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〜ドリキャスを外付けモデムに接続する〜


 SEGA Dreamcast(2号機)

 このドリキャス2号機は、前回の「DCのPC奴隷化計画」にて、PCとストレートなシリアルケーブルにてPCの外部装置としてアクセス(リッピング)できるように改造したわけですが、なんとなくドリームパスポート3を起動させ、設定項目を弄っている時にあることに気付きました。

これがドリームパスポート3のオプション画面ですが、ここでモデムの設定ができるわけです。

んで、「むずかしい設定」なるよく判らない項目があるのですが…。

なんと、「シリアル端子」なんていう項目があるじゃないですか!! シリアル端子といえば、本体背面に出ているあの10pの端子に違いありません。あの端子でインターネット接続ができるようになっているとは!!

ちなみに詳細設定もできるようになっています。ただし、フロー制御はハードウエア固定。ボーレートも可変なのですが…。

なんと、46080bps(460kbps)まで設定可能!!!すげェ!超高速じゃないか。ISDNが64kbps程度なので、この7.2倍の速さまで耐えられるということですか。まぁ、数MbpsのADSLなどのいわゆるブロードバンドにはかないませんが、アナログモデムの56kbpsを余裕で上回る高速通信です。DCのシリアルは規格上この速度までOKと解釈して良いのかな…。

ということで、このシリアル端子を使ってモデムやターミナルアダプタなんぞを接続すれば、標準の33kbpsのモデムでの接続より快適になることが期待できます。

ということで、前回増設したPCリンク端子を利用して、外付けのRS-232Cモデムを接続する実験をしてみました。


回路図(配線図)その1

モデムを接続するためには、増設したシリアルポートとストレートにモデムに繋いだ方がなんとなくスッキリします。よって、前回の配線を若干変更して、クロス仕様だった配線をストレート仕様に戻しました。

これが変更後の配線図です。簡単に言えば、D-SUB 8pメス端子をオスに取り替えて、D-SUB側の2p,3pを入れ替え、さらに7p,8pを入れ替えただけです。

これでモデムとストレートケーブルで繋げることが可能。また、今後PCとリンクさせるためにはクロスケーブルを利用することにします。

この配線変更によって、DCはPCの奴隷ではなく、PCと対等の関係になったわけです。

追加回路の考察

一旦、以上の配線変更にて、モデムを繋いでみたのですが、モデムはまったく応答してくれませんでした。

考えてみれば、シリアルポートっていうのは、今回の改造で配線したデータ線とフロー制御線の他にもいくつか端子があるわけです。これらのどれかが足りなくてモデムが動かせないのだと推測されます。

前回も書きましたが、シリアルポートのピンアサインは以下のようになっています。

PCシリアルポートのピンアサイン(Dサブ9p)

ピン番号

I/O

信号名

備考

1

I

DCD

キャリア検出

2

I

RxD

受信データ

3

O

TxD

送信データ

4

O

DTR

データ端末レディ

5

-

GND

グラウンド

6

I

DSR

データセットレディ

7

O

RTS

送信要求

8

I

CTS

送信可

9

I

RI

被呼要求

このうち、2p、3p、5p、7p、8pはすでに配線済み。すると、カギを握っているのは、1p、4p、6p、9pのうちのどれか?? しかし9pというのは、外から電話が掛かってきたときにモデムが出す信号なので、この際は関係ないでしょう。

クサいのは1p(キャリア検出)、4p(データ端末レディ)、6p(データセットレディ)の3つです。ドリキャスのシリアルポートのアサインは以下のようになっており、まだ2p、8p、9pについて解説したサイトは見つかりませんでした。これら3本の信号線に何かカギがあるはずです。


過去に判明しているDCシリアルポートピンアサイン
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
5V GND RX2 TX2 RTS CTS 3.3V

不明の3つの端子が、それぞれ判明していない3つの信号線なのかなぁ〜?と思ったのですが、適当に配線してメイン基板を壊すのもイヤなので、、オシロスコープをお持ちのBABAX氏に依頼して調査して頂きました(感謝)。するとどうも8pはGNDっぽいとのこと。確かによく見るとGNDと繋がっています。

ちなみに判明していない端子のうち、DTRとDSRは対で使う信号です。どちらか一方では機能しないのです。残りのDCD信号は、モデムがホストと接続したときに出す信号で、これはモデム通信には必要っぽいです。即ち、2Pと9PのどちらかがDCD信号である可能性が極めて高いと思われます。

BABAX氏によれば、これらの端子を追っていったところ、2pはCPU(SH-4)のA16:SCK2(SCIクロック2)と繋がっており、9pはカスタムチップ(315-6145)の49pに接続されているとのこと。

試行錯誤の結果、どうやら2pがDCDであるっぽいことが判明しました。従って、下記の如く表を埋めました。DTRとDSRの信号は用意されていないようですが、D-SUB端子側で4Pと6Pをショートさせたのでこれで問題ないでしょう。

