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〜ジャンクなPS2を復活させる その6〜


 SONY PlayStation 2 5号機

手を引く手を引くと言いながら、何台でも直しているPS2も5号機までやってきました。ここまで来るとハッキリ言ってバカです。もう要らないです。でも今回のはSCPH-30000だったんです。そうです、最新型なんですねぇ(2001.11.月現在)。それでついつい手が出てしまいました。ほとんど病気です。聴くところによると、最新型の30000番または35000番は大幅な設計変更されており、CPUのリビジョンが上がったり、冷却システムが変更されていたり、HDDが内臓できるようになったりとかなり造りが違うという話です。ハードウエア野郎としては一目中を見てみたい衝動に駆られるんです。そんなわけで、付属品全て付いて希望落札価格20000円のブツ。
真新しい機体

オークション条件でも記載されていましたが、かなり新しいブツでした。落札したのは8/24なので、新品購入後に一ヶ月チョイしか経っていないわけです。前オーナーによると、新品で購入して速攻で改造したが、これに失敗してDVDソフトだけが読めなくなったそうです。CDソフトは読めるので、ピックアップの故障と思われます。もしかして微調整だけで直るかも…と淡い機体を抱きつつ、希望落札価格入札にて即落札。

SCPH-30000(5号機)

中を空けると、真新しい家電品独特の臭いがします。本当に箱から出されて空気中にさらされていた時間が短いようです(箱の中も空気中ですけど)。筐体は埃はおろか、キズ一つ付いて折らず、まさに新品同様。付属品はビニールさえ解かれていない状態でした。マニュアルも袋に封入されたまま。

そして30000番で特徴的なのがこの「EXPANTION BAY」。HDDを内臓させるためのスペースです。

ベイの中

ベイの蓋を取ると、前面の吸気口まで貫通した空間がありました。金属フレームでシールドされているようです。空間の右上にはコネクタが存在しています。HDDのアダプタがここに刺さるようです。


とりあえずバラす

設計変更に伴い、ネジの種類も変わっています。長いネジが2本から4本に増えました。長いネジはトップカバーと共締めにするためのものなので、これが増えた分、前方のネジが2本減りました。
CAUTIONだとさ(ケッ)

従来型PS2には無かった無駄な刻印を発見(笑)。

RISK OF ELECTRIC SHOCK(電気的衝撃の危険) DO NOT OPEN(開けるな) だってさ。そんな脅しに乗るような俺じゃないってね。だって開けなかったら直せないじゃないか。ブッ壊れたままで良いわけないだろ。だから開けます。容赦なく。

ちなみに、PSone同様に剥がすと修理お断りのシールが貼られていたようですが、この機体では既に改造後なので剥がされていました。ユーザーによるメンテナンスを認めない企業の姿勢は実にイヤな感じですが、これも時代の流れなんでしょうか。テメェの自己責任で弄っておいて、不都合があったらすぐにメーカーのせいにするバカなユーザーがいるからこういうことになるのでしょうか。

トップカバー外してみる

カバーを取ってみました。従来型では、左側に電源が乗っていましたが、新型ではヒートシンクしか見えません。DVDドライブの位置は従来型同様でした。電源スイッチに通じるケーブルがペラペラのフレキケーブルに変更されており、なんとなく弱そうになっています。コストダウンでしょうねぇ。
ボトム側

裏側から見てみます。DVDドライブの下はHDDベイ(写真左側)。電源は底のほうに付いていました(写真右側の基板)。メイン基板はこの下に潜っており、従来型のようにメイン基板がボトムカバーを外してすぐにアプローチできず、弄るためにはこいつらを解体しないとならないようです。一度バラしてみましたが、結構面倒です。ちなみに従来型は樹脂のフレームがあってそこに各基板、ドライブなどが取り付けられており、トップカバーとボトムカバーでサンドイッチする構造になっていましたが、新型はシールド板がフレームを兼ねており、各パーツを取り付けることで形として組み上がるようになっています。部品点数が減ってコストダウンされ、HDDベイのためのスペースが稼げた分、メンテナンス性は非常に悪くなっています。
ドライブ構造の比較

