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〜三菱LCDモニタ マルチメディアBOXの解析〜


 三菱 マルチメディアLCDモニタ MDT151X マルチメディアBOX

以前にCoCoNet A-200Kを利用したインターフェイスBOXを製作しましたが、これと同様の機能を持つ三菱のマルチメディアLCDモニタのインターフェイスBOX部分をジャンクで入手してみました。

この手のデバイスは、ケーブルでデジタル映像信号を長く引き回す関係から、BOXとLCDの間はなるべくワイヤーの本数が少なく、ノイズの影響を回避しやすい信号に変換していると考えられます。ならば、LVDSか、TMDSあたりに変換しているのだろうと勝手に推測しました。うまく改造できればA-200Kを使って製作するよりお手軽になるだろうと目論んだわけですが…。

ちなみに前面にはNTSC入力用のコンポジットビデオ入力とS映像入力端子、音声入出力用のステレオミニジャックが付いています。どーでもいい2ポートUSBハブまで載ってますが、この箱にそんなモノが必要でしょうか。ケーブル引き回しで見た目がウザくなるだけのような気が…。

裏側

BOXの背面の端子群は至ってシンプル。ACのメガネケーブルが刺さるコネクタと、アナログRGB入力、アンテナ入力の他は、専用LCDが繋がる小型26pコネクタのみ。

ちなみにスイッチ類はどこを見渡しても存在しません。リモコンで全ての操作を行うらしいのですが、どこにもリモコン受光部が見あたりません。受光部はモニタ側に存在するようです。

いろいろ調べてみると、電源はリモコンを使わないと入らない設計のようでした。これでは正規のユーザーでもリモコン無くしたら使いものになりません。あまり良い設計とは言えませんねぇ…。せめて電源スイッチくらい付けろっての。コレ作った人は、家でテレビのリモコンが見あたらなくなってテレビ本体の電源スイッチを押した経験が無いのでしょうか。

箱にリモコン受光部がなく、さらに専用リモコンが無いと電源も入れられないとは、いきなり汎用化改造困難の匂いがしてきました

LCD出力コネクタ

これが専用LCDが繋がるコネクタですが、ハーフピッチアンフェノールをさらに小さくしたような形状です。ピン数26pで、同じものが富士通やIBMのノートPCのFDDなんかで採用されています。

ピン数だけ見れば以前に改造したPCVA-141LAPなんかと同じです。コネクタは違いますが、26本というのは電源と1chのLVDS信号と音声信号を伝えるには丁度良い本数。そこで、流れている信号はLVDS 1ch 6bitではないかと推測したのですが…。


内部

 早速筐体を開けて回路を調べてみます。側面のカバーを外して、中から現れるシールド板を外すとこんな感じに二階建ての基板が出現しました。上層にあるのがチューナーとNTSC入力処理、音声アンプ回路等が載っているサブ基板です。フレキケーブル2本でメイン基板と繋がっておりました。
チューナー基板を取る

そのサブ基板を取り外すと下に大きなシールド板が現れました。銅箔をビニールでコーティングしたようなペラペラのシールド板ですが、その下のデジタル回路をノイズから守っているんでしょう。

ちなみにシールド板の上に見えるのがスイッチング電源で、メインボードと地続きになってます。

メインボード

 シールド板を外して、ようやくメイン基板とご対面。主にアナログRGBをデジタルRGBに変換し、それをXGA用に解像度を合わせてズームアップして、信号フォーマットを変換してコネクタに引き渡す回路で成り立っています。

インターフェイスはGVIF…

LCDの映像信号フォーマットを知るためには、コネクタの直前で信号を出力している石をみれば判ります。コネクタからパターンを辿ると、ソニーのCXB14510という石に当たりました。ソニーの石…ということで嫌な予感がしたのですが、調べてみると超マイナーなGVIFフォーマットでした…ぐはぁ(吐血

GVIFってのは、LVDSでもTMDSでもない、ソニーが独自に開発したデジタル映像信号の規格らしいです。映像信号をシリアル変換して高速転送するため、ワイヤーの本数が少ないのがメリットなんだとか。