06年3月26日追記: BBSにてこちらのサイトの方に9Pは負論理リセット出力と教えていただきました。

DCシリアルポートのピンアサイン(独自10p)

ピン番号

I/O

信号名

備考

1

-

+5v

+5v電源

2

I

DCD

キャリア検出

3

-

GND

グラウンド

4

I

RX2

受信データ

5

O

TX2

送信データ

6

O

RTS

送信要求

7

I

CTS

送信可

8

-

GND

グラウンド

9

O

/RESET

リセット信号

10

-

+3.3V

+3.3v電源

追加回路図(配線図)

RS−232Cレベルっていうものは、+3〜+12Vが正論理、-3〜-12Vが負論理となる信号です。これをTTLレベルに変換してドリキャスに入力しなければなりません。テストとして適当な抵抗を噛ませてDCに入力したところ、一応モデムと通信できるようですが、モデムを繋いだ状態ではソフトが起動しなかったり、不安定な印象であったので、MAX232をもう一個追加して、以上のようにしました。

ちなみに今回はRS-232CレベルをTTLレベルに変換する部分だけを使うので、コンデンサを取り付ける必要はありません。コンデンサはTTLレベルをRS-232Cレベルに変換する時に必要なものだからです(チャージポンプと呼ばれ、昇圧などをするために必要)。

MAX232#2の張り付け

実際に取り付けたものはこんな感じです。たった4配線ですので楽勝です。

絶縁対策

増設回路を取り付けたら、絶縁のための処置をします。端子がはみ出してシールド版に接触すれば当然故障の原因になりますからね。おそらく素人の改造で本体を破壊する原因として、このシールド版への増設回路の接触がかなりの頻度であると思われます。PSのMODチップ取り付けでヒューズが飛ぶのはほとんどがこういう原因ではないかと。

私はホームセンターで売っている1mm厚のゴムシートを両面テープで貼り付けて対策しています。回路を増設したときには必ずこの処置をするように心がけています。

通信成立!

てなわけで、配線完了しテスト接続。モデムとストレートケーブルで繋いで、ドリームパスポートで、いつものプロバイダへ接続してみます。

きちんとカリカリ音が鳴って(ウチはダイヤル回線です)ピーガガガガ…と言い出しました。無事にホストに繋がり、データが来ました。通信速度が表示されないのでイマイチ不明ですが、PC環境でいつも繋がっている44000〜48000bpsあたりで繋がっているのではないかと。標準の33kモデムよりは速そうです。


総評

 ということで、不明なDCD信号が判明し、外付けなモデムが使用可能になりました。どれだけ速いか検証していないのでよく判りませんが、自己満足の世界なのでヨシとします。どなたか興味のある方は速度検証して教えてくださいな(手抜き)。

ところで、私は4月に申し込んだブロードバンドアダプタを7月にようやくを入手しています(3ヶ月も待たされた)。Yahoo! ADSLにも申し込みを済ませており、今後はADSL+BbAによる接続が主体になるような気がします。しかし、既成のDCソフトはドリームパスポート内蔵であるのがほとんどであるため、ブロードバンドアダプタに対応していません。ゲームからネットに接続するためには相変わらずモデムでないとならないわけです。ゲーム内蔵のドリームパスポートもシリアル端子に対応していますので、この増設端子が少しは役に立つかも知れませんね。

ちなみにこの増設端子は、ISDNのターミナルアダプタに接続して使える可能性があります。私はTAに付いての知識が皆無なので何とも言えませんが、TAがモデムと同様なATコマンドで制御できるのなら使える可能性が高いのではないかと思われます。TAを接続して「ATDT0」のようにターミナルから実行してみて、トーン音が聞こえるのなら使えるかも。これに付きまして、動作検証された方がおられましたらBBSにて報告をお願いいたします。

ちなみに余談ですが、私はISDNという規格に対しては懐疑的です。デジタルだから速いと銘打って登場した規格ですが、その後アナログモデムが56kまで速度的に近くまで追いつき(実際の通信速度で56kは出ないことがほとんどですが)、ISDNの速度自体も64kで頭打ち。ここ数年はマシンの性能が日進月歩で向上しているにも関わらず、通常電話回線での通信速度についてはほとんど進歩の無い状態が続きました。これ以上の速度が期待できないISDNは既に終わった規格であると私は考えています。

すでに「デジタルだから速い」という時代は終わったのです。今はアナログであるにも関わらず高速通信が可能であるADSLにどんどんシフトすべきだと思います。にも関わらず、私の居住区のNTTは未だに速度の遅いISDNの加入促進を企て、加入用CD-ROMを送りつけてきました。さすがに「高速」という文字は使われなくなったようですが、こんな無駄な経費使うくらいだったらとっととADSLを整備しろっての>NTT。

ということで、今回はやるだけやって検証は他人任せという何とも手抜きな記事ですが、一応実験は成功ということで私としては満足です(爆)。私にとっては改造そのものが目的であって、実用性については二の次なのです(笑)。


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