にがAV

〜ジャンクなドリキャスを修理する〜


 SEGA Dreamcast(四号機)

さて、どりかす修理も4台目ともなると、症状を聴けばどこがどう壊れているか、なんとなく分かってくるようになってきました。今回のブツは、某オクで3700円。ゲームを読まない、そしてコントローラの操作を受け付けないというジャンクでした。付属品は各種ケーブルとドリームパスポート2と3とのこと。残念ながらコントローラは無し。

お値段からするとやや相場より高いような気がする物の、直ればお得な額であるのは間違いなしです。

HKT−3000

製造工場コードネームは「UGO DENSHI」。どうやら2号機と同じところでの製造のようです。相変わらず「サービスマン以外の方は云々」等と挑発してやがります。

ふと思い出しましたが、私は故障機のパーツ調達が出来ないかとセガに問い合わせたことがあります。この際なのでそのやりとりを公開してしまいます。ちなみに本体が9900円に値下がりすると発表があった後のやりとりです。

問い合わせ内容(原文のまま)
本体の故障です。スピンドルモーターが故障し、これのコントロール用のIC「BA5986FM」から発煙して壊れました。部品を買おうと思って家電店に聴いたら取り寄せられないと言われました。補修用のパーツは売って貰えないんでしょうか? 保証が切れているので修理に出すと新品買った方が安いと思いますが、どうしても直したいのですが。パーツ代だけなら低額で直りそうですので。

セガからの返答(改行位置のみ修正)

平素はドリームキャストをご愛顧いただき誠にありがとうございます。

3月10日のお問い合わせにつきましてご案内申しあげます。

恐縮ではございますが、ドリームキャスト用の周辺機器は、精密部品を多用しているため不用意に分解されますと、お客様が思わぬ怪我されたりする場合もございます。

また、静電気・皮脂などにより精密部品が損傷しご利用ができなくなる場合がございます。

そのため、弊社では部品販売を行っておりませんことをご了承いただきますようにお願いいたします。

つきましては、弊社にて拝見させていただきたいと存じます。

注:以下、つらつらとメーカー修理を依頼する手段について記されていますが、長いので省略します。全文はこちら

ということで、セガというメーカーはエンドユーザーにパーツを販売するつもりは更々無いようです。従って、私は2号機を修理不能と見なし、部品取りへ格下げしてしまいました。私にとってメーカー修理しか手段が残っていない=修理不能のようなものですから。メーカーに出すくらいだったら新品か別のジャンクを買った方がコスト的にマシですからね。

つーか、「不用意に分解されますとお客様が思わぬ怪我を…」などと、ハッキリ言って余計なお世話ですね。んなことは百も承知ですし、私は不用意に分解してるつもりもありません。故障しているのが、スピンドルモーターで、ICが発煙して壊れたって言っているじゃないですか。それを不用意な分解とか、静電気云々などという子供だましな屁理屈で口を封じて貰いたくないものです。そもそも部品を売ってくれなんて言うユーザーはそれなりのスキルがあるから言っている(ことのほうが多い)のですから。

故障しているパーツが分かっているのにも拘わらず、部品が手に入らないが為に復活させられない悔しさというものを、セガという会社は理解してくれないようです。あぁ、悔しい。ムキー。

とはいえ、実際に「不用意」に分解して、本体をぶっ壊し、あまつさえ感電するという「お馬鹿さん」が実在するのも事実ですから、世知辛い社会において、セガのこのような姿勢は企業としては正しいものなのかも知れませんねぇ…。世の中「分かってる人間」なんて実際は少数派なんでしょうから。イヤな世の中だ。

そーいえば、任天堂はエンドユーザーにも補修用パーツを郵送にて販売しているようですね。そういう意味ではユーザーに優しいメーカーですよね。ソフト製作会社にはかなり厳しいメーカーのようですが…。


