MX-10 MSX2/2+ VersionUp KITに特定条件で不具合

当方が頒布した以下の改造キットで、特定条件にて不具合が生じることが分かりましたのでお知らせします。2026年10月現在、製品をご購入いただいた一般ユーザーの方からの報告はありませんが、改造基板に実装したVDPと同期分離ICの組わせによってはRGB信号の同期信号にノイズが混入し、その結果RGBモニターに画面が出ない、または表示がチラつくケースがあることが判明しました。

http://niga2.sytes.net/msx/MX10_man.html

対象となる製品は、当方が過去に家電のKENちゃんさんで委託頒布した「CASIO MX-10 MSX2 VersionUp基板」と、同人即売会でB-Cat Softwareさんから委託頒布した「CASIO MX-10 MSX2+ VersionUp基板」で、いずれも2025年以前に製造頒布したものです。

当方で検証したところ、不具合の発生条件は以下と推定されました。

      1. V9938の比較的古いロット(Date codeが1987年以前?)
      2. 同期分離ICがナショナルセミコンダクタ社のLM1881
V99x8のDate code ですが、1980年代のものは、 右下に2桁の英数字が3つに区切られたフォーマットで刻印されています。先頭2文字がDate Codeで、最初の数字が198x年のxの部分、次の文字が製造月です。製造月がアルファベットの場合はX=10月、Y=11月、Z=12月と読みます。
V9928_7Z.png
例えば、上画像のものは7Zと読めますので、1987年12月製造となります。
V9938_92.png
1990年以降のものは西暦下二桁+週数で表現されます。上画像は9223と読めますから1992年第23週製造です。

当方の検証では、V9958では不具合は再現されませんでしたので、MSX2+にVersionUpされた場合はそのままでも問題なさそうです。どうやらV9938とV9958ではCSYNC信号の電気的な特性が異なる模様です。

同期分離ICですが、初期に製造した改造基板には中華半導体メーカーのAT1881を、後期のものはナショナルセミコンダクタ社のLM1881を採用しています。このうち、AT1881では不具合は再現されませんでした。家電のKENちゃんさんに出荷した製品では2023年12月に頒布したものにLM1881が搭載されているはずです。イベント頒布品はおそらく全数がLM1881搭載品と思われます。

不具合の回避手段ですが、VDPの6pから出力されているCSYNC信号を2.2kΩの抵抗でプルダウンすれば良さそうです。具体的には下画像のようにC11の左側とGND間に2.2kΩ抵抗を半田付けすればOKです。これで同期信号に混入したノイズは消失しました(オシロで観測)。

IMG_20250910_223320.JPG

当キットをご購入された方で、画面出力に不具合が発生している場合は、大変お手数ですが上画像を参考にご自身で抵抗を増設の上、ご検証お願い致します。2.2kΩ抵抗をお持ちでない場合は、1kΩ~10kΩでお試しください。現状で安定して画面が出ている場合は対処不要です。

なお、2026年10月以降に出荷した製品には、上記のように基板上に2.2kΩのプルダウン抵抗を増設しているため、この問題は発生しないと思います。

お手数おかけしますが、以上よろしくお願い致します。

OPNをOPNAに換装する話

とても興味深いネタが流れてきた。ネタ元は元ファミコンランド中標津店の中の方で、3年前の札幌のイベントでご一緒させていただいた方である。お久しぶりです!

PC-98×1のFM音源といえば、OPN搭載の26K音源、上位互換OPNA搭載の86音源が有名であるが、この基板で改造すれば26K音源を86音源相当にUpgradeできるらしい。98のソフトにはOPNA対応のものが多いので恩恵はかなりありそう。なにより基板がコンパクトで実装場所の不安が少ないのが良い。問題点は作者の方が書いておられるように元のOPNのIOデコード回路の構成によっては換装できない(または極めて困難な)機種が存在することのようである。また、YMF288は汎用ポートが利用できないが、元々ジョイスティックポートを持たない機種であればデメリットにはならないだろう。

自分もやってみようと手持ちのNOTE ORCHESTRA LITTLE-1を調べてみた。98noteの110pバス対応のFM音源の情報は下記リンクに纏められているが、ほとんどがOPN搭載機のようである。

https://j02.nobody.jp/jto98/n_note_sound/fmu.htm

なお、SNEの音源については下の記事からリンクしているUME-3さんのデータベース(EXCELファイル)が詳しい。

http://ohta.music.coocan.jp/packen/board/sne.htm

件のOPNA化基板で改造できるかどうかはBASICでコマンドを投げれば判別できるとのこと。

IOポートの#188hと#18ChがミラーになっていればOPNA化できるらしい。結果は3,3なのでビンゴ!と思いきや、後に罠が待ち構えているのであった。

ガワを開けてみたところY8950が載るパターンが空いていて、ちょっと笑ってしまった。何故かSNEの音源ボードにはY8950やYM3812(OPL2)が乗っている製品があるが、対応ソフトはほとんど出なかったらしい。98のFM音源界におけるベータマックス的存在だろうか。Y8950が実装されていたら剥がしてMSX-AUDIO製作に使えるのに残念、というか、これだけ隙間があったらYMF288でなくてYM2608が載るのでは?

