にがMSX

FS-A1Fメモリ増設キットRev.1 実装WEBマニュアル

詳細改造記事はコチラ(前編後編
続編




キット内容
1 メモリ増設基板
2 CPUソケット(40p)
3 1000uF 6.3V 電解コンデンサ
4 配線用ジュンフロン線
 
 難易度は高めのキットなので、本体改造未経験者にはオススメしません。失敗すると本体を破壊するリスクがあります。このWEBマニュアルを最後まで見てから着手するかどうか判断してください。

本キットは松下MSX2 FS-A1Fに適合するように設計されています。A1F本体のメイン基板を改造し、本基板を実装することで内蔵RAM容量を4MB〜最大16MBに拡張できます。本基板には4MBのマッパーメモリを構成する部品が実装済みで、動作確認済みです。DRAMはSIMMメモリから取り外した中古品を使っています。メモリはNO WAITで動作し、PAUSEにも対応しています。内部増設なのでスロットのリソースを消費しません。

MSX2+化改造に応用できるようにF4レジスタをCPLDに内包しています。デフォルトでは無効化されていますので、有効化する場合はJ1に半田を盛ってショートしてください。MSX2+化する場合は別途VDP換装とシステムROM交換が必要です。MSX2+化しなくても拡張メモリはMSX-DOS2等で利用できますが、過去に市販されたゲームで遊ぶだけならMSXにメモリ増設を行う意義はほとんどありません。

FM音源を構成する部品は添付しませんが、部品を集めて実装すれば鳴らすことができるようになっています。FM音源をシステムから認識させるためには別途システム上にROMが必要です。

詳細を知りたい方は改造記事を参照してください。

手順1:本体メイン基板の改造

 

 FS-A1Fのメイン基板を取り出し、Z80 CPUメインRAM(IC13,IC15)を引っこ抜きます。基板のスルーホールやパターンはとても繊細なので痛めないように注意。引っこ抜いたZ80は再利用しますが、足に残った半田をできるだけ吸い取ってIPA(イソプロパノール)等で洗浄し、綺麗にしておきましょう。

ちなみに上画像ではシステムROMをEP-ROMに交換していますが、メモリ増設のみ行う場合はこの処置は不要です。

 CPUを引っこ抜いた後はICソケットを実装する前に、強い光源で透かしてパターンの損傷が無いか確認しておきましょう(表裏とも)。この時点でスルーホールの抜けや断線が発見できた場合は適当なワイヤーで補修しておけばOKです。ICソケットを実装してしまうと確認や補修が困難になるので注意。十分に確認できたら方向に注意しながら添付のソケットを実装してください。

なお、Z80 CPU単体はオークションや通販ショップなどで500円程度で手に入ります。自信がなければ足パチ(ニッパーで切断)でCPUを破壊して取り外し、基板に残った足を1本ずつ抜いたほうが安全です。





DRAMも引っこ抜いたらスルーホールを光に透かして損傷が無いか確認しましょう。ここには部品を実装しないので関係ないと思うかも知れませんが、一部の信号がDRAMを経由して別の石に繋がっているため断線があると動作に支障を来たします。なお、DRAMを引っこ抜くのが面倒であれば/CAS0(16p)のみ足パチして跳ね上げVcc(+5V)を接続(2個とも)しておけば無効化できます。


CPU左下のC46コンデンサはたぶん直径10mmのものが実装されていると思うので、これをキット添付のスリムなコンデンサに交換しておきます。電解コンデンサには極性があるので注意


メモリ基板の裏面にS1985への配線についての説明がプリントされています。これを見ながら作業すると分かりやすいです。4MBメモリとして使うだけなら必要な信号は53pの/SLT30のみです。


添付のジュンフロン線を使い、S1985の53pから/SLT30信号を引き出します。ピッチが細かいので難度はそれなりですが、1本だけなので頑張って半田付けしてください。隣の足とブリッジした場合は慌てずにフラックスやペーストを塗ってやりなおしましょう。

半田付けできたらイソプロパノール(IPA)やフラックスリムーバーで洗浄し、ワイヤーをテープやハックルーなどで固定しておきましょう。IPAはホームセンターのカー用品売り場にあるガソリン水抜き材(100円くらい)で十分です。


手順2:メモリボードの実装

 本基板のICソケットにZ80を挿し込み、メイン基板に増設したソケットにプラグインします。Z80を逆さに取り付けないようにも注意。

先の工程でS1985から引き出した/SLT30は本基板のSLT30(J4)に半田付けしてください。ジャンパー線はこの1本だけです。




MSX2 起動画面

MSX2+ 改造後 起動画面
 正しく改造できていれば電源投入にて起動画面が現れます。メインメモリ容量が表示されるのはMSX2+化改造した場合のみです。MSX2のままであれば改造前と同様にVRAM容量の表示になります。

電源を入れても画面が真っ暗なままであればメモリを認識してていませんので、手順を見直して配線が正しく行われているか確認してください。


MSX-DOSが起動したらメモリにエラーが無いかどうかをチェックします。

こちらのアーカイブ(藤本氏による1MBメモリカートリッジ製作記事)に同梱されているメモリチェッカーを利用できます。00-FF全てのセグメントでエラーがでなければとりあえずOKでしょう。
 完成したあなた、おめでとうございます。キットは基本ノンサポート(返品・返金・補修といった物理的なサポートはしない)とさせて頂きますが、どうしても動作しないとか、更なる改造のヒントが欲しいといった要望がありましたらBBSに書き込んでみてください。





MSX2+化する場合

MSX2+化改造をする場合は28ピンのBASIC ROMを引っこ抜いて32ピンのEPROMソケットを実装します。EPROMの内容についてはお手持ちのMSX2+本体からシステムROMを吸い出して作成してください。