送信側(箱)がGVIFでデータを吐いているので、当然受信側(LCD)にはGVIFのレシーバICが必要です。もちろんそんなものは手持ちにありませんし、入手も困難だろうと思われます。こんなマイナーな規格であるばっかりに改造して利用することが極めて困難であることが判明

つーか、私はGVIFを採用したモニタを初めてみましたよ…。大人しくLVDSあたりを採用してくれれば良かったものを、ソニーがこんなマイナーな規格をでっち上げてくれたばっかりに利用価値も半減以下です。そもそもソニーは勝手なフォーマット作りすぎ!変な規格作るんだったら、せめてデータシートと部品を入手しやすくしろつーか、自分で規格作っておきながら、なんでVAIOで採用してないんですかね? LシリーズもLXシリーズもLVDSかTMDSだし(その先は知らんけど)。いろいろ大人の事情があるんだろうなぁ(妄想。

信号の流れ

しかし、そんなことで諦める私ではないのであった。例えGVIFに変換されていたとしても、変換前はデジタルRGB信号です。GVIFトランスミッタを剥ぎ取って、代わりにLVDSトランスミッタを載せ、変換前のデジタルRGB信号からLVDS化するという道が残っています。そこで、GVIFトランスミッタからさらに信号を辿ってみることにしました。

上画像のように、外部から入力されたアナログRGB信号は、セレクタIC(ROHM社 BA7657F) を通って、ADコンバータ(AnalogDevices社 AD9884)でデジタルRGB化され、さらにZOOM Engine (GENESIS社 gmZ2)でXGA用に拡大処理されたあと、GVIFトランスミッタSONY CXB14510)でGVIF信号に変換され、コネクタを介してLCDに信号が引き渡されます。LVDS化するのなら、ZOOM EngineからデジタルRGB横取りしてLVDSトランスミッタに入れてやれば良いわけです。

ただ、デジタルRGB信号といっても、フォーマットがいくつかあり、それによって使える変換ICやLCDパネルも限定されます。もしも6bit 1chのデジタルRGBであれば手持ちのLVDSトランスミッタに貼り替える方法が使えますし、8bit 1chであれば手持ちのTMDSトランスミッタが使えます。問題はgmZ2がどういうフォーマットのデジタルRGB信号でGVIFトランスミッタに信号を引き渡しているか、ということです。それによってこの箱が利用できるか、ゴミになるかが決まります。

GVIFトランスミッタ→コネクタ

ということで、デジタル映像信号を逆行性に辿ってみます。コネクタとGVIFトランスミッタのところですが、極めて少ない本数で結線されているようです。確かにGVIFはワイヤーの本数が少ないのがメリットのようですが…。
gmZ2→GVIFトランスミッタ

して、問題のgmZ2からGVIFトランスミッタにデジタルRGB信号を伝えている部分。GVIFの本数の少なさとは対照的に、こちらはヤケに本数が多いです。

gmZ1のピンアサイン(gmZ2とgmZ1はピンコンパチ)を参照しながら本数を数えたところ、合計36本のデジタルRGB信号が繋がってました。どうやら2ch 6bit のデジタルRGB信号のようです。ぐはぁ(吐血2回目

仮にLVDSトランスミッタを載せるとしても、これでは2chのLVDS信号にしか変換できません。そんな信号に対応するLCDパネルなんて持ってないですし、仮に持っていたとしても、それだけの本数の配線をこの細かいピッチのICに対して手作業で行うことを考えるとまるで現実味がありません。

XGAのくせになんで2chも必要なんですかね! 1chだったらまだ使い道もあったのに!まったく…。


まだだ、まだ終わらんよ!(シャア)

しかし、あきらめの悪い私は、回路上は6bit 2chで配線されているけど、実際はそのうちの1chしか使われていなかったりするかも? という望みを持っていました。こういう製品を作る際に、基板は後々の仕様変更に対応できるように汎用性を持たせた設計をしておいて、ファームウエアやジャンパで切り替えられるようにするのはよくあることですから。

