似非P6ROMの開発

MSXとPC-6001の類似性

MSXとPC-6001のシステムを眺めてみると、後発のMSXはPC-6001のシステムの一部を取り込んで設計されたと思われるような共通点が見えてくる。グラフィックキャラクターの配列が同じだったり、外部スロットの50pカードエッジコネクタのピン配列はVccやGNDの他、アドレス線とデータ線はまったく同じ配列になっている。

双方の50pカードエッジの信号配列は下記リンクで比較すると分かりやすい。

PC-6001 : https://electrelic.com/electrelic/node/517

MSX : https://electrelic.com/electrelic/node/516

表を一部引用させていただき、相違点を赤枠で括ってみた。

P6はカートリッジ上のDRAMが直で繋がるようになっていて、8000h~BFFFhのDRAM制御信号が1,3,5,10pに出ているが、MSXのDRAM関連信号は/RFSHのみ。

/CSxはROM用の信号で、MSXでは16kB単位、P6は8kB単位で区分けされている。いずれも当該アドレスのREADでアクティブになるが、MSXのROMには/SLTSLを絡める必要がある。

なお、初代P6とmkII以降では7,8,16pの役割が異なるようだが、MSXとの互換性を考える上ではあまり影響はなさそうである。

http://sbeach.seesaa.net/article/387861397.html

以上の相違点を理解すれば、MSXとP6のどちらでも使えるROMカートリッジが制作可能と思われた。

なお、MSXの/SLTSL信号 (4p)は、P6では/CS2(4000-5FFFh)になっており、この領域を使うP6のROMカートリッジであれば、特に細工をしなくてもMSXで吸い出しができそうに見える。更に、P6ROMの/CS2(2p)と/CS3(4p)を入れ替えてしまえば6000-7FFFhも吸い出せるだろう。


戦士のカートリッジ

P6用のカートリッジといえば、「TINYゼビウス」の伝説的プログラマ松島徹氏が2008年に新作ゲーム「特攻空母ベルーガ」を発表した際、これをROMカートリッジ化するためのMEGA-SYSTEM 6000 (戦士のカートリッジ)が西田ラヂオ氏によって設計されている。ソースはコチラ。

http://tulip-house.ddo.jp/digital/BELUGA/

回路図を引用:

MEGA SYSTEM 6000では、ROMは4000-5FFFhにマッピングされ、8kBx16バンクで容量は128kB、バンクレジスタはIO#70h(~7Fh)に置かれている。6000-BFFFhには拡張RAMが実装されていて、その内6000-7FFFhはREAD ONLYに設定できる(起動時は書き込み許可)。4000-7FFFhに擬似的なROMを置くことができるので、バンク0に起動メニューと転送プログラム、以後のバンクに既存のROMソフトのイメージを入れておけば、N in 1カートリッジを作ることもできそう。

ROMの/CSにはP6の/CS2が繋がっているが、このピンは都合の良いことにMSXでは/SLTSLにアサインされており、ROM領域だけならMSXからも読み取りできてしまいそう。ひょっとしたらMSXとP6両対応のメガROMカートリッジが作れるのでは?と思ったのが2020年7月の話である。


似非P6ROMの設計と試作

P6では「戦士のカートリッジ」、MSXではASCII 8k bankの「似非ROM」として機能するものができたら面白そうだし、ROMファイル書き込みに既存のソフトが流用できてオトクである。早速CPLDでロジックを錬成して基板を設計してみた。

P6はスロットが深いためこのような基板サイズになるが、スペースが余りまくりである。何か追加できないかと考えていたところ、秋葉原のFM音源ガチャでドロップした石があったことを思い出した。

せっかくなので、このFM音源(YM2612:OPN2)を追加してみることにした。OPN2ならDAC内蔵でお手軽だし、P6ならSRで採用されたYM2203(OPN)の後継チップなので相性もいいだろうと。

とりあえずオーディオ回路をテキトーに追加して2020年10月にできた試作基板がコチラ。IOアドレスはMSXのOPNAカートリッジ(Makoto)と同じ#14-17hに割り当て、VGMPlay for MSX 1.3をパッチしてOPNAを偽装したところ発音が確認できた。

