しました。違和感無し。

ちなみにいつも似たような画像ですが、使い回しじゃないです(爆)。

VCR0299A

もう一個の方ですが、型番がVCR0299Aになっています。このICで末尾にAが付くのは新しいものです。もしや、と思って裏を見たところ…。

ご覧のように過去に半田を外された跡がありました。どうやらこの機体は既に故障を起こして補修されているようです。儲けもんでした。一応これだけでも4000円以上の価値がありますからね。


総評

今回は初めて遭遇した第二のモードスイッチ異常でしたが、気付いてしまえば簡単でした。メーカー修理が一度入っているようで、ヘッド、消耗品の程度も良く、お得でした。最近はケチケチ修理が身に染みてきたために、ほとんど追加投資が不要になっています。

一通りの修理、メンテが済んだので使ってみました。チューナー、自己録画再生、他機種間互換も問題なしです。最終的な費用は本体2800円+コンデンサ60円程度=3000円弱ですかね。まぁ、送料とかその他経費はそれなりに掛かってますけど。オークションで同機種の動作品が1万円以上で取り引きされていることを考えるとやっぱりジャンクはお得です。同じ動作品でも、弱点が対策されているのとされていないのでは商品としての価値が全然違うと思いますしね。もし、動作品を買ったとしても明日壊れるかも知れない部分があったりしたらイヤじゃないですか。実際すぐ壊れるでしょうけど。

今回も一度メンテが入った機体でした。つくづく、メーカー修理(あるいは業者修理?)が中途半端だと思わざるを得ないですね。VCR0299Aを交換するついでに、何故いつものHICも交換しないのかと。だって絶対壊れること分かってるじゃないですか。とりあえず動けば良いってもんじゃないだろ。


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