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〜Panasonic VTR ジャンクNV-BS900を修理する〜

第四回 「大団円」


Panasonic NV-BS900(2号機)

前回のギヤ交換で完全復活かと思いきや、最終動作確認で一番重要なヘッドが逝かれてることが判明したBS900二号機。世の中なかなか思うようにいかない物です。しかし、ここまで来たら最後まで面倒見ますよ。ヘッドでも何でも交換してやろうじゃないか!(ヤケ)。

ということですが、前回書いてますけどヘッド交換には以下の方法が考えられます。

手段

メリット

デメリット
1) 他のジャンクからの移植 値段が超安い 既に摩耗している可能性あり
2) 純正ヘッド購入 完全互換で安心 値段が高い(12000円)
3) 互換ヘッド購入 値段が安い ヘッドの素材が異なる可能性あり

まず、1)の移植術ですが、松下機の場合、元々が丈夫なメカだけに、メカが逝かれる前にヘッドが逝かれてジャンクになるものもあるということを考慮しなくてはなりません。他社の貧弱メカの機体ならばヘッドが摩耗する前に他の消耗パーツがダメになることがほとんどなのですが、松下機は丈夫ですからね。よって、手持ちに素性の知れたヘッドを持ったジャンクでも無い限り、ヘッド目的で改めてジャンクを入手するのはバクチ的要素が大きいと思われます。それ以前に、ジャンク機を新たに入手してしまうと、それも直したくなってしまい、結局直すべきジャンクが1台増えるだけ…という問題もありますが…。

2)の純正ヘッドは、他社製と比べると12000円という価格は良心的ではあるのですが(メーカーや機種によっては2万〜6万円台のヘッドもある)、ジャンク機の修理にはちょっと高いと思われるのも事実。思い入れのある機体であればもちろん純正ヘッドでメーカー修理に出すところなのですが、趣味のジャンク修理なのでできるだけ安く済ませたいものです。やっぱりコストパフォーマンスって大事だと思います、ハイ。ちなみにヘッド交換後はいろいろと調整項目が存在するらしいです。聴く所によると、これはメーカーのサービスマンがサービスマニュアルを見ながら測定器を用いて行うらしく、ハッキリ言って素人には無理です。完璧に直したい場合は大人しくメーカー修理に委ねましょう。

まぁ、今回は趣味のジャンク修理でとりあえずそこそこ普通に使えれば良いので、3)の互換ヘッドの購入という手段が浮かびます。「藤商」というメーカーで様々なメーカー製VTRの互換ヘッドを作っています。値段もリーズナブルで、BS900の場合は5900円でした。なんと、純正の半額以下ではないか! ということで藤商ヘッドを注文することに決定。

当BBSで教えて頂いた藤商の連絡先はこちら。昴さん、情報提供どうもッス!

株式会社 藤商
 〒134 東京都江戸川区船堀2−21−6
 Tel 03−3675−5231
 Fax 03−3675−5102
 商品の申し込み・お問い合わせは下記へお願いします
 フリーダイヤル 0120−88−5231

尚、今回は写真のクオリティが落ちています。愛用のデジカメが壊れたため、急遽ジャンク入手のビデオカメラ(松下NV-S99)とジャンクキャプチャーボード(ここで紹介済み)で取り込みを行ったためです。なんかウチってジャンクばっかり…(笑)。

互換ヘッドメーカー「藤商」

ということで、藤商さんに注文の電話をしました。「NV-BS900のビデオヘッド2個」と告げるとすぐ在庫確認してくれて、「在庫あります」とのこと。電話で送り先を告げて注文完了。非常に簡単でした。

物は普通郵便で、注文してから2日後に届きました。超速いです。消印を見ると注文したその日に発送してました。代金は郵便振替で10日以内に後払い。2個で税込み12390円。送料は無料みたいです。振り込み用紙も赤紙(手数料先方負担)だし、なんて良心的な会社なんだろう。

ちなみに「2個」というのは、もう一台ヘッドが逝かれた同機があるからだったりします(^^;。これもそのうちレポートします。

箱の中には白いプラスチックのケースに入ったヘッドが一つ。機種名は一つしか書いていないので、BS900専用なのでしょうか。

ケースにキッチリ固定されているので普通郵便での発送でも問題なさそうです。

とりあえず比較してみました。基板にはどちらも「VJB00P32」と表記されており、少なくとも基板は同じ物のようです。

裏側。左が藤商、右が純正(箱は以前買った別機種用)。

古いヘッドのチップは見事に一つ折れていました。おそらく標準モード用のものでしょう。どうやらこのヘッドは7ヘッドのようです。フライングイレースヘッドが1つなので、反対側(写真左下)はダミーのオモリが付いています。重心を回転の中心に置くためです。標準用x2、3倍用x2、Hi-Fi用x2、フライングイレースヘッドx1という構成。機種によっては(NV-BX25等)ツインフライングイレースヘッドで3倍モード用19ミクロンヘッドx2が付いていて10ヘッドというのもあります。

見た感じ、純正と藤商ではヘッドチップはやはり違うようです。どういう素材を使っているのかは分かりませんが。

ちなみに純正ヘッドは「ウエシリンダー」というのが正式名称です。ヘッドというのは一般名で、ヘッド下の回転ユニット「ロワードラム」に対して「アッパードラム」とも言われます。