P6実機でBELUGAが動作するか確認をしたかったため、TinyProjectのHashiさんにコンタクトを図ってみたり。その時のツイートがコチラ。

結果、両機種対応のMegaROMシステムとして想定どおりの動作を確認できた。しかし、音源部は無音時のノイズが目立ち、改修が必要。

もう一つの問題としては、OPN2の入手性。2020年の時点でOPN2は入手が難しくなっていて、Aliなんかだとほぼほぼフェイクだという情報が流れていた。試しに中華圏から取り寄せてみたところ、届いたのがコチラ(笑。

左下が音源ガチャのドロップ品でおそらく本物。それ以外は明らかなリマーク品。ただし、パッケージの形状は本物と変わらず、裏面にJAPANの凸モールドも確認できるのでフェイクとは断定し難い。ダメもとで似非P6ROMに挿してデータを流してみたら、なんと普通に鳴る石だった。どうやら本物の中古汚損品をリマークした「リファービッシュ品」と思われる。果たしてこれを製品に実装して頒布してよいものかどうか…。

以上の事情により音源付きでの製品化は困難と思われたのと、2020年は似非SDisk等の先行プロジェクトを優先させたため、似非P6ROMの開発はこのまま1年の塩漬けに…。(次回に続く)

ご注意

 似非P6ROMはP6でもMSXでも動作するように設計していますが、通常の戦士のカートリッジはMSXでは機能しません。それどころかROM/RAMでバスが競合が発生して故障の原因になるのでMSXに挿して電源を投入するのはやめましょう。

 

漢字FlashROM 初期ロット改修について

ご注意:2021年末をもって改修受け付けは終了していますが、記録として以下の記事を残しています。


当方より2021年10月にリリースいたしましたMSX用「漢字FlashROM」に不具合が発覚しました。

第一報(2021.9.30)

その後の調査で、故障の原因となり得るバス競合は発生しないと判明しましたが、動作不良を生じる可能性はありますので対象製品を回収し、CPLDを対策済のファームウエアに書き換えて返送します。詳しい原因や対策については下記文書をお読みください。ご不便をおかけして申し訳有りません。

調査報告書(2021.10.26)


対象製品

2021年9月25日~9月30日に家電のKENちゃんさんの委託販売にて頒布した漢字FlashROM基板と、ケース入り漢字FlashROM。

2021年10月以後の頒布品は改修済み製品になりますので対象になりません。


受付期間

2021年12月末日までとさせていただきます。お早めのお申し込みをお願いします。


改修受付窓口

このblog記事のコメント欄が受付窓口となります。コメント欄が見当たらない時にはこの記事のタイトル「漢字FlashROM初期ロット改修について」まで戻り、タイトルをクリックしてください。

お名前はネットネームで結構です。

必ずメールアドレス欄にご連絡可能なメルアドを記載してください。メルアドは非公開です。コメントは管理人による承認後に公開されます。投稿後にコメントが表示されなくても再投稿せずに数日お待ち下さい。

対象製品を所有されていることを確認させていただくため、ネットネームが書かれたもの(紙切れで結構です)と対象製品とご愛用のMSXの一部が一緒に写っている画像ファイルを添付してください。フォーマットはJPG,PNG,GIFでファイルサイズは32MB以内です。

添付画像例

以上で受付は終了です。1週間以内に当方より対象製品の送付先をメールでご連絡いたします。メールが届かない場合は、メール受信ソフトにより迷惑メールに分類されていることがありますのでご確認願います。


送付の方法

返送先を記載した宛名ラベルを作成してください。郵便番号、住所とお名前を記載した4cm x 7cm程度の白い紙きれで結構です。また、宛名ラベルの裏には申込み時に使われたメルアドを記載してください。メルアドにより申し込み者と現物の紐付けをしますので忘れずに記載してください。

宛名ラベルは製品の返送時に封筒に糊付けしてお返しします。返送先が分からないと製品をお返しできませんの忘れずに添付してください。

ケース付き漢字FlashROM、または本体内蔵のためにICソケットや連結ピンを実装されている場合は、重さが100gを超えないように、厚さが3cmを超えないように適当なクッション材で保護して宛名ラベルと一緒に封筒に入れ、日本郵政の定形外郵便で発送してください。送料は140円かかります。

