にがゲーム機

〜ジャンクPS2でWEBサーバーを〜

作戦その1<ジャンクPS2を修理セヨ!>


 SONY PlayStation 2 Linux kit

4ヶ月動き続けたPS2サーバー

4ヶ月弱連続稼動したPS2Linuxサーバー(SCPH-30000)

 当「にがHP」はH13.12.2からPS2Linuxサーバーで運営しています。機体はSCPH-30000。以前にジャンクを2万円で購入し、修理を試みたところ、ピックアップが死亡していた(DVD読み込み不能)ため、たまたま手持ちにあった正常なピックアップユニットを移植して完全復活させたものです。詳しいいきさつは、ここここを参照のこと。

 さて、PS2では最近DVDだけ読めなくなる故障が頻発しています。特に製造後1年以上経過したものに多発しているようで、ヤフオクのPS2ジャンク市場を見ても、やたらDVDだけ読めないジャンクが出品されているのが目立ちます。過去の経験から考えると、DVDが読めないジャンクはピックアップそのものが死亡しており、調整では直らないことが多いです。実際ヤフオクでも、「調整しても直らなかった」等の商品説明が付記されていることもあります。

 そう、察しのよい方ならお分かりかと思います。これが有名な「ソニィタイマー」というやつです。PS2のタイマーはなんと、ピックアップユニットに仕込まれていたのです。あんな小さな部品に1年タイマーを仕込むとは恐るべき技術力さすが世界のソニィ。そんじょそこらのメーカーには出来ない芸当だねっ★…ハァ

今回、当サイトの読者の方から提供いただいたジャンクPS2(SCPH-30000)を補修し、DVD読み込み不能の状態にもかかわらずWEBサーバーとして稼動させることに成功したのでその顛末をレポートします。

ことの始まりは一通のメール

例によって改造失敗し、壊してしまいました。。
とあるところに、修理を依頼したのですが、結果基盤がいたんでるので
修復不可といって帰ってきました。
よろしかったら、どこがどういう風に故障しているのか見ていただけないでしょうか?
あつかましいお願いをしているので申し訳ないです。

直りましても、差し上げますのでどうでしょうか。

新しいPS2を普通に買いますので

Sさんという読者の方からこういう内容のメールが届きました。弄りがいのあるオモチャを提供してもらって、直ってもそのまま貰えちゃうなんて、なんておいしい話なんでしょ。

 また、「とあるところに修理を依頼したが、修復不可で帰ってきた」という下りも気になるところです。改造失敗のPS2はメーカーサービスでは有償無償に関わらず修理を拒否されるのが常識です(そんな冷酷なサービス体制はSCEIだけでしょうが)。従って、民間の業者に依頼したと思われますが、そこで修復不能といわれたわけです。いわば修理のプロに「直せない」と言われたPS2が果たして直るのか。これは一種の挑戦です。プロへの挑戦。なんだかモーレツにやる気出てきました

 「あつかましいお願い」だなんてとんでもない。まったくもって有り難いことです。感謝感謝。というわけで、この申し出は有り難く受けました。

バラして故障個所を観察

 着払い便で送ってもらって届いたブツを早速分解。SCPH-30000は従来型と比べてバラしにくいですが、慣れれば楽勝です。故障個所を把握するために基板をよーく観察します。チップヒューズの類もテスターでチェック。改造で弄るポイントも改造系サイトで調べてパターンの剥離や部品の紛失などが無いか観察します。ちなみにこの機体は前オーナーによるとUSB-MOD用の配線を施すつもりで分解したらしいです。よって、USB-MODを取り付ける際に弄るパターンの周囲もよく観察します。

ショートランドの処理を忘れずに!(重要)

前にSCPH-30000修理記事で書きましたが、ピックアップユニットをメイン基板から取り外す前には必ずショートランドに半田を盛っておかなければなりません。この2カ所です。向かい合った半月状のパターンを半田でショートしておきます。必ずフレキケーブルを外すに盛っておくこと!でないと何かの拍子でピックアップが静電気でやられちゃうそうです。

どうも世間ではSCPH-30000/35000の改造後にDVDを読めなくしてしまう人が多いようです。私見ですが、たぶん、ショートランドに半田を盛らずに安易にピックアップユニットのコネクタを外してしまい、静電気で死亡させている例が多いのではないかと思います。

ピックアップのフレキ用コネクタ

ちなみに残念ながら今回の機体では、メイン基板上のピックアップへ繋がるコネクタが壊れており、固定用の押さえが外れていました。当然ショートランドに半田は盛られていない状態でフレキが解放されているので、その時点でピックアップがご臨終している可能性があります。まぁ、こればっかりは動作検証してみないと分かりませんけど。