マスクROMとEPROMではピン数と一部のピンの割り当てが異なるので必要に応じてスルーホールをポリイミドテープでマスクします。具体的なピンアサインやROMマッピングについては過去記事を参照してください。

 EPROMソケットも必要に応じて加工します。スルーホールに挿さない足は基板に接触しないように削っています。画像のソケットは2Mb(256kB)の27C020用にA17をプルアップして前半1Mbと後半1Mbを切り替えられるように加工しています。


EPROMには予めMSX2+のシステムROMを書き込んでおき、ROMソケットに挿しこみます。

画像のEPROMはA17をプルアップしてGNDに配線していますので、前半1Mbのみ有効です。例えば後半1Mbに元のA1FのROM内容を焼いておき、A17のワイヤーにスイッチを付けてGNDから切り離せるようにすると改造前の状態(MSX2/OPLLなし/A1コックピットあり)に戻すことができます。

MSX2機をMSX2+に改修する場合はF4レジスタを有効化してください。JP1に半田を盛ってショートすればOKです。

既にF4レジスタが実装されているMSX2+機で本基板を使用する際は、既設のF4レジスタと競合するのでJP1に半田を盛ってはいけません。


システムROMにSONY系のMSX2+BIOSを流用する場合はJP2はオープンのままでOKです。Panasonic系MSX2+BIOSの場合はJP2に半田を盛ってショートしてください。これはBIOSによってF4レジスタ初期値の扱いが異なるためです。詳細は改造記事参照のこと。





FM音源を増設する場合

 

画像クリックで拡大

 空きパターンに上記回路図の通り部品を実装することで、IOポート#7Ch〜#7Dhを通してOPLLにアクセスできます。必要な部品は適当に調達してください。システムからFM音源を認識させるためにはROMが必要です。詳細は改造記事参照のこと。



 フル実装するとこのような状態になります。オペアンプ用の±12V電源と音声信号は左下の4本のピンヘッダからジャンパー線で接続します。


画像の基板はオプションのU8(74HC32)と全てのDRAMを実装しています。8MB〜16MB化する場合は改造記事を参考にしてください。


 HICの7pがGND、18pがオプション用の音声入力端子になっているので、ピンヘッダのGND,SOUNDからワイヤーで接続します。

±12Vについては、スロットの48pが+12V、50pが-12Vになっているので適当なところに接続してください。







回路図


(画像クリックでフルサイズ表示)





追加情報1:ROMパッチ基板が載っている場合

 

 初期のA1FにはシステムROMパッチ用のサブ基板が実装されていることがあります。本基板を実装する上で障害になりますので、除去してEPROMに置き換える必要が生じます。ここではメイン基板をなるべく痛めずにサブ基板を除去する方法を解説します。

メイン基板に手を付ける前にサブ基板を除去するのがポイントです。まずはサブ基板の赤枠で囲ったパターンの半田を半田吸い取り機で吸い取ってください。


 完全に半田を除去したらサブ基板を外しますが、ゴムの直方体に強力に粘着テープで貼りついているので隙間にヘラ等を挿しこんで剥がします。サブ基板のキズを気にしないならマイナスドライバーを使ってもOK。

余談ですが、このROMパッチ基板はFDC-ROMを修正する目的で作られたもののようです。サブ基板のないものと内容比較してみたところ、FDC-ROM以外のバイナリは内蔵ソフトを含めて同一でした。初代A1でも同様のサブ基板が使われているものがあります。マスクROMを作り直すよりもコスト的に有利 だったのでしょう。

メイン基板に残ったピンヘッダはニッパーでピンを切断して(破壊して)連結部を除去します。

画像赤枠のように各ピンが独立してメインボードに突き刺さった状態になりますので、1本ずつパターン面から半田ごてで加熱しながら、ピンセットやラジオペンチを使って部品面からピンを引っこ抜いてください。


残ったゴムのカタマリも適当に除去しますが、メイン基板にキズをつけないように注意。マイナスドライバーは使わず、プラスチック製のヘラ等を使いましょう。

ROM手前に横倒しになっている電解コンデンサは邪魔になるので除去します。メイン基板のC46に本キットに付属するコンデンサを実装すれば問題ありません。







追加情報2:A1F以外での使用

 

 初代FS-A1に実装してみました。CPU近傍の大きめの電解コンデンサが干渉したので除去しています。代わりのコンデンサはなくてもとりあえず4MBメモリとして動作しました。ROMを差し替えてOPLLを実装すればFM音源も機能すると思います。VDPを交換すればMSX2+化もできそうに思いますが、漢字ROMの増設がネックとなります。この状態でキーボードと干渉することなくケースに収納できました。







SONYのHB-F1XV(F1XDJも同じ)に搭載してみました。とりあえず基板上の構造物とは干渉せず4MBメモリとして機能しました。ただし、キーボードと干渉するため、元のガワには収まらなくなります。

他のMSXでもZ80搭載機で、メインRAMのスロットセレクト信号が取得でき、既存の構造物と干渉せずにCPU下駄に載るのなら使用可能と思いますが、実際に載るかどうかは各自検証の上、自己責任にてお願いします。

なお、PanasonicのFS-A1FM以降の機種(FS-A1FM/FX/WX/WSX/ST/GT)やSANYOのMSX2+機はZ80非搭載(T9769搭載)のため、本基板は使えません。




 お約束ですが、この記事を見て修理・改造などを行い故障やその他問題が発生しても当方は責任を負いません。各自の責任において情報を広く集めて行うことをおすすめします。

この記事の内容は個人の憶測や見解の誤りを含んでいる可能性があります。内容についてメーカー各社に問い合わせるのは止めましょう。


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