これまで何度かウチのBBSで、ゲームキューブネタを扱って欲しいと要望があったのですが、遊びたいゲームも無かったし、ジャンクで出回る数も多くなかったので長いことスルーしていました。最近はメタルギアとか、ガンダム系の遊びたいソフトもチラホラ出てきたので入手する機会を伺っていたところ、たまたまハードオフに部品取りジャンクとして3000円で出ていたので、捕獲してしまいました。ガワは綺麗でしたが、吸気口付近はかなり汚れていて、内部からタバコの匂いがプンプンします。たぶん、ヤニでピックアップが汚れているのだろうと考えました。
とりあえず動作確認したいところでしたが、あいにくゲームキューブ(以下GC)はディスクがシングルCDサイズで、専用ソフトじゃないと読めないみたいです。仕方なく同じハードオフでジャンクで出ていたソフト「ペーパーマリオRPG」を1500円で買いました。予想通りではありますが、ジャンクなだけあってちっとも読みとれません。分解清掃が必要のようです。
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さて、GCの分解ですが、トップカバーの固定には特殊なネジが使われています。子供が無闇に分解しないようにという配慮なのだろうと思いますが、私は子供ならむしろ積極的に分解して好奇心を養ってもらいたいと思ったりもします。 ネジはラインヘッドと言われる種類のようです。回すには専用ドライバーが必要ですが、なかなか手に入りにくいです。一般のホームセンターや東急ハンズ等ではほとんど扱っていないと思います。 |
ネジ通販サイトの画像を勝手に引用しちゃってますが、ラインヘッドネジはこんな形状です、 GCで使われているネジは、d3=3.674mm、k=1.6mmです。後で紹介する改造ドライバーを作る場合に参考にしてください。 ちなみにスーパーファミコンのカセットや、セガサターンのパワーメモリにも同じサイズのネジが使われているようです。 |
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LHドライバーは通販で1500円くらいのようですが、同じくらい送料がかかるので手を出しにくいですね。ちなみに梅沢無線(札幌)にも売ってるようでした。 |
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BBSでこの話題を出したところ、マイナスドライバーをヤスリで削って似非LHドライバーを作れるという情報を頂きましたので、早速100円ショップでドライバーセット(4本組み)を入手して削り込んでみました。 |
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ドライバー改造には電動ミニルーターを使用。金属彫刻用の硬質ビットを使ってます。削り込む際にはビットにオイルを少量垂らしておきましょう。 これで削ったところ、ものの15分程度で作業完了。手作業で削り込んだ方の話だと、作業に数時間掛かったとのことです。持つべきものは道具ですなぁ…。ちなみにこのルーターは各種ビットがセットになって1万円くらいしたものです。基板の穴開けやケースの細かい加工にも使えるので、一本持っていると便利です。 |
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改造ドライバー作った後の話ですが、BBSにて100円ショップダイソーに売っているミニボックスレンチセットの中に使えるものがあるという情報を頂きました。 そのボックスレンチセット、元々6角ナットを回すものですが、実は既に持っておりまして、4mmのやつで試したら確かにLHネジが回りました。思わず目からウロコ…。そして恐るべし、ダイソー…。 |
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底面のLHネジ4本を外してようやく分解することができました。これで修理にとりかかれます。底面ネジ以外は普通のプラスネジが使われていましたので、ここから先の分解はラクチンです。 |
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読みとり不能の原因はおそらくピックアップのレンズ汚れと考えられましたので、とりあえずドライブユニットを取り外します。 各ユニットはしつこいくらいにネジで固定されておりました。子供が乱暴に扱っても壊れないようにとの配慮と思われます。余談ですが、どこか海外のサイトで、PS2、XBOX、GCのどれが一番頑丈かを比較するために、落としたり叩きつけたりという実験をしていたところがありました。PS2はアッサリ壊れて、GCは一番しぶとかったという結果でしたが、各機体の構造を見ると、なんとなく納得できる結果ではあります。 構造的には、エアフローをよく考えられた設計で、右側面の吸気口からヒートシンクを通って左側面のファンで排気するようになっています。何カ所かに松下のマーク([M]みたいなの)が入っていたので、作ったのは松下みたいですね。 |
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ドライブユニットのシールド版を外すと、裏側はこうなっています。レンズ内部を掃除するためにはピックアップユニットを分離しないとならない構造です。レーザー素子は静電気に非常に弱く、安易にフレキを解放すると静電死を招くので、ソレ用のフレキは外さずに、まずはスピンドルモーターとシーク用モーターのコネクタと半田を外します。 |
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ドライブユニットはツメで引っかかっているので、ツメを注意深く外しながら翻すとこうなります。この時点ではピックアップのフレキはまだ制御基板に繋がったままです。画像の位置にショートランドがあるので半田を盛ってからフレキを外します(画像は半田を盛った後)。この処置を行うことで静電気で素子が破壊される確率が低くなるようです。 ショートランドの処置は「絶対に必要か?」と言われると微妙ですが、うっかり静電気を与えてレーザー素子を壊してしまってからでは手遅れです。レンズ清掃のためにフレキを解放した状態でいじくり回すことになるので、やっておいたほうが無難でしょう。 |
