SONY PlayStation 2
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いよいよ当サイトにもPS2ジャンクが登場です。発売から大分時間が経っているにもかかわらず、市場価格設定は完全にソニーに掌握され、新品はほとんど値引き無し、しかもなぜか未だに品薄気味だったりして、中古価格も限りなく新品に近い値段で売られている(2001.5月現在)あのPS2でございます。 つまり普通に買うと4万円弱してしまうわけですねぇ。たかがゲーム機に4万も出すのはバカバカしいと考える私なので、ジャンク機相場が2万切った頃に手を出そうかと考えていました。ここ最近ようやく2万円を切る値段で某オクで取引されるようになってきましたので一台買って遊んで(修理して)みようと思いました。 ただし、現在出回っているジャンク品はほとんど全て改造に失敗した機体のようです。なぜならソニーのサービスは改造失敗機の修理は一切受け付けないからです。発売から1年未満で普通に壊れた場合はメーカー修理に出しますからね。即ち現在ジャンク機として出回っているほとんどの機体はソニーから修理を断られるようなエピソードを抱えているわけです。従って、ほとんどのケースで内部が前オーナーによって弄られています。そして前オーナーが復活に失敗したということでもあるわけで、ある程度以上の補修技術と運が無ければ復活は難しいかも知れません。 尚、今回修理するにあたり、ジャンカー友の会を運営しているBABAX氏に正常動作するPS2に関する調査をお願いしました。ご協力ありがとうございました。 |
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今回の機体もジャンク入手なわけで、やはり改造失敗品です。前オーナーの情報によると、MODチップ取り付け失敗、画面出ない、トレイが高速で出入りする、とのことでした。症状としては重症かも。お値段は本体のみ付属品一切無しで19000円でした。直ればお得ですが、直らないとかなりバカバカしい出費です。ハッキリいってバクチなお値段ですね。 尚、型番はSCPH-10000ですので初期型です。バグがあって海外版のDVDが見れたりいろいろ噂のあった初期型ですが、残念ながらユーティリティディスクとメモリーカードが無いのでDVDプレーヤーとしては使えません。まぁ、私はパイオニアの専用機を持っているのでこの機能は無用ですがね。 |
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CDはトレータイプなので、従来のPSのように動作中にCDを入れ替えたりするイタズラが出来ないようになってます。ある意味コピープロテクトの一種かも知れません。 全面には吸気用の通風口と従来型のコントローラ端子+メモリーカードスロットが装備。見慣れないのは左下のUSBとiLink端子ですね。 尚、右端にあるはずのソニーのロゴが取られていました。前オーナーの仕業でしょうか。いくらジャンクとはいえ、わざわざ外さないで欲しいよなぁ…。 |
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USBとiLink端子。 どうやらキーボードマニアの専用コントローラがUSB接続のようです。こいつはUSBとはいえ、PS2専用のようで…。まぁデバドラさえ用意できればPCでも使えるのでしょうが。しかし、iLink対応のデバイスって何か出ているのだろうか…。PS2同士を繋げて通信対戦には使えるようですが。 ライセンスに厳しいソニーのことなので、アマチュアがデバイスドライバ作ってPC用のデバイスをどうのこうのということは難しいのでしょうねぇ。
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大きめのクーリングファンが目立ちます。特徴的なのはPCカードスロット。TYPE IIIのようですが、これに対応したデバイスってあるのだろうか…??(追記:言うまでもなく、HDDユニットが対応) あと、ドルデジやDTS対応の光デジタル出力付き。AV端子は従来型と同様の形状ですが、本体側の切り替えでD1出力もできるようです。まぁ、画質的にはS信号と違いを認識できないのですが…。わざわざ高いケーブル買ってまでD1繋げる価値無し、かと。 |
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動作を確認する前に、故障を抱えているであろうメイン基板を取り出しました。壊れていることが分かっていて電源を繋ぐのは、さらに被害を拡大させる恐れがあるからです。電源を入れる前に肉眼的に確認できる部分は補修しておいたほうが良いでしょう。 メイン基板表側ですが、真ん中に電源系統、右側に処理チップが認められます。 |