基板単体の場合は重さが50gを超えないように、厚さが1cmを超えないように宛名ラベルと一緒に封筒に入れ、日本郵政の定形郵便で発送してください。送料は94円かかります。

参考:手紙の基本料金(郵便局)

https://www.post.japanpost.jp/send/fee/kokunai/one_two.html

参考:サイズ・重さの対応について(郵便局)

https://www.post.japanpost.jp/service/standard/one_size.html

いずれも送料は返送時に切手でお返しします。上記以外の手段で送付されても構いませんが、実際にかかった送料に関わらず、お返しするのは上記料金の切手で替えさせていただきます。


製品改修に要する時間

ポスト投函後2週間以内に改修品がお手元に届くように努力しますが、郵便事情によって遅れることもあります。返送は普通郵便で行います。2週間以上経過しても到着しない場合は当blogのコメントかメールでお問い合わせください。


ソフトウエアのUpdate

改修済みの漢字FlashROMに対するFlashROM書き換えソフトはKFLASH.COM ver.0.06 以降が必要になりますので、下記から最新版をダウンロードしてください。

http://niga2.sytes.net/sp

旧バージョンの公開は停止します。初期ロット製品を改修せずに書き換える場合はKFLASH.COM ver.0.06に「/I」オプションを付けて実行してください。


個人情報の取り扱い

お預かりした宛名ラベルに記載された個人情報は当方では複写・記録いたしません。そのまま製品の返送時に郵便物に貼付して返却します。

メルアドは当方サーバーに一時保管されますが、受付期間終了後にblogのコメントと共に消去します。


Xilinx CPLD書き換え環境をお持ちの方へ

下記JEDファイルをCPLDに書き込むことによって改修することもできます。自己責任において行ってください。当方ではCPLD書き換え方法に関するサポートはいたしません。未経験の方は郵送での改修をお申し込みください。

http://niga2.sytes.net/sp/kflash_jed.zip

数量把握のため、書き換えに成功された方はこの記事のコメント欄にご報告いただければ幸いです。

お手数をおかけしますが、以上よろしくお願いいたします。

LowCost版 似非ROM基板

おかげさまで家電のケンちゃんさんからリリースしている似非ROM基板はご好評いただいているようで、現在追加生産を行っているところだが、今回コスト削減を主目的とした新しい似非ROM基板を設計してみた。試作もできていない段階であるが、公開可能な範囲で情報を書いてみたい。

従来品はFlashROMと大容量EPROM両対応にしていたが、今回は割り切って4Mbit以下のFlashROMのみ、実装の難易度を考えてPLCC版を採用した。MX29F040のPLCC版を実装すれば従来品との互換性も保たれるが、MegaROMソフトのリリース目的で使うのであれば39SF040を使ったほうがコストを下げられる。2Mbや1Mbに容量削減できるなら39SF020や39SF010に変更することで更なるコストダウンも可能である。

MX29F040と39SF040はいずれも4MbitのFlashROMであるが、コマンドアドレス長が異なるため、書き換えソフトに互換性がなく、NGLOAD ver1.5xは39SF040に非対応(チェッカーのCKEROM.COMは両対応)。39SF040は専用ソフトでの書き換えが必要となるが、明確に従来の似非ROMと区別することで誤消去が防止できるメリットもある。このような理由から、39SF040版はMegaROMソフトのリリース用途に限定し、専用の書き換えソフトは基板データをライセンスしたサークルにのみ提供する(無償)。

FlashROMはセクタ単位での消去や書き込みができるが、39SF040はセクタサイズが4kBytesと小さいため(MX29F040は64kBytes)、FlashROM上にゲームのデータセーブエリアを設けるにも好都合だろう。書き換え寿命はあるが、データシートには10万サイクル可能と書かれているので気にする必要はなさそう。

基板上のJP1/JP2は8k/16kバンク切り替えと起動しないスイッチ用のものであるが、CPLDロジックのカスタマイズにより無効化することもでき、その際はR1、R2の実装を省略できる。

