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〜Panasonic ジャンクVTR NV-HC1 を修理する〜


Panasonic VHS Hi-Fi Video NV-HC1 「ミデオ」

さて、今回は松下機の中でも異色のミニサイズビデオ NV-HC1を修理します。このデッキは93年製。バブリーな重厚長大の時代は終わりを告げ、小さくてシンプルなものが徐々に流行り出す時代です。このデッキも「ミデオ」という愛称でミニサイズをウリにしています。

この機体は行きつけのリサイクルショップで「テープ走行せず、動きません」とのことで2000円でゲット。

サイズ比較のために、BS900二号機の上に載せてみました。ミデオと言うだけあって、かなり小さいです。幅、奥行き、高さともに極限まで縮小されているような感じ。そのくせに、Hi-Fiであり、SQPBにも対応。もちろんチューナーも内蔵していますので、普通のHi-Fi機として使用できます。サイズは小さいですが、なかなか高性能でイイ感じです。

背面端子は、このサイズにしては必要十分。映像は入出力1系統ですが、音声出力は2系統。これはミニコンポなどと組み合わせた使用を考慮してのことだと思われます。リモコンモード、アンテナ切り替えまで付いているのはさすが松下というところですね。端子の程度は極上。まだ輝きが残っています。

で、「テープ走行せず」とのことですから、当然壊れていました。動作確認してみたところ、いきなりヘッドの回転がおかしいです。回ったり止まったり逆回転したり…。なんだろ、と思って動かしたり止めたりしているうちに何故か直りました(爆)。ロワードラムの何かの接触が悪かったのでしょうかねぇ。ま、いいか。

で、普通に再生できて、ラッキー、とか思っていたんですが、再生開始後30秒くらいで突然止まります。何度やっても30秒程度で止まります。こういうときは、テープ走行を認識しているところが壊れていることが考えられます。テープエンドセンサー、あるいはリール台の回転センサーが疑わしいというわけです。


解剖図

ということで、解剖しました。カバーをはずして、顔を外し、カセコンを解放しました。ガガーン!松下機らしからぬ鉄板プレスのメカでした。93年といえば、まだ一般機にはアルミダイキャストを使っているはずですが、サイズ縮小のためにメカを新設計したのでしょうか。

消耗品をチェックしてみましたが、ブレーキは健在。ピンチローラーもまだまだ生きていました。特に手直しする必要はないと判断。メカのグリスの塗り直しだけしておきました。外観も綺麗ですが、中身も綺麗です。

責任病巣

部品番号 VXR0227
品名 (S)リールダイ
価格 600円

といことで、リール台を取り外してみたところ、サプライ側(左側)のリール台がこうなっていました(右)。このリール台にはクラッチが内蔵されており、バネでフェルトが押さえられている構造ですが、バネ圧にプラスチックのツメが負けて、3カ所あるツメの内の1本が折れていました。そのために底の鏡の部分がシャーシに押しつけられて削られてしまっています。リール台の回転は光学式センサーで読みとっていますので、ここの鏡と黒い部分が一定間隔で交互にセンサーに当たらないと本体は正常な回転を認識来なくなるわけです。ということで交換。

ブレーキアームへの道

リール台を交換しましたが、このデッキではカセット挿入と巻き戻し再生の時に内部からキーキーとヤな音がします。当サイトの読者様にはもうおなじみのキャプスタンモーターのブレーキアームの不具合でしょう。

ブレーキアームをいじるためにバラしているところですが、メカは基板とネジ止めされており、裏側からは簡単にメンテできないようになっています。うーん、サイズ縮小のためとはいえ、やりにくいなぁ…。

ということで、基板を剥がしました。おお!さすが松下。鉄板プレスになってもオールギヤ、コックドベルトの伝統は守っています。伸び対策のテンショナーも健在。このクラスのデッキにコックドベルトを使うとは、他メーカーにはできない(しない)非常に良心的な設計です。ちなみにモード接点は相変わらず接点式です。まぁこれは普通ですね。

メカを基板から剥がしただけではブレーキアームのメンテが出来ない構造でした。仕方なくローディングモーターの乗っているブロックを切り離します。ピンチローラーを外して、3箇所のネジを外します。

裏側に回ってテンショナーをゆるめてコックドベルトを外しておきます。

これが取れました。キャプスタンモーターとローディングモーター、固定ヘッド、クリーナーアームなどが取り付けられています。

ようやく到達

裏側です。ようやくブレーキアームに到達できました。早速台所洗剤で洗浄しましたが、これだけでは不十分で、相変わらずキーキー五月蠅かったです。仕方なく、モーターの金属部分をヤスリがけして少しザラつかせました。これで解決。


メカ組み立て

逆順で組み立てればOKですが、このデッキにも当然ギヤ位相がありますので一応記述します。このデッキはほぼイジェクト状態でメカ位相を合わせるように設計されているようです。