DVDドライブも設計変更となっていました。ドライブに付いていた基板が廃止されています。細かいコネクタの位置も変わりました。レイアウトは変更になってますが、電気的、機構的にはほぼ同じようです。
制御回路の統合

従来型のドライブはドライブ側にレーザー制御用のIC?が付いていました。

実はこの写真のドライブはこの石が死亡していると思われ、レーザーが出力されない故障を抱えています。石が手に入らない限り、このドライブを使うことはできないというわけです。

新型ではこの石がメイン基板に統合されています。そのために、DVDドライブ側の基板が不要になり、かなりコストダウンできたと考えられます。

トレイの開閉状態を検知するマイクロスイッチのコネクタもメイン基板に直接挿します。

スピンドルモーターやシークモーター用のコネクタもメイン基板に直結。まぁ、これについては従来型も制御IC(ROHM製)はメイン基板にありましたけども。

ピックアップ調整の試み

この機体はDVD読みとり不良ですんで、まずここの半固定抵抗で調整を試みます。プロはオシロスコープを使ってなにやら波形を睨めながら調整するそうですが、我が工房にはオシロなんて無いし、ベストな波形も知らないので、ここでは試行錯誤を行います。ちょっとずつ回してみて、読めるところ、読めないところを記憶して丁度いいところに合わせれば、オシロなんて無くたって調整できるわけです。要するに読めりゃいいんですよ、読めりゃ(オシロが無い僻み)。

ちなみに写真のように左側がCDの読みとり、右側がDVDの読みとりに関係しています。今回はDVDの読みとり不良ですから左側の半固定抵抗をちょっとずつ回してトライアル&エラーの繰り返しです。

また、この半固定抵抗は無闇に回しすぎない方が賢明です。元々あまり頻繁に回すことを考えて設計された部品じゃないので、度を超えて回しすぎると壊れます。

2002.6.17追記(必ずお読み下さい!)

その後自分でもオシロを入手して調整を試みました。実際多くの機体を調整している方から情報の提供も頂きましたが、オシロを使っても調整の精度はかなりシビアだそうです。ドライバーの先端で軽く力を加えただけで大きく出力が変わるピックアップもあり、オシロ無しでの調整はかなり困難な模様です。

しかも、具合の悪いことにPS2のピックアップのDVD側は出力を上げすぎるとアッサリと逝かれてしまいます。完全に逝ってしまったピックアップは半固定抵抗を元に戻しても読めるようになりません。そうなるとパーツ交換が必要になるわけですが、残念なことにPS2のパーツを一般人がメーカーから購入することは不可能。香港などの通販ショップから購入することは出来ますが、こういうのは中古品です。メーカー修理ではピックアップ交換で9450円かかりますが、これは改造歴が無い機体に限ります。改造の痕跡があると修理して貰えませんので。

よって、ここの半固定抵抗をオシロ無しで弄るのは止めた方が良いでしょう。テキトーに弄って完全に読めなくしてからでは手遅れです。

ちなみにこの機体のピックアップはやはり完全に死亡しており、オシロを使った調整を行っても読めるようになりませんでした。

試行錯誤の微調整

完全に組み立てちまうと、半固定抵抗を回すのに非常に不便なので、こんな形に半組み立てして調整と読みとりを繰り返してみました。基板や電源がむきだしなので、接触や感電に注意です。ヘタに電源基板に触ると100Vで感電します。マジで。

あと、ドライブ側にこんなギヤが付いており、これはピックアップとディスクが向き合う角度を調節できるようになっているようでした。これも回しながら微調整してみたのですが…。

残念ながら結果はNG。半固定抵抗と角度調整ギヤ、どんな組み合わせで試しても、正常にDVDは読めませんでした。2度ほどゲームが立ち上がったりすることもありましたが、確率はかなり低いです。ほとんど立ち上がらないと言って良い状態。CDは読めるんですがねぇ。

どうやら本格的にピックアップが逝かれているようです。レーザーダイオード側の故障だと思われます。

最後の手段(移植)

