最近電子工作系はオサボリ中であるが、昨年から年甲斐もなくピアノのレッスンに通い出してしまい、発表会にも出して貰えるようになったためリソースをそちらに振り当てる毎日であったりなかったり。
我が家には母の形見のようなグランドピアノがあり、それについては旧ブログ記事で書いている。
このピアノ、先月オーバーホールして大変良く鳴る楽器に再生されたのだが、それについては別記事で書こうと思う。結構デカい音で鳴るので一応マイルールとして弾くのは20時頃までとしているが、平日だとあまり練習時間が確保できないことも多い。
そんなこともあって、昨年デジタルピアノを買い足した。機種はローランドのFP-30で、ステージピアノとかポータブルピアノとか言われるタイプ。夜練用のサブ機なのでなるべく安い価格帯で打鍵感が良いものを選んだらこれになった。
公式サイトはコチラ
https://www.roland.com/jp/products/fp_series/fp-30/
下位機種のFP-10は当時未発売だったが、価格差1万円程度ならFP-30を選ぶような気はする。上位機種のFP-60は鍵盤が同じだが約5万円増し。最上位のFP-90は鍵盤が最上位仕様になるが10万円以上高くなる。
ヤマハやカシオ、KORGで3~4万円程度の機種もあったが、打鍵感が軽すぎたり、ベロシティのバランスが生ピアノとは程遠い感触であったりで自分には合わなかった。
FP-30はスタンド、ペダル、椅子は別売りだが、全部ひっくるめて8万円くらい。PHA-4スタンダード鍵盤は簡易的なアクションであるが、この価格帯にしてはエスケープメントが付いているのが特徴。グランドピアノ同様に鍵盤をゆっくりと押し下げると微妙に抵抗が増すポイントがあり、試弾でタッチに違和感が少ないと感じたのが決め手になった。
鍵盤は「象牙調」とされているが、艶消しプラスチックな質感で、よくよく見ると縦方向に粗めにペーパーがけしたような微細な筋が入っており、僅かにザラついた感触。黒鍵は半艶消しで黒檀の触感に近いかも。個人的にはツルピカのアクリル、フェノール鍵盤よりはこっちの方が好み。
コンソールは実にシンプルで、表示は音量5段階とボタン内蔵のLEDのみ。内蔵メモリに記録できる録音データは1つのみ。詳細な機能選択はボタン+鍵盤の組み合わせで行うため直観的ではないが、Bluetoothでスマホ/タブレットに接続するとタッチパネル式リモコンとして使える上に録音記録デバイスにもなるので問題なし。むしろ本体からそのような機能を除外することでコストダウンに繋がっているのでアリだろう。USBでPCに接続するとMIDI鍵盤として使えたりするあたり、ステージピアノらしいというか、DTMのローランドらしくて好感が持てる。
FP-30にはダンパーペダルDP-2が付属しているが、形状が生ピアノのそれとは程遠いため、本体購入と同時に別売りペダルを購入した。
それが今回の問題のブツ、DP-10である。スタンド固定タイプの3本ペダルも売られているが、自分はウナコルダはたまにしか使わないし、ソステヌートはまず使わないので1本ペダルを選択した。
このペダル、ハーフペダルに対応し、底面から引き出せる大面積のラバーパッドに踵を置くことで演奏中に位置がズレにくいという特徴があり踏み心地も悪くない。ところが、1年使っている内にキコキコと異音を生じるようになった。ヘッドフォンで練習していても聞こえる異音なので放って置けなくなり、調べてみることにした。
よくよく見ると、ペダルがガタついて根元がガワのプラスチックに接触し、そこが鳴いているようである。
ペダルの軸がブレていると思われたのでバラして調べてみた。なんと金属のシャフトに対して軸受けがABS樹脂のガワ一体成型になっていて、肉抜きされていることもあり実に頼りない構造である。小曲を演奏するだけでも百回以上の足踏み負荷がかかるところであり、何千、何万回と踏んでいる内に磨耗するであろうことは容易に想像できる。
ペダルを外して調べてみると亀裂が入っていた。ABS樹脂が負荷に耐え切れずに割れたようである。これがペダルをガタつかせた原因だった。保証期間内であればメーカー修理で延命を図るところであったが、購入後1年を僅かに経過していたし、根本原因が軸受けの構造的問題であることから、仮に新品に交換したとしてもいずれ同じ不具合を生じるだろう。とりあえずエポキシで固めてしまおうかとも思ったが、軸受けがプラのままでは姑息的手段にしかならない。
根治療法は軸受けを金属化し、なおかつガワに完全に固定することだろう。ベアリングを組み込んでしまうのが理想的と考え、amazonで調達してみた。ガワ内部の隙間を計測し、軸径4mm、外径10mm、厚さ4mmをチョイス。5個で送料込み787円とお安かったが、中国からの発送で到着まで3週間ほどを要した。
