にがAV

〜ドリキャスをPCと接続する〜


 SEGA Dreamcast(2号機)

 ドリキャスは非常に愉快なゲームマシンで、ここ最近エミュレータだの、ムービープレーヤーだの、mp3プレーヤーだのをはじめとしたアマチュアの作品が続々と登場してきています。こんなに敷居の低いコンシューマー機は他にないでしょう。最近はゲームソフトの吸い出し(リッピング)が流行で、必要なソフトはネットで公開されており、簡単なハードウエア工作でPCとのシリアルインターフェイスが自作可能です。私も興味半分でPCと接続してリッピングをやってみようと思いました。

 「リッピングって何?」 という方は必要な知識を仕入れてからこの記事をお読み下さい。敢えてリッピングの何たるか、その方法や必要なソフト等はここでは解説しません。解説サイトは他にいっぱいありますので興味のある方は検索エンジンを使って探してください。リンクも書きません。

 ちなみに今回はメイン基板を直接改造することになるため、失敗すれば本体破壊の危険性があります。この記事を参考に改造される方は改造前に肝に銘じてください。壊れて文句を言う人は改造する資格無し!です。かなり細かい半田付けがあるので、改造初心者はやめておいた方がいいです。今回は壊してもいいように、最初から壊れている2号機を利用することにしました。2号機はGDユニット以外は正常なので、とりあえず3号機からGDユニットを移植してテストすることにしました。


パーツの調達

一般にリッピングに必要なパーツは、ネオジオ用のシリアル通信ケーブルと、RS232Cレベルコンバーター(MAX232等)、0.1μFのコンデンサ4つ程となりますが、ネオジオの通信ケーブルはそこら辺のゲームショップではまず入手不可能。通販で買うのも面倒だし、お金もかかるので、私はDCにシリアル端子を増設する形で改造することにしました。

MAX232 1個
0.1μF 4〜5個
Dサブ9pコネクタ(メス) 1個
配線材 ジュンフロン線等

ちなみに今回も全てジャンク基板等から外した奴をリサイクル(爆)。従って改造費用はほとんどタダ。

回路図(配線図)

ネットで公開されている回路図は、悪魔でもネオジオ通信ケーブルを改造する形で書かれており、しかもPCとはクロスケーブルで接続することが前提のようで、直接変換回路をDCに内蔵させることを考えて書かれていません。頭の中で変換しようとすると訳が分からなくなるので改めて回路図を書き下ろしました。

白い四角で囲ったところはDCの接続ポイントです。合計6カ所。青い四角がPC側(Dサブ9p)で、こっちは合計7カ所。パスコンは入れても入れなくてもOKだと思います(今回は省略)。

ちなみにゲームラボの記事も参考にしてみたのですが、実はあの配線図、間違ってます。最初はすっかり騙されましたよ…。昔っからゲームラボって本はそうでしたねぇ…。回路図くらいは気を使って書いて貰いたいものです。ゲームラボといえば、私のMSXのページからタイトルCGを無断利用されたことがあります。別にダメとはいいませんけどねぇ。

PCシリアルポートのピンアサイン(Dサブ9p)

ピン番号

I/O

信号名

備考

1

I

DCD

キャリア検出

2

I

RxD

受信データ

3

O

TxD

送信データ

4

O

DTR

データ端末レディ

5

-

GND

グラウンド

6

I

DSR

データセットレディ

7

O

RTS

送信要求

8

I

CTS

送信可

9

I

RI

被呼要求

参考までに、PCのシリアル端子のピンアサインは以上のようになっています。尚、ピン番号はパーツに小さな字で刻印されています。


改造開始

さて、早速改造に着手します。まずはMAX232を基板に載せる場所を決定。周辺に干渉しない位置を探した結果ここにすることにしました。左上には信号を取り出すシリアル端子が見えます。結構足のピッチは細かいです。
MAX232張り付け

