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〜 SEGA MARK III OPLL増設基板 クイック改造マニュアル〜


 改造記事本編はコチラ→(前編) (後編)


SEGA MARK III OPLL増設基板
 これはSEGA MARKIIIにFM音源(OPLL)を内部増設する改造キットです。純正FMサウンドユニットの弱点を克服し、RGB信号との共存、DCSG+OPLLの同時発音、ワンタッチのFM音源無効化を実現しました。また、CPUを高速版Z80に換装することによって3倍速クロックアップも可能になっています。

  キットの内容物は画像の通りです。製品は家電のKENちゃんさんを通して頒布しますが、品切れの際はご容赦ください。
 
 この記事では無改造状態のSEGA MARK III (以下MK3)にOPLL増設基板を取り付ける手順を解説します。


ご注意

 改造にはそれなりの電子工作のスキルが必要です。目安としては、片面基板のDIPパッケージのICを無傷で外せる程度です。作業には一般的な半田付け用の工具が必要で、特に半田吸い取り器は必須です(シュッポン吸い取り器でOK)。内部配線用のワイヤーは添付しませんので各自で用意してください。3倍速クロックアップ機能を使う場合は、高速クロック対応のCPUが別途必要です。

 本改造キットにアフターサポートはありません。この記事を最後までお読みいただき、ご自分のスキルで取り付け可能と思われた方のみお買い上げください。
早速改造に着手します。最初にプラスドライバーで底面の6本のネジを外し、トップカバーを開けてください。




 トップカバーには「MY CARDスロット」がネジ止めされていますので、隙間からドライバーを挿しこんで両端の黒いネジを外して下さい。



 ケースからメインボードを取り出します。先にカートリッジスロットのネジ2本を外してから、2か所のツメを外します。ツメはかなり固いと思いますが、ひっかかり部分をカッターや彫刻刀で少し削ってやると外しやすくなります。



CPUをソケット化する
 メインボードに実装されているCPUを取り外します。半田吸い取り線は使わず、半田吸い取り器を使ってください。40本全てのピンがパターンから浮いた状態になってからCPUを引っこ抜きましょう。

 外したCPUは再利用するので足をクリーニングしておいてください。できるだけ残った半田は吸い取っておき、フラックスやペーストを利用して半田ごてで温めると表面が滑らかになります。ヤニは、IPA(イソプロパノール)を浸した綿棒で拭き取るとよいです。

メインボード側も同様にクリーニングし、パターンの損傷がないことを確認しておきましょう。

 キット付属のICソケットをCPU跡地に挿しこみます。ソケットの切欠きが左を向くように、各ピンが穴の奥まで刺さった状態で半田付けしてください。ソケットが浮いた状態で半田付けするとパターン剥離の原因になります

手前のC22は邪魔になるので横倒しにしておきましょう。



ワイヤーの接続
 OPLL増設基板のジャンパーピンに7本のワイヤーを接続します。ワイヤーはキットに添付しませんので各自で用意してください。

以下に各信号の取り出しポイントを解説します。
 JOYSEL信号はIC10(74LS32)の1pです。IC10はカートリッジスロットの左上にあります。
パターン面から見るとこのようになっています。1pにワイヤーを接続します。
TRIG_A、TRIG_B1プレーヤー側ジョイパッドのトリガ―信号に接続します。

TRIG_AがFM音源無効のトリガ―、TRIG_Bが高速クロック起動のトリガ―信号になります。

先の手順で取り外したCPUを再利用する場合は、高速クロック起動はできませんのでTRIG_Bを接続しないでください。
VDP_CLKVDP(315-512)の31pに接続します。基板の未使用パターンの穴を利用してなるべくワイヤーを短く配線してください。
 DCSGINMIX OUTの2本を左画像のポイントに接続します。

 画像の位置1か所をカッターで削ってパターンカットしてください。これでDCSGINとMIX OUTが分離されます。
GNDはヒートシンクの下に隠れているG1〜G3の適当なところに接続すれば良いでしょう。


ワイヤーは使われていない部品の穴を利用して表面に引き出すとよいです。適当な長さにカットしてキット付属のピンソケットに半田付けしてください。

接合部を熱収縮チューブ(キットには添付していません)で保護すると良いです。


OPLL増設基板とCPUの取り付け


 OPLL増設基板をメインボードに取り付けたICソケットに装着してください。ピンが曲がらないように上からまっすぐに差し込みます。

 後から基板を引っこ抜く時はピンを曲げやすいので特に注意してください。ピンは数回曲げ伸ばしをすると折れます。折れると修復がかなり困難です。
 OPLL増設基板のソケットにCPUを差し込みます。
クロックアップ機能を使わない場合は、元のCPUを再利用できます。


CPU換装
クロックアップ機能を使う場合は高速クロック対応のZ80互換CPUが必要です。上3つは3.58MHz品なのでクロックアップに対応していません。

TOSHIBA TMPZ84C00AP-8は8MHz品です。この個体はヤフオクで入手したもので、10.74MHzでも動作しましたが定格外の使用になります。

Zilog Z84C0010PEGは10MHz品です。MOUSERで入手したもので10.74MHzでも動作しました。2021年9月現在Digikeyやマルツでも購入できます。
 

2021.10.8追記

 Mk3メインボードに左画像のダイオードが実装されていると、換装した高クロックCPUが動作しないという報告がBBSにありました。CPUを換装する場合はこのダイオードを除去してジャンパー線でショートしてください。

 このダイオードが実装されているとCPU駆動電圧が約0.8V低下し、CPUが定格外動作になります。元々実装されていたZ80互換CPU(uPD780-1)は動作するようですが、換装するCPUによっては4.2Vでは電圧不足で動作できないことがあるようです。

 このダイオードの存在理由など、詳しいことは改造記事後編に記載しています。レトロ堂さん情報提供ありがとうございました。





起動時の設定

トリガー
FM音源
クロック
押下なし

3.58MHz
A

3.58MHz
B

10.74MHz
A+B

10.74MHz

 1プレーヤー側のトリガーボタンを押しながら電源を投入することで、FM音源の無効化とクロック設定が可能です。何も押さなければFM音源有効、ノーマルクロックです。A(1)ボタン押下でFM音源無効。B(2)ボタン押下で高速クロックで起動します。高速クロックでの動作中は、OPLL増設基板上のLEDが光ります。

OPLL増設基板の半固定抵抗でOPLLサウンドのボリウムを調整できます。DCSGサウンドと同じくらいの音量になるように調整してください。

うまく動かない時はメインボードのCPU周りのパターンを痛めていないか、配線は正しく繋がっているか、半田が隣とブリッジしていないか等確認してください。

設定通りに機能することが確認できたら、分解と逆の手順でケースを閉じてください。完成したあなた、おめでとうございます。





姉妹品 似非SGROMのご紹介
 高速クロックで動作させる場合、MK3の純正ソフトではマスクROMが速度に追従できないことがあるようです。

 そのような場合、ROMデータを吸い出して似非SGROMに書き写すことで動作可能になることがあります。すべてのソフトで動作を保証するものではありません。

こちらの作品も家電のKENちゃんさんを通じて頒布します。品切れの際はご容赦ください。


 お約束ですが、この記事を見て修理・改造などを行い故障やその他問題が発生しても当方は責任を負いません。各自の責任において情報を広く集めて行うことをおすすめします。

この記事の内容は個人の憶測や見解の誤りを含んでいる可能性があります。内容についてメーカー各社に問い合わせるのは止めましょう。


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