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〜Panasonic VTR ジャンクNV-BS900を修理する〜

第一回 「敗北」


Panasonic NV-BS900(2号機)

続々と当HPの往年の名機復活企画により古(いにしえ)の名機が蘇っていますが、今回は名機の中でもとりわけ使い勝手の良かった松下「NV-BS900」を修理します。この機種は私が若かりし頃、お小遣いお年玉等々を1年以上かけて13万円溜めて新品で買い、9年間無故障で現在に至るまで動き続けている愛機と同機種です。従って、今回の機体は2号機と称します。当時は13万円でしたが、今回修理する機体はジャンク4000円で入手です。高校生の一ヶ月分の小遣い程度で買えます。って、今の高校生ってどのくらい小遣い貰ってるのか知りませんが。まぁ、とにかく時代は変わったなぁと(笑)。

さて、今回のジャンクは今まで入手した中でも最も程度の悪いものでした。それだけに完全動作状態に戻すまでかなりの手間がかかっています。なんとか動作させるまでにこぎ着けたのでネタ公開します。

この機種で採用されているメカは、それまでの松下インテリジェントターボメカの最終進化型で、早巻き速度などかなりの高速化がされており、「新快速メカ」と名が付けられています。今では珍しくないですが、120分テープを90秒で巻き戻す速度は当時としてはかなり速い物でした。しかもこれだけ高速に早巻きしているにもかかわらず、ブレーキングもかなり強固で、最高速での早巻き中に停止ボタンを押した場合でも「ガスっ!」」と一瞬でテープを止めてくれます。無論テープが切れたり中に飛びだして絡むようなこともありません。この強力なブレーキは今時の安っぽい鉄板プレスのメカを使ったデッキではまず出来ない芸当でしょう。そのブレーキそのものも素材が素晴らしく、私の9年使い続けた機体でもまったく劣化を感じさせない強力なブレーキングを維持しています。恐るべし!新快速メカ!その後の松下メカも含めて民生用ビデオデッキ史上、最強のメカニズムであると私は思っています。しかし、残念なことに、この機種以降、栄華を誇った松下メカは退化してしまったのです。

故障状況の検証

さて、今回も相変わらずジャンク入手ですので壊れていました。まず、テープが詰まっていました。電源を入れてもびくともせず、数秒でエマージェンシーモードになって勝手に電源が切れてしまいます。まぁ、ジャンクとしてはありがちなメカ異常ですかね。その程度で恐れをなしてはいけません。

この写真はそのときのものです。カセットが挿入されていますが、テープは内部に引き出されていません。にもかかわらず、ハーフローディングアームがすでにハーフロード状態まで動いてしまっています(赤丸)。ハーフローディングアームが飛び出している場合、正常ならアーム先端に引き出されたテープが巻かれているはずです。

新快速メカもFS90記事のようにプランジャとプーリーを手でいじってメカのモードを切り替えることができます。この機体でいじったところ、あるところでやや抵抗が強くなったかと思うと、「ガリガリ」とギヤ同士が擦れて滑っているような音が聞こえました。どうやらギヤが欠けているようです。松下インテリジェントターボメカの場合、オールギヤ、コックドベルトの設計なのでメカ位相がずれている場合、まずどこかのギヤが壊れていると考えて良いと思います。ギヤが破壊されない限りメカ位相がずれることは無いはずです。

錆びまくりの背面端子(泣)

この機体は程度が悪く、背面端子がご覧のようにことごとく錆びていました。どうも、屋外放置歴があるような感じです。屋内でこれだけ錆びるとは考えにくい。廃品業者を経て入手するジャンクはこのようなものがあり、注意が必要です。今回はネットオークションで程度を確認せず(できず)に買ったのでまぁ仕方ないです。初めから「ノーチェック、ノークレーム、サポートなし」という条件でしたから。ジャンクというのはそういうものです。例え再起不能なものを掴まされても、原則として文句は言えないのです(あまり酷い場合には言いたくなりますが(^^;)。逆に思いの外、程度が良いということもあるのですが。しっかし、こんな端子ではどうにもコネクタを差し込む気になれません。まぁ、幸いなことに内部まで腐食は進行しておらず、屋外放置はわずかな期間であったようです。内部が生きているのなら復活できる可能性はあります