基板サイズは33×65.5mm。この大きさであれば10x10cmに3枚面付けできるため、基板単価は従来品の2/3に削減される。中華基板なら無電解金メッキで150枚見積もっても1万円でお釣りがくるだろう。

CPLDは従来品と同じXilinxのXC9536XL。3.3V品ゆえにレギュレータが必要になるが、5V版のXC9536がディスコンなので現状これがベストと思われる。現在入手可能な5V版のCPLDとしてATF1502ASLがあるが、マクロセルが少ないのと、単価が上がること、書き換え環境等のノウハウの蓄積がなく、採用するメリットが薄いと判断した。

XC9536XLのIOピンは5VトレラントなのでMSXのバスに直結しても問題なく動作する。ロジックはASCII MegaROMコントローラ互換を基本とするが、コピープロテクト目的でバンクレジスタの仕様を変更したい場合は要望に応じて柔軟に設定できる。また、パスワード式のWrite Protectを設定することも可能。

量産時はCPLDへの書き込み作業が発生する。DigikeyではCPLD購入時に書き込みサービスを受けられるらしいが、個人でもPCとFT2232Dモジュール(秋月電子で1500円くらい)があれば大して難しい作業ではない(と個人的には思っている)。

自作CPLDライター

参考:http://miyako.asablo.jp/blog/2018/03/18/8806391

自分は部品を主にDigikey(米国)、たまにMouser(同)で手配しているが、Digikeyは6000円以上で送料無料、1万円以下は免税なので毎月1万円ギリギリ下回るように発注している。MouserはDigikeyで足りない場合に併用がお勧め。USドルで支払うと税抜きで決済されるが、円払いだと1万円以下でも税込みで決済されてしまうので注意。コチラは50ドル以上で送料無料。

関税についての情報はコチラ。1回1万円以下でも同時期に分散発注したと判断されると課税される可能性があるので注意。

https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1006_jr.htm

基板製造データのライセンス条項はコチラに書いているので、本気でMegaROMソフトのリリースを検討している個人やサークルの方は本記事のコメント欄にご連絡を。表のmail フォームはなぜかメールが届かなくなっているためご注意。


2021.2.5追記)実寸プリントで検証

先行して入手していた39SF0x0を基板イメージの実寸プリントに載せてみた。KiCADにはPLCC32pのフットプリントが2種類あり、それぞれ8:8と7:9で縦横比が違うため注意が必要。39SFは7:9のほう。手実装する場合は露出するパッドが小さすぎないかの確認を行い、場合によってはフットプリントを作り直す。現状で半田ごてを挿しこむ隙間はあるようなので問題ないだろう。

Overrich製ケースの場合、ボス穴は下側が適合する。基板が小さいのでスカスカで昔の16kBとかのROMもこんな感じだったが、MegaROMとしては最小かも。


2021.3.19 追記)試作しました

基板がようやく到着した。今回は春節の影響でやたら時間が掛かった気がする。いつものFuisionPCBで、送料が比較的安いJapanDirectを選択。ここは国内入りするまで発送ステータスが確認ができず若干不安になるが、佐川急便に引き渡されると佐川のサイトから追跡できる。3月3日発送ー3月17日到着なので2週間を要した。

基板は面付け+Vカット無料を利用して縦10センチに3枚レイアウト、表面処理は無電解金メッキとした。Vカットは手でパキっと分割可能。断面は適当にダイヤモンドヤスリで仕上げる。カードエッジの断端と接点の間に0.7mmのクリアランスを取っているので、30度傾けて紙やすりで擦れば「Gold finger beveling」の面取りも可能になっている。

LC版似非ROMと、ゲームソフトリリース用MegaROMの2種を実装してみた。違いはFlashROMで、MX29F040実装基板が従来の4Mbit版似非ROMとの互換品である。CPLDのピンアサイン等の変更をしたため、VHDLは書き直した。PLCC版のFlashROMも手半田で難なく実装できた。

ゲームソフトリリース用ROMには39SF040を実装し、テスト機の裸族XVに挿してみた。高さ33mmなのでやたら小さい。チェッカーCKEROM.COMがエラーなく通ったので、似非SDiskからMegaROMファイルのインストールを行ってみた。