白箱 MIL CD対応版本体

話が大分それてしまいましたが、今回のブツは白箱ですから比較的後期の作品のようです。一番の問題はMIL CDに対応しているかどうかです。MIL CDとは、CD Extra規格で作られた音楽CDで、DC用のソフトが入っており、DC上でデータを参照したりできるとのことですが、そんな音楽CDがどれだけあるのかは不明です。ほとんど普及しなかったと思われます。

MIL CDが読めるとBoot CD他、アマチュアソフトが動くということで、是非とも対応している本体をゲットせねばなりません。見分け方はこの赤で囲った部分。新しい箱にはMIL CD非対応と書かれています。自分のドリキャスの箱にそれが書かれていた方は残念ですが泣いてください。もう手遅れです。

今回のブツは2000年2月購入とのことで、この件については問題ないようです。初めてMIL CD非対応になったのがサクラ大戦仕様のDCのようです。最近新品で売られているものはほとんどMIL CD非対応のようなので要注意です。

なんと、GD入ってます(爆)

開けてみたところ、こんなのが入ってました。ラッキー! 貰っちゃえ。「スペースチャンネル5」というダンス系のゲームのようです。

…と、思ったら

記録面はご覧の通りキズだらけでした。だから入れっぱなしだったのかな??

ちなみにディスクを入れて回転させようとしたところ、ディスクがどこかに擦れるような音がします。このキズはそうやって擦れて出来たものでしょうか。


解剖
とりあえずトップカバーを外します。なかなか程度はよろしいようで。タバコのヤニも付いていませんし。

責任病巣の抽出

ということで、なんとなくヤバそうなGDユニットを取り出します。この状態でも、円盤を入れるとやっぱり記録面がどこかに擦れるような感じです。

ユニットを観察すると、このようにディスクが擦れて出来たと思われるキズが付いています。

よくよく観察すると、どうもスピンドルモーターの軸受けが沈んでしまい、ディスクがユニットに接触してしまうようでした。写真ではわかりにくいですが、正常のユニットと比べると微妙に隙間が狭いのです。この違いは本当に微妙なのですが…。

ということで軸受けを少し持ち上げます。ちょっと野蛮な方法ですが、マイナスドライバーでこじって起こしました。ある程度持ち上げた後、指で押し込んで正しい位置へ修正します。この際、軸受けが歪まないように注意。歪んでいる場合は、ディスクを入れて回転させたときに、円盤がフラフラと不安定な動きをし、フォーカス機構に負荷をかけてしまいます。

第二の責任病巣

GDユニットの軸受け調整で、ゲームの読み込みが正常に行えるようになりましたが、コントローラーが利かない故障がまだ残っています。

コントローラが利かなくなると時計などのバックアップ機能も利かなくなります。そのカラクリは…

ヒューズ抵抗

これ。F1とシルク印刷されているパーツですが、Fというのはヒューズ(FUSE)のFです。コントローラ接続用の基板に電力を供給している部分に付いていますので、これが逝かれるとバックアップ電池に電力が供給されなくなります。ちなみにバックアップ電池はリチャージャブル。つまり充電式です。ここのヒューズ抵抗が死んだ場合、時計のバックアップが出来なくなるという症状から、電池を交換しようとする方が居ると思いますが、元々が充電式ですから交換しても無駄です。

一見抵抗のような格好をしていますが、「ヒューズ抵抗」というヒューズ兼抵抗のようなものです。とはいえ抵抗値はかなり低めですのでほとんど普通のヒューズとして考えても問題ないです。

