LowCost版 似非ROM基板

おかげさまで家電のケンちゃんさんからリリースしている似非ROM基板はご好評いただいているようで、現在追加生産を行っているところだが、今回コスト削減を主目的とした新しい似非ROM基板を設計してみた。試作もできていない段階であるが、公開可能な範囲で情報を書いてみたい。

従来品はFlashROMと大容量EPROM両対応にしていたが、今回は割り切って4Mbit以下のFlashROMのみ、実装の難易度を考えてPLCC版を採用した。MX29F040のPLCC版を実装すれば従来品との互換性も保たれるが、MegaROMソフトのリリース目的で使うのであれば39SF040を使ったほうがコストを下げられる。2Mbや1Mbに容量削減できるなら39SF020や39SF010に変更することで更なるコストダウンも可能である。

MX29F040と39SF040はいずれも4MbitのFlashROMであるが、コマンドアドレス長が異なるため、書き換えソフトに互換性がなく、NGLOAD ver1.5xは39SF040に非対応(チェッカーのCKEROM.COMは両対応)。39SF040は専用ソフトでの書き換えが必要となるが、明確に従来の似非ROMと区別することで誤消去が防止できるメリットもある。このような理由から、39SF040版はMegaROMソフトのリリース用途に限定し、専用の書き換えソフトは基板データをライセンスしたサークルにのみ提供する(無償)。

FlashROMはセクタ単位での消去や書き込みができるが、39SF040はセクタサイズが4kBytesと小さいため(MX29F040は64kBytes)、FlashROM上にゲームのデータセーブエリアを設けるにも好都合だろう。書き換え寿命はあるが、データシートには10万サイクル可能と書かれているので気にする必要はなさそう。

基板上のJP1/JP2は8k/16kバンク切り替えと起動しないスイッチ用のものであるが、CPLDロジックのカスタマイズにより無効化することもでき、その際はR1、R2の実装を省略できる。

基板サイズは33×65.5mm。この大きさであれば10x10cmに3枚面付けできるため、基板単価は従来品の2/3に削減される。中華基板なら無電解金メッキで150枚見積もっても1万円でお釣りがくるだろう。

CPLDは従来品と同じXilinxのXC9536XL。3.3V品ゆえにレギュレータが必要になるが、5V版のXC9536がディスコンなので現状これがベストと思われる。現在入手可能な5V版のCPLDとしてATF1502ASLがあるが、マクロセルが少ないのと、単価が上がること、書き換え環境等のノウハウの蓄積がなく、採用するメリットが薄いと判断した。

XC9536XLのIOピンは5VトレラントなのでMSXのバスに直結しても問題なく動作する。ロジックはASCII MegaROMコントローラ互換を基本とするが、コピープロテクト目的でバンクレジスタの仕様を変更したい場合は要望に応じて柔軟に設定できる。また、パスワード式のWrite Protectを設定することも可能。

量産時はCPLDへの書き込み作業が発生する。DigikeyではCPLD購入時に書き込みサービスを受けられるらしいが、個人でもPCとFT2232Dモジュール(秋月電子で1500円くらい)があれば大して難しい作業ではない(と個人的には思っている)。

自作CPLDライター

参考:http://miyako.asablo.jp/blog/2018/03/18/8806391

自分は部品を主にDigikey(米国)、たまにMouser(同)で手配しているが、Digikeyは6000円以上で送料無料、1万円以下は免税なので毎月1万円ギリギリ下回るように発注している。MouserはDigikeyで足りない場合に併用がお勧め。USドルで支払うと税抜きで決済されるが、円払いだと1万円以下でも税込みで決済されてしまうので注意。コチラは50ドル以上で送料無料。

関税についての情報はコチラ。1回1万円以下でも同時期に分散発注したと判断されると課税される可能性があるので注意。

https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1006_jr.htm

基板製造データのライセンス条項はコチラに書いているので、本気でMegaROMソフトのリリースを検討している個人やサークルの方は本記事のコメント欄にご連絡を。表のmail フォームはなぜかメールが届かなくなっているためご注意。


2021.2.5追記)実寸プリントで検証

先行して入手していた39SF0x0を基板イメージの実寸プリントに載せてみた。KiCADにはPLCC32pのフットプリントが2種類あり、それぞれ8:8と7:9で縦横比が違うため注意が必要。39SFは7:9のほう。手実装する場合は露出するパッドが小さすぎないかの確認を行い、場合によってはフットプリントを作り直す。現状で半田ごてを挿しこむ隙間はあるようなので問題ないだろう。

Overrich製ケースの場合、ボス穴は下側が適合する。基板が小さいのでスカスカで昔の16kBとかのROMもこんな感じだったが、MegaROMとしては最小かも。


2021.3.19 追記)試作しました

基板がようやく到着した。今回は春節の影響でやたら時間が掛かった気がする。いつものFuisionPCBで、送料が比較的安いJapanDirectを選択。ここは国内入りするまで発送ステータスが確認ができず若干不安になるが、佐川急便に引き渡されると佐川のサイトから追跡できる。3月3日発送ー3月17日到着なので2週間を要した。

基板は面付け+Vカット無料を利用して縦10センチに3枚レイアウト、表面処理は無電解金メッキとした。Vカットは手でパキっと分割可能。断面は適当にダイヤモンドヤスリで仕上げる。カードエッジの断端と接点の間に0.7mmのクリアランスを取っているので、30度傾けて紙やすりで擦れば「Gold finger beveling」の面取りも可能になっている。

LC版似非ROMと、ゲームソフトリリース用MegaROMの2種を実装してみた。違いはFlashROMで、MX29F040実装基板が従来の4Mbit版似非ROMとの互換品である。CPLDのピンアサイン等の変更をしたため、VHDLは書き直した。PLCC版のFlashROMも手半田で難なく実装できた。

ゲームソフトリリース用ROMには39SF040を実装し、テスト機の裸族XVに挿してみた。高さ33mmなのでやたら小さい。チェッカーCKEROM.COMがエラーなく通ったので、似非SDiskからMegaROMファイルのインストールを行ってみた。

39SFシリーズ用FlashROMライター(非公開)での書き込みもOK。既存のMegaROMゲームは問題なく起動できた。MA-Xさんのゲームソフト「CELIA for MSX2」の製品化に向けて一歩前進といったところ。