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LVDS壁掛け液晶モニタの制作

IBM一体型PC用 液晶モニタ

CoCoNet液晶工房 A-200K+チューナーユニット

 半年以上前にDO-夢で捕獲した15インチLVDS液晶(¥2980)を利用して、壁掛けモニターを制作してみました。信号仕様やコネクタをPCVA-141LAPアーム式LCD2号機と共通にしましたので、相互に差し替えて利用可能ですし、先日制作したA-200K&チューナー内蔵のインターフェイスBOXを使えば壁掛けテレビとしても使えるという便利な代物です。


今回の生け贄君

 今回のブツは、IBMの法人向け一体型PCで使われていた液晶パネル部分ですが、どうやら元はこんなPCだったようです。このスタイルのPCはMMX Pentiumの時代からあるらしく、内部のパネルも何種類かありそうです。見た目が同じでもLVDS 1ch 6bit液晶とは限らないので入手する際には注意が必要かも知れません。

 この液晶パネル部分のみがDO−夢(札幌)2980円で売られているという情報を頂きましたので調べてみたところ、内部にNECNL10276AC30-04というパネルが入っているらしいことが分かりました。データシートにはLVDS 1ch 6bitと記載されているので、運が良ければA-200Kで使えるかも知れません。使えれば2980円は非常に魅力的なお値段です。買い逃すと後悔しそうなので吹雪の中、車で買ってきました

LCDパネル

早速開腹。入っていたパネルは情報通りのNEC製のやつでした。デスクトップ用のパネルなので、これまでウチで扱ってきたノート用LCDよりも一回り大きく、重くて厚みもあります。

店には段ボール箱に15個くらい縦に並べられて入ってました。どれも同じように見えましたが、聴く所によると同じ売り場に日立製のパネルが入った物もあったそうです。どちらが映りの良いパネルだったのか、気になるところですが。

NL10276AC30-04

型番は、NL10276AC30-04で、どうやら国産品みたいです。この液晶は数少ないフルバージョンのデータシートの入手できる優良パネルだったりします。信号規格やピンアサイン等も記されているので、それに合わせて接続すればOK。解析作業をしなくて済むのでラクチンです。LCDのスペックはデータシートによるとコントラスト比400:1、視野角上下45度、左右55度、輝度200cd/m2だそうです。

 現在流通している液晶パネルは膨大な種類がありますが、データシートがネットに落ちているものはほんの一部のパネルだけです。型番ズバリのデータシートは見つからないのがアタリマエで、たまに見つかったかと思えばパネルのサイズとか基本スペックを記しただけのものだったりすることもしばしば。近似型番のものが見つかることもありますが、1文字違っただけで、まったく異なるインターフェイスだったりもするので参考にしかなりません。仕方ないので、回路を解析してピンアサインを推測したりするわけで、アームモニタ2号機ではそうやってPCに繋いでいます。

リサイクルされることを考慮して、メーカー側にはもっとデータシートを公開して貰いたいものですが。

LCDパネルの信号処理基板

NL10276AC30シリーズのLCDパネルにはいくつかのリビジョンがあるようなので、信号処理基板を付け替えることでいくつかのインターフェイスに対応するように設計されているんじゃないかと思います。

今回入手したパネルには、LVDSレシーバを含んだ基板が付いておりました。

LVDSレシーバ&コネクタ

LVDSレシーバは THine THC63LVDF64A と表記されています。データシートによると、LVDS 1ch 6bit のレシーバみたいです。LVDS信号をデジタルRGBに変換するものです。

CoCoNetのA-200Kには同じTHineのLVDSトランスミッタが載っているので、相性もバッチリ?