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ピックアップを固定しているレールを外して完全に分離させました。レンズを覆っているカバーがあるので、これを外します。 |
レンズは4本のワイヤーで宙づりになっているような構造です。PS2のレンズと非常に似た作りです。 掃除のやりかたも同じです。レンズ表面と裏側、内側のプリズムを、イソプロピルアルコール(イソプロパノール)を染みこませた細い綿棒でクリーニングし、乾いた綿棒でもう一度拭き取りました。 ちなみにエタノールはレンズの樹脂を侵すので使用禁と言われています。イソプロパノールは比較的樹脂を浸蝕しない薬液だそうです。薬局で売っている消毒用の濃度の薄いので十分でしょう。酒税が掛からない分、エタノールより安価(なんと、消毒用エタノールには酒税が掛かっている!)ですし、ガワのクリーニングなどにも使えるので買っておいて損はありません。 洗浄後は元通りに組み立てるだけですが、フレキを繋いだらショートランドに盛った半田の除去も忘れずに。 |
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レンズ清掃後に動作チェックしてみたのですが、相変わらず全然読めないので、仕方なくレーザーの出力調整することに。 調整用と思われる半固定抵抗がドライブユニットの制御基板に1個貼り付いています。本当はオシロスコープでアイパターン見ながら調整したほうが良いのですが、動作させながらオシロのプローブで探りを入れることができない構造なので断念。 半固定抵抗を回してみた感触では、半時計回りで出力アップ、時計回りで出力ダウンするみたいです。PS2とは逆なので注意。 |
起動! 。とりあえず半固定抵抗を目隠し状態で回してみました。半時計回りに2〜3度回したところ読めるようになりました。
動作チェックを繰り返しながら、安定して読めるところまで半固定抵抗を回したところ、結局30度くらい回すことになってます。
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動作できることが分かったので、気持ちよく使うために徹底的に洗浄します。 前オーナーがスモーカーだったらしく、筐体内部からはヤニの匂いがプンプンします。排気口付近にはヤニで汚れたホコリがこびりついていました。このような汚れは徹底的に洗わないと匂いが取れません。 |
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安全に水洗いできる部分とそうでない部分があるので筐体をバラせるところまで徹底的にバラしました。 |
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シールド板は鉄板なので長時間水に漬けておくと容易にサビてしまいます。 かんたんマイペットと歯ブラシでサッと水洗いして、すぐに乾燥させたところ、錆びることなく綺麗になりました。 |
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コネクタや光学機器、ファンなどの可動部品は浸水させるとその後の手入れが大変なので、このあたりのユニットはイソプロパノールを浸した綿棒でチマチマとクリーニングしました。 |
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樹脂製品は漂白剤で浸け置き洗浄です。洗面器にキッチンブリーチキャップ1杯で十分です。一昼夜浸けておきました。 |
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せっかくなので簡単にできる改造もしてみました。 任天堂ゲーム機のAV出力端子はスーパーファミコン時代から同じコネクタが使われているようですが、我が家にはコンポジットビデオケーブルしかありません。これではさすがに色のにじみが気になるわけですが、これ専用にSケーブルを買うのもアレなので、S端子とオーディオ出力端子を増設してみました。 この機体はAV出力としてデジタルとアナログの2系統持っているようですが、05年から出荷されているコストダウンモデルではデジタル出力が無くなっているそうです。 画像では中央奥がデジタル、右奥がアナログ出力コネクタです。 |
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ということで、アナログAV出力端子にワイヤーを半田付けして信号を引き出しました。ピンアサインについては、Hage88さんのサイトに載っております。音声信号用に2芯のシールド線、S映像用には1芯x2のシールド線(ヘッドフォン用)を使ってますが、少し太すぎかも。基板の穴を通して表側に誘導しました。 |
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AV出力端子とシールド板の隙間から引っ張り出しました。隙間は結構ギッチギチなので細いワイヤー使った方が良かったかも。 |
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スペースの都合を考えて、この位置に各コネクタを取り付けました。S端子はネジ止めできない位置だったのでホットボンドで接着しています。 |
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外観はこうなりました。これで専用ケーブルがなくても接続可能となりました。 |
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GCの改造でネット検索してみると、海外リージョンに対応させる改造が結構引っかかるんです。PICマイコンを使って北米モードに切り替える改造みたいですが、どこを探しても肝心のソースプログラムが配布されていません。関連サイトではプログラム済みPICの販売もやっているようですが、わざわざ購入してまでやりたい改造でもなかったりします。 そこで、勉強を兼ねて自分でプログラム書いてみたりしたのですが、どうも上手く行かないので、簡易改造で妥協しました。 海外モードに切り替えるためにはあるパターンをLレベルに落とすだけで良いようです。場所はATIのビデオチップとアナログ出力コネクタの間。抵抗のパターンが3つ並んでいるところです。 |