MAX232の足を広げて加工し、両面テープで貼り付けます。この際、あまり上に張り付けると、取り付け後にシールド版をかぶせたときに足がシールド版に接触してしまいます。注意しましょう。
電源ライン取り出しポイント

その電源ラインの取り出しポイント。+5Vは0Ωのチップ抵抗から取り出し。GNDはAV端子のShellから取り出しました。

2001.7.1追記

以前公開していた+5V取り出しポイントは誤りがありましたので訂正します。前回の取り出しポイントは+3.3Vでのものした。正しくは修正後の写真の位置です。尚、回路図の方は誤りはありません。

DCシリアル端子の配線(難易度高)

シリアル端子の4p〜7pに回路図通りの配線を施しますが、ピッチが細かく、半田付けにはそれなりに高度な技術が必要です。油断するとすぐブリッジしてしまいます。ある程度半田コテに慣れてない人には無理だと思います。写真ではあまり綺麗に見えませんが、軽く引っ張っても取れないので大丈夫でしょう。引っ張りすぎるとパターンが剥がれたりしますので要注意。また、配線にはかなり細い線材が必要です。私は0.26mmのジュンフロン線を使っています。

注)上の電源ラインの配線は修正前です。

PCシリアル端子の配線

PCへ繋ぐためのDサブ9p端子に回路図通りの配線を施します。これは簡単。長さですが、無闇に長くするとノイズを拾って動作不安定の原因になりかねませんので、なるべく短い方が良いと思います。できればシールド線を使いたいところですが手持ちに無かったのでジュンフロン線で我慢。
ケースの加工

増設コネクタを固定するための穴開けをします。クーリングファン排気口右隣のこの位置であれば、周辺と干渉せずにコネクタが取り付け可能です。ドリルで穴を開け、板ヤスリ、カッターナイフなどで加工。パーツをあてがいながら微調整します。

今回は皿ネジで綺麗に固定するためにネジ穴のエッジを小刀で削りました。
固定

配線をシールド版の隙間をくぐらせながら元通り基板などを戻し、ネジで増設コネクタを固定します。この際、配線がシールド版で挟まれないように要注意。
完成!

綺麗に固定できました。さて、きちんと使えるでしょうか。


総評

 シリアルケーブル(ストレート結線のDサブ9pオス−メス)を繋げてPC(お茶の間ゲームPC)とリンクさせてみました。

ゲームラボの配線図に騙されたりして一発動作はできませんでしたが、修正を施したところ、なんとか吸い出し機能は動いているようです。115200bpsのシリアル通信ですので、速度的にはISDN(2回線)でDCのソフトをダウンロードしているような感覚。かなり無茶です。最大容量の1Gのソフトには丸一昼夜かかるという実に気の長い作業。その間にPCがハングなんかしたら最初からやり直し。まぁ、ウチのお茶の間PCはいつも安定動作していますし、仕事に行っている間に作業させるので時間については全然気にしませんけど。

ということで2号機にはリッピング専用機としての余生を与えることにしました。GDを取られた3号機が可哀想な気もしますけど…。

ちなみに最近はブロードバンドアダプタ(LANアダプタ)を使った吸い出しが出来るようになっており、これを利用すると1Gのソフトでも1時間程度で吸い出しができるらしいです。しかしブロードバンドアダプタは現在超品薄で、一般の販売店では購入できず、セガからの通販のみ。今注文しても入荷には3ヶ月かかるとの情報です(2001年4月現在)。そのためか定価8800円のブロードバンドアダプタが某オクでは2万円以上の値が付いています。そんなこんなでDCリッピングはちょっと異常なブームとなっているようです。キミたちはそこまで金掛けても吸い出したいのか…と言いたくなりますが。

今回の改造費用は、全てあり合わせの材料を使ったため、0円でした(笑)。あ、そーいえば、シリアルケーブル(1.5m)が2000円もしやがりました。これだから田舎ってやつは…。


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