LCDパネルのピンアサイン

データシートより抜粋。

信号入力はLVDSではおなじみのJAE20pコネクタですが、こいつはピンアサインが逆順なので注意が必要です。特に電源の正負が逆なので、A-200Kと同じ配列で繋ぐと回路が破壊されます。ちなみに電源電圧は+5V

インバータのピンアサイン

データシートより抜粋。とりあえず電源だけ入力しておけば最大輝度で光ります。ON/OFF制御は8P、調光は9,10Pを使います。
インバータ

このパネルはインバータ込みで一つの製品のようで、インバータ基板があらかじめパネルにネジ止めされています。

バックライトは上下に1灯ずつで合計2灯。データシートにインバータのピンアサインも載っており、それによると輝度調整には電圧、もしくは可変抵抗による調整が可能とされていました。

電圧によるコントロールはマイコン制御する場合に使うモードでしょう。ここは可変抵抗を使うのがラクそうです。まぁ、高々200cd/m2なので最大輝度固定でも構わないような気もしますけど。

調光回路はデータシート通りの回路で組みました。

A-200Kでテスト表示

とりあえずデータシートに載っていたピンアサインを元に、A-200Kを繋いでテストしてみました。パネルの電源は+5Vなので、A-200Kの電圧設定ジャンパピンを5V側に挿しています。その他は同名信号同士を繋いでいるだけです。バックライトはとりあえずインバータに+12Vを供給してやれば、最大輝度で光ります。

PCのVGAに繋いでみたところ、こんな感じにバッチリ映ってます。視野角は広いとは言えませんが、あまり狭くもない模様。

A-200Kで使えることが分かったので、これを先日制作したインターフェイスBOXを使ってTV化することにしました。直接A-200Kに繋ぐのが一番ラクチンですが、ジャンクマザーPCやTVチューナーなどいろいろ繋ぎ替えて使うことも考えて、PCVA-141LAPと同等の仕様のLVDSモニタに仕上げます。すなわち電源回路、オーディオ回路を制作し、PCVA-141LAP準拠のコネクタを増設することになります。


スイッチングレギュレータ

まず、電源回路の制作ですが、LCDパネルの電源が+5Vで、入力電圧が+12Vなので、+12V→+5Vへ降圧しないとなりません。

降圧には3端子レギュレータを使うのが一番簡単ですが、アレは電圧の差分を熱として捨てるので、このパネルで使った場合は12-5V x MAX600mA = 4.2W の熱量が発生します。かなり発熱するので冷却には大型のヒートシンクが必要になる上に、電力も無駄になってしまいます。

 それを解決するために、効率のよいスイッチングレギュレータを使うわけですが、普通にパーツを揃えようとするとレギュレータICや低ESR電解コンデンサ、高周波用コイル、高速整流素子(ダイオード)を入手しないとならず、あんまり一般的な部品でないために結構敷居が高かったりします。

今回は秋月電子で売られている新電元のスイッチングレギュレータモジュール「HPH05001M」を利用することにしました。これは、ハイブリッドスイッチングレギュレータIC、高周波用コイル、ヒートシンクがワンパッケージになっている製品で、外付けの電解コンデンサ(低ESR品が必要)を付けるだけでスイッチングレギュレータとして動作するスグレモノです。しかも200円と非常に安価。難点はサイズが大きいことくらいでしょうか。本来+24V入力で使うように作られているようですが、+12V入力でも綺麗な+5Vが得られています。

秋月では、これの+12V出力版や2A版(ヒートシンクがデカい)なども扱っています。残念ながら通販カタログには12V 2A版しか無いようですが…。

電源制御回路

A-200KやPCからの電源制御信号を受けて、液晶パネルの電源やインバータ、インジケータLED、アンプ回路の電源制御するための回路を作成しました。

回路そのものはPCVA-141LAPの改造で増設したものとほとんど同じです。

ロジックICの74HC04とトランジスタを使ってリレー(LCD電源用)をスイッチしてます。もう一個のトランジスタはオーディオアンプのミュート信号用です。

パターン面はこんな具合。この基板で作っているのは下記信号。

入力信号
+12V入力 ACアダプタから
+5V入力 スイッチングレギュレータから
電源制御信号入力 PC、またはA-200Kから

出力信号
power LED出力  緑LEDへ
suspend LED出力 橙LEDへ
+5V出力(リレーを経由) LCD+5V電源へ
バックライト on/off インバータへ
オーディオ on/off アンプICのミュート端子へ


再びテスト

作成した電源回路を使い、インターフェイスBOX(TVチューナーモード)に繋いでみました。ご覧のように綺麗に映ってます。特にノイズが載る様子もないので、+5V電源は綺麗に出ているみたいです。数十分動作させてHPH05001Mの温度をチェックしてみましたが、驚くほどぬるいです。体温より低い感じで安定してます。