まずはシャフトに挿してみる。そのままでは微妙に挿さらなかったので、シャフトをリューターで少しだけ削った。削りすぎてガタツキが発生しないように注意が必要。
次に、ガワを削ってベアリングを適切な位置まで差し込めるようにするが、隙間が狭いので意外と厄介で、アートナイフ、模型用の薄い彫刻刀、ニッパーを使って加工した。
ベアリングを完全に固定するためにはガワとの隙間を埋める必要があるが、こういうときはABS樹脂との親和性が高いプラリペアが有用。下ごしらえとしてベアリング内部に溶解液が侵入しないようにマスキングゾルを塗布してみた。
ベアリングを入れて隙間にプラリペアを流し込む感じで固めた。あとから取り出せるようにしておかないとペダルを差し込めないので下半分だけ固めるようにした。上にも少し被ってしまっているがナイフで削り取れば問題なし。
一晩寝かせたところ強力に固定されており、取り外すのにちょっと苦労した。ここまで加工すればあとは組み込むだけ。
ペダルのシャフトにベアリングを挿しこみ、ガワに入れてみた。ガタつくことなくキッチリと嵌っている。
残りの部品を戻せば完成。ちなみにこのペダルはデジタルモード、アナログモードの切り替えが可能で、デジタルの場合は画像左のスイッチでOn/Offを検出する。アナログモードは右側金属板に取り付けられているボリウムの値を読んで踏み込んだ角度を検出する仕組みになっているようだ。
実際に使ってみたところ、踏み込んでもペダルはガタつかずスムーズに動き、異音も発生しない。これで何年かは状態維持できると思う。いずれベアリングを固定しているプラが割れるかも知れないが、その時はプラリペアで補修可能。
ちなみに補修作業中に本体付属のDP-2を使用していたが、予想通り使いにくい。軽いのですぐに位置が変わってしまい右足でペダルを探すことになる。せっかくなので中を開けてみたが、なんというか…実にシンプルな構造である。スイッチは汎用品で、詰め込まれたスポンジの存在意義がイマイチ分からないが、バネの力を補う目的なのかも?
軸受け構造を調べてみたら、ご覧の有様。ネジ山が刻んであるビスがそのまんまシャフトになっていて、軸受けはプラスチックのガワにあいている穴。これではあっという間にギリギリ削れて逝きそうである。せめてタミヤの工作シリーズのようにハトメ金具の軸受けを差し込むくらいはして欲しかった。ラジコンやミニ四駆の製作経験がある人だったらこういう設計はしないよなぁ…。
なお、今回のような故障事例が多発しているのではないかとネットを調べてみたが、記事公開時点では1件もヒットしなかった。よほど普及していないのか、自分のペダルの踏み方が雑なのか…。
ちなみにFP-30は鍵盤蓋がないが、オープンのままだと弾きはじめにホコリが指にまとわりついて嫌なのでカバーを自作した。不要になったカフェカーテンの布地をリサイクルし、適当にサイズを合わせてミシンで縫っただけのものだが。
そういえば、可動部で金属とプラ部品が擦れて一方的にプラ側が磨耗して機能不全に陥る事例は過去にもあり、大昔のプレイステーション(初代初期型)のピックアップユニットがそうだった。人類は何度同じ過ちを繰り返すのか。経験に学ぶ愚者ではなく、歴史に学ぶ賢者になれといいたい。
余談ですが賢者を目指す諸兄にオススメの記事がコチラ
(追記)ヘッドフォンハンガーを増設した
FP-30は夜練用なのでヘッドフォン使用が基本なのだが、ヘッドフォンをひっかけておくハンガーが無いのが不満だった。適当にamazonを眺めてみると、デスクなどに貼り付けて使うようなハンガーが1000円前後で売られていたので、それを参考に自作してみた。
素材は巾15mm、2mm厚のアルミの平棒(以前の工作の端材)。ザックリ計測して図面をテキトーに描き、ベンチバイスで曲げてドリルで穴あけ、断端をヤスって角を取って、熱収縮チューブで被覆した。
本体やスタンドに余計な穴を開けたくないので、スタンド固定のネジと共締めにしている。縦のラインを壁に密着させるするつもりだったのだが、計測をしくって右に1センチずれた。使用には差し支えないので作り直しはしないけど…。
ヘッドフォン(安物)をひっかけてみた。ネジ穴の位置を間違えたせいもあって、ちょっと出っ張りすぎたかも。大きいヘッドフォンに買い換えても問題は無さそう。アルミ素材だが2mm厚なので強度的にはまずまず。
ちなみにネジを締める際、アームが邪魔になって普通のドライバーは差し込めない。昔クルマのテールランプを交換する際に必要になって買ったものだが、こういうセットを持っておくと便利。