北海道も紅葉のシーズンになり、徐々に夜間の冷え込みが強くなってきた。こういう季節の変わり目には人間のみならずペットも体調を崩しやすいようで、我が家の金魚も一時期体表面にカビのようなものが生えたりした個体がいたが、鷹の爪療法と水換えと市販のバクテリア投入でなんとか乗り越えた。なお、先日のお祭りで増えた1匹の和金は来て7日目に急に動きが悪くなりそのまま★になってしまった。外見上の変化はなく、何が原因かははっきりしないが、環境の変化に耐えられなかったのかも知れない。
ちなみに魚類は水温の変化には結構敏感らしく、水温に応じて体の組成を代えて代謝を維持するのだそうだ。よって数日単位の緩やかな水温の変化であれば許容できるそうだが、急激な変化には対応しきれず体調を崩す原因になるらしい。北海道では屋内とはいえ、日中と夜間(暖房OFF)とでは相当な温度差がある。これではいくら丈夫な金魚でもかわいそうなので、ヒーターを使って保温することにした。
水層の保温のためにはサーモスタット(温度調節器)が必要だ。昔実家で熱帯魚を飼っていた頃は、バイメタル式のサーモスタットを使ったことがあったが、これはバイメタルが固着してヒーターが入りっぱなしになる事故を起こし、多くの犠牲を出した忌まわしき記憶がある。今回市販のサーモスタットを調べてみたが、今時のものは全て電子化されておりバイメタル式のものはもう売ってないようだ。温度固定のサーモスタット内蔵ヒーターなんてのもあり、値段も安価で普通に使うならそれで充分にも思える。
ただ不満なのは、ヒーター+クーラーの両方に対応しているサーモスタットが売ってないという点。夏場は家を閉めきれば北海道でもかなりの高温になる。そんなときに自動でファンを回して空冷する機能も欲しい。そこで、加温冷却両対応のサーモスタットを自作することにした。製作には温度アラーム(上限&下限)付きの電子温度計が必要。下限アラーム側にリレーを接続し、市販のAC100Vの水層用ヒーターで保温。上限側には適当なトランジスタを介してDCファンを接続し、気流を水面に当てて気化熱で冷却を図るという設計。今回も十川氏の協力を仰ぎ、温度計のプログラム済みPICを譲って頂くことにした。温度計キットの現行品は16F886使用の2センサー式のものだが、手持ちの温度センサー(S8100B:既に販売終了)を有効活用するために敢えて旧仕様の16F88使用のものを作製して頂いた。
とりあえず組み上がったのがこれ。温度計回路のために+9Vの電源が必要だが、これは小型のスイッチング式ACアダプタを分解してケースに同居させた。ケースから出ているのはAC100V電源とヒーター電源出力、温度センサーの3つ。さらに夏場にはDCファンを繋いで対応する。
温度センサーはS8100Bを使ったが、これは以前に秋月電子のpHメーターを作ったときに付いてきたもの。このセンサー、現在は流通していないらしく、メンテナンス性に問題はありそうだが、資源の有効活用ということで...。2芯のシールド線を半田付けした上にエポキシ接着剤で固めて防水処理とした。その上から熱収縮チューブでさらにカバーしている。
回路図通りに組み立てて、下限アラーム出力に赤LEDと秋月のソリッドステートリレー回路を繋げた。上限アラーム側には緑LEDと適当なスイッチングトランジスタを介してファン電源回路を作製し、後でDCファンが繋げられるようにしている。ファンは+9Vで回す仕様だが、適当なPC用の12Vファンでも充分実用出来る。+5V用のレギュレータ78M05はジャンク基板から部品取りして半田面に載せた。
バケツの水で動作確認しているところ。温度計と比較しながら検証したが、大きな誤差もなく、実用できそうであった。なお、ヒーターは150Wのものを使用しているが、連続で稼働させているとトライアックに若干の発熱があるようだ。実際の運用ではヒーターが点けっぱなしになることは無いので問題なさそうではあったが念のために2mm厚のアルミ板でヒートシンクを付けておいた。
例によって、デカール製作、塗装を行うわけだが、我が家で使用しているデカール専用マシンのALPS MD-5000がこれ。既に時代遅れの熱転写プリンタであり、解像度、色再現性はインクジェットに遠く及ばないが、白色や金、銀色のデカールは熱転写プリンタでないと作れないのでデカール作りには重宝している。
照明タイマーの時と同様に、デカールを裏張りした上でクリアブラックを裏側からエアブラシで厚塗りし、最終的にこうなった。温度リアルタイム表示や、ヒーター&クーラー両対応という高性能で制作費は2,500円程度と市販のサーモスタットと同程度に納まった。なお、温度設定などのパラメータはPICのフラッシュメモリに記憶され、電源を落としても保持されるので、一時的な停電があっても問題はない。