まず、ローディングモーターと、ピンチローラー用のトグロ状カムの位相はこの合わせマークで固定します。カム側には三角の矢印が浮き彫りになっています。

次に、ブレーキアームを上下させているギヤとその次のギヤの位置を合わせます。

カムには溝が掘ってあるので、そこと穴を合わせます。

続いて、次のギヤの矢印同士を合わせます。

モードスイッチに至るギヤを合わせます。

この真ん中の小さいギヤには2本の棒状の合わせ印がありますので、それぞれ、穴と、三角マークに合わせます。

ちなみにこのモードスイッチのギヤの噛み合わせはちょっとしたことで外れやすいので組み立てるときには注意が必要です。

組み立て時には、モードスイッチのコネクタを取り付け忘れないように。

正しく合わせると、この2カ所の合わせマーク(穴)がシャーシの穴と一致するはずです。

次にピンチローラを元に戻すのですが、ここで気を付ける点があります。このアームの位置です。バラした後は左側へずれてしまいがちなのでこの位置に戻してからピンチローラを固定します。

最初、私はそれに気付かずに組み立ててしまい、テープを絡ませてしまいました。

さて、メカが組み上がったので使ってみました。一応テープが止まらずに普通に再生できているような感じでしたが、どうもおかしい。再生画像に周期的にノイズが乗るのです。だいたい3秒周期です。特に3倍モードで起こりやすいようで、どうもトラッキングがずれたような症状が3秒周期で来るようです。

周期的ノイズで疑わしいのは走行が安定していないこと。3秒周期で1回転するものを探しました。


いろいろ調べた結果これが実に怪しい。白いローラーですが、ここがだいたい3秒周期で1回転していました。動きもやや渋く、時々止まったりしています。早巻き時も止まってしまいます。

軸にCRC556を少量注油して、動きは良くなったのですが、相変わらず周期ノイズは出ていました。

試しにこのローラーを手で止めてみたところ、ノイズが消えるではありませんか。そこでこのローラーをよ〜く観察すると、軸が微妙にゆがんでいます。軸というより、重心が偏っているのです。そのために3秒周期でテープ走行速度が微妙に変化し、トラッキングのずれたようなノイズを発生させているのでした。

このローラーはインピーダンスローラーという名前からして、本来走行の安定のためにあるはずですが、安定どころか乱してしまっていました。もしかすると、このデッキは最初から走行が安定していなかったのかも知れません。経年変化でゆがみが出るようなパーツとも思えませんし。

ということで交換。これでスッキリノイズが消えました。

部品番号 VDP1489
品名 Tインピ ローラ B
価格 100円

メカを組み立てたらカセコンを組み込みます。もちろんここにもギヤ位相がありますので注意。この機体では、上述のように各ギヤの合わせマークを合わせた状態でカセコンを挿入します。カセコンをイジェクト状態にしてはめ込めばOK。もしずれている場合は、テープ挿入してもすぐ吐き出される等の症状が出ますので、ローディングモーターを手で回して再び合わせマークを合わせた状態でやり直しです。

最後の組み立て時の注意ですが、この機体のように、カセコンと挿入口の蓋が一体型でない場合は、顔をはめる時に蓋を中に押し込んだ状態で取り付けないと、蓋が開かなくなってブルーになりますので注意しましょう。私はやりました(^^;。


総評

さて、レストアが終了したので一通り動作確認。問題なしです。当初のヘッド回転以異常もあれ以来再現されていません。絵については、思いの外綺麗な画像を出力しています。ヘッドは8ヘッドのようです。ヘッドの数からして、フライングイレースヘッドは無いようですが、3倍モード用の19ミクロンヘッドが付いているっぽいです(取り説が無いので真偽のほどは不明)。なかなか画質に拘っている設計の模様。気に入りました。小さいくせになかなか高性能で心憎い奴です。このサイズでこの性能を出している機種って少ないのではないでしょうか。他社でもミニサイズVTRを作っているところがありますが(SANYO、Shintom等)、実物を見たところ、サイズはこのデッキより少し大きめですし、メカ設計は当然松下にかないませんからね。やはり、松下パワー侮り難し!です。このサイズでS-VHS機を作れば最強だろうなぁ(妄想)。

最終入手費用は本体2000円+リール台600円+ローラー100円=2700円でした。お小遣い価格で大満足です。ただ、リモコンが無いのが残念。実はこの機種は省スペースの弊害で、本体側には極基本的なボタンしかありません。予約操作や初期設定はリモコンを使ってメニューを開いて画面上で行うように出来ていました。この辺は今時のデッキと同じですね。ただし、メニュー操作のリモコンコードは今時のデッキと異なります。リモコンが無いのでチャンネル設定が出来ず、今のところ普通に予約録画とかが出来ない状態です。時計合わせだけは手持ちのバーコードリモコンで出来るようですが。まぁ、専用リモコンも機会があったら入手しようと思います。

小さいので車載用とかの用途も良いかも知れませんね。DC12VからAC100Vを作る必要はありますけど。とりあえず今の職場で使い道がありそうなので持って行くことにしました。


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