不幸中の幸い、外れてしまった固定具(茶色いやつ)も一緒に送られてきたため、こんな感じに補修してみました。横のプラスチックが折れかけていましたので注意深くホットボンドで固めました。これできちんとフレキを固定できるようになっています。

この固定具がなかったらかなり辛かったところです。何しろこのコネクタのピンのピッチは半端じゃなく狭いですから。全てワイヤーで結線することを考えたらゾッとします。

スイッチパネル用コネクタ

もう一カ所、リセットボタンなどに繋がるコネクタが壊れています。固定具が外れているのみならず、前オーナーが接着剤で付けようとした跡が見受けられます。接点自体が接着剤に埋まってしまっているのでこのままではこのコネクタは使えませんね。

実に頼りないヘロヘロなフレキ

SCPH-30000からは、スイッチパネルに通じるフレキがご覧のようなヘロヘロなものに変更されてしまいました。トップカバーを乱暴に開けると容易に切れてしまいそうです。実際、分解した際にダメにしてしまう人が後を絶たないようで…。

こんなフレキで補修しても、将来的にまた切れたりしそうなので、今回はこのヘロヘロなフレキには見切りを付けて、自前で結線することにしました。

それにしても、このフレキ。安易に分解したユーザーが壊すようにわざわざヘロヘロなパーツを使っているように見えますが…。

フレキもどきの作成

てなわけで、自前でフレキもどきを作成します。元のフレキと同じ長さになるように、0.26mmのラッピングワイヤーを束ねてセロテープでコーティングしてみます。

セロテープ上にラッピングワイヤー7本平行にを並べて上からセロテープを貼ってサンドイッチにしました。

メイン基板へは取り出しやすいポイントを狙って配線。ワイヤーを引っ張ったときの張力が一点に集中しないように基板とフレキもどきをホットボンドで固定しました。

スイッチパネル上にも配線。上からボタンを取り付けたときに邪魔にならない位置にワイヤーを這わせます。

というわけで、こんな感じに結線されました。なかなかフレキっぽくてイイ感じです。

スイッチパネルの加工

スイッチパネルの上からボタンを取り付けて固定。ワイヤーに無理な負荷がかからないようにします。この後、メイン基板側と同様にここもホットボンドで固めて引っ張り負荷が一点集中しないようにしました。

ハッキリ言ってこの自前のフレキもどきのほうが、元のヘロヘロなフレキより数段丈夫だと思います。

いよいよ起動〜

フレキもどきをこんな感じに折り曲げて固定。ピックアップのショートランドに盛った半田を除去したらいよいよ電源投入です。ワクワク。

電源投入! 電源ランプ、トレイ出し入れ、青色LED点滅すべてOK! ディスク読み込み! 読み込み! 読みこ…。読まねぇ…。ぐはぁ。

もしやピックアップ死亡??

ガ━━━━━━━━(゚Д゚;)━━━━━━━━ン!


レンズクリーニング

試してみたところDVDはおろか、CDも読めませんでした。一応念のためにレンズクリーニングなどしてみたりします。無駄かもしれませんが。

半固定抵抗調整

前オーナーに問い合わせたところ、どうもピックアップの半固定抵抗を弄ったらしい。なのでこいつを回して復活を試みます。この写真では奥のがDVD用、手前がCD用です。

ちなみにこれを回しすぎるとピックアップそのものが死亡してしまうようです。世間では無理に調整しようとして再起不能にしてしまう人が後を絶たないようで…。ていうか、回しすぎて壊れるような抵抗値の部品を載せておくとは、一体どういう設計なんだ、ソニィよ。わざとやってるんじゃないのか。フェイルセーフ?なにそれ。

でこれらの半固定抵抗を少しずつ回してトライ&エラーを繰り返して、なんとかCDは安定して読めるようにできました。しかし、DVDがどうにも読めず…。聴くところによると、DVD用の半固定抵抗は「2時の位置」からさらに右に回すと破壊される可能性が高くなるそうです。経験上、CD用の半固定抵抗は回しすぎでも簡単には壊れないようですが、DVD用の半固定抵抗を弄るのは最後の手段にしたほうが良さそうです。