オーディオアンプ

オーディオアンプ回路は、自前で制作しても良いのですが、今回はISAバスのサウンドブラスター(SB16)のアンプ回路を利用することにしました。今更のISAバスの製品なので、ジャンク屋に逝けば二束三文で転がっています。この基板もどこかのジャンク屋で100円くらいで買ったものです。

ちなみにこのクラスの回路を普通にアンプICを使って自前で作成すると、なんだかんだで1000円くらいかかってしまうと思います。ステレオミニジャックが4個小型ステレオオーディオアンプ回路が収穫できて100円はお買い得でしょう。画像のものは既にステレオミニジャックx4を収穫後です。四角で囲ったところが今回利用する部分です。

TDA1517P

オーディオアンプICとしては、VAIO専用液晶でも使われているPhilips の TDA1517Pです。WEBにデータシートも転がっているので手軽に利用できます。

SB16の基板には、アンプ回路を構成するのに必要なコンデンサも載っているので、これらを含めて基板を切り出して利用します。ちなみにICだけ外そうとしても、GNDが強力に半田付けされているのではんだコテで暖める程度では無傷で剥がせないと思います(ていうか、無理でした)。まずは金鋸で切り込みを入れ(邪魔なパーツが有る場合は外しておく)、Pカッターで溝を掘ってパキっと折りました。

配線

こんな感じに切り出しました。データシート通りに+12V電源と音声信号を入力し、スピーカーを繋げるだけで音が出ます。自前で回路を作るより安くて簡単、しかもコンパクトです。

かなりイイ感じで利用できるので、ジャンク屋に逝くとSB16を探すクセがついてしまいました。とはいえ、全てのSB16にTDA1517Pが載っているわけではないし(他のアンプIC採用製品もあり)、アンプ回路自体が無いサウンドボードも多いので捕獲する場合は注意が必要です。

音声回路のテスト

テストとしてこんな感じに繋いでみました。ポケットサイズのMP3プレーヤーを繋いで、富士通のLCDモニタ用スピーカー(GENOで買ったやつ)で鳴らしてみました。ちなみにこのスピーカー、エンクロージャの容積はそこそこですが、組み込まれているスピーカーがへっぽこ(ノートPC用と同じ)なので低音がイマイチ出ません。容積がある分ノートPC用よりはマシ、という程度です。

ちなみにボリウムコントロールには5kΩ、Bカーブの2連可変抵抗を入力段に噛ましてます。こんな回路でも、LCDモニタ内蔵スピーカーとしては必要にして十分な出力が得られるようです。

実際に使うスピーカーはこれ。今は亡き現品.comで売られていたジャンクスピーカーです。例によって現品の中の人は北海道の人に売ってくれないので、魔流さんに代理購入をお願いしちゃいました。

これ、エンクロージャーの出来が良いのか、サイズの割になかなか素晴らしい音が出ます。PCVA-15XTAP等に内蔵されているものと同等の音質だと思います。

難点は、この複雑な形状。一体どういう製品に採用されていたんでしょうかね。あっちこっちデコボコしているので、組み込みには工夫が必要です。
配置

モニタ内部のスペースはそれほど広くないので、よく考えて位置決めしないとなりません。いろいろ検討しましたが、こんな感じに配置すればなんとか組み込めそうです。元々、LCD裏側全体を覆うように鉄製のシールドカバーが付いていたのですが、スピーカーと共存出来そうもないので、シールドカバーは廃棄することに。

また、矢印の位置でインバータのカバーと干渉してしまうので、こっちも外しました。

ケース加工

スピーカーを収容する際にどうしても高さが足りなくなるので、ケースに穴を開けて出っ張らせてみました。

ケースの加工ですが、まずPカッターで四角く切れ込みを入れて、ある程度の深さまで彫り込んだ後で、ミニルーターの回転鋸で切り出しました。板ヤスリで綺麗に仕上げてから、穴の大きさに合わせてパンチングシートを切り出し、曲げ加工してはめ込んでます。スピーカーの振動でブレたりしないようにサイズ合わせはシビアにやってます。ちなみにパンチングシートは以前にも使ったダイソーのやつ(もちろん100円)です。

