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〜SHARP VC-F220を修理する〜


SHARP VHS Hi-Fi Video VC-F220

 今回は松下名機から離れて、バブル期のシャープの普及期を修理します。このデッキは知り合いに修理依頼されたものです。10年ほど前のモデルで、最近再生中に突然テープが止まるというトラブルを起こすようになったとのこと。早送り、巻き戻しは正常です。この症状は以前の松下NV-F600の時 と酷似しています。メカ系の異常は直しやすいので、早速見てみます。

シャープは早い内からリモコンが無いとまともに操作できないモデルを作っていました。これがシャープのダメなところです。ご覧のように、時計合わせボタンがありません。もし、このモデルをリモコン無しで入手しても永遠に時計が合わせられないので予約録画ができません。今までいじってきた松下機と比べるとこの操作パネルはどうしても見劣りしてしまいます。せっかくチャンネル合わせが出来るんだから、時計合わせボタンくらい付けて欲しかったもんです。まったく。

年代を調べるとどうやら1990年製のようです。電源ケーブルに書いてありました。一説によるとここの年次表示はかなり信頼できるとのことです。ちなみに松下機の場合、電源ケーブルが着脱式のため、この年代判定はできません。

また、前面入力端子は金メッキされていました。腐ってもバブル機のデッキです。さすがです。背面は金メッキではありませんが、目に見える所くらいはお金を掛けているようです。最近の普及期は前面でさえ金メッキされてませんからねぇ。でも、電気屋で売っているケーブルのほとんどが金メッキされているというのに、同じ売り場で売られている本体側がされていないというのは何か間違っている気がするんですが…。

解剖図

 ということで空けてみました。ありがちな鉄板プレスのメカで、ローディングモーターがあり、カムギヤがあり、それによってピンチローラーや、ローディングポストとか動かしているタイプです。NECのデッキ と仕組みは大体同じです。ただ、この機体はテープ挿入、取り出しにも同じローディングモーターを使ってコストダウンされています。こういう鉄板プレスのメカは松下機と比べるとどうしても見劣りしてしまいます。ゴムベルトなどの消耗品も多用していますし、耐久性、寿命の点でかなり劣ってしまいます。まぁ、シャープその他が劣っていたというよりも、松下機が優れすぎていたというのはあるかも知れませんが。

基板の数は、当時の高級機に比べると少ないですが、今時のデッキに比べれば中身が詰まっています。

責任病巣の分離

まず、症状から判断してピンチローラーを調べてみましたが、やはりです。ピンチローラーの軸受けが死んで、ガタガタになっていました。 松下のNV-F600の時 と全く同じです。早速交換します。

メンテナンスキットG

シャープの消耗品系統のパーツは「メンテナンスキット」として注文できます。いつもパーツを買っている家電店で注文してきました。

これが、VC-F220に対応した「メンテナンスキット」。価格は2300円でした。交換用のマニュアル同梱。ポリワッシャやグリスも同梱されており、なかなか親切なキットです。一見消耗品らしくないプラスチックの可動部品もいくつか入っています。どういう基準で入れているかが判りませんが。

具体的な交換手段は、マニュアルに載っているので今回は割愛します。今回のデッキでは、ブレーキなどまだまだ使えるパーツが多かったですが、人様に依頼されたものなので、一通り全部交換しておきました。

この写真は古い方のブレーキ。まだまだ使えそうです。

尚、一部のゴムベルト交換のために半田を外す場所があり、交換には半田コテが必要です。あと、「カムスイッチ」の取り外しのために、半田吸い取り器、あるいは半田吸い取り線が必要です。

メンテナンスキットの交換対象になっていませんでしたが、シャープのこの時代のメカの欠点として、キャプスタンモーターのプーリー割れ、コンデンサの劣化というのがあります。今回のデッキではどちらもまだ生きていました。

ですが、コンデンサは実に怪しいオーラを放っていたので交換しておきました。50円くらいですし。

ちなみに三菱のデッキでも同様の故障が頻発しますが、プーリーに関しては消耗品キットに金属製プーリーを同梱して対処しているようです。東芝の場合は、キャプスタンモーターごと交換 して対処するようです(そこまでしなくても…(-_-;))。

メンテナンスの終了したメカ裏側です。コンデンサも交換済み。新しいアイドラのプーリーが白く輝いています。

このメカにはもう一カ所、この白いプラスチックのパーツが割れるトラブルがよく起こるそうです。バネの力価がモロにかかる部位で、確かに経年変化で割れそうな感じ。このデッキではまだ生きていましたが、いつまで持つかは判りません。

対処法に関しては珍言采さんのページで解説されています。

(SHARP VC-F18 REPAIRLOG 19990307のところです。)

最後に仕上げとして、メンテナンスキット同梱のシールに書き込んでトップカバー内側に貼っておきます。

ちなみにこの機体は1994年にも一度メンテされたらしいです。「メンテG」と書いてあるところを見ると、今回同様「メンテナンスキットG」を交換したようです。やはり、交換後も5〜6年が限界みたいですね。


総評

 さて、交換後一通りの動作をさせてみましたが、問題なく動きました、画質に関しては並です。さすがにNV-FS900などの高級機と比べると見劣りしてしまいますが、普及機なのでそんなものでしょう。今回の修理代は2350円ナリ(コンデンサ含む)。この値段であと5年使えれば十分元は取れそうです。

 シャープのVTRはやはり松下と比べてしまうと弱点の多いメカです。まず消耗品そのものが多く、ゴムベルトが多用されていること。これだけで5年ほど使い込めば劣化により動作不良を起こしてしまう原因になります。また、東芝、三菱同様、キャプスタンモーターのプーリー割れ、コンデンサの液漏れを起こしやすいこと。そして何よりメカそのものが鉄板プレスであり、それに付随しているプラスチックパーツに寿命があることが挙げられます。どうしてもこういうメカを使った機体は早い内に故障を起こしてしまいます。

逆に言うと、如何に当時の松下機が優秀であったかが分かります。松下機の場合は、ピンチローラー、ブレーキ、モードスイッチ等が消耗品としてありますが、普通に使っている分にはピンチローラー以外はそんなに劣化しません。消耗品であるはずのブレーキ自体がかなり強固な素材で作ってあるのです。当サイトの修理記事に松下機が多いのは松下機のそういうところにホレ込んだためです。わざわざ壊れたジャンクを買ってくるのは直す価値のある機体だからです。

ちなみに壊れていない機体には興味半減です。動作品は値段も高めですし、よほど安かったり、欲しい機種でもないと買わないですね。理由は直す楽しみがないからです(爆)。

先日リサイクルショップに行った際、壊れていそうな松下ジャンクが転がっていたのを見かけました。かなりほこりを被っているところを見ると、しばらく放っておかれているようで、可哀想になってそれを売らないのかと店の人に聴いたことがあります。しかし、「壊れているものは売らない」って言われました。直ってたら買わないっての


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