39SFシリーズ用FlashROMライター(非公開)での書き込みもOK。既存のMegaROMゲームは問題なく起動できた。MA-Xさんのゲームソフト「CELIA for MSX2」の製品化に向けて一歩前進といったところ。

 

cocopar 13.3インチ LCDの改造

昨今のテレビはコンポーネントやS端子といった高画質アナログ系の入力端子が削除され、レトロ系デバイスを直に接続できるのがコンポジットビデオ信号くらいになってしまった。コンポジのボケボケ画面で我慢できるのは初代ファミコンくらいのもので、MSXでは文字の判読も困難である。

一部のPC用LCDでは正式に対応を謳っていなくても水平同期15kHzのアナログRGBを4:3表示できるものがあり、CenturyのLCD-8000Vや、cocoparの13.3インチIPS液晶が密かに15kHzに対応しているらしい。手に入る内に買っておこうとcocoparのものを2020年2月に楽天で入手した。残念ながら2020年6月現在はどこも品切れのようだ。

この製品、MENU長押しでファームウエアのバージョンを確認できる。ネットでは「Para V007」でないと縦横比が変更できないという情報があるが、入手した個体のファームはPara V007に該当。他のバージョンがあるかどうかは不明。

PC-6601SRに適当に繫いで表示テストしてみたところ、確かに15kHzの信号に対応しており、画面比4:3に設定可能のようだが、入力端子がいわゆるVGAコネクタ(3列Dsub15p)で、水平・垂直同期信号(HSYNC、VSYNC)にしか対応していないのがMSXユーザーとしては不満である。正攻法で行くなら外付けアダプタを作成し、ビデオシンクセパレータLM1881で同期分離することになるが、MSXのRGB端子にはLM1881をドライブできる電源出力がないので、別途ACアダプタが必要になってしまう。できればシンプルに直結したい…ということで、cocopar内部にLM1881を増設し、直接MSXの複合同期信号(CSYNC)を流し込めるように改造することにした。


この記事の情報を元に改造した結果、LCDモニタを壊してしまったり、身体や財産に不利益を及ぼしたとしても当方は責任を負えないので十分な知識とスキルを身に付けた上で自己責任にて行ってください。改造するとメーカー保証期間内であってもアフターサービスは受けられなくなります。記事の内容についてメーカーその他に問い合わせるのはご遠慮ください。


LM1881は、2pにコンポジットビデオ信号を入力し、1pにCSYNC、3pにVSYNCを出力するように設計されているが、経験的に2pにCSYNCを入力しても問題ない。1pから出力されるのはCSYNCであって、HSYNCではない点に注意。6pのコンデンサと抵抗は定数になっているので何も考えずにこのまま接続する。

手始めにブレッドボード上でLM1881のコンポジビデオ入力にMSXのCSYNCを入れ、1pと3pをcocoparのHSYNC、VSYNCに接続したところバッチリ映った。試しにVSYNCを外してみたところまったく問題なく同期した。実はこのモニタ、HSYNCにCSYNCを流し込めばVSYNCに信号を入れなくても映るっぽい。しかし、MSXのCSYNCを直にHSYNCに接続しても表示されない。問題は信号レベルで、通常CSYNCは0.3~1.0Vppであるのに対し、HSYNCはTTLレベル(4~5Vpp)である。CSYNCもTTLレベルが要求されるということのようだ。

MSX RGB出力端子のCSYNC出力(2V/DIV)

確認のためMSX(FS-A1FX)のCSYNCをオシロで測定したところ、1Vppになっていた。このままcocoparのHSYNCに接続すると振幅が足りないが、LM1881を通すことでTTLレベルに変換される(過去記事でも似たようなトラブルを経験をしている)。cocoparを改造するならば、HSYNCに入った信号を強制的にTTLレベルに変換してしまえばOKだろう。ここで、LM1881のデータシートを紐解くと、絶対定格として下記のように書かれている。