これが生きている場合はほぼ0Ωに近い値になりますが、死んでいる場合は異様に抵抗値が高くなります。

やむなくショート

ちなみにこのヒューズ抵抗は一般には販売されていません。秋葉原中を歩き回ってもおそらく売ってないでしょう。ということでやむなくスズメッキ線で短絡してしまいます。

保護回路を失うことになりますが、パーツが手に入らない以上、やむを得ないでしょう。セガがパーツを売ってくれればなぁ…(まだ言ってる)。

コントローラを修理

今回のブツにコントローラは附属していませんでしたが、別の方から11円にてジャンクなコントローラを落札したのでこいつも修理してしまいます。

壊れているのは、VMを認識しなかったりすることと、Rトリガが押せないこと。

これが取り出したRトリガ。初期型のコントローラは設計不良により、これが壊れやすい構造です。折れた症例はこれまでに多数報告されています。

力価の掛かる部分に、こんな余計なスリットを入れたら脆くなるのは当然。折れて当然の構造です。セガには十分反省して貰いたいと思います。

交換用パーツはゲーム系ショップの通販で380円などで買える(売っている時点でいかに折れやすいかが分かる)のですが、これだけのためにわざわざ注文するのもバカバカしいので、接着剤で補修します。裏側からセロテープを貼り、接着剤で固定。その後にスリット部分にエポキシを流し込んで強化しておきました。

VMを認識しなかったりする故障はどうやらケーブルの内部断線のようです。コントローラの付け根の部分をグリグリやると認識したりしなかったりします。

断線部分は付け根に近いところのようです。

ということで、思い切って切断してしまいます。どうやらこのあたりがブチブチ切れているようです。妙な引っ張り負荷がかかったのでしょうか。

配線を固定して加工します。付け根の部分は切断したケーブルから引き剥がして再利用。ただし、固定性が甘いので写真のように結束バンドを巻き付け、多少引っ張っても半田付け部分に負荷がかからないように工夫します。

結束バンドは100円ショップで100本入りが100円でした。無い場合はスズメッキ線等で同様に縛ってもOK。

コネクタ部分は再利用する程の物でもないので、基板から取り外してケーブルを直付けしてしまいました。

以上の補修にて、11円コントローラは完全動作するようになりました。


総評

ということで、4台目のDC、完全復活です。3号機が不動の状態なので、これで動作するDCとしては3台目ですね。ハッキリ言ってバカです>自分。

2号機はリッピング専用、4号機を常用しようかと。1号機は故障時のバックアップ用とか。(そんなに必要か?)

ちなみにリッピング専用機としての余生を与えた2号機は、日々元気に吸い出しをしています。DCゲームのデータを利用できるって面白いですねぇ。ムービーを吸い出してPC上で再生したり以下略。

さて、お約束のコストを算定してみましょう。3700円+11円+送料云々=5500円弱といったところでしょうか。付属品完備の正常動作するDCとしてはお安い値段かと。そうそう、中に入っていた「スペースチャンネル5」ですが、キズだらけにも拘わらずとりあえず起動はできました。不良セクタが無いかどうか調べるために散々時間かけてリッピングして展開したら、サイズ0のファイルがゴロゴロ。やっぱり読みとり不良のようです。しかしそんなことにはめげません。キズは削って溶かして落とすのです。

おまけ:GD研磨

そんなときに意外と役立つのが「ピカール金属磨き」です。元々の用途は「金属」磨きですが、有機溶剤+研磨剤が入っているので、プラスチック部品のクリーニングにも使えます。ビデオデッキのキズだらけの表示窓なんかにも使っていました。ただし、塗装に使うとハゲますので要注意。

全国のホームセンターで300円程度とお値段もリーズナブル。電気屋でCDリペアキットとか売ってますが、わざわざ高い専用品を買う必要は無いと思います。とりあえず読めれば良いのならこれで十分かと。

ティッシュで、中心から外側の方向で念入りにかつ気長に磨きをかけます。同心円的方向で擦ってはいけません。研磨後は石鹸で軽く水洗い。

こいつで磨くと細かいキズが付きますが、エラー訂正で何とかなる程度ですのであまり気にする必要はありません。

で、研磨後にリッピングしてみたところ、見事に吸い出しに成功しました。ピカール金属磨き、有効!ソフト1本儲かりました(爆)。そーいえば、この「スペースチャンネル5」は中古屋で3千円くらいしていたっけ。


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