イースタイン グランドピアノ 旧250型

EASTEIN(東京ピアノ工業)は戦後の1949年に栃木県宇都宮で創業した、知る人ぞ知るピアノメーカーだ。会社は1973年に一度倒産しているが、自主生産組織として1990年までブランドは存続された。経緯は書籍「響愁のピアノ」に記されている。

参考文献「響愁のピアノ」

今回の記事はこの書籍を参考資料として活用させて頂き、内容を引用した際は掲載ページを(p.xx)と明示するようにした。

戦後復興期はピアノがよく売れた時代だったらしく浜松周辺にマイナーなブランドが数多く存在していたが、現在そのほとんどは廃業している。宇都宮にあったイースタインは日本最北のメーカーであったとされる(p.17)。

イースタインはピアノ造りのノウハウを持たないゼロからスタートしたメーカーであったため、当初のモデルは舶来ピアノを模倣して造られている。アップライトのU型はLITMULER(p.26)、B型はBLUTHNER(p.38)、グランド150型はCable、350型はBLUTHNER(p.52)といった具合。現物を型取りするような完全コピーではなく、フレームを採寸して同一の形状のものを作る手法だったようだ(p.93)。原型となったピアノのメーカーがバラバラだったたこともあり、設計や音色に個性が強いのも特徴の一つ。アクションは自社開発だったそうで、材料の木材については「広葉樹は日光周辺、響板などで使われるエゾ松は北海道産」と記されている(p.23)。手作りのため月産は80~120台程度(p.150)であり、大手メーカー製品に比べて現存数は少なく、「幻のピアノ」と言われたりもしている。アップライトピアノについては多少の情報は出回っているが、グランドは希少のようでネットを探しても断片的な情報しか出てこないため、この場でまとめてみることにした。

当方所有の250型(杵淵モデル)

当方が確認できたモデルとしては、150型、旧250型、杵淵250型、350型の4種類があり、ナンバーが大きいものほど奥行きが大きくなる傾向がある。この他杵淵直知氏設計の「200型」と、200型を縮小し、FUKUYAMA&SONSに提供した「O型」が存在したとされている(p.97)が、詳細は不明。


おことわり

 現物が希少であり、自分で写真を用意できないためネットで集めた画像を引用・転載しています。資料性を鑑みて、オリジナルを改変せず、できるだけ引用元を明らかにしています。現行の著作権法上認められる研究目的の引用と解釈していますが、権利者からの申し立てがあれば削除等対応します。


まとめ記事の第一回は、イースタイン初のグランドピアノ「NO.250」。

郷愁のピアノ p.25より引用

書籍「響愁のピアノ」には杵淵モデルの250型と同じモデルナンバーが与えられた全く別のグランドピアノについての記述がある(p.51)。国内サイトではその存在を確認できなかったが、なんとマレーシアのサイトに画像が掲載されていた。後の杵淵モデルとの区別のため、ここでは旧250型と呼称する。

イースタイン旧250型(Piano Malaysiaより引用)

今回の現物の画像はほぼPiano Malaysiaから引用させて頂いた。記載データによると、奥行きは185センチでヤマハC3(186cm)と同等。


 

参考文献「郷愁のピアノ」p.51より引用

「ピアノを作る以上、グランドも欲しい」と、イースタインはごく自然な動機でグランドピアノの開発を進めていく。最初のグランド250型が完成したのはB型に遅れること二ヶ月、昭和二十九年(1954)7月のことだ。とはいえ、フレームやケースなど、主だった部品はすべて寄せ集めだった。宇都宮の工場で組み立て、イースタインのブランドを付けて出荷するだけだったから、評判もさほど芳しいものではなく、短期間で製造を中止した。


この後2~3年で350型、150型が相次いで開発されたことから製造期間は長くても3年程度と思われ、現存する個体はかなり少ないのではないだろうか。

フレームの造りは杵淵250型とは全くの別物。「寄せ集め」で作ったとのことだが、フレームが普通に売ってるわけはないし、しっかりとモデルナンバーやロゴがエンボスされて鋳造されているように見える。他所のピアノメーカーに委託して製造したのだろうか。350型や杵淵250型に見られるようなピン板のフレームくり貫きはなく、デュープレックス・スケール(高音側の弦を3つに区切って倍音を共鳴させる仕組み)も採用されておらず、当時としてはオーソドックスな造りに見える。中高音域にはカポダストロバーがあり(そうにみえる)、弦の振動を鉄骨に伝えて音量を稼ぐ意図はあると思われる。

この個体はオーバーホール直後と思われ、チューニングピンや弦の状態が非常に良いが、フレームが塗りなおされているためかシリアルナンバーが見当たらない。ダンパーは蒲鉾型ではなく山型。

意図的な倍音共鳴を作らない非アリコート式であることから、木質的な柔らかい音が出そうだが、音楽のジャンルによっては音量不足を感じるかも知れない。響板のEASTEINロゴは3種類のバリエーションを確認しているが、これが最も古いものと思われる。よほど大事なことなのか「TOKYO」と2回も書かれているが、イースタインは栃木のブランドであり、大手メーカーの書式に倣うのであれば「UTSUNOMIYA JAPAN」と書くべきでは。

フレームの特徴としては、よくある外周の丸い肉抜きの穴が無いことくらいだろうか。ありもので済ませたのであれば、どこかのメーカーで同じフレームのピアノを製造していても良さそうなものだが、ネットを探しても発見に至らず。

譜面台の形状は現在のYAMAHAやKAWAIピアノっぽい形で、後の350型も同様だが、150型、杵淵250型では長方形に変更されている。それにしてもこの個体は60年前の製造とは思えないほど外装も磨かれていて古さを感じさせない。

古い個体なので鍵盤がオリジナルのままかどうかは不明だが、黒鍵の艶はベークライト(フェノール樹脂)のように見える。白鍵の素材は画像からは判断できず。鍵盤蓋のEASTEINロゴは数種類のバリエーションがあるが、こちらは最もオーソドックスなタイプ。


twitterでこの旧250型と思われる画像が見つかったのでリンクしてみる。

twitterより引用

大屋根の面取りや丸みのある鍵盤蓋などの特徴から旧250型と推定されるが、外観は多少のバリエーションがあるので断言はできない。設置場所はどこかの公共施設か店舗と思われるが不明。大屋根の上に「幻の名器」と書かれたボードが載っているが、旧250型だとしたらまさに「幻の」ピアノである。「名器」かどうかは判らないが、「調律されてなくてガビガビだった」とのことで残念な感じがする。


現物を所有している方、同じフレームを使った別メーカーのモデルをご存知の方など、何某かの情報をお持ちの方がおられましたらコメントお願いします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。