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ここのR6のパターンの左側のほうをGNDに落とすと北米版になります。元々R6に0Ω抵抗を載せると北米版になる仕様なのでしょう。 まずはここから信号をジュンフロン線で引き出しました。 |
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新たにスイッチを増設して設定ピンをGNDに落とすように作れば確実ですが、とりあえず海外モードで動作するのを見たいだけなので、リセットスイッチに直結してしまいました。リセット押しながら起動すると海外モードになるという仕組みです。リセットスイッチを離すと国内モードに戻っちゃいますけど。 ついでなので、LEDを青色高輝度タイプに付け替えておきました。最近は至る所で青色LEDが使われているので、食傷気味という気もしないではありませんが…。 |
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さて、ゲームで遊ぶためにはコントローラが必要なわけですが、専用コントローラを買うと2400円くらいするし、邪魔になることも考えて、プレステコントローラを繋げる変換アダプタを買ってみました。ヤフオクで即決価格500円と、お値段もリーズナブル。デュアルショックなら我が家にジャンク上がり品がゴロゴロ転がっていますので資源の有効活用にもなるわけです。 使ってみた感じでは結構イイ線行ってます。ちゃんと振動に対応するし、アナログスティックの感覚も良好です。難点はLRトリガの仕様が異なることくらいでしょうか。ABXYボタンの配列は違いますが、慣れてしまえばどうってことないです。 |
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お約束ですが、分解して内部構造を見てみましょう。 |
うわ、メチャメチャシンプルなパーツ構成ですね。部品面の実装部品はIC、セラロック、コンデンサ各1です。パターン面にはチップコンデンサ、チップ抵抗がいくつかとLEDが載ってました。 |
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「EM78P156ELP」なるよく判らないチップですが、部品構成を見た感じだと、たぶんプログラマブルなワンチップマイコンなんでしょう。 ソースコードがあれば自作も可能かも知れませんが、特殊コネクタが必要だし、500円という値段を考えたら買った方が安いですね。 |
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最後にメモリーカードです。さすがにこれは他のもので代用できないのでやむなく購入しました。 とはいえ、新品ではなく、ブックオフで中古1000円のやつです。 |
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プレイ環境が整ったので、動作確認を兼ねてペーパーマリオRPGで遊んでみました。マリオ関係だからお子様向けかと思いきや、なかなか奥が深いです。RPG慣れしていない私でも苦痛にならずにレベルアップできる流れになっており、大人でも楽しめるゲームですね。アイテム豊富でやり込み要素も盛りだくさんです。 ところが!頻繁に動作が止まるんです。突然画面が落ちてディスクの読みとりに失敗したという内容のメッセージを表示して止まってしまいます。本体の取扱説明書を読んでどうにかなる問題とは思えず(そもそも取説持ってないし、どうせディスククリーニングしてみろ、とかメーカー修理に出せ、という内容なんだろうけど)。 まずは半固定抵抗の調整を繰り返しましたが、頻度変わらず。調子の良い時には数十分動きますが、一度エラーが起きるとその後頻繁に同じエラーを繰り返します。でも、電源を切ってしばらく休ませるとまた数十分動いたりします。 |
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症状から考えてまずは電解コンデンサの劣化を疑い、表面実装タイプの電解コンデンサを全て張り替えてみました。ドライブユニットの制御基板で10個、メイン基板で7個です。しかし、残念ながら症状改善には至りませんでした。 あとは制御チップの熱暴走が疑わしいのですが、異常停止した直後にヒートシンクやドライブユニットの制御チップを触ってもぬるいくらいで、熱問題が発生しているとは考えにくい状況でした。 その後別のゲーム(メタルギアソリッド ツインスネークス)を入手して遊んでみたのですが、1度のエラーを除いては安定して読みとれました。ペーパーマリオはキズだらけのディスクだったので、キズで読みとれなかっただけだったりして…(一度コンパウンドで研磨したんですけどね)。 ということで、原因はディスクのキズが主体だったと結論しておきます。それだけではないような気もしますが、これ以上の原因追及は困難でしょう。後でペーパーマリオのディスクを再研磨してもう一度検証してみたいと思います。 |
総評
ということで、とりあえずGCでのゲームプレイ環境が整いました。
動作がチョッピリ怪しいですが、エラーを起こしても一度フタを開けて閉めれば復帰できるようなのでヨシとしましょう。
最後にお約束のコストを計算してみます。
本体 3000円
ACアダプタ 400円
コントローラ変換アダプタ 500円
メモリーカード 1000円
その他部品 約300円
合計 約5200円
プレイ環境一式の値段なのでまぁまぁでしょうか。とはいえ、修理や洗浄に掛かった時間や手間を賃金に換算すると、決して割に合うものではありません。ジャンク品を修理することに喜びを感じたりするような変態嗜好を持たない普通の人には、普通に新品を買うことをオススメいたします。
copyright (C) 2005 Niga.