当方、YM2608はMSX用のカートリッジの製作でノウハウがあり、設計データを流用して基板イメージはサクっと完成。YM2608ならADPCM用のDRAMが搭載できるし、ジョイスティックポートも温存できる。OPAMP電源はジャンパー設定で5V単電源と±12Vに対応。98の5V電源の品質が解らないので、とりあえず単電源で作ってみて、ノイズが多ければDC-DCを積めばいいだろう。

3週間で基板が届いたので実装。ガワ内部にはスピーカーがせり出していて、微妙に高さ制限がある。そこでICソケットに細ピンを直挿しし、この上に基板を載せて高さを抑える手法を採った。実装時に半田がソケットに流入しないようにポリイミドテープで保護している。

OPN用DACのYM3014は引っこ抜いてソケット化、2-6-7pをショートしてメインボード側で不使用となるOPAMPの入力をGNDに接続しておいた。OPNAサウンド出力はR14(L側),R10(R側)を撤去して配線。4MHzのオシレータは邪魔なので撤去。その他干渉する部品は倒したりして適当に処置。

OPNAのアドレスA1については、110pバスのAB021がバッファICを経由してGALの7pに入っているのを確認した。ここがA1取り出しポイントであるが、OPNAの/CSは無加工では駄目で、GALの7pを跳ね上げてGNDに接続する必要があった。

当初の調査で#188hと#18Chの読み取り値が3,3を返したのでミラーイメージと思っていたのだが、実は#18Chはミラーではなくfloatingしている模様。試しに#188h,#18Ah,#18Ch,#18Ehを連続して読むと値は3,0,0,0になり、#18Chの値は直前に読んだ18Ahに引きずられて変化した。このボードでは#18ChはY8950に割り当てられているが、データを返すはずのY8950が実装されていないためそのような挙動を示したものと思われる。

METAL FORCEではSPB(スピークボード)として認識し、ADPCMによる合成音声も発音された。ジョイスティックポートに猫の手リモコンを挿せばワイヤレスサタパでプレイ可能。ただ、内蔵スピーカーの音が劣悪なので、ヘッドフォンか外付けスピーカーは必須だろう。

FMPでもスピークボードとして認識した。

偉人による古の作品を鑑賞。ステレオでPCMも鳴っていて、改造前とは別世界である。自分は当時リアルタイムでは98のFM音源文化を経験していなかったが、2023年現在でもソフトやデータが配布されているのはありがたい限り。ドライバやプレーヤーはVectorで配布されている。

肝心の音質は思ったより低ノイズで、クリアに聞こえていると思う(個人の感想です)。OPAMPは5V単電源でも良さげなので±12VのDC-DCはオミットした。ちなみに上のつべ動画のサウンドは実機からの生録で、冒頭から終端まで無加工のもの。


余談であるが、SNEのFM音源は妙なステレオ出力仕様になっていて、OPN音源のLchがSSG、RchがFMに割り当てられていたりする。これをヘッドフォンで聴いたりすると、左右の耳に全く違う音が入ってきてマトモに聴いていられない。スイッチでアナログモードに変更することもできるが、せっかくなのでステレオ効果を温存しつつ脳がバグらない程度にLRをMIXする改造をしてみた。

 

ザックリ回路を解析するとこんな具合。LとRが完全にSSGとFMで分離しているが、これをSSG:FM比率をLch2:1、Rch1:2くらいに調整する。

上図の赤丸で囲ったところに1k抵抗、3k抵抗を追加してみた。GrounseedのOPで試聴するとこんな感じになる。

更に余談だが、Grounseedは非常に楽曲に力が入っていると思うが、OPN版はOPNA版と違う曲に差し替えられていたりする。OPNA版は劇中BGMも神がかっているので、できればスピークボード(または86音源+ちびおと)で、良い再生環境で聴いてみてほしい。

なお、このLR-mix改造はOPNA換装後は意味をなさないが、SNEの変態ステレオ仕様で困っている方の参考になれば幸いである。