そこで、実機をお持ちの魔流さんの協力を頂き、LCD側の内部写真を見せて貰うことに。

GVIFレシーバ

左側に縦に並んだ青いワイヤーの付いた2つのコネクタが、コントロールBOXに繋がるところです。

左上のコネクタがインバータ用で、右上が音声&リモコン信号用と思われます。

GVIFレシーバは、CXB14520という石でした。この石が単独で手に入ればまだやりようもあるのですが…。

リモコン受光部

制御基板右上のコネクタから辿ってゆくと、リモコン受光部はやっぱりLCDモニタ側にありました。ヘッドフォン端子と同じ基板に貼り付いています。

さて、問題はLCDの信号フォーマットです。一体何本の信号が使われているのか…。

画像右の2枚のフレキケーブルがソレです。見るからに本数が多いですが…。

ダメだこりゃ…(いかりや)

数えてみると合計36本! LCD側も思いっ切り2ch 6bitデジタルでしたぐはぁ(吐血3回目。XGAで2ch 6bitの液晶なんて、デスクトップ用の一部の機種でしか採用されていないんじゃないでしょうか。敢えて対応パネルを探してこれだけの配線を手作業で行う価値は無いと思います。

ちなみに、gmZ2自体は1chのデジタルRGB信号の出力にも対応しているはずですが、設定のためにはファームウエアの書き換えが必要と思われます。ファームの解析は、GENESIS社から出ているプログラミングマニュアルでもあれば別ですが、一般の人に入手は不可能でしょう。


総評

この箱を改造して、専用LCD以外で利用する手段をまとめてみました。

手段

必要な変換IC

必要なLCDパネル

配線

問題点
GVIFのまま使う GVIFレシーバ XGA 2ch 6bit デジタルRGB 40本以上 GVIFレシーバ入手困難 
LVDS化して使う(1) LVDSトランスミッタ&レシーバ各2個 XGA 2ch 6bit デジタルRGB 100本以上 LVDSレシーバ入手困難
LVDS化して使う(2) LVDSトランスミッタ2個 XGA 2ch 6bit LVDS 60本以上 対応LCDが存在するのか不明
デジタルRGBで使う 不要 XGA 2ch 6bit デジタルRGB 40本以上 ワイヤーの引き回しの問題で、外付けBOXとしては使えない

以上のように、流用は不可能とは言えませんが、いずれの方法でもパーツが入手困難だったり、配線が鬼だったりで現実的じゃないのが残念です。

 この中ではデジタルRGBで使う方法が一番現実味があるのですが、デジタル信号をシールド無しで配線することになるので、品質の悪いケーブルを使ったり、ワイヤーを長く引き回したりするとノイズや干渉で綺麗な絵が出ないと思います。外付けの箱を使うことはあきらめて、箱の中身をLCDと一体とし、極力ワイヤーを短く配線すればなんとかなると思いますが、私にはそこまでの根性はありませんでした。

 最終的に、この箱に利用価値があるとしたら純正の専用LCDに繋ぐ場合だけ、と結論しました。映像信号フォーマット(GVIF)の特殊性もさることながら、リモコン&受光部が無いと使い物になりません。よって、汎用化改造目的で入手するのはやめたほうがいいでしょう。久々にハズレジャンクを掴まされた気分です。まぁ、たくさんジャンクを弄っていればたまにはこんなこともありますかね。

こんなものを単独で持っていても意味がないので、ヤフオクに出品しましたところ入手金額(送料等込み)よりちょっとだけ(数百円ですが)高く売れました。損をしなかっただけヨシとしますか…。ハァ…。

ところで、今回のケースと似たようなものに、ナナオのGAWINというものもありますが、アレの内部の信号フォーマットはどうなっているんでしょうかねぇ…。どなたか解析&流用にチャレンジしてみてはいかがでしょう?(と他人にネタ振り)。ちなみにGAWINのパネルは日立のS−IPS液晶みたいですけど、有名な黒い横線が入る欠陥ロットが使われているものがあるみたいなので注意が必要でしょう。闇の無償交換対応もいつまでやってくれるのか分かりませんし。


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