LM1881はVccが5Vの場合、入力信号は3Vppまでしか許容されないが、Vccを8V以上にすれば6Vppまで可。入力端子には0.3~5Vppの信号を接続することが想定されるので、3Vppしか許容できないのはマズイ。よって、LM1881は12Vでドライブすることにした。その時出力されるCSYNCのレベルをオシロで測定したところ、約10Vppになっていた。ちなみにVcc=5VだとTTLレベルの出力である。Vccが大きくなると出力信号の振幅も大きくなる点には注意が必要だろう。

LM1881 Vcc12VでのCSYNC出力(5V/DIV)

このレベルのままcocoparに突っ込むのは問題がありそうなので、LM1881で上げたレベルを再度落とすことになる。当初ツェナーダイオードで5Vに整形しようとしたがエッジが鈍って表示が横にズレたのでNG。シンプルに抵抗で分圧したところ良好な結果が得られた。諸々検証して書き上げた回路図がコチラ。

R93とR98が元からcocoparの制御基板に載っている抵抗。R93の手前で切り離し、スイッチでLM1881を経由できるようにした。CSYNC出力は手持ちの2.2kΩと4.7kΩを組み合わせて分圧したが、GND側並列の合成抵抗は1.5kなので1本に置き換えてしまっても構わない。これによりHSYNCの信号レベルは約4Vppになる。

制御ICにSYNC信号を流し込むポイントがコチラ。R93の100Ωチップ抵抗を取り外してパッドにジュンフロン線を接続した。R98は温存。パターンカットは不要。

外したR93は細かすぎて紛失したので(笑)裏面にリードタイプ100Ωをハックルーで貼り付けた。その他回路図通りに実装。なお、部品増設面の上にLCDパネルが載ることになるので、十分な隙間があるか確認しておいたほうが良い。極端に隙間が少ないとパネルにストレスが掛かった際に割れる危険性がある

MSXを直結できるケーブルも作成した。市販のVGAケーブルをぶった切ってDIN8pコネクタを取り付けただけである。DINの4p(CSYNC)はDsubコネクタの13p(HSYNC)に接続する。Dsubの14p(VSYNC)はNC。RGBとGNDはそのまま配線。

LM1881を経由した状態で実際に動作させてみたところ、CSYNC 1VppのMSXでもHSYNC 5VppのPC-6601SRでもPCのVGA信号でも問題なく同期した。VGA信号はダメかなと思っていたが、意外とLM1881は高解像度の信号にも追従する模様。信号スルー用のスイッチは無くても良かったのかも。

なお、今回はナショナルセミコンダクタ社のLM1881Nを使ったが、想定外の使い方をしているので互換チップではうまく行かないかも知れない。中華製互換ICのAT1881で試してみたが、発振してダメだった。同様の改造をする際は、実装前にブレッドボードなどで実験しておくことをお勧めする。


外部音声入力端子の増設

 

cocoparはスピーカー内蔵だが、音が出るのはHDMI接続時に限られる。ステレオ対応なのにスピーカーが縦に配列されていたり、薄いプラ筐体がスリットでスカスカなこともあって音質はよろしくないが、RGB接続時に使えないのは面白くない。ということで外部音声入力端子を増設する。

制御基板に搭載されているのはデジタルアンプIC「PAM8003」である(データシートはコチラ)。7pと10pが入力端子になっていて、cocoparでは制御ICからコンデンサ(C6,C7)と1kΩ(R12,R13)を介して接続されている。PAMの内部ではオペアンプに接続されているようなので、ここに0.47uFと1kΩを介して並列に外部入力を繫いだらミキシングされて音声が出せるかも、と思って試してみた。

データシートの図に追記するとこんな具合。PAM8003のINLとINRにカップリングコンデンサと入力抵抗を介して外部音声入力端子EXL,EXRを接続する。

1kΩのチップ抵抗をR12とR13の根元に付け足して、適当なチップコンを経由してワイヤーを接続した。画像だと大きく見えるが実際は結構細かい。GNDの黒ワイヤーは右下のコンデンサに接続。ワイヤーを引っ張ると部品がもげるのでハックルーで固定した。