 結論として、このPS2はDVD用のレーザーが死亡しており、これ以上の修復は不可能ということとなってしまいました。ピックアップそのものの補修は不可能で、直すためには交換パーツが必要です。しかし、一般家電と違ってSCEIはパーツの販売をしてくれないので、ユーザーが補修部品を入手することは不可能。しかも、SCPH-18000以降は本体に分解禁止シールが貼ってあり、目的が何であれ一度シールが剥がされた製品の修理は一切拒否されるので、メーカー修理に出すわけにも行きません。従って、この機体を復活させる術は、他のジャンク機からのピックアップユニットの移植以外にありません。

 世間ではPS2のピックアップはよくダメになるうえに、メーカーが売ってくれないので、実に入手は困難です。新品での入手はまず無理で、ヤフオクでも中古品が高額で取り引きされているようですし、海外の通販ショップでも品薄かつ高価です。この状況はなんとかならないものでしょうか。壊れやすい製品を作っておきながら、修理は拒否、部品も売らん、というサービス体制には大いに疑問を感じます。故障して自力修理を試みてダメだったらその機体はゴミになってしまうわけです。パーツを交換すれば直ることが分かっているにも拘わらず。メーカーに言わせたら「新品を買い直せ」ってことなのでしょうか。それでいいのか。いやよくない。よくないに決まっている!


USB-MOD仕様にする

 完全復活が出来ず、実に悔しいので、SCEIに対するささやかなる抵抗として、前オーナーが成しえなかったUSB-MOD用の配線を施しておきます。Neokey.hexが使えるようにするやつです。配線はたったの1本。楽勝…かと思いきや。

意外と細かいッス

2カ所に半田付けするのですが、一方はチップコンデンサの一端に半田付けします。

これが結構込み入っているところの半田付けで、30Wのコテだとブリッジを作ってしまいそうです。安全な作業のためにはコテ先の尖った20Wのコテが欲しいところ。

USB端子側の配線ですが、こちらはチップフィルターの一端に半田付け。カナーリ細かいですのでこちらも20Wのコテで作業。

正直言って、半田付け初心者がいきなりやるような作業じゃないです。


組み立て

てなわけで、できることは全てやったのでバラした筐体を元に戻します。

SCPH-30000は構造が複雑なので付け忘れしやすいネジが多いです。これらをメモ的意味で載せておきます。

これはAV出力端子付近のネジ。

電源スイッチ、ファンの付いたパネルを固定するネジ。

電源ユニット下の絶縁用?の黒い板(小さい方)。これ、最初はどこに付くのか分からなかった…。

コントローラー用端子を固定するネジ2カ所。


作戦その1完了(総評と予告)

これにて、このPS2の補修は完了とします。DVDが読めるようにならなかったのは実に残念ですが、パーツが手に入らない以上これ以上の補修は不可能です。

 何度も書いてますが、やはり原因が分かっているのに直せないのは悔しくて仕方ないですね。言ってみれば、治療薬があるのが分かっているのに家が貧しくて医療が受けられない(何時の時代の話だよ)、とか、臓器移植すれば助かるのに、国内では移植が受けられない、とかそんな感じでしょうか。SCEIのサービス体制が変わらない限り、この機体が完全復活することはないでしょう。

 ちなみに、前オーナーが修理に出した業者は、その筋では有名なMODチップ系サイトをやっている業者さんのようでした。成功報酬5000円でやっているそうですが、今回の作業は5000円でペイしない内容と判断したのでしょうか。それともピックアップが死亡していることが分かったので諦めたのでしょうか、真相は分かりませんが、たぶん、フレキの補修が面倒だっただけじゃないかと思ったりします。ピックアップの半固定抵抗の位置もいい加減なままでしたから。

 さて、そんな折り、GALAXIES.jpの管理人のよしさんのPS2LinuxサーバーがDVD読みとり不能のために再起動後に帰って来れなくなったとの書き込みが当サイトのBBSにありました。PS2Linuxの起動用ディスクはDVDです。よってDVDが読めないと起動できないのです。いまさら修理に1万円も出すのがイヤだそうで、復活できる見込みは無いとのこと…。別のマシンで運営は続けているようですが、なんとかPS2サーバーで復活させてあげられないか、と考えたところ、Linuxの起動用DVDのブート部分だけCD−Rに変換できないか?、という考えが浮かびました。PS2Linuxの本体はHDDに入っているので、うまく起動さえできてしまえば、DVDを読めなくても運用は可能なはず。そして、海外では、DOA2等のDVDゲームをCD-Rに変換して遊んでいる猛者がいます。どうにかすればこれは行けるはず!

ということで、PS2LinuxをCD−Rでブートする作戦を開始します。次回へ続く!


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