作業開始

手始めに、ヘッドの上のブラシを取り外します。これはヘッドに貯まった静電気を逃がすためのものらしいです。

ネジ一本で外れます。

ブラシを外したら半田付けされている部分を解放します。

中心に近い方の半田付けが4個づつかたまったところだけでOK。全部で4x4=16カ所です。

半田吸い取りは周辺に半田カスが巻き散らかされるのであまりオススメしません。ランニングコストがかからないので私は好きなのですがね。でもここでは半田吸い取り推奨。

吸い取ったら必ず各線が基板からフリーになっているか何度も確認します。少しでも基板に付いているようなら吸い取り直すか、ツメで軽く押してみて基板から引き剥がしを試みます。全ての端子が指で押してみて根本からグラグラ動くのならOK。

もし基板と配線が付いたまま引き剥がしてしまうと、途中でちぎれてロワードラム(ヘッドの下のパーツ)も交換しなくてはならなくなるかもです。ロワードラムもヘッド(アッパードラム)に負けず劣らず高価です。

半田を吸い取ったらネジ2本外してロワードラムから完全にフリーの状態にします。

次に古いヘッドを引き抜くのですが、なぜかこの機体は非常に固くて指で持ち上げるだけではびくともしませんでした。アッパーとロワーの隙間に物(特にマイナスドライバーなど)をねじ込むのはロワーを損傷させる危険があり、やってはいけないと思います。

油脂で固着しているのかと思ってまずは中心のアッパーとロワーが接触しているところにCRC556を注油してみたのですが、効果薄。

仕方なく緊急手段としてこのようにしました。先ほど外したヘッド固定用ネジを外側にある別のネジ穴にねじ込んで紐を縛り付けてエイヤと無理矢理引っこ抜きました。かなり固かったですよ、ハイ。

どうせ外したヘッドは再利用不可ですから、まぁいいかという感じです。

さて、残ったロワードラムに新しいヘッドを取り付けます。きちんと取り付ける方向は決まっていますのでこれだけは気を付けましょう。写真のように合わせマークがありますのでそれを一致させればOK。

はめ込む際にはヘッドチップには絶対に触らないように注意です。チップ先端はペラペラで簡単に折れますし、折ってしまえばその時点でヘッドはご臨終です。

新しい藤商ヘッドはさほど力を掛けなくてもロワードラムに押し込むことが出来ました。

ネジをきつく締めて固定したら半田付けです。

16カ所半田付けしたら初めに外したブラシを取り付けて作業完了!取り付けの際にはくれぐれも金具がヘッドチップに触らないように注意です。ここまで来てヘッドを殺してしまったら泣くに泣けません。

取り付けたらヘッドチップに触れないように手の脂が付いたドラムを軽く拭いて綺麗にしておきましょう。


さて、結果は?

オッケー!バッチリです。S-VHS、ノーマルVHS、標準、3倍いずれのモードでもキッチリ綺麗に再生できています。特に調整をしなくても綺麗に画像が出ています。これでようやく完全にレストアが成し遂げられました。前オーナーに見捨てられ、一時はゴミ捨て場で雨ざらしになった(と思われる)可哀想なこいつが、廃品業者に拾われて巡り巡って我が家にやってきたものの、修理を諦められ、メーカー修理でまたもや見放されたこいつが、今きちんと機能しているのです。うーん、感動だなぁ。

ゴミと動作品の違いって紙一重だと思います。たった一つの部品が壊れているだけで機械は正常に動けなくなってしまいます。その壊れた部品を見つけだし、新しい物に取り替えてやればこのようにきちんと動く機械に生まれ変われるのです。これがリサイクルの醍醐味ってやつです。松下デッキのようにメカが良いものであれば、今後も10年くらい動き続ける事が出来ると思います。

総括

今回の成功の鍵を握っていたのが、「メーカーから帰ってきたら電源が切れるトラブルが何故か直っていたこと」です。一応帰ってきたシスコン基板を観察してみたのですが、とりあえず部品を交換されたような跡は見つけられませんでした。メーカーの人は一体何をして電源を復帰させたのでしょうか。謎です。隠しリセットコマンドでもあるのでしょうか? とりあえず直って帰ってきて、しかも見積もり料を請求されなかったのでラッキーといえばラッキーなのですが…。まぁ、とにかく電源のトラブルを直してくれたメーカーのサービスマンの方には感謝する次第です。これがなかったら部品取り機になっていたところでした。

ちなみにBS900の基のはコネクタには同じピン数のものがいくつか存在します。一旦基板を取り外して、再度付け直す際にコネクタを間違ったところに刺してしまうことがあるようです。そういう場合なら電源が入らなくなることは予想できます。ですが、今回の機体では、特に差し替えた記憶な無いんですよね。本当に何だったのでしょう。どうやったら直るのでしょう。もしかしたら自然に治ったのでしょうか。これだけが永遠の謎なのです。

さて、最終的な費用を算定してみましょう。本体4000円+コネクタ90x9=810円+ギヤ700円+ヘッド6195円=11705円でした。12000円以下でこのクラスなのでコスト的には満足のゆくレベルだと良いと思います。何しろヘッドが新品ですし。この価格帯の現行機種を買ってもこの機械ほど良いものは絶対買えません。コストパフォーマンスを重んじる私でも満足の行く金額でした。この機体には愛着が沸いてしまったので寝室用の主機として使ってやろうと思います(なぜか寝室のくせに3台くらいあるのですが(^^;)。

往年の名機シリーズもいよいよ架橋に入ってきました。BS900はあと2台ジャンクで入手しているのでそのうち修理記事を書く予定です。その他としては、FS900、DX1、HC1あたりを松下ビデオデッキネタとして用意しています。ご期待ください(笑)。

そして伝説へ…


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