とりあえず磨いてみる

で、なんとか錆びた端子を再生しようとヤスリがけして磨いてみました。使用前と使用後の写真です。何が使用後なのかよく分かりませんが。まぁこれならなんとか端子繋げてもイイかなってレベルです。でも完全に綺麗になったわけではないです。部分的に黒錆びがこびりついている他、メッキが剥がれて一部銅が露出しており、将来的に錆びやすい状態になってしまっています。できれば交換したいところ。

特殊パーツか?

背面端子の交換のため、基板から分離してみました。どうも、端子とパネルは一体化しており、パネルごとパーツを交換するしかないようです。

音声コネクタは上の写真でもありますように、一応汎用品のようなもののようです。BSチューナー部のコネクタも汎用品っぽいですが、いずれにせよあまり普通のパーツ屋に売っているようなタイプではないですねぇ。

果たして手に入るでしょうか…。

さて、故障状況が大体分かりましたので、とりあえずメカを騙し騙し作動させてみました。なんとか再生画像を出すことは出来ました。一部ギヤが欠けていますが、過負荷がかからない限りなんとか可動できるようでした。で、とりあえず動くことを確認して蓋を閉めた後のことです。

げ!電源が入らない…。

なんと、それまで問題なく入っていた電源が突如として入らなくなったのです。スイッチを押しても1秒で切れてしまいます。普通のエマージェンシーモードなら数秒は電源が入るのですが今回は違う感じ。修理どころか余計壊してる…。いろいろ試してみましたが、電源の上のシスコン基板に繋がっているコネクタを適当に抜き差しすると電源が入るようになることがありました。この基板です(機体から分離しています)。

一度電源が入るようになれば一応コネクタを繋ぎ直しても動作可能で再生なども可能でした。しかし、電源が入るようになってもちょっと油断するとまた入らなくなってしまいます。一度入らなくなると、またコネクタを適当に外したりしないと入るようになりません。うーん、ハッキリ言って原因不明。どこが悪いのかよく分からないので、手元にある正常動作しているもう一台同機種のシスコン基板を移植してみることにしました。こーいう場合はこのように2台のパーツを適当に組み合わせて診断することは非常に有用です。

これが正常動作している方のシスコン基板。赤丸のところにパッチ基板が付いています。どうもリビジョンが違うようです。どっちが新しいモノかよく分かりませんがとりあえず移植してみました。電源は入るようになったのですが、モーター系統がかなりの高速回転しており、全然まともに動いてくれませんでした。リビジョンが違うせいかなぁと思ったのですが、原因は分かりません。

とりあえず別のシスコンで電源が入るということはシスコンの不良が原因という線が濃厚。一応噴いているコンデンサなどないかどうか肉眼で確認してみましたが見つけられませんでした。

とにかく、電源が入らないことには修理できる気がしません。かといって見捨てるには実に惜しい機体です。泣く泣く出費覚悟でメーカー修理依頼することにしました。せっかくお金を出してメーカーに依頼するのですから完璧に直して貰おうと思い、修理条件としてメモを書いてトップカバーの裏に張り付けておきました。内容は、電源が入らない故障の修理、欠けたギヤの交換、背面端子の交換(必須)、消耗品の交換、各部の微調整のような感じでした。費用はとりあえず16000円までは無条件と設定。果たしてどうなるでしょうか。シスコン交換はこの金額では無理でしょうが、手直し程度ならできるはずです。この値段だと程度の良いジャンクを買った方が安いというのは事実ですが、私はゴミを出すのが嫌いです。手に入れたジャンクは可能な限り修復したいと思っています。例えいくばくかのお金が掛かったとしても。


つづく!

当サイトの修理企画として初の敗北を喫し、メーカーへの修理依頼をしたこの機体ですが、果たして修理内容と修理代はどうなるでしょう。期待と不安をかかえて第二回へ続きます!


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