そこで従来型のジャンクからピックアップだけ移植してみることにします。レーザー制御ICの死亡で復活できなかった機体からの移植です。いわゆるニコイチってやつです。個人的にニコイチは不本意なのですが(無駄が多いため)、ソニーがパーツを売ってくれない以上、仕方ないのです。

ちなみに前述していますが、ドライブの構造が従来型と新型では違います。ピックアップの構造も微妙に違います。付いているフレキが違うので、まずこいつを移植。

静電破壊の予防策

おっとその前に、これを忘れてはいけません。いわゆる「ショートランド」ってやつです。レーザーダイオードは静電気に極端に弱いらしく、ヘタをすると一瞬で死亡したりするらしいです。

簡単に静電気にさらされないようにするには、このショートランドに半田を盛ってショートしておけば良いようです。メーカーでも組み立て前には半田が盛ってあったらしく、一度半田を盛って吸い取った跡を認めます。

この作業はピックアップを基板から分離するときには必ずしておいた方が無難でしょう。レーザーダイオードを殺してから後悔しても遅いので。ただし、組み立て後に吸い取っておくのを忘れるとヤバいかも知れません。

拡大するとこんな感じです(これは半田を盛る前)。パターンが向き合っているところが2カ所です。これらに半田を盛ってショートしておきます。

移植後には必ず除去します。お忘れなく。

微妙な構造の違い

で、移植してみたんですが、どうも微妙に構造が違うようです。読みとり自体は出来たんですが、ピックアップが最内周にあることを検知するマイクロスイッチが押されないようになってしまいました。

従来型のピックアップにはここに出っ張りがあったのですが、新型のはなくなっていました。マイクロスイッチの取り付け部位が変更になったためです。

ちなみにSCPH-30000ではピックアップの型番が「400B」となてます。移植の為に使った従来品は「400A」でした。新しい400Bは読みとり精度が向上しているという噂ですが真偽のほどは不明。

仕方ないので、マイクロスイッチに接触する部分のレンズカバーに3ミリ厚のゴムシートを切り取ってボンドG17で張り付けてみました。

結果、キチンと最内周でスイッチが押され、本体が正常にピックアップ位置を認識するようになりました。

以上で動作は完璧です。


総評

てなわけでピックアップの移植という最後の手段を使って最新型の30000番が復活しました。初期型と違って随所でコストダウンされており、メンテナンス性は最悪でしたが、その代わりにHDDを内臓でき、さらにDVDプレーヤーは本体のBIOSに含まれており、メモリーカードが無くても使えるってことで、従来型には無い楽しみ方で使えそうです。新品同様の最新型が20000円なら満足です。まぁ、それも移植可能なジャンク機のピックアップを持っていたからという理由が大きいですが…。

ここ最近、DVDだけ読めなくなったPS2のジャンクを某オクで多く見かけるようになりました。今回の経験から言えることは、DVDが読めないPS2のほとんどはレーザーダイオード(のDVD部分)が死亡しており、復活は困難だろうということです。ソニーからパーツが調達できない以上、そういうブツには無闇に手を出さないほうが賢明でしょうねぇ。正常なピックアップを持っているのなら話は別ですけど。

どうも、ここ最近(01年11月現在)ジャンクPS2の相場が上がっているように感じます。ピックアップ不良と思われる本体が付属品無し2万円弱とか、かなり高めの値段で落札されています。いつも止めときゃ良いのに…と思いながらウォッチしてます(爆)。みんな、もっと冷静になろうぜ!(誰に言ってる)。付属品完備&完全動作の中古でさえ3万円弱で買える世の中になったんですから。ジャンクなんだからもっとゴミみたいな値段であるべきと思います。でないとジャンクの旨味がありません。高いジャンクを買うくらいなら少しお金を足して動く中古を買った方がマシです。

ところでこの後、この機体は内臓用のHDDユニットを某オクで15000円でゲットしてLinuxをインストールしてサーバーにしてみたりしました。まぁ、その話はまたの機会にいたしましょう。


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