にがAV

〜Panasonic ジャンクVTR NV-HC1 を修理する その2〜


Panasonic VHS Hi-Fi Video NV-HC1 「ミデオ」二号機

ミデオ2度目のゲットです。専用のリモコン欲しさに入手。ちなみに本体は欲しい人が居るので最初から転売するつもりでした。

今回のブツも某オクにて入手。「絵が綺麗じゃない」とか、「走行が安定しないことがある」という条件にてジャンク扱い。付属品はリモコンの他、マニュアル、電源ケーブル付きでした。若干の競合と競り合って3500円で落札。価値を考えると、本体2000円、リモコン1000円、取り説300円、ケーブル200円という感じですかね。まぁ適正価格でしょう。このクラスのジャンクの本体なら2000円が良いところです。S-VHSでもないですから。

一応二重構造らしい

さて、早速トップカバーを解放して故障状況の検証です。前回は気付きませんでしたが、このトップカバーってば内側にもう一枚板が張り付いており、しっかり防震構造になっていました。 小さいくせになかなかですね。

それなりに使い込まれた機体のようで、電源の上には静電気で付着したススが観察されます。

それなりに使い込まれているようで…

ヘッド回りですが、内部にはそれなりにホコリが付着。そしてヘッドクリーナーも結構煤けています。綿棒で念入りに清掃しておきました。ちょっとアルコールで湿らせた綿棒でひとしきり撫でてやると、ホコリが固まって取れます。

ヘッドクリーナーは台所洗剤にて洗浄。完全には白くなりませんが。

故障状況の検証

ちなみに動作させてみたところ、どうも巻き戻し速度が異様に遅く、再生中に突然停止したりしていました。この症状は…。

ということでメカを解放します。

リール台回りです。まぁそれなりにホコリが付いていますな。これらを綿棒で清掃しておきます。

そのリール台を裏から見ると…
またかよ!

こうなっていたのでした。なんと、前回のミデオと同じ故障ではないか!
責任病巣
サプライ側のリール台なわけですが、取り出したところこのように回転検出部分が削れてしまっています。これではサプライ側の回転を本体が検出できませんがな。

こいつのせい

部品番号 VXR0227
品名 (S)リールダイ
価格 600円

ちなみに原因はこの細い樹脂製の突起。3本のツメで写真左側のリール台の軸と噛んでいるのですが、この間にやや強めのバネがあり、下側に仕込んであるクラッチを押さえる構造になっています。そのバネの力に経年変化により負けてしまうようです。

2台も立て続けに同じ故障ということで、これは設計不良と言っても良いと私は思います。別の方に聴いたところ、その方のミデオのリール台も同じような状態だそうです。

リール台が当たった下のフレーム部分もこのように削れてしまっています。

さて、リール台は注文するとして、残りの整備をします。ある程度使い込まれた機体ゆえ、消耗品のいくつかがくたびれてきています。

まず、このリール台に巻き付いていたテンションバンドですが…。

このようにフェルトが外れかけてしまっています。とはいえ、フェルトそのものはほとんど痩せておらず、交換が必要という程ではないようです。

補修としてフェルトを貼り直すことにしましたが、取り外す前に、元の位置が分かるように、こんな感じにペンでマークしておきます。なぜならテンションバンドの張力は調整が必要だからです。適当に付けてしまうと、再生画像が綺麗に出なくなったりします。

このバンドは再生時にテープにバックテンションを掛けるもので、張力が強すぎればテープが回れなくなりますし、弱すぎても走行が安定しません。

消耗品のリフレッシュ

ということで、整備の必要なパーツを取り出しました。リール台、テンションバンドの他、ピンチローラー、キャプスタン用ブレーキアーム、ヘッドクリーナーアームの合計5つです。厳密には、これら(リール台以外)は消耗品ですが、今回の機体の程度では、再利用できる物が多いので、リール台以外は再利用することにしました。

テンションバンドですが、ボンドG17で貼り直しました。この接着剤は、接着面の両側に薄く塗り、5分くらい室温で放置して表面がベトつかない程度になってからお互いを圧着するタイプの物です。接着力はかなり強力。

