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〜Panasonic ジャンクVTR NV-V10000 を整備〜


Panasonic S-VHS Hi-Fi Video NV-V10000 

S Video Master 10000

 ついに来るところまで来てしまいました! 松下VTR史上最強最重量級のV10000です! 松下のバブル期の重厚デッキVシリーズの1つで、89年頃の作品です。V8000は定価26万円。でしたが、このV10000はなんと定価41万7千円です。重量は約20kg。外装も中身もこりゃすごい! V8000同様外観はビデオじゃないですね。今回もジャンク入手ですが、お値段はナイショ(爆)。

今回入手の機体はジャンク機ながら、再生は出来たとのこと。もしかしてどこも壊れてないかもという感じでした。届いてみたら程度は極上。外装のキズも少ないですし、中を空けてみてもホコリがほとんどありませんでした。消耗品もほとんど新品同様。どうやらほとんど使われていなかった機体のようです。

V10000は受注生産のデッキでしたが、実はそこそこの数が生産されたという話です。個人向けというよりも法人、つまり学校等の教育機関にも結構な納品されたという噂。確かに学校の視聴覚室などに置いてありそうな雰囲気ですよね。でも普通の学校だと、ビデオを使う必要が生じるのは教育用ビデオの再生に年に数回使う程度じゃないでしょうか。今回の機体は推測するに、そういった使われ方をしたものではないかと。最近は映像編集もデジタル化の並が押し寄せていますので、機材入れ替えで今後不要になるV10000が少なからずあるものと思います。

顔には黄金に輝くインジケーターパネルがありますが、ここにはカットしたガラスがはまっています。周辺が斜めにカットされているのです。この高級感がたまらんス。

かなりブ厚いヘアライン入り金属製シーリングパネルを開けると、今までの民生機とは全く違った顔つきが現れました。操作ボタンやスイッチの作りが普通の民生機と全然違うのです。スイッチ類もヤケにサイズが大きいです。

ちなみにこのデッキではTBC装備です。これはそこそこ効果があるようです。一応デジタルNRも搭載していますが、今時のデジタル技術と比べてしまうとかなり貧弱です。まぁ、これは仕方ないですね。時代が時代でしたから。

また、デジタルオートトラッキングは装備されておらず、手動でトラッキングを合わせないとなりません。その代わり、スロートラッキング調整も出来るようになっています。

操作系ですが、このジョグシャトルは結構使いやすいです。サーチスピードボタンがあり、これを押すとサーチ速度にブーストが掛かります。

また、編集機能も内蔵しており、プログラムによるプリロールが出来るようです。どうやって使うかがイマイチ不明なのですが…。何しろマニュアルが無いもので…。

サブのFL表示管。恐るべき事にタイムカウンタが常にフレーム単位で表示されています。秒間30フレームです。業務用機並ですね。音声レベルメーターも横幅が広く、分解能が非常に高いです。

メインのFL表示管ですが、レベルメーターの無いNV-FS65と同様のものだと思います。

タイムカウンタが別に用意されているので再生しても時計が表示され続けます。

外から見た電源部ですが、この異様に突き出したクーリングファンと極太電源ケーブルが印象的です。

電源ケーブルを見る限り、1989年の作品らしいです。「FOR AUDIO」と書かれています。オーディオ用の高級ケーブルでしょうか。

背面端子群ですが、比較的シンプルです。BS内蔵機ではないので。

パネルは独自設計のようです。

当然の如く、RCAプラグは全て金メッキです。

何故かリモコンモードスイッチが背面にありました。

もの凄い外装

これがサイドパネルですが、今まで見てきたビデオとは根本的に違うって感じです。

モロにゴッつい金属製です。叩くとゴッツイ金属音がします。

重量がすさまじく、一枚1150gもありました。両側で合計2.3kgです。デッキ全体が約20kgだから、サイドパネルだけで全重量の10%以上占めているというわけです。

ボトムプレートも異様に重いです。黒い塗装で高級感倍増。しかし残念なことにこの機体にはキズが入っています。

インシュレーターもブ厚いのが4つ付いています。

インシュレーター。

これもダテではありません。中堅クラスのデッキだと飾りとして見えるところしか付いていませんが、本当の高級機はきちんと意味のあるモノが付いています。

中にはセラミックが入っていました。これで振動を防ぐということでしょう。


解剖

メンテナンスをするためにとりあえずトップカバーをはずしました。このトップカバーもヤケに重いです。厚めの鉄板にさらにもう一枚鉄板が張り付いていました。2重構造にすることで振動を抑えているのでしょう。

ヘッド回りですが、このようにビデオアンプがヘッドの上に位置しています。

ヘッドの摩耗状況ですが、鏡のような輝きとまでは行きませんが、まぁそこそこ綺麗でした。反転ノイズも無いし、とりあえず問題ないかと。

ちなみにヘッド左のインピーダンスローラーがヤケにデカいです。写真ではわかりにくいですが、今までの高級Gメカ機より3〜40%程大きいと思います。

リール台近辺ですが、ダイレクトドライブなので穴からモーターの一部が見えます。ブレーキパッドもここから観察できますが、劣化している様子はありませんでした。それにしてもブレーキの交換って裏に回らないとできないのですねぇ。メンテナンス性はあまりよくないかも。

ちなみにこの写真では映っていませんが、ハーフローディングアームや、ピンチローラーなどは普通のGメカと共用パーツでした。このメカはGメカの改造版といった印象です。V8000は完全独自設計でしたけど。