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これがメインの処理チップであるところの、EE(エモーションエンジン)と、GS(グラフィックシンセサイザー)というカスタムチップのようです。通電中はかなり熱くなりますので消費電力は高そうです。 |
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そのメインチップをクーリングするための装置もかなり大がかりです。アルミダイキャストの仰々しいヒートシンクにヒートパイプが埋め込まれていました。 このクーリングシステムにはかなりお金をかけているようですね。 |
ヒートシンクの表側ですが、かなり大型です。ペンティアム2クラスのCPUのヒートシンクに匹敵するサイズです。EEやGSのチップからヒートパイプを伝ってこのスリット下部に熱が集められ、ここを通過した空気がクーリングファンから排気されるようになっています。 他の部分もこのようにお金が掛かった設計だと良いんですがねぇ…。ソニーの製品って以下略。 |
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奥にクーリングファンが見えますが、この電源基板の手前に先述の巨大ヒートシンクが位置するようになっています。前面吸気口からヒートシンク、電源基板を通過した空気が排気ファンから流出するという流れです。尚、この空気の流れはトップカバーを被せたときに有効になるものです。カバーを外したまま動作させるとファンで発生させるはずの空気の流れが無くなるため、かなりヒートシンクが熱くなり、危険です。 電源はスイッチング電源のようですが、今までのゲーム機より大がかりです。やはり消費電力が高いのでその分大きな電源が必要なのでしょうか。消費電力50Wもありますんで。9V単一電源なので、5.5Aかな? |
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メイン基板裏側ですが、前オーナーによって荒らされた形跡を多数認めました(詳細は後述)。また、ネジが多数紛失されており、前オーナーは割とルーズな改造ユーザーであったことが伺えます。ジャンクとはいえ、ネジくらいはキチンと元にもどして欲しい物です。 さて、今回は改造失敗ジャンクということなので、前オーナーの弄った形跡を穴が空くほどよく観察して探します。かなり細かい基板なので根気の要る作業です。 また、MODチップ取り付け解説サイトを参照して、改造するときに弄るポイントと、正常な基板の状態をチェックします。今回お世話になったサイトは以下の3サイトでした。感謝。
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今回の機体は基板の損傷が多数散見されました。まずはDVD−ROMドライブに繋がるコネクタの部分ですが、2カ所でパターンが剥離しています。。 ちなみにこのうち1つは盲端になっているので修復不要。 |
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必要な方だけをスルーホールにジャンパしました。写真は大きく見えますが、実際のコネクタはかなりピッチが細かいです。普通の30Wのコテだと絶対無理。20Wの先の尖ったコテが必要。スルーホールが死んでいる場合はCXP101064の9番ピンに接続すれば良いようです(BABAX氏談)。 |
前面の電源(リセット)ボタン、トレイ開閉ボタンからのコネクタです。電源ボタンに関するパターンが剥がされていました。この信号はフィルターを通って電源制御用のチップに繋がっているようです。 こいつが切れていると電源ボタンが利かなくなります。 |
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コネクタからフィルターへの配線をジャンパして修復。 |
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一通り怪しげなところを補修したつもりになったので一度動作確認してみることにしました。電源を入れてみましたが、画面真っ暗。そしてクーリングファン回らず。全然ダメでした。ですが、当初言われていた高速イジェクトであったはずのトレイの出し入れは正常で、CDを入れれば一応回転して、シークをしているようです。
一応一歩前進というところでしょうか。しかし、画面真っ暗というのはなんとも…。本当に直るんでしょうかねぇ。カスタムチップのラッチアップ(破壊)じゃないかというイヤな予想が頭をよぎります。
いずれにせよ、まだチェックすべき部分があるようです。さらなる調査を進めます。
なぜかMOD取り付けとは関係ない場所でしたが、クーリングファンのコネクタ近傍の3端子のチップトランジスタ?のようなパーツがねじれて取れ掛けています。前オーナーが妙な外力を掛けたのでしょうか。取り外してみたところ、足が根本からポッキリと折れており、再利用は不可能な状態でした。 ちなみにこのままではクーリングファンが回転せず。EEなどが異常過熱してしまいます。ファンを回さずに常用するのは止めた方が良いでしょうね。 |