ピンチローラーもテカってましたのでいつものセコ技でヤスリがけして研磨しておきます。

まだヒビの入っていないローラーならこれで十分復活できますからね。

キャプスタンモーターのブレーキですが、洗浄してもキーキー五月蠅いので、今回もモーター側をヤスリで削ってザラつかせました。これで五月蠅い音は消失。

リモコンの分解洗浄

リモコンもそれなりに汚れていたので完全にバラして洗浄です。いつものように台所洗剤にて洗浄しました。リモコンをバラす際には、固定しているツメを折らないように注意です。マイナスドライバーなどで安易にこじってしまうとアッサリとツメが折れたりします。テコの力を侮っては行けません。ここは指の爪を使ってで慎重にやったほうがいいです。爪を切りすぎていると開けるのが難しいです。指の爪で作業を行う分にはほとんどツメが折れることはありません。逆に指の爪が折れることはありますが…。

このリモコンで特徴的なのが、オーディオのコンポも操作できるということです。オーディオ操作ボタンで、ミニコンポのモードになります。どうやらCDプレーヤーとカセットデッキが操作できるらしいです。しかし松下製の一部のコンポにしか対応していません。残念。(具体的には、SC-CH303/700/900/750/950/550/655/505/707だそうです)

ちなみにこのリモコンはGコード対応ですが、変換キーが実装されているので、Gコードをタイムコードにリモコン上で変換することができます。この意味するところは、過去のGコード非対応松下デッキでも、このリモコンを使えばGコード対応になってしまうということですね。

ちなみにチャンネル合わせや、時計合わせにはリモコンが必須。実はこのリモコンには時計が内蔵されており、常に時を刻んでいます。本体側の時計を合わせるときは初期設定ボタンを押して、日付を表示させた状態で転送ボタンを押せばOKなので結構ラクです。チャンネル設定も電話の市外局番入力で一発合わせができるようになっていました(もちろん個別調整もできます)。

さて、再生してみましたが、どうもトラッキングがあったり合わなかったり…。前回周期ノイズを発生させていたこのインピーダンスローラーを調べてみました。写真で中心軸の回りの穴に沿ってにクラックが発生しているのが分かるでしょうか?このローラーの中には金属のオモリが仕込んであるようなのですが、回りの樹脂との収縮率の違いから、経年すると樹脂が負けて割れてしまうようなのです。私思うに、こいつも設計不良ですねぇ。上のリール台といい、このローラーといい、どうも松下らしくない設計ミスです。ということで交換しておきました。100円ですしね。

部品番号 VDP1489
品名 Tインピ ローラ B
価格 100円

ちなみにこのミデオは独立したトラッキングボタンは持っていません。マニュアルによると、実はテープ再生中にはチャンネルボタンがトラッキングボタンになるようです。ちなみに上下同時押しでオートトラッキングが働きます。


総評

さて、これら修復したので、動作確認してみました。トラッキングが合わない不具合はごく一部の(たぶん互換性に問題のある)テープで見られるものの、大多数のテープではキチンと合いますので、特別不具合とは言えなさそうです。

ちなみにこの機種のトラッキングは本体の「チャンネルボタン」で行います。再生中にチャンネルのup/downを押すとそれぞれにトラッキングが動き、up+down同時押しにてオートトラッキングが働きます。この辺はマニュアルが無いと判らないところですね。

それにしても、リール台とインピーダンスローラー、この機種の弱点というわけですが、なんとも松下らしくない設計不良です。まぁ、値段がそれほど高くないのでHICの不良なんかに比べるとまだかわいい方かも知れませんけどね。HC1は極限までのサイズ縮小を求めた実験的なメカだったのかも知れません。

ちなみにHC1には後継機としてHC3という機種があり、探しているのですが、あまり見かけることがありません。このHC3でこれらの設計不良が改められているかどうか興味があるところですね。もしもHC1と同じメカなら、いい加減そろそろ壊れたジャンクが出回っても良さそうな頃だと思うのですが…。

さて、最終的なお値段算定。本体+マニュアル+リモコン=3500円+リール台600円+ローラー100円=4200円となりました。付属品付きなのでまぁまぁですかね。最終的な値段がかつての重厚デッキとあんまり変わらないのがなんとなくアレですけど。ちなみに入手時から本体のみを、とある方にお譲りする約束となっており、この機体は既に手元にありません。


ご意見、ご感想、ご質問はにがBBSまで!

Top pageへ戻る

copyright (C) 2000 Niga.