このblogを読み返すと自分がPS3を購入したのが2006年11月になっているから、PS3はいつの間にか発売から3年は経過したことになる。既に小型化&低消費電力化された新型も出ており、初期型のジャンクはそれなりに安価に出回ってはいるようだ。試しにヤフオクでジャンクPS3を検索すると、40件ばかりヒットした。その中には完全動作が期待できるようなものも含まれているのだが、不動品はだいたい4000円~6000円程度が相場のようだ。
で、行きつけの情報サイトで、こんな記事が採り上げられていた。
PLAYSTATION 3 YLOD(Yellow Light of Death)
YLODってナニ?と思ったが、動画で見たところ、電源投入時に一瞬黄色いLEDが点灯し、その後赤点滅になり起動しないという症状のようだ。上の記事を見ると、故障の原因はCPUの半田割れということらしい。
PS3のCPUはBGAパッケージになっていて、上図のようにパッケージの裏側に多数の半田によるボール状の電極が付いているとのこと。これをリフロー炉といわれる装置の中で半田を溶かして基板の接点に溶着させるらしい。なお、電子部品のパッケージについてはwikipediaが参考になる。BGAパッケージはすべての電極がチップの裏側に隠れているため、手作業で半田付けをしたり修復したりすることは不可能であり、半田付けに不具合が生じても個人レベルで確実に修復する手段は存在しないのだが、上でリンクしたサイトによると、CPUそのものを外部から加熱して半田割れを起こした半田を溶かし、修復することができるらしい。
ちなみにBGAパッケージのCPUはPS2でも既に使われていた。PS2でも稀にBGAの半田不良が発生する事例もあったようで、これを外から加熱して修復する話は過去にも聴いたことがある。とはいえ、自分のジャンクPS2の修理経験では半田不良に起因する故障例には当たったことがないし、BBSや他のサイトでの報告例でも非常に稀だったように思う。まぁ、PS2の場合は先にピックアップが死んだり、保護素子が断線することが多いので、半田不良が表面化しなかっただけと考えることもできるのだが。
ではなぜPS3になってこのような故障事例が目立つようになったのだろう。関連サイトを見ると諸説あるのだが、ひとつはCPUの発熱量が大きくなったことで、発熱&冷却を繰り返すことによる膨張&収縮の影響が無視できなくなったという説。とはいえ、PS3は廃熱システムもそれなりに設計されているだろうし、相当な熱量を発生するBGAの石なんて昔からあって、別に珍しいモノでもなんでもない。熱が原因なら他のBGAの石でもで同様の問題が多発していてもよさそうなものだ。よって熱問題単独では説得力に欠ける。
もうひとつは鉛フリー半田の物理特性に問題があるという説。鉛は不適切に処理されると環境を汚染することから、世界的に半田の鉛フリー化が進んでいる。欧州連合で2007年「RoHS」なる規制で鉛半田の使用が禁じられたのを皮切りに、各国でもRoHSに準じた規制が進んでいるそうだ。これにより欧州への輸出を前提とした製品では鉛フリー半田を使用せざるを得ない状況に陥っており、その流れでPS3でも鉛フリー化されているだろう。ただ、ホントかウソかは知らないが、wikipediaによると鉛フリー半田の問題点として「鉛含有はんだに比べて経年劣化や接続信頼性など、対環境性が低下することがある」という記載がある。本当であれば半田の鉛フリー化が故障の原因になっている可能性は大いに考えられる。
もし鉛フリー化により、故障、廃棄される製品が増えるようであれば環境に対する負担は鉛含有半田を使った時よりもむしろ大きくなるかも知れない。穿った見方をすれば、「鉛フリー化」というのは「わが国(社)は環境問題に取り組んでますよ」という国や企業のパフォーマンスに過ぎないんじゃないのか?とも思える。メーカーには耳障りの良い環境対応を謳うよりも、鉛フリー半田の耐久性についてキチンと検証して頂きたい。
なお、こういう修理系記事が出回るとその症状の機体は治す方法が確立されたことになり、蘇生できるジャンクを入手しやすくはなるのだが、自分としてはどうも食指が動かない。もちろん、たまたま手元にそういうジャンク品があれば修復を試みるとは思うが、わざわざジャンクを買ってまでやりたいとは思わない。理由はいくつかあって、ひとつは修復方法が不確実であること。修理には外部から熱を加えるわけだが、ヘタをするとCPUを熱破壊したり周囲の面実装部品を破損したり剥がしてしまう恐れがある。仮に修復できたとしても、根本原因が対策されたわけではないのでまた同じように壊れる可能性も高い。
もう一つの理由は、初期型PS3の消費電力の問題。初期型は定格380Wというふざけた消費電力であり、無負荷で起動しておくだけでもかなりの熱(150w前後)を放出する無駄食い野郎だ。こんなものは家に1台もあれば十分で、2代目が欲しいとはどうしても思えない。(新型PS3ジャンクが安いなら欲しいかも知れないが。)ちなみにPS3の消費電力については、ここの記事が参考になる。
ところで、最近のPS3の話題として地デジを録画できるオプション「torne」が大変期待されていて、かなり売れそうな雰囲気である。家電のブルーレイレコーダーとは違って光学メディアには記録できないが、外付けHDDが使えるからこれを造設したり交換することで容量不足には対応可能だろう。PS3のパフォーマンスを生かした素早い操作性は、家電レコーダーには真似ができないレベルと思われる。
ちなみに現在amazonでブルーレイ記録メディアを買うと、50GBディスク10枚で5000円弱。即ち1TBあたり1万円弱のコストがかかる。同じ1TBの外付けHDDも1万円弱で買える。リムーバブルメディアは必ずしも容量一杯に使うわけではないので容量当たりの単価はむしろHDDの方が安価とも考えられる。HDDはクラッシュの危険性はあるが、大事なデータはバックアップしておけば良いわけだし、光学メディアのディスクの入れ替えの煩わしさを考えるとHDD単独での運用で充分なんじゃないのかと思える。そう割り切ると、ブルーレイレコーダーより安価で操作性に優れるPS3+torneのほうが俄然魅力的に見えてくるのだ。
torneが売れればBS/CSにも対応可能なものや、チューナーを内蔵したかつてのPSXのような一体型も発売されそうだ。PSXはあまり売れなかったらしく商業的には失敗だったかも知れないが、操作性はとても良いそうでユーザーからは好評なんだそうだ。
かつてPS2の普及期にはPS2をDVDプレーヤーとして購入した人がかなり居たと聴いている。ソニーはBDプレーヤーとしてPS3を普及させることには失敗したが、ここにきて地デジレコーダーとしての需要を利用してPS3を普及させようと目論んでいるのだろう。今後torneが進化してBSデジタルにも対応し、HDDを3.5インチ化してテラバイト級に大容量化された一体型が発売されたらたぶん買っちゃうと思う。ここはソニーにもう一頑張りしてもらいたいものだ。
>PS3の話題として地デジを録画できるオプション「torne」 某PT1でTS録画してPS3で再生ができるようなのでそれでもいいかもと思ったのですが、入手性と操作性はメーカー製のほうが断然上ですので未だにアナログテレビなうちとしては期待大です。 PSXの失敗(?)があるせいか、torneはやっと出たという感じがします。逆にPSXは早すぎた。 田舎だと地デジはあまり見たい番組がないので、BSデジが付いたら買いたいです(BSデジも無いといえば無いですけど)。