V10000メカ唯一?の弱点

imomushiさんのサイトでも紹介済みですが、こんなところにゴムベルトが…。

弟分のV8000では同様の所にコックドベルトが採用されていましたが、V10000では思わぬ所に弱点がありました。

まぁ、このデッキではとりあえず滑っている様子は無いのでそのままとしていますが…。でもこんな最高級デッキで何故に今更ゴムベルト?? 当時の松下機は廉価モデルまでゴムベルトは不使用だったのに。

ものすごい電源部

これもimomushiさんのサイトでも既に紹介されていますが、電源です。ごっついトランスが二個。電源からデジタルとアナログが分離されています。フツーでは考えられない贅沢さですねぇ。しかもわざわざ中を空けなければ分からないようなこのトランスに金ピカのヘアライン入りの豪華なラベルを貼っているあたり、よっぽど見て欲しかったものだと思われます。

ちなみにこの左奥にクーリングファンがあり、電源が入っている時に強制排気されます。ですが、このデッキではこの電源部にホコリがほとんど蓄積していません。どうやら電源が入っていた時間が非常に短かったようです。

ハイブリッドIC

とりあえず松下バブルデッキでの弱点とも言えるハイブリッドICを探してみました。過去に交換歴の無い表面実装のコンデンサがあれば必ず交換しておいた方が無難でしょう。今大丈夫でも将来的には100%噴いて不具合を発生させると思います。

Y/C PACK

ということで、発見。ありがちなY/C PACKに載っていました。半田付けの跡と基板の色を見る限り、過去に交換されていないようです。新しいものは、基板の色がもっと濃いグリーンですから。

ちなみにこのベースの基板はガラスエポキシのスルーホールです。ただし、このICの載っているパターンでは両端のピンがスルーホールとなっているのみです。

いつも通りに補修

すでに当サイトではお約束的な補修となっていささかウンザリ気味ですが、このV10000でも性懲りもなくこの松下ビデオ史上最も噴きやすいHICが容赦なく採用されていたのでここを対策します。

一応動作状は問題ないようでしたが、絶対に壊れるのでコンデンサを剥がして見たところ、やはり足は腐りかけています。コテを当てるとイヤな臭いが漂います。

ということで、背の低い新品に張り替え。パターンの間隔の都合で、左から2番目のコンデンサの足の曲げ方に注目。

下のチップコンデンサに足が触れないように注意。

背の低いケミコン使用なので元の基板にも難なく戻せました。

張り替え後のS-VHS再生テストでは全く問題ありませんでした。


裏側

さて、他にヤバそうなところが無いかどうかチェックするために裏側を解剖します。

ボトムプレートを外すとこうなっています。かなり基板の密度は高いです。

デジタル関連?

上の写真向かって左側の基板を持ち上げるとこのようなシールドケースが現れます。おそらくTBC等を担当するデジタル回路が入っているものと思われます。

メカ裏側へ

メカの裏側へアプローチするために基板を外していきますが、それにしても密度が高いです。このように2枚の基板を剥がしてもさらに下にはシールドケースともう一枚小さめの基板が張り付いています。恐ろしく基板も多いです。もうここまで来ると何をしている基板なのだか分かりません。

メカ裏

ようやくメカ裏側へ到達できましたが、コネクタを外さないときちんとメンテできません。面倒なので斜めから写真を撮りました。リール台はV8000同様に2リール D.Dモーターです。ブレーキを交換するためにはおそらくこのプレートを外さないとならないのでしょう。今回は壊すとイヤなので放っておきました。

キャプスタンモーターはキャプスタンを回すことだけに専念するため、ここにベルトは巻き付いていません。

また、ローディングポスト近辺はGメカと同様の造りです。ですが、ローディングモーターが別にあるので、その分増えたギヤがキャプスタンモーターの上に見受けられます。


総評

それにしてもいちいち金の掛かった設計が随所に見受けられ、バブル時代の輝かしい物量投入を見せつけられました。非常に所有欲を満足させる造り込みで、性能は確かに良いのですが、絵はやはり今時のTBCや3次元Y/C分離等で武装された絵ほどは綺麗にならないんですよねぇ。とはいえ、メカの安定度は比較にならないほど優れており、編集には非常に使いやすいです。マスターテープを編集するにはかなり使えそうです。

ここまで物量投入された重厚デッキですが、別の見方をすればBSのない1台のS-VHS機に過ぎません。レア度を反映してか中古のお値段も結構しますので、私のようなコレクターでない普通の方はおとなしくそこそこ新しいデジタルで武装されたデッキを買う方が良いと思います。

ともあれ、最終目標的なデッキが入手できて一段落です。あと残った捕獲対象デッキはBS30SとBS50Sくらいのものでしょうか(あとCX1も)。コンプリートは目前だ(笑)。


2001.01.20 追記

このデッキはジャンク入手だったのでリモコンがありませんでした。入手できるうちに手に入れておこうということで家電店経由で注文してきました。やっぱり超高級レア機ですから専用リモコンがイイ感じです。

対応機種は「NV-V10000/X10000」とか書いてありますが、NV-X10000って一体…??

お値段は結構高いです。6450円。また、デザイン的にはFS2桁機の時代のモノのようです。色は違いますけど。おそらく内部の基板は共用でしょう。FS2桁機にはVASSが付いていないと思いますが、V10000はVASSも使えるようです。


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