片ChにMSXの音声出力を接続したところ、RGB表示時にスピーカーから音声が出るようになった。cocoparの操作ボタンで音量コントロールも可能。RGBケーブルを引っこ抜くと表示が消えると共に音声もミュートされたので、非表示時はアンプもシャットダウンモードに制御されているようだ。

HSYNCスルースイッチと音声入力端子はサイドのプレートに固定した。なお、HDMI接続時はこれまで通り発音されるが、同時に外部入力に信号を入れると音声がミキシングされて出てくる。HDMI側のスピーカー出力はヘッドフォン接続でミュートされるが、外部入力側はミュートされず、ヘッドフォンからも音声は出なかった。このあたりは割り切って使うしかないだろう。

ちなみにこのモニタ、一応VESAマウント対応らしいが筐体の成型が悪く、ネジ穴が樹脂で埋まっていた。一応中にネジは埋まっていたので適当に掘り起こして引っ掛け用の金具をネジ止めした。これで邪魔にならずに運用できそう。

ゲームトレジャー2に出展してみた

9月1日に札幌で開催された「ゲームトレジャー2」に行って来きた。第1回目は昨年12月に1回目が開催されていたそうで(知らなかった)、今回が2回目。北海道でこのジャンルのイベントが開催されるのは珍しく、猫の手リモコンなど自前の同人ハードの手応えを得る良い機会だったので出展を申し込んだ次第。

ウチの頒布品は猫の手リモコンシリーズのうち、1号(レトロPC受信機)、3号b(SFC改造PAD)、虎の手3号(SS改造PAD)、4号(FC受信機)と、電子工作マガジン掲載のデジタルアンプ基板、新作の猫の手モータードライバ基板。

前日にテーブルの大きさを想定して予行演習していたので、当日は無難に設営完了。画像では見えないが、MSXはカシオMX-10をモニターの裏側に設置している。MSXには猫の手1号を2本挿しにして沙羅曼蛇の1P+2Pのシンクロプレイを体験できるようにした。

猫の手リモコンは実機で応答性能を体験して頂くのが重要と考えていたので、少しでも興味のありそうな方にはお試しプレイをお勧めした。操作感覚は概ね好評で、ゲームでの遅延や通信途絶が起こらないことをご理解頂けたと思う。PADの電源に単4電池を使うことのメリット(交換が容易で長持ち)も重要なアピールポイントだった。

改造済みPADは家電のケンちゃんさんでは委託販売できない(商標権の問題を懸念)ため、今回のイベントで初めて完成品を頒布。ジャンク箱をイメージしたダンボール箱から好きなPADを選び、実際にボタンの反応などの動作チェックしてからお買い上げいただくスタイル。SFC型とSS型と同数用意したが、やはりというかサタパの方が人気。ゲームイベントだったので受信機の方はFC版の方が若干売れ行きが良かった。

ついでに頒布したデジタルアンプ基板も数名の方にお買い上げ頂いた。うっかり作りすぎた基板(のみ)は無料配布。一応アフターフォローとして、簡易説明書とPICマイコンのファームウエアを貼っておく。電源はアップル純正充電器をオススメ。

ちなみに、隣の隣のブースのM.K Workshopさんは以前にウチのサイトでドリキャスのスピンドルモーターを共同購入された方と判明。PC-8001シリーズのPCG互換ボードを作っていたり、QD(クィックディスク)システムを弄り倒していたりとハイレベルで、会場内の数少ない同人ハードウエア系の出展者として仲間意識が芽生えたり(笑。

反対側の隣の隣のブースはゲームショップ1983さんで、店長はMSXサークルSYNTAX代表のいまむら氏。奇しくも会場はかつてSYNTAX主催のMSXユーザーの集いが開催されていた場所と同じ(建物はリニューアルされているが)で感慨深いものが。店長さんとスタッフさんには猫の手リモコンをお買い上げいただいた(ありがとうございました)。

一般参加のお客さんにも昔ウチのサイトを見ていた方がおられたり、これまでの活動も無駄ではなかったと思った次第。お客さんには代わる代わる猫の手リモコンの体験プレイをして頂き、充実した4時間であった。もっとハードウエア系の出展が増えればいいなと思いつつ、機会があったらまた出展するかも。