昨年の夏に実家から引き取ってきた電子ブロックEX-30の修理を行った。これは自分が小学低学年の頃に兄がお年玉を使って近所のおもちゃ屋で購入したものだ。同梱されていた昭和51年のカタログによるとEX-30でも定価5,400円。当時最上位機種とされていた定価13,000円のEX-150はよほどのお金持ちでなければ買えなかった。よって普通の小学生は貯めたお小遣いで買える範囲の下位機種を購入して、お小遣いを貯めながらアップグレードパーツを買い足して"最終形態"EX-150を目指したのであった(初期ラインナップに存在しなかったEX-181のことはこの際考えない)。このような売り方はメーカーや販売店は不良在庫を抱えるリスクがあるものの、子供たちの購買意欲を掻き立てるには上手いやり方だったと思う。
ウチのEX-30は兄がEX-Bパーツ(定価2,800円)、EX-Cパーツ(定価1,500円)を買い足してEX-100相当にした状態で保管されていた。兄が飽きた後はしばらく自分が使っていたのだが、遊びすぎてICアンプが壊れ、ブロックもいくつか機能しなくなっていた。まず、これを修復することから開始した。
まずはアンプの修理だが、とりあえず電解コンデンサを総入れ替えしてみた(左写真は取替え後のもの)。しかし、これだけではひどいノイズが直らなかったのでICの故障と判断。このICアンプユニットは初期型らしく、後に採用されたLM386ではなく三菱の「M5118L」という石が使われていた。ネットで検索してみると既に製造中止になっているようだ。流通在庫を探せばまだ手に入りそうではあったが、手持ちのLM386でも代用可能なので、これを用いることにした。元の回路とは若干異なるが、復刻版の回路図を参考にIC保護のためのダイオードを電源ピンにかませておいた。
ブロックもいくつかダメになっていたが、電解コンデンサは中身を取替え、腐食が見られたバネ接点は交換した。交換用接点は数年前に製造元(電子ブロック機器製造株式会社)に頼んで譲ってもらったものだ。半田割れによる導通不良もいくつかあり、半田付けを強化。さらに、磨耗でプリントが見えづらくなっていたブロックはエナメルシルバーを面相筆でスミ入れし、リフレッシュした。
ボリウムもガリガリになっていて、いつものように可変抵抗の接点にオイルを注して復活を試みたが、これだけではダメ。接点がないはずのバリコンもガリガリになっていた。よくよく観察するといずれも回転軸が接点になっており、これの接触不良が疑われたため、ここに微量のオイルを浸透させたところガリは消えた。なお、これに用いるオイルは鉄道模型用のものがオススメ。プラスチックを侵すCRC-556などは使わないほうがよい。オイルは微量でよく、1滴でも多いくらい。自分は適当な先端工具の先にオイルを付けて、そこから流し込むようにしている。
次にアップグレードだが、EX-Dパーツ(定価1,500円)は数年前にヤフオクで発見し捕獲していた。残るはEX-Eパーツ(定価2,100円)と、カバーパーツ(定価800円)なのだが、これがなかなかヤフオクで出てこない。たまーに出ても意外に値段が釣りあがって二の足を踏んでいた。ちなみに製造元の方によると、カバーパーツは復刻版とオリジナルとでは形状が異なるそうで、互換性はないとのことであった。古い不良在庫を地道に探すしかないと思っていたが、なんとネットで検索したら今でも売っているおもちゃ屋を発見。タマ数が少ないので敢えてリンクはしないが、レトロなオモチャを扱うお店で、恐るべきことにカバーパーツ、EX-Aパーツ~EX-Eパーツ、シンセパーツ、FMパーツまで全部揃っていた。若干のプレミアが付いていたものの、比較的定価に近い良心的な価格であったので早速注文した。せっかくなのでついでにFMパーツも注文した。
カバーパーツは新品未開封で、取り付け用のねじとノブが同梱。読むまでもないような説明書が付属。微妙なキズがあったが、もともとキズの付きやすいスチロール樹脂のようなので、ある程度は致し方ないだろう。
EX-Eパーツはメーターと、ブロックx8、回路集が同梱。これも新品未開封品で、製造後30年以上経過してようやく日の目を見ることになった。保存状態としては、回路集に黄変があったものの、ブロックの接点に腐食はなく動作には支障なし。
こうして30年以上の時を経て、EX-30が"最終形態"EX-150に進化する時が遂に訪れたのであった。長年の夢を成し遂げた気分でしばらくウットリと眺めてしまった(他人からみたらバカみたいだろうが)。このEX-30改めEX-150は今年のクリスマスにでも小学4年生の甥(元の持ち主の長男)にプレゼントしようと目論んでいる。甥はいまどき珍しい昭和テイストな男なので喜んでくれるかも知れない。