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この破損パーツが本当にトランジスタなのかどうかも分かりませんでしたが、適当なジャンク基板から5個ばかりチップトランジスタを剥がして取り付けてみました。そのうちの1つでクーリングファンが回ることを確認。しかし、どうも回転が弱い。動作中のファンの電圧を測ると4V。BABAX氏によると、正常動作品では4.6V程度であるようです。 元のチップ部品が手に入りそうもないので、最終的に、ファンのマイナス極をGNDと直結して5Vで運用することにしました。回転数も十分で、実用上は問題ないと思われます。 |
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画面真っ暗系で疑われるのは電源系統のトラブル。調査ポイントとしては、電源基板、ヒューズ、3端子レギュレーターあたりです。 スイッチング電源は9V単一。動作中にも電圧降下することはありませんでした。また、3端子レギュレータは裏側に2つ載っており、それぞれ5vを作っているようですが、これの電圧降下も認めず。 また、当初ヒューズは疑って全部調べたつもりでしたが、裏側しか調べておらず、表のヒューズを見落としていました。裏側には従来型PSと同様の黒いチップヒューズがありましたが、表側にはセラミックタイプのものが合計5個載っています。 |
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これらにテスターを当てて抵抗値を調べたところこのうちの一つで異常に高い抵抗値を示すものが一つ…。どうやら画面が出ない犯人はこいつのようです。 4.4Aの規格のようですが、手持ちにないのでとりあえずスズメッキ線でジャンパ。やや危険ですが、まぁ動作確認のためということで。 |
ということで再度動作確認。電源を投入したところこのように画面が出ました!。PS1用のゲームを入れたところ、PSロゴが出た後、ゲームのオープニングが始まりました。クーリングファンもきちんと回転しています。ひとまずこれで補修は完了かな? PS2専用のゲームが無いので動作確認用に買ってこなければ…。(順番が逆だろ、フツー)。
耐久テストをしてみましたが、5時間動かしても問題ないようです。排気温度も安定しているようですし、動作後に基板を触ってみましたが、CPUの裏側で40度程度でした。
総評 比較的程度の悪い機体で、当初はどうなるかと思いましたが、なんとか無事に動くようになって一安心です。一時はメインのチップのラッチアップかと思い、かなりブルーになりかけましたが、分かってしまえばチップヒューズの破損でした。
しかし、このような改造失敗ジャンクは必ずチップの破壊の可能性が潜んでおり、汎用チップならともかく、カスタムチップの破損の場合は、パーツの入手不可能ゆえの修理不可能ということも十分に考えられます。改造失敗ジャンクのゲットはリスキーなバクチと考えたほうが無難でしょう。絶対直すつもりで買っても直せなかった時の痛手が大きいです。まぁ、私は使うことよりも直すことが目的なので直らなかった場合でもそれほどのダメージだとは思わないようにしていますが…。
それと、PS2のようなデリケートかつ、かなり配線の細かい基板の補修にはそれなりの道具と半田付け技術が必要です。とりあえずちょっとコテを扱ったことのある程度の方がいきなり挑戦されてうまく行くようなものではないと言っておきます。この記事を見て、自分もジャンクPS2を直そうと思う方もおられると思いますが、決してPS2の修理は簡単じゃないです。改造失敗で壊してしまった方は被害を広げる前に業者に依頼された方が良いでしょう。ソニーのサービスは受け付けてくれませんが、専門の修理業者に依頼すれば送料別5000円程度で修理してくれるようです(ただし修理不能の場合は送料が無駄になる)。
また、MODチップ取り付けサイトには、中学生レベルの半田付け能力があれば可能であるような書き方をされていますが、それは作業が順調に上手く行った場合での話です。誤ってパターンを剥がしてしまった時に要求される補修技術は中学生レベルでは無理。改造というのは、不測の事態に対処できない人間が無闇に手を出すべき領域では無いと私は思うのです。
最終的に19000円にて、動作品PS2のゲットに成功したことになりました。付属品がありませんが、まぁ、このお値段であればなかなかおトクだと思います(2001.5月現在)。PS2専用ソフト動作確認用にキーボードマニア(専用キーボード付き)と、DOA2を買ってきましたが、いずれもきちんと動くようです。
あ、ちなみに今回はお約束のソ○ー叩きのコーナーはありません。これはまたの機会ということで。
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