スピーカーの出っ張り

ガワから後方に3mmほど出っ張ってますが、これでギリギリ収納できます。
貼り付け

パンチングシートをホットボンドで貼り付けた上でスピーカーもホットボンドで固定しました。
ボリウムコントロール

穴開け

固定&スペーサー金具

固定後
元々輝度調整用の押しボタン(+・−の2個)が付いていた部分に輝度調整と音声ボリウムコントロール用の可変抵抗を仕込んでみました。VR固定用&スペーサーの目的でアルミ板を2枚(1mm厚+2mm厚)を加工してます。テキトーな端材を使っているので角が斜めだったりしますが、気にしない気にしない。
背面端子

外側

内側

壁掛けモニタなので、背面のコネクタは下向きに出しました。コネクタ固定のためにL字不均等アングルを使ってます。12インチLCDモニタの製作で使ったアングルの端材を利用しました。ケースにスペーサーを立てて固定してます。そこにつり下げ用の金具を共締めにしてます。

ここに付いているコネクタは+12V電源入力用のDCコネクタと、LVDS入力用のハーフピッチアンフェノール20Pメスです(今回も故ディレクTVチューナー基板から収穫)。ピン配列や接続ケーブルはアームモニタ2号機と共通にしてあります。電源は、DCコネクタと20pコネクタのどちらからでも入力できるようになっています。

基板等の固定

電源制御基板とオーディオアンプ基板を13mmスペーサーを使って固定しました。

スペースにはある程度余裕がありますが、安全のために基板のパターン面と対面するLCDパネル部分には絶縁用に塩ビのシートを貼り付けました。

スイッチングレギュレータはホットボンドで固定。コンデンサもくっつけてしまいました。レギュレータの発熱が少ないのでホットボンドでも問題ないと思います。

ケース内側

結局増設した部分は全てケースの内側に貼り付ける形になりました。LCDパネルとは、LVDSケーブル(JAE20Pコネクタ)と、インバータに付いていたコネクタを挿すだけで繋がります。


完成!

コネクタをLCDパネルに繋いでネジ止めすれば完成。背面はこんな感じに仕上がりました。スピーカーのコーンの位置が左右非対称ですが、気にしない(どうしようもない)。

インターフェイスBOXとは自作ケーブル一本で繋がります(電源も一緒に供給される)。PCと接続する場合は、DCコネクタに+12VのACアダプタを繋いで使います。

表側

表側の改造前後での違いは、インジケータLEDが増設されたこととボリウムコントロールツマミが増設されたことだけです。

IBMロゴそのまんまだとダサい(失礼)ので、削り取って塗装する予定です。

総評

 製作期間およそ3週間で完成。壁掛けTVとして使おうと思って作ったのですが、よくよく考えたらこのパネルを掛けられるような壁がありませんでした。とりあえず撮影用に戸棚のツマミに引っかけてます。

映りとしては、可もなく不可もなくといった印象。明るさは2灯なのでそれなりで、実用上は十分だとは思いますが、最近の高輝度液晶に見慣れてくると、ちょっと暗い気もします。色合い、視野角も最近のものよりはやっぱり劣ります。それでもVAIO Lシリーズの時代のLCDよりは見やすい映像ですけどね。

では、お約束の制作コストを計算します。

品目

価格

備考
パネル

2980円

筐体込み
電源制御回路

約400円

接続ケーブル

1280円

DFPケーブル改造品
アンプ回路

100円

SB16利用
スピーカー

200円

ジャンク
スピーカー用グリル

100円

ダイソーのパンチメタル
その他コネクタ、ネジ等

約1000円

合計6060円

パネルが安く手に入ったので、それなりに安価に制作できました。LVDS専用なので汎用性は低いですが、一応このまま自作ジャンクマザーPCに繋がりますし、インターフェイスBOXに繋いでTV化しても2万円程度なのでまぁまぁでしょうか。

 ちなみに完成したモニタの重量は3kg弱で、結構重いです。よってデータホルダーの腕を利用したアーム式化は無理。市販のアームを付ければ可能でしょうが、モニタよりもアームのほうが高くつくでしょうねぇ…。

そろそろLVDS液晶は飽和状態になってきたので、このあたりで打ち止めにするつもりです。


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